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ショートレビュー「ナタ転生・・・・・評価額1650円」
2021年03月06日 (土) | 編集 |
自己中ヒーローの覚醒。

これは面白い!
中国の神怪小説の古典、「封神演義」の神々が現代に転生し、因縁の抗争を繰り広げるCGアニメーション映画。
本作の主人公は、少年神ナタ(哪吒)が転生した若者・雲祥。
ナタといえば「封神演義」「西遊記」などで活躍し、アニメーションキャラクターとしても懐かしの「ナーザの大暴れ」、最近では「羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来」にも顔を出していた道教のスーパースター。
ただこの人、もの凄く強いけど、傲慢で自分のことしか考えないワガママなヒーローなのだ。
今回転生したナタの敵となるのは、東海龍王とその息子の三太子の生まれ変わり。
しかし両者の抗争は、元を辿ればナタが強大な魔力を持つ宝貝を付けたまま水浴びした結果、東海を揺るがし龍王の住む龍宮をぶっ壊してしまったことから始まる。
これを糺すために赴いた三太子と部下の夜叉を惨殺するという、あまりの暴虐っぷりにブチ切れた龍王の訴えにより両親の前で自害させられた。
いや、そりゃ恨み買うでしょ。
元はと言えば自分が悪いんじゃんという話だから、今回は未熟なナタ改め雲祥の成長物語

特筆すべきはスチームパンクな世界観で、舞台となるのはまるで30〜50年代の西洋と東洋が入り混じった様なカオスの都市・東海市。
ストリートレースをしている不良少年雲祥の、アールデコ調のバイクがむっちゃカッコいい。
これおそらく“1930 Art Deco Henderson”という、有名なワンオフのカスタムバイクにインスパイアされたデザインだろう。
クラブ歌手で雲祥の幼馴染のヒロイン、カーチャはロシア系?
ロシア革命後の数十年間は中国北東部に多くの亡命者がいたと言うから、大体その時代をイメージしているのかも知れない。
ここを支配している財閥のボス・徳会長が実は東海龍王が転生した姿で、性格の悪い息子の三太子改めて三公主が雲祥と出会ったことから、再び運命が動き出す。

基本的な物語の流れは、原作と同じ。
まだナタの力が完全に覚醒してない雲祥に、まずは夜叉、次いで中ボスの三公主、ラスボスの徳会長が立ちはだかる。
雲祥は廃工場に秘密基地を作っている、猿の仮面を被った謎の男を師匠に、戦闘スキルを上げてゆくのだが、彼には過去のナタとは違う弱点がある。
神ではなく人間として生きる雲祥には守るべき人たちが沢山いて、龍王親子の攻撃の中、皆を守りながら戦わざるを得ないのだ。
自分のせいで人々が苦しむという痛みと葛藤が、雲祥と同時に彼の内なるナタを成長させてゆく。
これは力任せに好き勝手暴れ、他人に迷惑をかけていたガキっぽい神様が、その力が何のためにあるのかを理解し、真に他人に寄り添えるまでの物語なのだ。

展開はめっちゃ早いが、語りは親切で分かりやすい。
戦いになると、それぞれのキャラクターの背後に、“原神”という形で本来の姿が光で現れるのはゲームっぽいが、おかげでエフェクトアニメーションがバリバリのバトルシークエンスは相当派手。
MCUから「レディ・プレイヤー1」まで、いい意味でハリウッド映画の影響が強いのも、観やすさに繋がっている。
とりあえず本作はビギニング的作りで、シリーズ化するつもり満々。
次回は原作でお馴染みの“あの人”が出てくるみたいだが、チャラい雰囲気はやっぱヴィラン?
「封神演義」をはじめとする中国古典は、作品間のクロスオーバーもあり、いわば「◯◯ユニヴァース」の元祖。
人気キャラクターを、現在風にアレンジして復活させるアイディアは、大きな可能性を感じさせる。

本作や「羅小黒戦記」など、現代中国のエンターテイメントを日本に紹介する、チームJoyの活動は、着実に実を結びつつあるのではないか。
趙霽監督の前作、「白蛇 縁起」の正式公開決定も喜ばしい。
日本でも東映動画版「白蛇伝」や、東宝の「白夫人の妖恋」で知られる「白蛇伝説」を大胆にアレンジした中米合作映画で、本作以上に素晴らしい仕上がりだ。
日本語版も作られると言うから、楽しみに待ちたい。

今回は東海龍王が水を支配しようとする話だったので、「ドラゴン・ウォーター」をチョイス。
紹興酒60mlと適量の烏龍茶を、氷を入れたタンブラーに注ぎ、軽くステアする。
二つの中国材料を使う、ザ・チャイニーズ・カクテル。
クセがある紹興酒は、苦手な人も多いだろうが、烏龍茶で割ることで、だいぶ飲みやすくなる。
まあ、独特の薬っぽさはやっぱ残るんだけど。

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ある人質 生還までの398日・・・・・評価額1700円
2021年03月02日 (火) | 編集 |
その地獄は、人間が作った。

心底恐ろしい映画だ。
内戦下のシリアでイスラム国(IS)系武装組織に拉致され、13ヶ月に渡り人質となったデンマーク人カメラマン、ダニエル・リューの奇跡の生還を描いた実話。
果てしない拷問、吊り上がる身代金、次々と殺されてゆく人質たち。
野蛮と絶望が支配する世界の中で、辛うじて生をつなぐダニエルと、彼の帰還のために必死の尽力を続ける家族たちの物語だ。
主人公のダニエルをエスベン・スメド、物語の後半で同じ施設に拘禁される、アメリカ人ジャーナリスのジェームズ・フォーリーをトビー・ケベルが演じる。
ダニエルの体験に基づき、プク・ダムスゴーが執筆したノンフィクション「ISの人質」を、アカデミー賞にノミネートされた「アフター・ウェディング」で知られる、アナス・トーマス・イェンセンが脚色。
監督は、オリジナル版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のニール・アルデン・オプレヴ。
人質交渉のプロ、アートゥア役で出演しているアナス・W・ベアテルセンが共同監督を務める。
主人公が生きて帰ったことは分かっていても、神経をとことんすり減らす、緊迫の138分だ。
※核心部分に触れています。

体操選手としてデンマーク代表に選ばれながら、怪我でキャリアを断たれたダニエル・リュー(エスベン・スメド)は、子供の頃からの夢だった写真家へと転身。
アシスタントとして渡ったソマリアで、戦争の中の日常を生きる人々の姿に魅了される。
彼が次の撮影地として選んだのが、当時アサド政権と反政府勢力との内戦が激化していたシリアだった。
自由シリア軍の許可を得て、問題のない取材のはずだったが現地の情勢が急変し、ダニエルは台頭しつつあったIS系武装組織によって拉致され、アレッポの施設に監禁されスパイと疑われて凄惨な拷問を受ける。
その頃、帰国予定の便にダニエルが乗っていないことを知った家族は、元軍人で戦地での誘拐交渉のプロ、アートゥア(アナス・W・ベアテルセン)にコンタクトをとる。
武装勢力との交渉の結果、要求された身代金は70万ドル。
それは、家族が用意できる金額を遥かに超えていた・・・・・


映画では最後に描かれているが、原作のノンフィクションは、生還したダニエルが、ジェームズ・フォーリーの葬儀のため、アメリカに向かうところから始まる。
私は本を読むまでダニエルのことは知らなかったが、フォーリーのことは覚えていた。
だから彼の名前が出てきた瞬間に、悪名高き英国出身のISの処刑人、ジハーディ・ジョンに喉を切り裂かれて殺される動画を思い出してしまった。
しかし、このフォーリーの存在こそが、ダニエルがこの世の地獄を生き抜くための、大きな力となるのである。

2011年にチェニジアで起きた“ジャスミン革命”から波及したアラブの春は、いくつかの国での体制変革につながった一方、別のいくつかの国では泥沼の内戦へと展開していった。
アサド大統領とバース党独裁政権が支配するシリアでは、いくつもの反政府勢力が政権に反旗を翻し、現在までに50万人近い犠牲者を出す内戦が勃発。
群雄割拠の状況の中で、2013年ごろから急速に勢力を拡大していったのが、いわゆるイスラム国(IS)である。
カリフ制国家建国を宣言し、中央アジアからアフリカまで、かつてのイスラム帝国の復活を目指した彼らの正体が、信じがたい残虐性を秘めた野蛮な集団だったのは、今では知らない者はいないだろう。
本作の主人公・ダニエルが、囚われの身になったのは、ちょうどISの拡大期の2013年5月。
彼がシリアに入ったのが、それまで国境の街を支配していた自由シリア軍が追い出され、ISと入れ替わった時期だったのは不運だった。

映画は、アレッポの牢獄で絶望の中を生きるダニエルと、故郷で彼の生還を信じ、身代金集めに奔走する家族、家族に雇われて解放交渉を担当するアートゥアの3トラック構成
アートゥアの交渉で、最初に要求された身代金は70万ドル。
デンマークはテロ組織と交渉しないという政策をとっているので、外務省は助言するだけ。
家族は自力で巨額の身代金を用意しなければならない。
なんとか25万ドルをかき集めるのだが、この金額で交渉しようとしたことが、事態を更に悪化させてしまう。
要求額よりもずっと低い金額を提示されたIS側は「侮辱された」として、金額を一気に200万ドルにまで引き上げてくるのだ。
もはや自力で何とかすることは出来ない額だが、身代金になることが分かっていて、募金を集めるのも違法。

法の目をかい潜り、他の名目でお金を集めようにも、あまり公にすることは出来ない。
なぜなら、ISは有名人を殺すことで名を挙げようとするので、ダニエルの名が世間に知られると、処刑リストに上がりやすくなるのだ。
ここで、日本でも大きな議論となった自己責任論が、世界共通のジレンマであり、イシューとして浮かび上がる
ダニエルようなジャーナリストたちがいなければ、世界は戦地の悲惨な状況を知ることが出来ないので、世論も動かない。
しかし人質となった彼らを助けるため身代金を払えば、それはテロ組織を利することになるのではないか。
いわゆるトロッコ問題にも通じる話だが、結局絶対の正解は無く答えは一人ひとりが出すしかない。
ダニエルにとって幸運だったのは、彼には最後まで諦めない愛情深い家族がいたことだ。
いつまで経っても自立しない弟に、厳しい言葉を投げかけていた姉が、いざとなったら一番必死に行動するあたり、劇映画としてグッとくる。

一方で、アレッポの牢獄で何の情報もなく、自暴自棄になっていたダニエルの心の救いとなったのが、8ヶ月に渡って同房となったジェームズ・フォーリーの存在だ。
トビー・ケベルが好演するフォーリーは、2012年に拉致され、この映画の時点ですでに一年近くも拘禁されていた。
ダニエル以上に絶望していてもおかしくない状況にも関わらず、フォーリーは冷静沈着でISの兵士たち相手にも諂った態度をとらず、わずかな食べ物も彼がリーダーシップを取ることで均等に分け与えられたという。
交渉人のアートゥアだけでなく、アメリカ政府もフォーリーの行方を追っていたが、対テロ組織の交渉はデンマーク以上に禁忌とされ、当時は家族が身代金を集めることすらも厳格に禁止されていた。
しかもアメリカ人の人質は、見せしめに殺せば全世界が報道する。
だからフォーリーも、アメリカが本格的にシリアに介入する前に、軍によって救出される以外、自分が助かる道はないことを知っていたはず。
「テロリストとは交渉しない」のはどの国も同じだが、実際の対応は国によって異なり、早々に身代金が支払われて出ていく人もいる。
同じ人質でも、ここで命運が分かれてゆくのである。

本作で「うーん」と思わざるを得なかったのが、人質の中で家族がいない人は解放されないという話。
なにしろ、身代金を払ってくれる相手がいない。
戦場に赴くジャーナリストは、危険な職業ゆえにあえて家族を作らない人も多いというが、そんなお一人さまがテロリストの手に落ちた場合、こちら側の交渉相手となり得るのは組織だろう。
だが、大手の通信社ほど、使用者責任があるので本当に危険な地域には自社の記者を送らない。
結果的に、本当になんのバックアップもないフリーランス中でも、家族のいない者が誰も助ける者がいないという一番最悪な状況に追い込まれる。
本作にも、家族がいないので(身代金交渉のための)生存確認すらされないというジャーナリストが出てくるが、こんなとこまでお一人さまに厳しい世の中を見せつけられると、自己責任論以前の問題として、独り者としてはちょっとショックだ。

2021年になっても、シリア内戦は続いている。
さすがにISはあまりの残虐性に、全ての内戦当事者から敵とされ、急速にその規模は縮小していったが、人質のほとんどは殺されたか行方不明。
フォーリーを殺したジハーディ・ジョンが、一年後の2015年には日本人会社経営者の湯川遥菜とジャーナリストの後藤健二を殺害したのはいまだ記憶に新しい。
そのジハーディ・ジョンも、今度は米軍の空爆で死んだ。
復讐の連鎖は変わらず続いていて、トロッコ問題は今も世界中で人々を悩ませている。
人間は、どこまで残虐になれるのだろう。
 
あまりにも緊張して喉が渇く映画だったので、観終わってビールが無性に飲みたくなった。
今回はデンマークビールの代表的銘柄「カールスバーグ」をチョイス。
風味豊かな辛口のピルスナー・ラガー。
日本人好みの味で、国内ではサントリーがライセンス生産しているので、手ごろな価格で飲めるのも嬉しい。
いつでも美味しいものを自由に食べたり飲んだりできる、平和に感謝を感じる作品であった。

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ショートレビュー「あの頃。・・・・・評価額1650円」
2021年02月27日 (土) | 編集 |
あの頃、君を追いかけた。

これはいい映画だったなあ。
主人公は、松坂桃李演じる半端者のバンドマン・劔樹人。
同名の原作者による、ほぼ自伝的な物語なのだと言う。
バイトに明け暮れた結果、練習不足でバンド活動にも挫折し、どん底の劔を救ったのが、当時人気絶頂だったハロプロのアイドル・松浦亜弥だった。
ある時、友人に勧められて彼女の「♡桃色片想い♡」のMVに出会い、一気に夢中になる。
そして、地元大阪でハロプロ推しの活動してるグループと繋がり、小さなハコでファンイベントを開催したりして、オタクな青春を謳歌するのだ。

私は世代的にもかなりズレいているし、ハロプロに特に思い入れはない。
「モーニング娘。」が出てきたのを見て、「あー、おニャン子クラブの平成版か」と思ったクチだ。
しかし、この映画の登場人物にはどっぷりと感情移入した。
たとえアイドルじゃなかったとしても、青春時代に何かを大好きになって、同じものをとことん愛する“仲間”がいた人にはたまらない話だろう。
その何かに出会った瞬間、今までのうだつの上がらない生活は過去のものとなり、世界はキラキラとした輝きに満ちていることに気づくのである。
本作の劔も、ハロプロによって人生の閉塞から一気に飛び出す。
推しの良さが分からない人たちからは「キモオタ」なんて蔑まれたりもするけど、本人は気にならない。

今泉力哉監督といえば、ラブストーリーの名手だが、本作には恋愛要素はほぼゼロ。
いい歳してアイドルに夢中になり、その後バンド活動まではじめちゃう六人のおっさんたち、その名も”恋愛研究会。”の輝かしくもおバカな青春。
男女の心の機微は出てこないが、人生のある時期だけに訪れる、特別な時間を経験する登場人物の高揚感、「好き」が詰まった黄金時代は共感力たっぷりに描かれている。
劔が松浦亜弥の握手会に当選して、会いに行く演出にびっくり。
まさか本人?それともCG?と不思議だったが、ハロプロで彼女の後輩にあたる、山崎夢羽という人だそう。
いや〜、似た雰囲気の人がいたものだ。

しかし愛する対象が人間であれば、その熱狂は決して永遠には続かない。
アイドルはいつかは卒業し、引退してゆく。
松浦亜弥がいつの間にか三児の母になっているように、青春には必ず終わりがくる。
ハロプロさえあれば幸せだった劔の生活にも、少しずつ成長という名の変化が訪れる。
東京に引っ越して再び音楽を初め、たまに大阪でやっている恋愛研究会。のイベントも、だんだんハロプロとは関係なくなっている。
やがて変わってゆくもの、変わらないもの、青春の不滅と有滅こそが、物語の核心になってくるのだ。

松坂桃李も新境地だが、オタク仲間のコズミン役の仲野太賀が、終盤全てをさらってゆく。
ある理由から人生の有滅を思い知らされた彼の推しが、物語の終盤にハロプロから二次元のアニメキャラにシフトしてるのが象徴的。
人間と違って、歳を取らない二次元キャラは不滅の存在だからだ。
青春の煌めきは短く、消える時は儚い。
でもいつになっても大好きな何かがあれば、人生は輝ける。
「今が一番楽しい!」そう言い切れちゃう、オタクたちの青春と成長に涙。

ところで、コズミンのキャラがなんか既視感があったんだけど、分かった。
こいつのイラッとくるのに憎めないウザさは、まるで実写版の我妻善逸だ(笑
もちろん推しは禰豆子ちゃんです!

今回はハロプロアイドルのイメージで、「フェアリーランド~おとぎの国~」をチョイス。
ミドリ(もしくはメロン・リキュール)20ml、ココナッツ・リキュール15ml、ブラック・サンブーカ10ml、ブルー・キュラソー5ml、オレンジ・ジュース2tspをシェイクし、クラッシュドアイスを詰めたグラスに注ぐ。
最後にお好みでフルーツを飾って完成。
甘口で飲みやすいが、アルコール度数は25°以上ある強いカクテル。
パステルグリーンの可愛い見た目にごまかされると、痛い目に合う。

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ショートレビュー「樹海村・・・・・評価額1600円」
2021年02月22日 (月) | 編集 |
日本には、恐ろしいムラがある。

清水崇監督による、都市伝説に無理やり怪談話をくっ付ける「村」シリーズ第二弾。
前作の「犬鳴村」は、くっ付けた要素がゴチャゴチャしちゃって何がどう怖いのか分からず、いろいろ残念な出来だったが、今回はなかなかの仕上がり。
大谷凜香が、YouTuber役で再登場しているなど共通項もあるが、ストーリー的には完全に独立してるので、前作を観ている必要はない。
今回モチーフになるのは、自殺の名所として知られる富士の樹海に、「樹海から出られなくなった人々が暮らす村がある」という都市伝説。
この村で作られた、“コトリバコ”なる呪いの箱と関わってしまった若者たちを、超自然的な恐怖が襲う。
物語の軸となるのは、山田杏奈と山口まゆが演じる姉妹で、どうやら親の代から村と因縁があるらしい。

現在に至るまで清水崇の代表作といえば、2000年に発売されたビデオ映画「呪怨」だろう。
ある家に秘められた呪いが、家に関わった人々にまるでウィルスのように広まってゆく物語は、一見すると幽霊屋敷ものという古典的なジャンル。
だが、一度でも家に足を踏み入れれば絶対に逃れられないという不条理かつ禍々しい恐怖は、誰も観たことの無い新しいタイプのホラーだった。
続編の「呪怨2」共々ビデオの販売は全く振るわなかったそうだが、後から「とんでもなく怖い」と口コミで話題が広がり、2003年に映画版「呪怨」「呪怨2」としてセルフリメイク。
さらにハリウッド版までセルフリメイクし、2006年にはハリウッド版の続編「呪怨 パンデミック」で、実写の日本人監督として初の全米ナンバー1の偉業を成し遂げるなど、清水崇といえばイコール「呪怨」である。
実際、オリジナルの「呪怨」は、1998年に公開された中田秀夫監督の「リング」と共に、世界に影響を与えたJホラーの代表作であることに異論は出ないだろう。

ただ、「呪怨」は名声をもたらした反面、呪いでもあったと思う。
ホラーを中心に様々なタイプの作品にトライしてきたが、興行成績はともかく、どの作品も「呪怨」の評価を超えられない。
ところが、本作はオリジナルの「呪怨」2部作以来、清水崇監督作品では一番面白い。
まるで水を得た魚の如く、ホラー演出が全編に渡って冴えわたり、禍々しく作品世界を覆い尽くしている。
本作で恐怖を運ぶ”コトリバコ”には、人べらしで樹海に捨てられ、出られなくなった亡者たちの“指”が詰められている。
この世とあの世の中間に存在する村に囚われた人々は、指を切り落としてコトリバコに収めることで、正式な村人となるのだ。
逆にいえば指を落とされたら、もう逃れられない。
コトリバコはいわば新たな村人のリクルート装置として、少しでも村と関わりを持った人間を狙う。

そう、本作は清水崇の原点回帰。
都市の一角にある呪いの家が、富士の樹海の呪いの村に変わった「呪怨」のスケールアップ版と言える構造を持つ。
だから、描かれる恐怖の本質は変わらない。
一度関わってしまったら、絶対に逃れられないという不条理さだ。
そもそもコトリバコがなぜあそこにあったのかとか、なぜ指を切るのかとか、設定はかなりアバウトだが、もともと不条理な話だから気にならない。
そして本作を「呪怨」とは似て非なるものにしているのが、森に潜む霊というフォークロアな存在を表現した映像的な未見性だ。
影が襲ってくる描写も面白いが、これは昔「スウィートホーム」でもあった。
しかし、森と一体化した樹木人間(?)の描写は、CGの親和性も高く新しいイメージを生み出している。
Jホラーは「呪怨」「リング」のインパクトがあまりにも強かったため、恐怖演出がワンパターン化していたが、ここへ来てNetflixのドラマ版「呪怨」なども含め、不条理の恐怖はそのままに、Jホラー2.0とも言うべき演出の方向性が見えてきたのは興味深い。
見事な復活を遂げた清水崇が、「犬鳴」「樹海」ときて次はどこの“ムラ”へいくのか、次回作を楽しみに待ちたい。

今回は富士の北麓、標高1000メートルにある富士桜高原麦酒の「ヴァイツェン」をチョイス。
オクトーバフェストなどのイベントでも、ドイツビールの銘柄と並んで出店しているが、非常にクオリテイの高いクラフトビールだ。
ヴァイツェンは50%以上が小麦麦芽となるエールで、本場ものに引け取らないフルーティーなテイストが特徴。
まだしばらくは自粛生活が続きそうではあるが、願わくば桜の季節に花見をしながら飲みたい。

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すばらしき世界・・・・・評価額1700円
2021年02月17日 (水) | 編集 |
この世界は、生きるに値するか。

2016年の「永い言い訳」以来5年ぶりの新作は、一貫してオリジナル作品を手掛けてきた西川美和監督にとって初の原作もの。
実在の人物をモデルに執筆された、佐木隆三の小説「身分帳」を映画化した作品だ。
「身分帳」とは聴き慣れない言葉だが、刑務所に収監した囚人の罪状から経歴、人となりまで全てを記載したノートのこと。
役所広司が演じる主人公・三上正夫は、殺人の罪で13年服役し、出所したばかりだが、それ以前の人生も大半を刑務所で過ごしてきた元極道。
これは「今度こそはカタギぞ」と誓った主人公が、令和の時代に浦島太郎状態で放り出され、生きて行ける場所を見つけるまでの物語だ。
初の原作ものと言っても、作家のカラーは一ミリもブレておらず、見事な仕上がり。
三上を取材しようとするTVディレクターを仲野太賀、馴染みとなるスーパーの店長を六角精児、役所の担当職員を北村有起哉、見元引受人となる弁護士夫婦を橋爪功と梶芽衣子が演じる。

極寒の旭川刑務所から、一人の男が刑期を終えて釈放された。
彼の名は三上正夫(役所広司)。
チンピラを刺殺し、殺人の罪で13年の刑に服していたが、児童養護施設を飛び出して以来、様々な犯罪を繰り返してきた元極道だ。
身元引き受け人の庄司弁護士(橋爪功)を訪ねた三上は、今度こそカタギとして生きることを決意し、東京のアパートに暮らしはじめるが、世間の風は反社に厳しい。
同じ頃、テレビの仕事を辞め小説家を志す津乃田(仲野太賀)のもとに、プロデューサーの吉澤(長澤まさみ)から三上を取材しないかと誘いが入る。
三上は身の上を記した「身分帳」を大量に吉澤に送りつけ、自分を取材する代わりに行方不明の母親を探して欲しいと依頼して来たのだ。
吉澤は、殺人という重罪を犯した男が心を入れ替えて社会復帰する、感動的なドキュメンタリー番組の制作を目論んでいた。
後日、三上と会った津乃田は、久しぶりのシャバで四苦八苦しながら、生きる道を探す彼の姿を取材しはじめるのだが・・・・


西川美和監督作品の主人公は、いつもどこかちょっと捻くれていて、世間一般の正道から微妙に外れている。
言ってみれば、全員“ちょい悪(ワル)”なのだ。
28歳で発表したデビュー作「蛇イチゴ」では言葉巧みなペテン師だったし、「ディア・ドクター」では偽医者、「夢売るふたり」では夫婦の結婚詐欺師。
近作の「永い言い訳」では、不倫相手との密会中に妻を亡くした最悪のダメ夫が主人公だった。
彼らは社会が規範とする正しいこと、善なることに沿って生きてる訳ではない。
むしろ本作の三上のように、正道から外れた自分たちの生き方を否定しない、懲りない人々の物語で、そのダメっぷりが実に人間くさいのである。

殺人の罪で刑務所に入っていた元極道が、出所してみたら世界がすっかり変わって、ヤクザ者の居場所は世間から無くなっていた・・・という話は、偶然だろうが、先日公開された藤井道人監督の「ヤクザと家族 The Family」と一緒。
刑期もこちらが13年であちらが14年とほぼ同じで、あちらでバリバリの極道だった北村有起哉が、こちらでは反社に厳しいことを言う公務員になっているのが可笑しい。
罪にとわれた主人公が刑務所に入っている間に、暴対条例がどんどん施行されて、更生したくても更生しにくい世の中になっている現状も、どちらの作品でも綿密に描かれている。
主人公が自分の罪に対して真摯に反省しておらず、心はカタギになろうとしていないのも同じだ。
ただ、モチーフは同じでもアプローチは真逆。
ヤクザを大きな疑似家族という括りで捉え、ジャンル映画へのレクイエムでもあったあの映画とは違い、西川美和はとことん三上という個人の不器用な生き様に拘る。
彼はもともと一匹狼で、一応昔のお仲間はいるものの、「ヤクザと家族 The Family」の綾野剛のように、特定の組織の一員だった訳ではないのだ。

シャバに戻り、新たな人生を歩み出したアウトローは、言わば日常に投げ込まれた異物だ。
三上は、今までのヤクザ的な生き方と、カタギの真面目な生き方の間で揺れ動くが、罪は犯したものの、自分の生き方が間違っていたとは思っていない。
チンピラを殺したのも正当防衛だと信じているし、十数回も滅多刺しにしたのも、生きるか死ぬかの局面では仕方がなかったと考えている。
もともと竹を割った様に真っ直ぐな性格で、困っている人がいれば助け、親切にされれば恩を返そうとする。
ただ一つの問題は、彼が一番得意で生き生きするのは、暴力を振るう時だということなのだ。
現在のカタギの社会では、暴力はイコール悪であり、問題解決の手段として暴力を使った瞬間、どんな正義も説得力を失う。

それでは明らかに理不尽なことが起こっていても、耐え忍ぶことが常に正しいことをなのか。
喧嘩屋を自認する三上には、“正当な暴力”というものが認められない社会が、どうしても窮屈で受け入れられないのである。
異物である三上の存在そのものが現状へのアンチテーゼとなり、周りの人間、特にことなかれ主義者の津乃田の価値観を揺さぶってゆく。
彼はいわば、この社会を波風立てずに生きているごく普通の一般人の代表で、三上のような生き方を否定しつつも、どこか現状にモヤモヤとした葛藤を抱えている。
津乃田と三上は凹凸のような関係となり、やがて三上の影響を受けた津乃田、即ち観客の私たちの中でジンテーゼが生まれるという物語の仕組み。

無頼漢の三上は生活保護を申請することにプライドを傷付けられ、自動車免許の再取得に四苦八苦し、昔の仲間を頼ろうにも、既に組織は暴対法により死に体となっていることを知る。
初老ヤクザの再出発はヘビーなシチュエーションの連続だが、西川作品らしいユーモアがちょうどいい箸休め。
津乃田が三上によって変化していくように、三上自身も周りの影響を受けて変わってゆく。
暴対条例が元極道を締め上げてゆく一方で、身元引き受け人の弁護士夫婦をはじめ、町内会長でもあるスーパーの店長や、三上のために免許取得に補助金を出せないか掛け合う公務員など、身近な人々の善意が、今までその筋の人脈しか知らなかった三上に、人間同士の繋がりを実感させてゆく。
とにかく喧嘩っ早く、口より先に手が出ていた三上が、自分のために尽くしてくれた人々を思い出し、グッと拳を握りしめる描写は役所広司の名演もあって本作の白眉だ。
今まま自分だけのことを考えて生きて来た男は、ついに他人を裏切りたくないという境地まで行き着くのである。

映画は、不器用な男の葛藤に観客を感情移入させつつ、彼の周りにある厳しくて残酷だが、同時に優しく暖かい世界を対比する。
コロナ禍で人と人との繋がりが一層クローズアップされる今、非常にタイムリーな作品だと思う。
とても面白く、好きな作品なのだが、最後だけはちょっと残念だった。
まあ物語の帰結する先としては、一番収まりがいいのだろうが、この世知辛い社会で少しだけ改心したアウトローがどんな風に生きていくのか、少なくとも想像の余地は残しておいて欲しかったな。

今回は、三上が服役していた旭川の地酒、髙高砂酒造の「國士無双 純米酒」をチョイス。
前身の小檜山酒造から数えると、創業120年をこえる北海道屈指の老舗酒蔵。
國士無双は同社が1975年に発売し、日本酒業界に辛口ブームを巻き起こしたとされる銘柄で、ライバルの男山と共に、旭川を代表する地酒だ。
純米酒は比較的リーズナブルで、フルーティでスッキリした辛口はいかにも北国の酒。
北海道の山海の幸と共にいただきたい。

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