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酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
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ショートレビュー「のぼる小寺さん・・・・・評価額1650円」
2020年07月09日 (木) | 編集 |
「のぼる」は気持ちいい。

不思議な浮遊感を持つ映画だ。
みんな彼女が気になって、ついつい上を見上げてしまう。
たくさんの視線の先にいるのは、ボルダリング少女の小寺さん
進路希望に「クライマー」と書き、ガチでプロクライマーを目指しているほどのボルダリング好き。
毎日ダブダブのTシャツを着て、高校の体育館にそびえるクライミングウォールに挑んでいる。
小寺さん自身は、物語の最初から最後までほとんど変わらない。
しかし実質的な主人公である同級生男子の近藤をはじめ、彼女のまわりにいる人たちは、のぼり続ける彼女から目が離せなくなる

吉田玲子の端正なシナリオを得て、傑作「ロボコン」の古厩智之監督が思春期の登場人物たちを味わい深く描写する。
卓球部に所属する近藤は、卓球台のすぐそばに建つクライミングウォールを登る小寺さんに見惚れてしまう。
中学の時いじめられていて彼女以外に友達がいなかった四条は、今ではクライミング部の仲間として小寺さんを支える。
写真が好きなありかは、どうしても小寺さんに惹かれて、撮らずにはいられない。
ちょっと遊んでいて、クラスでも浮いている梨乃も、なぜか小寺さんとは気が合い、彼女を応援する様になる。
これは「見ること」に関する映画で、視線の誘導の丁寧な演出が特徴的。
小寺さんのピュアな情熱を見ているうちに、まわりの人たちもいつしか自分を振り返り、ドーンと背中を押されている。

この映画の小寺さんの役割は、本人のあずかり知らないところで、周囲に影響を与えているという点で、一度も姿を見せず存在感だけで学園をザワつかせた「桐島、部活やめるってよ」の桐島に近い。
しかし学園のヒエラルキーという複雑な社会性がベースにあり、不在の桐島がある種のマクガフィンとして皆を右往左往させたあの映画と比べると、本作の世界はパーソナルで平和だ。
頑張っている人だけが持つ吸引力によって小寺さんはまわりの人の目を惹きつけ、誰の中にも眠っている青春の熱情に火をつけるだけ。
それとて本人が意識してやっている訳ではないのだ。
だからこの映画は、小寺さんを作劇上の便利なアイテムであるマクガフィンの様には描かない。
最後の最後には、彼女自身にも等身大のティーンの少女として、小さな心情の変化を起こす。
この辺りが、画面に一切登場せずシンボルのままだった桐島とは違うところだ。

しかし、上映前の舞台挨拶動画(?)で監督も言ってたが、コロナ禍の今観ると以前の私たちはなんと美しい世界に暮らしていたことか。
いつか元の世界が戻ってきて、人々が再び思いっきり活動する時のためにも、せめて今できることを頑張ろうと思わせてくれる、元気が出る映画。
まるで若手実力派俳優の見本市の様だった「桐島」ほど多くはないが、こちらも若い俳優たちが素晴らしい。
役柄通りの吸引力を持つ工藤遥と、吸引されちゃう伊藤健太郎の爽やかなカップルにほっこり。
小寺さんを軸として、色々なタイプの登場人物が配されていて、ほとんどの観客が誰かには感情移入できるように工夫されている。
しかし、こんな良い映画に客が入ってないのが悲しいぞ。
みんな映画館で、のぼる小寺さんを見つめよう。

今回は青い空に向かってのぼる小寺さんのイメージで、「ビッグ・ブルー・スカイ」をチョイス。
ライト・ラム30ml、ココナッツ・ラム20ml、パイナップル・ラム20ml、ブルー・キュラソー20ml、パイナップル・ジュース120ml、クラッシュド・アイス1カップをパワーブレンダーで混ぜ混ぜ。
大きめのグラスに注ぎ、最後にマラスキーノ・チェリーを飾る。
パステル調の美しい水色のカクテルで、甘酸っぱい青春の味わいを演出している。

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はちどり・・・・・評価額1700円
2020年07月06日 (月) | 編集 |
はちどりのささやき。

四半世紀前の高度成長期のソウルを舞台に、中学二年生の少女の思春期の揺れ動く心を描く、リリカルな青春ストーリー
両親はあまり自分に関心がなく、暴力的な兄には虐められている。
学校には馴染めず、趣味の漫画を書いたり、ボーイフレンドとデートしたり、他校の親友と遊びに行ったりの平凡な日々。
そんなある日、通っていた漢文塾で、自分の声に耳を傾けてくれる新任の先生と出会ったことをきっかけに、彼女は少しずつ大人へと近づいてゆく。
監督・脚本は韓国の大学の映画学科を卒業後、米国に渡りコロンビア大学院で学んだキム・ボラ。
少女の半径10メートルを描く極めてパーソナルな視点と、時代と社会を俯瞰する視点が巧みに融合され、デビュー作とは思えない完成度の高さだ。
韓国映画賞の最高峰、青龍映画賞では、あの「パラサイト 半地下の家族」を抑えて脚本賞に輝いたほか、世界各国の映画賞でも高く評価されている。

1994年、ソウル。
中学二年生となったウニ(パク・ジフ)は、両親と兄姉と共に鳥の巣箱のような大団地に暮らしている。
学校の授業にはあまり身が入らないが、放課後は最近できたボーイフレンドとデートしたり、通っている漢文塾の友達と遊びに行ったり、それなりに楽しい日々。
商店街で餅屋を営む両親は、朝早くから仕事に追われ、子供たちに向き合う時間をあまり持てない。
ウニは、両親は自分には関心がないと思っている。
ある日、漢文塾に新任のヨンジ先生(キム・セビョク)がやってくる。
物腰柔らかで知的な大人の女性。
ウニは自分の言葉に耳を傾け、アドバイスをくれるヨンジ先生に惹かれてゆく。
ところが、ある朝学校へ行くと、漢江にかかる聖水大橋が崩落したと言うニュースが駆け巡っていた。
事故が起こったのは、姉の乗るバスが橋に差し掛かる時間帯だった・・・・


タイトルの「はちどり」は不思議な生き物だ。
小指ほどの大きさで、ブーンとささやく様な羽音を響かせながら、高速で羽ばたいてホバリングし、細いクチバシを伸ばして花の蜜を吸う。
米国に住んでいた頃、庭の木に花が咲くとよく集まって来ていたが、名前の通り一見すると鳥なのか蜂なのかわからない、あいのこの様な生物。
主人公のウニもまた、大人でもなく子供でもない。
右も左も分からない新入生の一年生でもなく、受験に気をもむ三年生でもない、曖昧な中間の存在だ。

これは思春期の少女が、自分と家族を含めた社会との関係を発見してゆく物語。
彼女の見ている世界は、まだ狭くて浅い。
基本的にウニの一人称で語られる物語なので、彼女が知らないことは描かれない。
物語を通して、彼女が「知ってゆくこと」で、世界がどんどん変わってゆくのである。
ストーリーテリングは韓国映画というよりも、むしろ監督が学んだアメリカのインディーズ映画を思わせる。
冒頭、母親からお使いを頼まれたウニが帰ってくると、母親が玄関を開けてくれないと言う描写が本作の進む先を示唆する。
実はこれ、ウニの勘違い。
彼女の住む団地は全ての階の作りが同じで、ボーッとしたウニが階を間違えて他人の留守宅に入ろうとしていたのだ。
しかし、彼女自身は扉を叩きながら「母親が意地悪している」と思っていただろう。
この様に「◯◯だ」と思っていたことに、別の真実が見えてくることで、少女の世界は広がり、深化して行く。

餅屋を切り盛りする両親は、いつも疲れていてあまり子供たちのことをかまってくれない。
父親は、兄には生徒会長になって名門ソウル大へ行けと言うが、ウニには何も言わない。
両親に関心を持たれていないと感じている彼女を、複雑な世界へと導くメンターとなるのが、漢文塾のヨンジ先生だ。
兄が志望するソウル大に学び、穏やかな雰囲気を纏った大人の女性。
彼女はウニを気にかけて、ちょっとした悩みの聞き手となってくれる。
「相識満天下 知心能幾人(顔を知ってる人は世間に沢山いる、でも心の中を知っているのは何人?)」
古の禅の言葉を引用しながら、ヨンジ先生はこう問いかける。
この言葉通り、ウニは日常の様々な出来事を通して、移ろいゆく人の心に翻弄され、社会の理を学んでゆく。

端正な顔立ちのウニに憧れている後輩の女の子は、ウニのことが好きだと告白するが、しばらくするとよそよそしく、彼女を避ける様になる。
「私のことが好きだと言ったでしょ?」とウニが聞くと、後輩は「それは先学期のことです」と言い返す。
ところがウニはウニで、120日間付き合ったボーイフレンドと別れると、よりを戻そうとする彼に「あなたのことが好きだったことは一度もない」と言い放つのである。
人の心は変わり、永遠のものなど何処にもない。
ウニの耳の下にしこりが見つかり、手術して取り除くことになった時、自分に関心がないと思っていた父親が、心配して涙を流して悲しむ姿を見る。
自分を裏切ったと思っていた友達が、その時に感じていた本当の気持ちを知る。
知っていると思っていたことを、実は知らなかった

そして、ウニの心に、世界を変えるほどの大きな衝撃を与えるのが1994年10月21日に起こった聖水大橋崩落事故だ。
漢江にかかる巨大な橋は、手抜き工事によってあっけなく崩れ落ち、巻き込まれた路線バスの乗客ら32人が亡くなる大惨事となった。
この事故によって、初めて大切な人を失ったウニは、この世界の脆さと儚さを知るのである。
基本的には本作は一人称視点で描かれ、ウニの心に寄り添っているが、それゆえに劇中で起こることは必ずしも幼い主人公の心中で咀嚼しきれない。
しかしそのもどかしさが、普遍的な青春の成長痛となって、説得力たっぷりに語りかけてくるのである。
大きな喪失を経て、力強く成長したウニはどんな女性になるのだろう。
たぶんに自伝的な要素はあるのだろうが、キム・ボラ監督はウニは自分そのものではないと語ってる。
ならば、物語としての続きが見たい。
例えばグレタ・ガーウィクには、「フランシス・ハ」「レディ・バード」と言う、シリーズではないが共に自分の分身の様なキャラクターを描く作品が複数ある。
高校生となって青春を謳歌するウニ、社会人として葛藤するウニ、リアリティたっぷりだからこそ、彼女の未来へ想像力が膨らんでゆく。

それにしても、たった四半世紀前だと言うのに、この時代感。
たぶんこの間に韓国社会の中で「女性であること」の意味が大きく変わったのだろう。
本作を観て、どうしても思い出してしまったのが、これも映画化される大ベストセラー小説「82年生まれ、キム・ジヨン」のこと。
心を病んだ33歳のキム・ジヨンが夫と共に病院を訪れ、2015年のソウルを起点に精神科医が彼女の人生を紐解いて行く。
そして彼女が心のバランスを崩した要因として、長年にわたる女性の置かれた理不尽な社会状況が浮かび上がってくる。
81年生まれのキム・ボラ監督もほぼ同世代。
実際本作の描写には、「82年生まれ、キム・ジヨン」を思わせる部分が多々ある。
兄に殴られたと言うウニに、ヨンジ先生は言う。
「殴られたら、殴られたままにしないで」と。
この四半世紀の間、韓国の少女たちは確かにそのままにはしなかったのだろうな。

今回はタイトルから「ハミングバード」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、ココナッツ・クリーム30ml、コーヒー・リキュール 15ml、バナナ1/3〜1/2、イチゴ3〜4個、クラッシュド・アイス2/3カップをパワーブレンダーでミックス。
ハリケーングラスに注ぎ入れ、最後にスライス・レモンをグラスのフチに飾って完成。
クリーミーでフルーティー。
シェイク感覚で楽しめるトロピカルなカクテルだ。

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ハニーランド 永遠の谷・・・・・評価額1750円
2020年07月02日 (木) | 編集 |
人と蜂、自然の作り出すハーモニー。

これは凄い映画だ。
長い歴史を持つ米国アカデミー賞で、史上初めて長編ドキュメンタリー賞と国際映画賞(旧・外国語映画賞)にダブルノミネートされた作品。
リューボ・ステファノとタマラ・コテフスカ両監督が生み出した、「ハニーランド 永遠の谷」の舞台となるのは、バルカン半島にある旧ユーゴスラビアの国、北マケドニアのほぼ中央部。
人里離れた山奥の谷の電気も水道もない古びた家に、自然養蜂家の中年女性ハティツェ・ムラトヴァが年老いて寝たきりとなった盲目の母親とひっそりと暮らしている。
小さな村に暮らすのは二人だけ。
自宅の庭や自然の岩棚などにある蜜蜂の巣から蜂蜜をとり、首都のスコピエに売りに行くことで生計を立てている。
彼女のポリシーは、蜂から半分だけ蜜をもらって半分は残す
これが自然の恩恵をずっと維持するための、無理のないラインなのだ。

ところがある時、ずっと空き家だった隣の家に、トレーラーを引っ張ってトルコ人の大家族が引っ越してくる。
孤独だった生活が、動物や子供たちの喧騒で突然賑やかになり、ハティツェも嬉しそう。
酪農を営む彼らは蜂蜜が良いお金になるのを知ると、見よう見まねで養蜂に挑戦をはじめる。
初めのうちは、ベテランのハティツェの助言に従って堅実にやっていたのだが、卸売業者に急かされて無謀な取引契約を結んだあたりから徐々に様子が変わってくる。
目先の金のために巣から蜂蜜を全部とってしまったら、当然蜂は飢える。
すると蜂は蜜を求めて、近くの別の巣を襲うようになり、蜂同士の殺し合いで数が減ってゆく。
さらに、牧草を増やすために谷に生えている自然の植生を燃やせば、蜂が集める蜜の元が無くなってしまう。
やがて無理な養蜂と生態系への無知は、彼らの蜂だけでなくハティツェが大切に守ってきた谷の自然に重大な影響を与えはじめる。
色んなネイチャードキュメンタリーを観てきたが、美しく調和した風景を壊すのは、いつだって人間の欲望なのだ。

本作の最大の特徴は、ドキュメンタリー映画でありながら劇映画の様な綺麗な三幕構成のストーリーがあり、非常にドラマチックなこと。
アカデミー賞では「パラサイト 半地下の家族」旋風に敗れはしたものの、長編ドキュメンタリー部門だけでなく、国際映画賞にもノミネートされたのはこの辺りが評価されたのだろう。
安易なナレーションには頼らず、時にカメラは荘厳な自然の景観を映し出し、時にハティツェの人生が刻まれた味わい深い表情を描写する。
おそらく照明などはほとんど使われておらず、光源も蝋燭などそこにあるものだけだろう。
本作のフィルムメーカーたちは、実に3年の歳月を費やし、撮影されたフッテージは400時間に及ぶと言う。
この膨大な映像のバリエーションがあってこそ、まるで劇映画のような山あり谷ありのストーリーを、紡ぎ出すことが出来たのだと思う。

時には山羊のように危険な崖を登り、少しずつ蜂蜜を採取するハティツェの生活は、一見すると都市に住む私たちとは、まるでかけ離れているようだ。
しかしスコピエに出た時に髪染めを買って、村には誰もいないのにお洒落していたり、亡き父親の考えで結婚できなかった過去を振り返ったりするシーンに、生身の女性の人生のドラマがリアリティたっぷりに浮かび上がってくる。
彼女の直面している状況は孤独で厳しいが、永遠に明けない冬はない。
一部は破壊されてしまった谷の自然も、やがて自己修復力によって、元どおりになるだろう。
国の歴史よりもずっと古くから、この土地で繰り返されてきたであろう、人間を含めた生と死のサイクルがこの映画からは見えてくる。
人間と蜂と、谷の自然を見つめることで見えてくる、命のストーリー。
驚くべき傑作である。

今回は、高知県の菊水酒造の作る蜂蜜酒のミード、「シークレット・オブ・クレオパトラ」をチョイス。
人類が飲んだ最初の酒は、木の洞などにたまった蜂蜜と雨水などが混じり合い、自然発酵して出来たものと考えられている。
ミードはあらゆるアルコール文化の源流なのだ。
銘柄はミードが古代エジプトの女王、クレオパトラの愛飲酒だっという話から。
蜂蜜が花の種類によって味が異なる様に、ミードもまた蜂蜜によって大きく味わいが違ってくるが、こちらはレンゲ蜂蜜を使用。
蜂蜜を使っているといっても甘さは控えめで、CPも高いのでデザートワイン感覚で普段使い出来る。

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ショートレビュー「ソニック・ザ・ムービー・・・・・評価額1600円」
2020年06月28日 (日) | 編集 |
超音速ヒーローの誕生!

任天堂がマリオにピカチュウなら、ライバルのセガには宇宙から来た青い高速ハリネズミ、“ソニック・ザ・ヘッジホッグ”がいる。
1991年、懐かしのメガドライブ版でのデビュー以来30年。
セガを代表するゲームキャラクター、アニメーションキャラクターとして人気を博してきたソニックが、満を侍して映画に登場。
特にキャラクター人気の高いアメリカでは、コロナ禍前の2月に公開され、昨年の「名探偵ピカチュウ」を超えてゲーム原作の映画の興業記録を作った作品だ。

子供の頃からその秘められた“スーパーパワー”を敵に狙われていたソニックは、地球へと逃されてモンタナ州の田舎町、グリーンヒルで人間から隠れながらひっそり暮らしている。
しかしある時、孤独に耐えかねて”スーパーパワー”を発動してしまったところ、ジム・キャリーが怪演するマッドサイエンティストのドクター・ロボトニック(エッグマン)に見つかってしまう。
ちなみにグリーンヒルとはもともとゲームのファーストレベルのステージ名だが、南国の楽園風のデザインで映画版のソニックが生まれた星に近い。
もはや安住の地では無くなった地球を離れ、別の惑星へと脱出するために必要なワープリングを取り戻すため、ソニックはジェームズ・マースデン演じる“ドーナツ卿”こと保安官のトムとバディを組み、大都会サンフランシスコを目指すことになる。

誰もが楽しめるファミリームービーの主人公は、誰もが共感できる葛藤を抱えていなければならない。
本作の場合は「孤独」という分かりやすさ。
グリーンヒルでは、周りに多くの人間が暮らし、みな友達や愛する人がいる。
だが逃げ続けるソニックは、誰からも知られず、誰からも愛されず、たった一人で生きていかねばならない境遇。
初めて姿を明かしたトムとの出会いと冒険を通して、ソニックは孤独を脱却するのと同時に、守らねばならない仲間を得るのだ。
逃げるのをやめて、自分の力で生きてゆく自由を掴み取る筋立ては、1ミリも定石を外さないので、終始安心して観ていられる。
居場所を巡るソニックの選択が、トムの人生の決断に影響を与えるあたりも、ドラマ的な深みまでは行かないがよく考えられている。

昨年5月のティザートレイラー発表の時点では、目が小さくて人間臭い四頭身プロポーションだったソニックのデザインも、不評の嵐を受けて突貫工事で過去のゲームやアニメーション、ディズニーの「シュガー・ラッシュ」にゲスト出演した時を思わせる三頭身キャラクターに修正され、馴染みの姿に。
トレードマークの赤い靴を手に入れるエピソードも出てくる。
最初のデザインは、実写映画ならではの新しいイメージを生み出そうとする意欲の現れだったと思うが、あのまんまのソニックだったら、正直ヒットしなかっただろうなあ。
まあこれは本作に限ったことじゃないんだけど、雛形のあるキャラクターのデザインはまことに難しい。
ソニックの人気と知名度が、生まれ故郷の日本よりも遥かに高いアメリカでの映画化は、相当に難しかったことだろう。

しかし、修正されたソニックも十分魅力的なのだが、本作のMVPは間違いなく久々登場のジム・キャリーだ。
嬉々として嫌味な悪役を演じ、その漫画チックで毒のあるユーモアでCGのキャラすら喰ってしまうのだから素晴らしい。
彼の繰り出すギミック満載のメカとのゲームライクなバトルも楽しく、最後まで飽きさせない。
ところでエッグマンといえば、ハゲ頭にながーいボサボサの口髭がトレードマークだが、本作ではドクター・ロボトニックとしてカイゼル髭で登場する彼が、いかにしてその姿となるのかの変遷も見どころだ。

「ソニック・ザ・ムービー」は「名探偵ピカチュウ」と共に、すでに半世紀の歴史を持った“ゲームカルチャー”に対する愛が強く感じられる作品で、ゲーム版やアニメーション版を知らない人でも楽しめる。
ちなみにクレジット中には、二段階で次回作の内容を示唆するオマケあり。
既に収益の損益ラインはクリアし、続編の製作は決定済み。
次はソニックが大好きな、“あのキャラクター”との共演が実現しそうだ。

今回はソニックのカラーリングに合わせ、青いカクテル「スカイダイビング」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、ブルー・キュラソー20ml、ライムジュース10mlをシェイクして、グラスに注ぐ。
キュラソーの甘味とライムの酸味がラムを引き立て、涼しげな見た目の通りにスッキリとした味わいのカクテルだ。

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ショートレビュー「泣きたい私は猫をかぶる・・・・・評価★★★★+0.3」
2020年06月23日 (火) | 編集 |
猫の愛、人間の愛。

Netflixオリジナルアニメーション。
とは言っても、本作は元々今年の6月5日に劇場公開が予定されていたのだが、コロナ禍の影響でネトフリ直行となってしまった作品。
おそらく劇場のブッキングの混乱はしばらく続くだろうし、世界中で似たようなケースが続出するのではないかな。
まあよく出来た作品だから、出来ればスクリーンで観たかったが、とりあえず作品が無駄に死蔵されず、ほぼ予定通りのスケジュールでファンに届けられることになったのは喜ばしい。

本作は傑作「ペンギン・ハイウェイ」を世に出した、新興アニメーションスタジオ「スタジオ・コロリド」の長編第二作。
今回は「心が叫びたがってるんだ」「空の青さを知る人よ」の岡田麿里のオリジナル脚本を、「美少女戦士セーラームーン」などのベテラン演出家の佐藤順一と「ペンギン・ハイウェイ」で絵コンテを担当した柴山智隆の共同監督で映画化。
淡い色彩の美しいアニメーションで描かれるのは、ひょんなことから猫に変身できる魔法を手に入れた、中二少女のリリカルな成長物語だ。

主人公の笹木美代は、クラスメイトから「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれ、常に一生懸命で元気いっぱいの少女。
クラスメイトの日之出賢人に想いをよせ、毎日のように全力で「好き」アピールしているが、全然相手にされていない。
そんな美代は、祭りの縁日で出会った奇妙なお面屋から、かぶると猫に変身できるお面をもらい、毎夜白猫の姿となって賢人と逢瀬を重ねているのだ。
もちろん賢人は、死んだ愛犬の生まれ変わりと信じる白猫が、文字通りに猫をかぶった美代だとは知らない。

実は美代には、変身の魔法以外にも秘密がある。
両親が離婚して、一緒に暮らす父はその後再婚。
継母はよくしてくれているのだが、美代はどうしても気を遣ってしまう。
実母は実母で今さら美代と暮らしたいと言い出し、彼女は二人の母親の間で板挟みになってしまっているのだ。
賢人への猛アタックも、親たちのややこしい事情を見ているからこその、彼女の愛し愛されたがりの感情の発露なのである。

一見天真爛漫だが家庭環境が複雑で、人知れず色々こじらせてる主人公。
このキャラクターの内面描写のリアリティこそ、岡田麿里脚本の真骨頂。
ワンアイディアから始まる物語は、序盤「心が叫びたがってるんだ」を思わせるが、本作では「愛されない人間より、いっそ愛される猫になりたい」と思った美代が元に戻れなくなり、そこから成長のステージとして、「千と千尋の神隠し」的な異世界への冒険に物語が広がってゆく。
高校生が主人公だった「ここさけ」や「空青」よりも、年少のこちらはファンタジー色が強いのが特徴だ。

招き猫通りが有名な焼物の街、常滑のロケーションがいい。
聖地巡礼なる言葉もすっかり定着したが、陶芸窯のレンガ煙突が並ぶ街並みは初めからちょっとした非日常感があり、こう言った現実からのファンタジーの裏打ちは、日本のアニメーション作品の大きな魅力になっていると思う。
あのファンタジックに魅力的な街なら、実は異世界に繋がっていると思えるし、実際に行ってみたくなるもの。

猫の姿のまま冒険の旅に出た美代は、初めて心の中の問題と初めてきちんと向き合い、愛の意味を考え、思春期という未知の海に漕ぎだすための大きな成長を果たす。
美代を演じるのは志田未来。
米林宏昌監督の「借りぐらしのアリエッティ」などで声優としても定評のある人だが、本作でも中二少女の絡みあった心を繊細に表現して素晴らしい。
主人公だけじゃなくて、登場人物全員の葛藤へのソリューションが用意されているのもいい。
誰もが物語を通して少しだけ変化し、物語の始まりより少しだけ幸せになる

そして猫飼いとしては、美代が変身した白猫のキャラクターも可愛いのだが、別のある猫と飼い主の絆のエピソードには思わず涙腺が・・・
本作では猫と人間の時間の違い、寿命の違いが物語のキーになっていて、あの猫は自分の命が残り少ないのを承知で飼い主との終の猫生を選んだんだよなあ。
この辺りは岡田麿里が初監督した「さよならの朝に約束の花をかざろう」にも通じる、切なくて優しい絆を感じさせる。
普遍性のある青春ファンタジーだが、猫飼いは余計に自分の子が愛しくなるだろう。

今回は舞台となる常滑の地酒、澤田酒造の「白老 大吟醸」をチョイス。
山田錦を40%まで精米して作り上げられる一本は、吟醸酒らしいフルーティーで芳醇な香りが特徴。
やや辛口で、海の幸はもちろん、肉料理などとも相性がいい。
これからの季節は冷でいただきたい。

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