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酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
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ショートレビュー「タリーと私の秘密の時間・・・・・評価額1650円」
2018年08月17日 (金) | 編集 |
毎日を頑張り過ぎている貴女へ。

ディアブロ・コディ脚本、ジェイソン・ライトマン監督の名コンビ三度。
シャーリーズ・セロン演じるマーロは、三人の子を持つ母。
ゲーム中毒で出張の多い夫は、人は良いがほとんど役に立たない。
マーロ自身も仕事を持ちながら、自分に厳しく完璧な母でありたいと奮闘するも、発達障害で時に癇癪を爆発させる長男を抱え、三人目となる次女の出産・育児の激務に遂にギブアップ。
裕福な兄夫婦に勧められて、夜間ベビーシッターのタリーを雇う。
決まって毎夜10時半にやって来て、夜明けと共に姿を消すタリーの助けによって、マーロは少しずつ心の余裕を取り戻してゆく。

トライベッカ映画祭でライトマンが語ったところによると、コディと組んだ三本の映画「JUNO/ジュノ」「ヤング≒アダルト」そして本作には明確な関連性があり、それぞれ「人生のタイムラインの、どの場所にいるのか混乱をきたしている」人物の話だと言う。
「JUNO/ジュノ」の16歳の妊婦はあまりにも早く成長しなければならず、逆に「ヤング≒アダルト」の主人公は成長が遅すぎる。
本作のマーロは、親になったことで自らをもう一段成長させねばならないのだが、恵まれない子供時代を過ごし親をベンチマークできなかった彼女は、自分をどういう風に成長させていいのか分からないのだ。
そんな時に現れるのが、コディが創造した21世紀版のロックなメリー・ポピンズ、タリーという訳だ。

一見すると、赤ちゃんを任せるのが心配になるほど奔放なイマドキの若者。
しかし、夜の間にバッチリと仕事をこなし、子供たちとの関係から夫との夜の営みに至るまで、マーロの悩み相談にも乗ってくれるが、自分のことはほとんど話さない。
完璧すぎるタリーは、一体何者なのか?というミステリが興味を引く。
彼女の正体に関しては、中盤辺りから徐々にヒントが出てくるのだが、ある種のバディものとして二人の女性が絆を深め、マーロが再生されてゆくプロセスを物語の推進力としつつ、必然の別れを物語のソリューションとする秀逸な作劇ロジック。

疲れ切った母ちゃんに成り切るために、三ヶ月半かけて50ポンド近く増量したというシャーリーズ・セロンが相変わらず素晴らしいのだが、ここまでデブになっても美しさは隠せない。
頑張り過ぎて自分を追い込んでしまう女性をリアリティたっぷりに演じて、大いに共感できるキャラクターだ。
ちなみに増やした体重を元に戻すのには、1年半の歳月と地獄のようなダイエットが必要だったというから、デニーロ・アプローチの役者さんは大変だ。
彼女を救うタリー役は、「オデッセイ」でNASAのエンジニアを演じたマッケンジー・ディヴィスが好演しているが、この二人の身長がほとんど同じなのも実は重要なヒント。

終盤に起こる、あるサプライズな事件によって、欠けていたミッシングパーツが現れ、パズルの全体像がバシッと浮かび上がるストーリーテリングのカタルシス。
子育て中の女性に、「自分を追い込み過ぎないでいいんだよ」と言う優しいエールを送るだけでなく、色々と分かってない男も含めて、誰にもなんらかの“気付き”を与えてくれる、詩的で優れた寓話だ。
しかしこの夏は「未来のミライ」「インクレディブル・ファミリー」と、やたらと子育てモチーフの映画が多いのは面白い現象。
邦画と洋画、アニメーションに実写というフォーマットだけでなく、それぞれの物語的アプローチの違いが面白い。
どの作品にも共通するのは、「とりあえず、お父さんはもうちょっと頑張ろう」ということだろうか。

今回は、謎めいたタリーのイメージでジン・ベースのカクテル、「ピンク・レディー」をチョイス。
ドライ・ジン45ml、グレナデン・シロップ20ml、レモン・ジュース1tsp、卵白1/2個をよくシェイクして、グラスに注ぐ。
その名の通り、パステルなピンクが美しいカクテルで、グレナデン・シロップの甘みと卵白の口当たりがジンを優しく包み込む。
名前は1912年に初演された、イギリスの同名ミュージカル・コメディーの舞台にちなむ。

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ショートレビュー「詩季織々・・・・・評価額1600円」
2018年08月11日 (土) | 編集 |
あの頃があって、今がある。

北京・広州・上海、現代中国の三都市を舞台に、今時の若者たちを描く日中合作オムニバス。
アニメーション制作がコミック・ウェーブ・フィルムというだけでなく、中国人監督たちのリスペクトがビンビンに感じられ、世界観とテリングのスタイルが凄く新海誠っぽい。
共同製作先のHaolinersのリ・ハオリン代表が第3話監督兼総監督を務め、「ストームブレイカーズ 妖魔大戦」のジョシュア・イ・シャオシン監督が第1話を担当、第2話は「君の名は。」の3DCGチーフを務めた竹内良貴が監督デビューを飾った。
新海作品を肌で知る日本人監督の第2話が、一番新海スタイルから離れようとしてるのが面白い。

第1話「陽だまりの朝食」
今は北京で働く主人公・シャオミンが、少年時代を過ごした湖南省で毎日朝食に食べていたソウルフード、ビーフンについて語る。
とりあえず湖南人のイ・シャオシン監督が、死ぬほどビーフン好きなのが伝わってくる。
一応、共働きの両親に代わって育ててくれたおばあちゃんとの思い出とか、毎朝ビーフンを食べながら眺めていた初恋の彼女の話とかも出てくるのだけど、飯テロレベルのビーフンの描写が強烈すぎて、ほとんど「ビーフンうまそう」しか感想が出てこない(笑
この味覚と郷愁が合体した感覚、香川県人のうどん愛に近いものがある。
「これ、日本を舞台にリメイクするなら香川しかないだろうなあ」なんて考えながら観た。
東京都内にも湖南の汁ビーフンの店があるので、観終わってそのまま食べに行ってしまったよ。

第2話「小さなファッションショー」
他の二編が多分に監督の人生を反映した少年の物語なのに対して、これはファッション業界に生きる姉妹の話で、ちょっと毛色が違う。
主人公は広州で活躍するベテランのトップモデル・イリンと、服飾学校に通う妹のルル。
大きな成功を掴んだものの、イリンは次第に人気が旬を過ぎつつあるのを自覚し、焦りからルルに八つ当たりしてしまう。
奔放なお姉ちゃんとしっかり者の妹の、雨降って地固まる的な王道の姉妹成長物語。
よく出来た作品だが外国人監督のためか、他の二編と違って“郷愁”の要素がないので、あまりローカル色は強くない。
舞台になる広州市がまるでSFの未来都市のようで、生活感がないのもその印象を強化する。
ファッション業界の男性がオネエっぽいのは、世界中共通なんだろうか?

第3話「上海恋」
掛け違えてしまったボタンを巡る、切ない初恋物語。
もともとこの企画は、「秒速5センチメートル」に感動したリ・ハオリン監督がコミック・ウェーブ・フィルムにオファーを出したことから始まったという。
その原点となった作品にオマージュを捧げたリリカルな一編だが、きちんと本歌取りして独自の味わいに仕上げている。
1999年、上海の旧市街・石庫門に暮らす中学生・リモとシャオユの幼い恋。
両思いだった二人は、進路を巡る誤解から離れ離れになってしまうのだが、遠い未来に一本のカセットテープが真実を明らかにする。
誰もが身に覚えのある甘酸っぱい初恋の記憶、物語上の現在と過去の時間の差異が、新しい街と古い街が存在する上海の独特の空間とリンク。
高い普遍性を持ちながら、この街ならではの作品になっている。
主人公が建築家設定なのが象徴的だが、これも新海作品へのオマージュかもしれない。

どの話も、登場人物が中国名じゃなければ、日本の作品と見分けがつかないが、これはやはりダイナミックに変貌する現代中国以外では成立しない作品
主人公たちはどの話も大体30歳くらいなのだけど、彼らが10代の頃と現在とではもう街の風景がガラッと違うのだ。
第3話ではカセットテープが過去と現在をつなぐキーアイテムとなるのだが、2000年頃の日本ではもうCDプレイヤーを通り越してMP3が主流になりつつあったと思う。
高校生たちがラジオを録音したりして、一生懸命オリジナルテープを作ってたのは、80年代頃だった。
2000年頃の時点で、日本と中国には10年以上のタイムラグがあったのが、今ではむしろ中国の方が未来を感じさせる部分が多い。
過去20年の社会の移り変わりが激しく、そのことがうまく作品に取り込まれているのが本作の特徴と言えるだろう。
Netflix案件ですぐ配信始まるが、美しい映像は劇場で観る価値がある。

今回は、最終第3話の舞台から魔都「シャンハイ」の名を持つカクテルをチョイス。
ダーク・ラム30ml、アニゼット10ml、レモン・ジュース20ml、グレナデン・シロップ2dashをシェイクしてグラスに注ぐ。
濃厚なダーク・ラムにアニゼットの香り、レモンの酸味が絶妙にバランスする。
このカクテルの由来には、上海の租界で生まれたものとか、イギリスで考案されエキゾチックな名前としてシャンハイと付けられたとか諸説あるが、ほぼ100年前から存在する歴史あるカクテルである。

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インクレディブル・ファミリー・・・・・評価額1700円
2018年08月07日 (火) | 編集 |
主夫ヒーローは辛いよ。

ピクサー映画史上初めて、人間が主人公となった作品としても知られる、ブラッド・バード監督の大ヒット作、「Mr.インクレディブル」の14年ぶりとなる続編。
政府によるスーパーヒーロー禁止法を撤回させるため、母ヘレンがイラスティガールとして活動を開始。
変わって一家の主夫となったMr.インクレディブルことボブが、無限の能力を秘めたジャック=ジャックの世話に、恋する長女ヴァイオレットの扱いに、悪戦苦闘の毎日を送る羽目に。
そこに目的不明の謎のヴィラン、スクリーンスレイヴァーが現れ、街を混乱に陥れる。
2007年の「レミーのおいしいレストラン」以来、11年ぶりにブラッド・バード監督がアニメーションの世界に帰還。
主人公夫妻を演じるグレイ・T・ネルソン、ホリー・ハンター、氷を操るヒーローのフロゾン役のサミュエル・L・ジャクソンなど、主要キャストも続投。
夏休みらしい、パワフルでゴージャスな“ファミリー映画”だ。

シンドロームとの戦いから3ヶ月後。
Mr.インクレディブルことボブ(グレイ・T・ネルソン)とイラスティガールことヘレン(ホリー・ハンター)のパー夫妻は、特殊能力を持つ長女ヴァイオレット(サラ・ヴォーウェル)、長男ダッシュ(ハック・ミルナー)と力を合わせ、街を襲ったアンダーマイナーを阻止。
しかし、例によって街を破壊したため政府の保護を失う。
彼らの活躍を見た実業家のウィンストン・ディヴァー(ボブ・オデンカーク)は、ヒーロー活動を政府に再び認めさせるため、パー夫妻を支援すことを申し出る。
だが、Mr.インクレディブルでは破壊の規模が大きすぎるため、当面の活動はイラスティガールが担うことになり、ボブはヘレンのかわりに一家の主夫に。
ボブが家事に育児に苦闘する間、ヘレンは着実に実績を重ねて、いよいよ政府がヒーロー活動禁止法を撤回することになる。
ところが、テレビ画面やモニターをジャックして、人々をマインドコントロールする謎のヴィラン、スクリーンスレイヴァーが出現し、ヘレンはピンチに陥るのだが・・・


14年ぶりの続編は、前作のラストから直接繋がっていて、まるで前後篇二部作の様な作り。
単体でも分かる様にはなっているが、やはり前作を観てることが前提の作品だ。
2004年に公開された「Mr.インクレディブル」は、ヒーローが戦うことによる被害の増大で、政府がヒーロー活動を禁止し、行き場を失った彼らに新たな身分を与える「スーパーヒーロー保護プログラム」を発動した世界の話。
日本でも「ウルトラマンが怪獣と戦うことで、かえって被害が拡大するんじゃ?」という話は古くからあったが、この疑問をフィーチャーして実際に作品にしたのが、アラン・ムーアとディヴ・ギボンズが1986年に発表したグラフィックノベル「ウォッチメン」だ。
嘗て実在したスーパーヒーローたちが、活動を禁止されたもう一つの1985年を舞台に、元ヒーローの殺人事件から始まる物語。
ザック・スナイダー監督で映画化もされたこの作品が、本作の世界観に強い影響を与えていることは間違いなかろう。

もっとも、ブラッド・バードが作り出した世界は、冷戦時代を背景に歴史から哲学までをも網羅する「ウォッチマン」ほど複雑ではない。
強制引退から15年後、ヘレンと結婚して3人の子宝にも恵まれたボブは、ヒーローとして世界から脚光を浴びていた時代が忘れられず、夜な夜な親友のフロゾンと共に警察無線を盗聴してはこっそり人助けをしている。
そんな懐古願望をヴィランのシンドロームに利用され、彼の暴走を止めるために家族で立ち上がるというのが前作の流れ。
シンドロームは止めたものの、ヒーロー活動の禁止はそのままなので、今回は再び活動できるようヒーローの良いところをアピールする。

街への被害を抑えるため、ゴム人間のヘレンが前面に立ち、その間ボブが家事・子育てを担当することに。
プロットはイラスティガールとして活躍するヘレンと、主夫として苦闘するボブのツートラック。
ヒーローは本当に不要なのか?という前作から引き継いだ葛藤に加え、夫婦の役割を逆転させることで、時代の変化を反映した内容になってるのはさすが。
アメリカ版「未来のミライ」よろしく、子育て篇にかなりの重きが置かれてるのが特徴で、誰よりもヒーロー活動への渇望が強いボブのイライラと、家事から解放されて精一杯羽を伸ばして活躍するヘレンのコントラストが効果的。
ティーンエイジャーから赤ちゃんまで、世代の違う子どもたちに振り回されるおじさんヒーローは、生活感があってかなり可笑しい。
だが、「未来のミライ」と決定的に違うのは、ボブにとって主夫業は結局最後まで「イヤイヤやらされること」で、家事や育児の面白さや深さに目覚めたり、彼自身を成長させることはないということ。
これはおそらく、遅い結婚をして今まさに子育て真っ最中の50歳の細田守と、子育てはとっくに終えている60歳のブラッド・バードの、世代的な経験と環境の差が影響しているのかなという気がしている。
細田守にとっては、今まさに様々な気づきを経験して成長している時なのだろうが、バードにとっては全てはもう思い出なのだろう。
ちなみにバード家の三男マイケルは、ヴァイオレットが恋心を寄せるトニー役で出演している(30歳だけど)。

もちろん主にイラスティガール担当のアクション活劇も、素晴らしい仕上がりだ。
この11年の間に「ミッション:インポッシブル/ゴーストプロトコル」など、実写作品を経験したバードの演出は前作以上にキレキレ。
バイクで暴走列車を追跡するプロセスは、前作ではMr.インクレディブルの見せ場だった列車アクションを再現し、今度はイラスティガールならではの描写で盛り上げるセルフオマージュ。
スクリーンスレイヴァーを追跡するシークエンスは、どこか「ミッション:インポッシブル」テイストだ。
そして二つのメインプロットが終盤見事に融合し、海と空を駆け巡るスペクタクルなクライマックスに展開する。
今回は、前作でその能力が垣間見られたジャック=ジャックも大活躍。
パー家とフロゾン以外の、その他ヒーローたちの特殊能力も上手く生かされていた。

ヴィランに関して、背景が前作のシンドロームと被る部分があり、一見いい人だが実は裏があるという、最近のディズニーヴィランのパターン通りで意外性が無いのがちょっと残念だが、安直に殺して終わりにしなかったのは良かったと思う。
前作のシンドロームがジェット機のエンジンに巻き込まれて死ぬのは、マントを付けていたための自滅だったとはいえ、その後のディズニー/ピクサーヴィランの生々し過ぎる最期の先駆けでもあった。
キャラクターの背景がきちんと描かれ、単純悪ではなかったゆえに、彼の最後は当時結構引っかかったのを覚えている。
あの頃のアメリカ映画は、とりあえず悪者は殺すという不文律でもあったかのように、ヴィランが死にまくっていた時代。
ピクサーの「カールじいさんの空飛ぶ家」「トイ・ストーリー3」でも、ヴィランが悲惨な最期をとげるのは、ディズニーブランドとの差別化の意味もあって、「人生そんな優しいオチばかりにはならない」ということを強調する意図があったと聞くが、その後ディズニーの「塔の上のラプンツェル」でも同じパターンが繰り返された。
それが変わったのは、やはり「アナと雪の女王」で、御伽噺の魔女を主役のポジションにしたあたりからだろう。
その後「ヴィランにも色々事情はある」という考え方は、ディズニーブランドの「ベイマックス」「ズートピア」「モアナと伝説の海」でも作劇に大きな影響を及ぼしており、今回その流れがピクサーにも波及した。
スーパーヒーローを描くアニメーションの世界でも、二元論が通用しない時代になったということか。

ブラッド・バードの次回作は、以前から取り組んでいる1906年のサンフランシスコ大地震を描く「1906」になる可能性が高そうだが、もし「インクレディブル3」があるとしたら、今度は子供世代を主役にしても面白そうだ。
ヴァイオレットが恋とヒーロー活動の両立に悩んだり、ダッシュがMr.インクレディブルをライバル視するようになったり、ジャック=ジャックがダークサイドに落ちそうになったり、少し子供たちの年齢を上げるだけで色々なドラマが作れそう。

同時上映の「BAO」は、なんと生きている“肉まん”と人間のお母さんの絆を描く。
息子が成長して家を出て、寂しさを募らせるお母さんが作った肉まんに、不思議な命が宿る。
彼女は、肉まんを息子だと思って育てるのだけど、やがて肉まん息子も人間の息子同様に、成長して親離れしてゆく。
文字どおりに、食べちゃいたいくらいに息子を溺愛するお母さんの葛藤が切ない。
トロントの中国人コミュニティーで一人っ子として育ったドミー・シー監督の、母への想いが詰まったユニークな短編だ。

今回はMr.インクレディブルと飲みたい、スカッとするビールを。
以前ピクサーの近くにPyramid Brewery & Alehouseという地ビールの店があって、ピクサーのスタッフもよく来ていたのだが、残念ながら3年前に閉店してしまった。
今回は対岸のサンフランシスコを代表する地ビール、「アンカー・スチーム」をチョイス。
ラガー酵母をエールの様に常温醗酵させる事で、適度なコクと苦味が華やかな香りと同居する、ラガーとエールの良いとこどり。

ベイエリアの老舗クラフトビールで、ゴールドラッシュ時代の開拓民に愛されたスチームビールの復刻版だ。

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ミッション:インポッシブル/フォールアウト・・・・・評価額1800円
2018年08月04日 (土) | 編集 |
英雄の帰る場所はどこか。

不可能を可能にするスーパースパイ、イーサン・ハントと仲間たちの活躍を描く、シリーズ第6弾は、前作「ローグ・ネイション」からの続きもの。
死んだり行方不明になったはずの各国スパイによって構成された秘密組織「シンジケート」の存在は、イーサン率いるIMF(Impossible Mission Force)の活躍によって暴かれ、ボスのソロモン・レーンは捕らえられた。
しかし、シンジケートの残党は、既存の世界をリセットし新たな時代を作ろうと考える、より過激な分派「アポストル」として今も暗躍している。
ロシアから盗み出された三つのプルトニウム・カプセルとレーンの身柄を巡る物語は、IMF、CIA、アポストル、さらに前作の最強ヒロイン、イルサも加わり四つ巴の争奪戦へと展開。
シリーズ史上初、二作連続で脚本と監督を務めるのクリストファー・マッカリーが作り上げたのは、シリーズ22年間の集大成で、いわば「ミッション:インポッシブル全部入り」の豪華フルコース。
ストーリー、テリング、キャラクターが極めて高いレベルで三位一体となった、平成最後の夏の真打に相応しいシリーズベスト、スーパーヘビー級の傑作だ。
※核心部分に触れています。

盗まれたプルトニウムを奪還せよという指令を受けたイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、一度は回収に成功するも、不意を突かれ何者かによって横取りされてしまう。
事件に秘密組織「シンジケート」の過激派「アポストル」が関与していており、ジョン・ラークという謎の男が、プルトニウム取引のため武器商人のホワイト・ウィドウ(バネッサ・カービー)と接触するという情報を得たイーサンは、ホワイト・ウィドウに近づく作戦を立てる。
しかし、毎回IMFに煮え湯を飲まされているCIAが、お目付役として敏腕エージェントのオーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を送り込み、二人はお互いに不信の目を向けながら行動を共にすることに。
ラークの身柄を押さえて、彼に変装してホワイト・ウィドウに会うというイーサンの計画は、ラークと思しき男の予想外の戦闘スキルによって失敗。
返り討ちされそうになった時、一発の銃弾が男の眉間を撃ち抜く。
イーサンの危機を救ったのは、この世界から足を洗ったはずの元MI6のイルサ(レベッカ・ファーガソン)だった・・・


前作「ローグ・ネイション」は、クリストファー・マッカリー監督のストーリーテラーとしての特質が十二分に発揮された秀作だった。
脚本家出身のマッカリーは、劇中に登場するプッチーニの古典オペラ「トゥーランドット」を換骨奪胎し、プロット全体の下敷きにするという、なんとも凝った仕掛けを作劇に組み込んできたのだ。
「トゥーランドット」は古の中国を舞台に、絶世の美女トゥーランドット姫と国を追われたカラフ王子のロマンスを描く作品だが、トゥーランドットに求婚する男は、彼女の出す三つの謎かけに答えなければならず、もしも間違えたら処刑されてしまう。
映画では、二重スパイとしてMI6からシンジケートへ送り込まれ、二つの組織のそれぞれのボスの身勝手な思惑によって、偽りの人生に縛り付けられてしまったイルサがトゥーランドットで、イーサンが彼女の凍りついた心を溶かし、解き放つカラフ王子の役割を担う。
実質的な物語の主人公はイルサで、イーサンは一歩引いた受け身の役だった。

本作ではイーサンが主役のポジションに戻り、彼の「世界を救いたい」と「たった一人でも守りたい」という、両立が難しい二つの行動原理の間の根源的な葛藤を前面に出し、過去シリーズ全てを内包した作り。
今回、彼の元に届くミッションの指令は、ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」の本に隠されている。
このことが示唆する様に、マッカリーがやろうとしているのは、トロイア戦争を大勝利に導きながら、その後いつ終わるとも知れぬ故郷への遠大な旅を強いられた古代ギリシャの英雄に、イーサンを見立てることなのである。
言ってみれば「ローグ・ネイション」はマッカリー二部作のイルサ編で、「フォールアウト」がイーサン編という構造だ。
イーサンが最後に母国アメリカにいたのは、奇しくもこの夏「インクレディブル・ファミリー」が公開されているブラッド・バード監督の「ゴースト・プロトコル」のラスト。
平和に暮らしている元妻のジュリアを、遠くから見守っている切ないシーンだった。
あれ以来、彼はオデュッセウスと同じ様に、ずっと世界を転々とする流浪の日々を送っているのである。

驚くべきことに、本作がクランクインした時点では、マッカリーの脚本はほとんど完成していなかったそうだ。
映画を撮影しながらキャラクターと対話し、並行して脚本を作ってゆく。
まさに制作現場そのものが行先不明の貴種流離譚さながらで、システマチックなハリウッドのメジャー作品において、このようなスタイルが許されるのはかなり珍しい。
シリーズのプロデューサーも兼ねるトム・クルーズが、それだけマッカリーに対して全幅の信頼を置いているということだろう。
おそらくこの独特の制作プロセスのためか、よくよく見て行くと整合性が微妙な部分もあるのだが、本作のプロットはロジカルでありながら、登場人物のエモーションによって推進力を得て、極めて有機的に展開する。

冒頭の夢のシーンが、本作のコンセプトを端的に表している。
イーサンとジュリアとの幸せな結婚式に、なぜか立会人としてレーンが現れ、ジュリアにできもしない約束をするイーサンを責めるのだ。
好き勝手に暴れまわるので“Rogue organization(ならず者組織)”と煙たがられ、毎回孤立するIMFにとって、シンジケートは合わせ鏡であり、レーンはいわばイーサンのダークサイド的存在。
劇中でイーサンが実はラークなのではないかと疑われるのも、彼らが常に淵に立っている存在で、ジェダイの騎士以上に“落ちやすい”からに他ならない。
実際第一作の「ミッション:インポッシブル」では、TVシリーズ「スパイ大作戦」でIMFのリーダーだったジム・フェルプスが裏切り者となる。
権力から捨て駒として扱われ、大義を果たすために犠牲を強いられるのなら、そんな世界そのものをぶっ壊してしまえというのがシンジケートやアポストルの考え。
対して、既存の権力の指令を受けながらも時には抗い、愛や信頼といったパーソナルな繋がりによって、ライトサイドに留まっているのがIMFの面々と言える。
これはスーパースパイ、イーサンが世界を救う英雄としての自分と、誰かを愛する一人の人間としての自分の間で、矛盾する姿を改めて突きつけられ、自分の戻るべき場所、いるべき場所はどこなのか葛藤する物語なのである。

ここでポイントになるのが、ヘンリー・カヴィルの存在だ。
それほどミスリードもされておらず、話の途中で割とあっさりと明かされるのだが、彼こそ本作のキーパーソンである謎の男ラークの正体。
前作のボスキャラであるレーンも登場するが、イーサンの分身としてのレーンは、すでに前作で彼自身によって倒されている。
本作で解き放たれたレーンと対決しなかればならないのは、彼の存在によって過去に縛られているイルサなので、レーン以外にもう一人、イーサンと対決する同格のボスキャラが必要となり、それがラークというわけだ。
カヴィルは以前「コードネーム U.N.C.L.E.」でナポレオン・ソロを演じていて、ある意味共に60年代のテレビにルーツを持つ、「スパイ大作戦」と「ナポレオン・ソロ」の共演という遊び心が楽しい。

シリーズ最長の147分は頭脳戦から肉弾戦、空と陸を駆け抜ける怒涛の見せ場の連続だが、アクションの一つひとつにも過去シリーズへのオマージュが見える。
クライマックスのヘリコプターバトルは第一作を思わせるし、断崖絶壁に宙吊りになりながら戦うシーンでは、第二作のアヴァンタイトルで、イーサンの趣味がフリークライミングだったのを思い出して思わずニヤリ。
例によってバイクと車が入り乱れてのカーアクションの凄まじさは言わずもがなだし、シリーズ伝統の垂直方向のアクションは、高度25000フィートを飛ぶ輸送機からのダイビングとして受け継がれている。
これだけド派手な見せ場を繋ぎながらも、シリーズでは隠し味的に組み込まれていたロマンスの部分を感情のドラマのコアに置き、イーサン・ハントの貴種流離譚の行き着く先をきっちりと明示してくるのだから見事だ。
マッカリーのセンスは、本当に艶っぽい。

もしかして、本作をもってイーサン・ハントと仲間たちのシリーズは完結なのではないか。
いや、もちろんいくらでも続きは作れるのだけど、素晴らしく出来の良いこの映画でスパッと終わらせるなら、有終の美として映画史に残るだろう。
そのくらいの「やり切った感」がある。
ちなみに今回は、ジェレミー・レナーが演じるブラントが出て来なかったのは、前記したような独特の制作プロセスゆえに「アベンジャーズ」シリーズとのスケジュール調整ができなかったため。
マッカリーは短期間で撮影を終わらせるために、冒頭でブラントが死んでしまう案を持ちかけたそうだが、それは「嫌だ」と断られたらしい。
まあ、このままだとブラント的にも中途半端なので、トム・クルーズとマッカリーには、是非ともブラントを加えたIMFの全員が大活躍する、本当の完結編を作ってもらいたいものだ。
とりあえず観終わった瞬間に、最初からもう一回観たくなる、この夏を代表する傑作だ!

世界を駆け巡るこのシリーズ、今回は重要な舞台となる街から「パリジャン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、ドライ・ベルモット20ml、クレーム・ド・カシス10mlをステアして、グラスに注ぐ。
ジンの清涼感を、ドライ・ベルモットとクレーム・ド・カシスの風味が包み込む。
やや甘口で、アペリティフ向きのショートカクテル。
ルビー色が美しい、オシャレな一杯だ。

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ショートレビュー「ウィンド・リバー・・・・・評価額1650円」
2018年08月02日 (木) | 編集 |
生きるためには、戦わなければならない。

凍てついたワイオミングの雪原で、少女の遺体が見つかる。
何者かから激しい暴行を受けた後、裸足で−30度の極寒の中を逃げて、力尽き血を吐いて倒れていた。
第一発見者はジェレミー・レナー演じる魚類野生生物局(FWS)のハンター、コリー・ランバート。
家畜を殺したピューマを追っていて、偶然に遺体を発見したのだ。
死因がはっきりしない中、FBIは出張中だった若手捜査官のジェーン・バナーを送り込んでくるも、彼女は土地勘も雪中捜査も経験がない。
やむなくコリーがガイド役となり、捜査に協力することになる。
麻薬戦争を描いたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「ボーダーライン」の脚本家として知られるテイラー・シェリダンによる、ヘビーなクライム・スリラー。
Netflixのオリジナル映画として発表された「最後の追跡」と合わせて、“現代のフロンティア3部作”の最終作に当たる。

タイトルはワイオミング州の中にある、ウィンド・リバー先住民居留地のこと。
北アラパホ族と東ショショーニ族の共同居留地という物語の背景が、物語をぐっとディープなものにしている。
コリーは白人だが、アラパホの女性と結婚していた設定で、彼の過去の傷も事件とリンクしてくる凝った構造。
居留地の西隣りにはイエロー・ストーン、グランド・ティトンの両国立公園があり、世界中から訪れる観光客で賑わっている反面、居留地にはカジノくらいしか産業がなく、慢性的な貧困状態に置かれている。
作中でもコリーの元妻が、グランド・ティトンの玄関口であるジャクソン・ホールの街で求職している設定だ。
薬物・アルコールの乱用が問題視され、若年層の犯罪率が極めて高いが、兵庫県ほどの広さを管轄する部族警察はわずかに6人。
何か事件が起これば、解決されることすら奇跡のような劣悪な環境なのである。

アラパホはかつてのインディアン戦争で、他の平原部族と共にフロンティアの東進に抗い、リトルビックホーンの戦いではカスター中佐の第七騎兵連隊を全滅させた勇猛な部族。
その代償として本来の領域を失い、現在では不毛の荒野に押し込められている。
合衆国であって、合衆国ではない。
この見捨てられた土地は過疎化が進み、わずか10年の間に3割もの人口が流失。
しかし、自らの意思で留まることを選んだ者は、誰もが戦士となり生き抜くために戦わなければならないのだ。
それは元々の住人であるアラパホとショショーニの人々だけでなく、白人のコリーも同じこと。
同じような事件で娘を失った過去を持つ彼にとって、この事件はある意味で葬いであり、自分の心の傷の正体と向き合うことなのである。
そして、この地で罪を犯した者もまた、荒野を支配する血と鉄の掟によって罰せられなければならない。

テイラー・シェリダンは、自身の持ち味を生かして、絶望の淵に生きる人間たちを描く、味わい深い秀作を作り上げた。
ミステリとしてはそれほど捻った作りではないが、キャラクター心理の織りなすビターな人間ドラマで魅せる。
娘を救えなかった父親としてのコリーの苦悩と、未知のシチュエーションで苦闘するエリザベス・オルセン演じるFBI新米捜査官のドラマがきっちりとかみ合い、ワイオミングの雄大な自然の中、綿密に描写される世界の闇が容赦なく感情をえぐる。
俳優出身の監督だけあって、役者は皆素晴らしいが、特にジェレミー・レナーはキャリア・ベストの好演と言っていい。
クライマックスの敵味方入り乱れての集団銃撃戦での彼は、弓をライフルに持ち替えたホークアイのような燻し銀のカッコよさだった。
現代劇だが、このプロットをそのまま過去に置き換えれば西部劇として成立してしまうのが、いかにもアメリカ映画だ。

今回はハンターつながりで「イエーガー・トニック」をチョイス。
ドイツのリキュールイエーガー・マイスター45mlを氷を入れたタンブラーに注ぎ、適量のトニックウォーターで割り、スライスレモンを添えて完成。
イエーガー・マイスターは甘めで香草の風味が強く、香草は食欲を刺激するので、アペリティフとして最適だ。
トニック・ウォーターの清涼感が、飲みやすくしてくれる。

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