酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
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noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
ショートレビュー「アズミ・ハルコは行方不明・・・・・評価額1650円」
2016年12月08日 (木) | 編集 |
彼女が、突然消えたワケ。

「私たちのハァハァ」の松居大悟監督が放った本作は、ある意味今年の日本映画の層の厚さを象徴する怪作だ。 

主人公の安曇春子は、地方都市の実家暮らしの27歳。
映画は、蒼井優演じる春子の日常を軸に、二人の男友達と関係を持ちながら、ストリートグラフィティをする尻軽なショップ店員の愛菜、どこからともなく現れて、男たちを狩り立てる女子高生ギャング団のエピソードを描く。 

物語の時系列が複雑にシャッフルされていることもあり、最初は話の内容が把握出来ず作品世界に入り難い。 
始まってしばらくは「いったい何の映画なの?」と、戸惑いが広がってゆく。


しかし、これは恐らく狙いだろう。
バラバラになったパズルのピースが揃ってくると、映画は魔法にかかったように、急速に魅力を帯びてくるのである。
春子と愛菜、そして女子高生ギャングたちは、点と点で接点はあるものの、基本的に無関係なまま物語は進行する。
ある時点で“行方不明”となる春子の顔写真は、愛菜たちのグラフィティとなって、 ストリートにネットに拡散されてゆくのだけど、名前の無い単純化された女性の顔となったグラフィティは何を意味するのか。


痴呆症の祖母を抱える実家暮らしの春子は、家に居場所がなく、会社ではセクハラ、パワハラ上司に愛想笑いを浮かべ、好きになった男にも裏切られる。
生まれ育ったのが狭い地方都市ゆえに、どこへ行っても知り合いだらけで、真に自由になれる時間すらない閉塞感。

そして奔放に生きているはずの愛菜もまた、この社会で女であることの不自由から逃れられないことを知る。
 
現実を知ってしまった彼女たちに対し、身体能力高過ぎの女子高生ギャング団は、まだ大人の社会の外にある存在だから、何者も恐れないし、縛られない。

彼女らの超ハイテンションなはしゃぎっぷりは、ハーモニー・コリンの「スプリング・ブレイカーズ」を思わせる。
どちらも現実からのエクソダスの物語であり、映し出されているものが虚構なのか現実なのかをあえて曖昧にし、映画全体を構成したのも似ているかも知れない。
虚実の境界に現れる女子高生ギャング団は、抑圧する男社会を成敗するヒットガールだ。 
単純化されたグラフィティとなった春子の顔写真は、女たちのシュールな反乱劇のシンボルとなるのである。

これは日本の地方社会の断面を垣間見る、ユニークかつパワフルな現代の寓話。
ただ、本作の物語そのものは女性によって書かれた女性目線の作品だが、映画のテリングは「スプリング・ブレイカーズ」と同じく、良くも悪くも男性作家を感じさせる。
まあ、それを含めて、個性豊かな映画的イメージは一見の価値があると思う。

本作のロケ地は、近年多くの映画の舞台となっている足利。
今回は足利にあるココファーム・ワイナリーの微発泡スパークリング「あわここ」をチョイス。
梨や青りんご、柑橘類などを思わせる複雑かつフレッシュな香りと味わいは、若々しく生き生きしたエネルギーを感じさせる。
普段飲みのワインで財布にも優しいので、師走のパーティでも重宝しそう。

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ショートレビュー「五日物語 ー3つの王国と3人の女ー・・・・・評価額1650円」
2016年12月02日 (金) | 編集 |
美しく残酷な、御伽話の真の姿。

夢のある異世界ファンタジーっぽいキービジュアルだが、騙されてはいけない。
これは「ゴモラ」「リアリティー」で知られる、異才マッテオ・ガローネ監督による大怪作であり、御伽話に浸るのではなく、御伽話の夢から覚める物語なのである。
ストーリーの元になっているのは、17世紀のイタリアで書かれた民話集、「ペンタメローネ(五日物語)」だ。
この民話集は、50話のエピソードと全体の枠となるエピソードの全51話から構成されているのだが、本作では三つの物語が一つの世界観の中で平行に語られている。
舞台となるのはロングトレリス国、ストロングクリフ国、ハイヒルズ国、三つの王国の三つの王宮。
それぞれの物語で主人公となる3人の女の、女性ならではの欲望が悲劇を生む。
※核心部分に触れています。

ロングトレリス国では、「母になりたい」という王妃の願いが、魔力を持つ海の怪物の心臓を食すことでかなえられる。
怪物との戦いで命を落とした王に代わって、彼女は最愛の王子を手にいれるのである。
だが母性の力を過信し厳しく束縛する王妃から、いつしか我が子の心は離れてしまう。
王宮から消えた王子を取り戻すために、彼女は大き過ぎる代償を支払うことになるのだ。

絶倫王が支配するストロングクリフ国では、王宮の隣のあばら家に住むアニメ声の老婆姉妹が、国王に若い娘と勘違いされる。
魔法によって若く美しい肉体を手に入れた姉は、王の寝室に招き入れられ王妃の地位を与えられるが、取り残された妹の嫉妬と欲望は、自らの肉体と精神を傷つけ、破滅させてゆく。

三つ目の物語は、大人の世界にあこがれ、理想の夫との結婚を望む王女の物語だ。
娘の結婚に乗り気でないハイヒルズ国の王は、結婚を望む男たちを競わせるあるアイディアを思いつくのだが、結果的にこの策略の失敗によって、王女は断崖の洞窟に住むオーガ(鬼)と結婚させられてしまうのである。
恐らくは「美女と野獣」と同根と思われるこのエピソードだが、オーガの正体が心優しい王子だったりはしないし、彼女を救出しようとする親切な人々はあっさりと返り討ちにあう。
父親の失策によって身を売られ幽閉された王女は、遂に自らの決意と行動でのみ、運命から解放されることを悟るのである

「アナと雪の女王」の大ヒット以来、「マレフィセント」や昨年の実写版「シンデレラ」など、ディズニーによって御伽話のプリンセスの“モダナイズ”が進められているが、本作はその流れを民話の故郷であるヨーロッパで、よりダークに突き詰めたものと言える。
三つの物語のうち、ロングトレリス国、ストロングクリフ国のエピソードは、どちらの主人公も魔法的な力で欲望を叶えるが、所詮それは偽りの幸せであり、魔力はいつかその効力を失う。
しかし、ハイヒルズ国の王女にだけは、何の魔法も奇跡も起こらない。
恋に恋するティーンエイジャーだった彼女は、残酷な現実に覚悟を決めて抗い、脱出に成功する。
だから映画のラストで、帰還を果たしたハイヒルズの王女の戴冠式には、三つの国の登場人物が勢ぞろいするも、そこにロングトレリスの王妃の姿は無く、ストロングクリフの王妃は華やかな宴から出て行かざるを得ない。
なぜならそこは、もうすでに幻想の御伽話の世界では無いからだ。

また元が民話ゆえか、現在のファンタジーに比べると本作のプロットは相当に歪。
だが、この作品の場合それが奇妙な味わいに繋がっている。
なぜかノミちゃんを愛してしまうハイヒルズの王とか、ゲーテの「ファウスト」でメフィストフェレスが唄う「蚤の唄」っぽいが、たぶんこれも同根なのだろう。
イタリアに現存する三つの城のロケーションと、ゴージャスな美術、衣装はそれだけでも見応えはあり。
一言で言えば、ジム・ヘンソンの「ストーリー・テラー」のダークな親戚という感じで、この種の怪異譚好きにはたまらない。
しかしトラウマ描写満載で、間違っても子供向けではないので、家族で鑑賞とかしちゃうと悲劇だ。

今回は、イタリア産のスプマンテ「ロヴェ・スプマンテ・ロゼ エクストラ ドライ」をチョイス。
やや辛口で、スッキリ爽やかな後味。
澄んだピンクも目に鮮やかで、華やかな気分を演出してくれる。
スプマンテは、シャンパーニュなどと比べると圧倒的にCPが高いのも嬉しい。

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ロヴェ・スプマンテ・ロゼ エクストラ ドライ
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東京フィルメックス2016 まとめのショートショートレビュー
2016年11月29日 (火) | 編集 |
東京フィルメックス2016のつぶやきまとめ。
一番のお気に入りは、韓国のイ・ヒョンジュ監督による瑞々しい青春ラブストーリー「恋物語」。
正式公開されたら、是非また観たい。

バーニング・バード・・・・・評価額1550円
スリランカ内戦と言えば「ディーパンの闘い」が記憶に新しいが、これはいわば脱出出来なかったディーパンの、取り残された家族の物語だ。
密告により、政府に夫を殺された妻と八人の子供たち。
乳飲み子を抱えた妻は、何とか家族を支えようとするが、状況は悪化するばかり。
セーフティーネットなどという概念は無く、そもそも母子家庭が生きて行ける様に社会が出来てない。
過酷な労働、くり返される男たちの理不尽な暴力、そして村八分まで。
沸々と煮えたぎる静かな怒りが全編に渡って流れているから、あのラストしかないのだろう。
ただ、妻がなぜもとの土地で生きて行こうとするのかが今ひとつ分からない。
最初から一家でコロンボに出たら良いのにと思ってしまった。
夫の遺志を継ぐ以外に、何かスリランカ文化ならではの理由があるのかも知れないが、ならば少しでも言及が欲しかった。

よみがえりの樹・・・・・評価額1350円
現代中国の滅びゆく過疎の村。
10年前に死んだ妻の霊が息子に憑依し、嫁入りの時に植えた木を移してくれという。
舞台となってるのは監督の故郷で、聊斎志異が好きというだけあって、輪廻転生の物語は全体がフォークロアの様な独特のムードがある。
急速に発展する国の中で、忘却される村とそこに確かに暮らした人々が、幽霊となって自らの存在の証を残そうとする。
人間だけでなく、ヤギや犬やネズミたちも大きな時間の中で循環する魂。
いかにもアジア的なアニミズム世界観は、かなり好きな部類。
ただ、基本引きの長回しの画ばっかりなうえに、キャラクターの表情を描写するのを親の仇の様に嫌うので感情移入も出来ず、中盤からは少々退屈してしまった。
まあ感情ではなく、現象で描こうということなんだろうけど、テリングにはもう一工夫あっても良かったんじゃないか。

ザーヤンデルードの夜・・・・・・評価不能
大学教授の父と看護師の娘を軸に、イスラム革命の前・中・後を描く。
元々1990年に100分の作品として作られるも、当局の検閲によって37分カット。
その後上映禁止されネガが没収されたが、数年前に63分の版がイラン国外に持ち出された幻の映画。
大幅にぶった切られた上に、一部シーンでは音声まで消されていて、これはもう元々意図された映画とは言えないので、スコアは付けられない。
本作の辿った長いストーリーを含めて、1つの表現と捉えるべきだろう。
マフマフバルは、イスラム革命を挟んだ14年間でのイラン民衆の変化を見て、文化と政治と人々を描く作品として本作を企画。
監督はイランの人々に、自らを映し出す鏡を作ったそうだが、鏡に映った自分の姿を国家は気に入らず、破壊してしまったと言う訳だ。
独裁と検閲の恐ろしさを、リアルに実感させられると言う意味で貴重な作品。
タイトルのザーヤンデルード川に架かる、独特の構造を持つ橋が象徴的に使われていて、面白い効果を出している。
全長版が観たかった。

恋物語・・・・・評価額1650円
恋愛下手な女子美大生が、ひょんなことから出会った年下の彼女と恋に落ちる。
タイトルそのまま、ある恋の物語。
特に何か事件が起こる訳でもなく、二人が結ばれ、付き合い始めに盛り上がり、やがて少しずつすれ違い、お互いに葛藤を深めてゆく。
韓国はまだ同性愛にあまり寛容では無いというが、物語そのものは、どこにでもある恋人たちの風景。
でも二人の心の機微が繊細に描かれ、登場人物の一人ひとりがリアリティたっぷりに造形されているので、二人の恋の行方に全く目が離せない。
瑞々しい恋愛映画の秀作だ。
是非ぜひ、正式公開を望む!

苦い銭・・・・・評価額1550円
縫製産業の街、浙江省湖州に集う出稼ぎ労働者たちの世界を描くドキュメンタリー。
15で家を出て働きに出る少女、仕事がキツくて1週間で諦める者、作業が遅いとクビになる者、給料を払えと社長に絡む酔っ払いのおっさん。
十人十色、それぞれの出稼ぎ生活の日常を垣間見る。
好きなのは、全く噛み合ってない夫婦喧嘩と、酔っ払いのおっさんがちょい気があるっぽい女の子に何度も同じ事言って引かれるとこ。
おっさんがずーっと裁縫ハサミいじってて、酔っ払いに刃物はアブナイので、とりあえずハサミ置いとけと思った。
特に明確な主張がある訳じゃないけど、キャラが立っていて群像劇として秀逸。
彼らが働く工場は、日本基準なら全部ブラック企業だが、それなりにやりがいを感じて楽しんでいる者も、適応出来ずに去る者もいる。
登場人物それぞれの人生から、彼らを取り巻く社会のあり方を含めて、色々感じとれば良いと言うことだろう。
コピーブランド物はともかく、湖州で作られる服の一部は日本にも来てるんだろうなと思うと、妙な地続き感がある。
しかし王兵監督だから分かってたけど、今回も長いな。
演出の領域だから何とも言えないけど、「このカット、半分で良くない?」って所が多数。
163分を120分位にしてくれると、もっと観やすくなると思うんだが。

大樹は風を招く・・・・・評価額1650円
これは素晴らしい。
1997年、香港返還前夜。
新しい時代を迎える3人の伝説のヤクザの物語。
3人の監督が一人ずつキャラクターを担当しているのだけど、オムニバスではなくシームレスな作り。
演出の個性が、そのままキャラクターの個性になっているユニークなコンセプトだ。
強盗稼業から密輸業に転職するも、大陸の汚職官僚にキリキリ舞いさせられる者、大富豪を狙った誘拐を生業にする者、名前を変えて新たな仕事を狙う者。
しかし、彼らの一人が伝説の3人ヤクザを集めて、香港返還に合わせて大仕事をやろうと考えた事から運命が狂い始める。
これは香港返還という歴史的イベント、即ち"大樹"が招いた三つの小さな旋風の物語。
彼らは一瞬邂逅し、歴史の徒花として消える。
3人のヤクザ者は実在の人物らしい。
パワフルでどこか切ない、香港ノワール異色の快作。
こちらも正式公開を望みたい。

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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅・・・・・評価額1650円
2016年11月28日 (月) | 編集 |
ポケモンGO・ザ・ムービー?

「ハリー・ポッター」シリーズと世界観を共有する、新シリーズの第一弾。
世界中に生息する魔法動物について書かれた、ホグワーツ魔法学校の教科書「幻の動物とその生息地」の著者、魔法動物学者のニュート・スキャマンダーを主人公とした物語だ。
この本は実際に出版されているが、映画は本を執筆する前の冒険を描く物語で、直接の原作ではない。
舞台は現代のイギリスから、一気に時代をさかのぼり1920年代のニューヨークへ。
スキャマンダー先生は、ひょんなことから魔法動物の入ったトランクを、人間のおっさんのトランクと取り違え、超常の力を持つ動物たちが大都会に放たれてしまう。
J・K・ローリングが初のオリジナル脚本を書き下ろし、監督は「ハリー・ポッター」シリーズの“クローザー”として手腕は証明済みのデヴィッド・イェーツ。
大人から子供まで楽しめる見応えたっぷりの娯楽大作であり、続編への大きな期待を抱かせるに十分な仕上がりだ。

1926年のニューヨーク。
魔法動物学者のニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、絶滅寸前の魔法動物を研究し、保護する仕事をしている。
彼は保護したサンダーバードを故郷のアリゾナで解放するために、アメリカ大陸にやって来たのだ。
ところがちょっとしたアクシデントで、魔法動物が入ったトランクを人間のトランクと取り違えてしまう。
アメリカ合衆国魔法議会(MACUSA)のティナ・ゴールドスタイン(キャスリン・ウオーターストン)と共に、持ち主のジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)の居場所を突き止めた時には、既に何匹もの魔法動物が逃げ出してしまっていた。
おりしも、ニューヨークでは謎の魔法現象による事故が多発していて、魔法排斥を訴える人間との緊張が高まっていた。
MACUSAの闇祓い、パーシバル・グレイブズ(コリン・ファレル)は、事件を魔法動物によるものと考え、スキャマンダーの逮捕を命じる。
ティナの妹のクイニー(アリソン・スドル)の気転で脱出したニュートらは、逃げた魔法度物を捕まえつつ、事件の真相を探り始めるのだが・・・・


予告編の時から思っていたけど、こりゃまるでポケモンGOが実写になったような話だ。
魔法動物を捕まえるというコンセプトもそうなのだけど、キャラクターのビジュアルも似ている。
植物の苗の様なボウトラックルはマダツボミを思わせるし、光るモノが大好きなニフラーはちっちゃな黒いコダック、抑圧された魔法使いの負のエネルギーが作り出す魔法現象、オブスキュラスは超強力なゴースだ。
キャラクターは、そのままちょっとカリカチュアしてポケモン世界に置いても違和感ゼロ。
ドラえもんのポケット状態のスキャマンダー先生のトランクの中は、魅惑的な魔法動物たちが暮らす動物園の様で、是非ともテーマパークのアトラクションにして欲しい。

映画の前半は、逃がしてしまった魔法動物たちを追うポケGO編、後半はそこに魔法界の危機が加わり、複合的に盛り上がるという構図。
本作は「ハリー・ポッター」と同じ世界観の別の時代で展開するが、物語の構造は大きく異なる。
宿命を背負った少年ハリーを主人公とした「ハリー・ポッター」シリーズは、基本的に子供たちの成長ストーリーだ。
純真無垢な子供時代から始まる物語は、やがてヴォルデモートによる闇に包まれ、彼らは未来を取り戻すための熾烈な戦いを経て大人の魔法使いとなってゆく。
だから登場人物たちは常に新たな葛藤に直面し、一作毎に変化するのである
しかし新シリーズの主人公、ニュート・スキャマンダーは初めから完成された大人であって、本作でも特に大きな葛藤は抱えていないし、物語を通して変化もしない。
彼の役回りは、どちらかというと狂言回し
旅をしながらその土地の人々に新風をもたらし、葛藤を解消する契機となる存在で、「男は辛いよ」の寅さんや、「水戸黄門」の黄門様に近いのだ。

ここで、本作の舞台が第一次世界大戦と世界恐慌の狭間、狂騒の20年代のアメリカであることが生きてくる。
元々「ハリー・ポッター」は、反差別というテーマを内包している。
先日も舞台版のハーマイオニー役が、アフリカ系の俳優に決定したことが話題になったが、彼女は小説の中でもマグル(人間)出身として差別されていた。
「ハリー・ポッター」の裏テーマだった差別と不寛容とそれに対抗する力を描くのならば、なるほど現代のイギリスよりも、20年代のアメリカの方がずっと象徴化しやすく、異邦人であるスキャマンダー先生の視点で描けば尚更である。

アメリカでは、「魔法使いと人間との恋愛や結婚が禁止されている」という台詞が出てくるが、これはもちろん当時のアメリカの一部州で施行されていたジム・クロウ法を反映したもの。
魔女狩りを復活させようとする狂信的なキリスト教原理主義の結社が、魔法能力を持つ者を抑圧していたり、MACUSAのグレイブスがスキャマンダー先生とティナをすぐ死刑にしようとするのは、未だキリスト教の超保守派が力を持ち、死刑制度が残るアメリカへの皮肉だろう。
グレイブスがオブスキュラスを作る能力を持つ者を探すのも、恐怖によって人間との対立を煽り、戦争を起こすためだ。

一方で、スキャマンダー先生やティナだけでなく、“ノー・マジ(人間)”のジェイコブが思わぬ大活躍を見せ、クイニーとのロマンスで上記の魔法界版のジム・クロウ法に風穴を開けることを予感させるのは、本作のスタンスを象徴する。
狂騒の20年代には、文学では失われた世代が台頭、ジャズやアール・デコなど多くの新しい文化が花開き、放送メディアやモータリゼーションといったテクノロジー革命によって、古い既成概念が破壊されていった。
この時代に女性の社会進出が進み、しかし依然として壁があることも、ティナとクイニーの姉妹のMACUSAでの立ち位置によって表現されている。
議長が“マダム・プレジデント”なのは、もしかすると幻のヒラリー大統領へのローリングからのエールだったのかもしれない。

出自や性別もバラバラの、スキャマンダー先生と仲間たちの冒険は、アメリカ魔法界の厚い壁にも亀裂を入れ、狂騒の風を招き入れた。
振り返って90年後の現在、現実世界ではブレグジットやトランプの当選といった逆風が吹きまくっているが、少なくともフィクションの世界では順風の方がまだまだ優勢の様だ。
シリーズは5部作らしいけど、どこかで「ハリー・ポッター」シリーズとの接点も出てくるのか楽しみ。
エズラ・ミラーと、最後にサプライズ登場したあの人には、また暴れてほしいのだけど。

今回はマンハッタンが舞台ということで、ウォッカベースのカクテル「ビッグ・アップル」をチョイス。
氷で満たしたタンブラーに、ウォッカ45ml、アップル・ジュース適量を加え、軽くステアする。
カットしたリンゴを飾って完成。
クセがなく、スッキリとした味わいで、それゆえにグイグイいけてしまう危険なカクテルだ。

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ショートレビュー「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK・・・・・評価額1600円」
2016年11月21日 (月) | 編集 |
アウトローが、パパになる!?

無頼の正義漢、ジャック・リーチャーの活躍を描くシリーズ第二弾。
前作「アウトロー」の監督クリストファー・マッカリーが、「ローグ・ネイション」に引き続き「ミッション:インポッシブル」の6作目を手掛ける関係で、こちらはエドワード・ズウィックにバトンタッチ。
しかし監督は代っても、作家の特徴は上手く生かされている。
 
さす名プロデューサー、トム・クルーズ。 

トムと組んだ「ラスト・サムライ」や「ブラッド・ダイヤモンド」など、異なるバックグランウドを持つ二人の人物の関係を軸にした、バディものを得意とするズウィックだが、今回はコンビを超えてトリオ。 

しかも相手は二人の女性である。 

本作でジャック・リーチャーが成敗するのは、アフガンの戦場で暗躍する民間軍需企業と、彼らと通じた軍の幹部。
リーチャーと非公式な協力関係にあったスーザン・ターナー少佐が、アフガンでの武器横流し疑惑を調査したところ、軍内部に巣食う何者かの陰謀によって逮捕されてしまう。
それをリーチャーが救出し、二人で事件の真相に迫って行くのはバディものの王道。
だが、本作で彼は、もう一つの緊急事態に直面する。
それは見ず知らずの女性が、リーチャーの過去の軍籍を辿って出した請求。
実は彼には生まれたことを知らせていなかった15歳になるサマンサという娘がいて、彼女の養育費を支払えと言うのだ。
半信半疑のリーチャーだが、まずい事に敵が彼女の存在を知ってしまい、図らずも娘かも知れないサマンサを守りながら、ターナーと事件の謎を解くという二重作戦を余儀なくされるのである。


ぶっちゃけ、孤高の正義の味方が、軍と民間軍需会社が癒着した裏アフガン利権を暴くというのは、わりと既視感のあるモチーフ。 

だがこの映画の面白味は、むしろ本来お一人好きの主人公が、図らずも疑似家族の夫でパパになってしまい、むっちゃ気の強い女性二人相手にタジタジになるギャップにある。
 
年下のエリート軍人であるターナーとの、いいムードに成りそうでならない微妙な関係もさることながら、本作の白眉はやはりサマンサとの疑似親子の描写だろう。
最初は娘の存在など信じられなかったリーチャーだが、サマンサのカンの鋭さ、観察力の高さは天性のスパイというべきもので、彼女と過ごすうちに「んー、もしかしてホントにオレの娘かもしんない・・・(-ω-`;)ゞ」と、だんだんとパパの顔になってゆくのは見もの。
ターナーとサマンサがキャッキャと女子トークしている所に入ろうとして、バタンと扉を閉められてしまうところなんて、切なくて思わず吹いた。

もちろん、サスペンス・アクション映画としてもなかなか良く出来ていて、戦争を隠れ蓑にする巨悪を倒す展開は痛快だし、ハロウィン・パレードに湧くニューオーリンズの、迷路のような市街地を駆け巡る立体的な追跡劇は手に汗握る。
「ミッション:インポッシブル」シリーズほどギミック満載の超大作ではなく、製作費も半分以下のこちらのシリーズは7、80年代のプログラム・ピクチュアの趣のある愛すべき小品。 

しかしトム・クルーズも50代半ばになって、ひと昔前のイーストウッドみたいな役柄が似合う様になって来たなあ。

今回は、舞台となるニューオーリンズに度々襲来する、「ハリケーン」の名を持つご当地カクテル。
ライト・ラム60ml、ダーク・ラム60ml、パッションフルーツ・ジュース60ml、オレンジ・ジュース30ml、ライム・ジュース15ml、シロップ1tsp、グレナデン・シロップ1tspを氷と共にシェイクして、氷を満たしたグラスに注ぐ。
本当はハリケーングラスという腰のくびれた専用のグラスがあるのだが、ビアグラスやタンブラーでも良いだろう。
最後にスライスしたオレンジとマラスキーノ・チェリーを飾って完成。
南国らしい、華やかでさっぱりしたカクテルだ。
日本でハリケーンと言えば、ウイスキーベースのカクテルだが、こちらは全くの別物。

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