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ショートレビュー「ドラえもん のび太の新恐竜・・・・・評価額1700円」
2020年08月08日 (土) | 編集 |
三たび、恐竜時代の冒険へ。

映画版「ドラえもん」の40作目は、1980年の春に公開された記念すべき第一作「のび太の恐竜」の発展的なリメイク。
この作品は2006年にも「のび太の恐竜2006」としてリメイクされているので、今回の映画化は14年ぶり3度目となり、監督は一昨年の「のび太の宝島」で長編監督デビューを飾った今井一暁が務める。
「のび太の宝島」に続いて、今井監督と再タッグを組んだ川村元気による脚本が非常に良く出来ていて、オリジナルにディープなリスペクトを捧げつつ、グッと深みを増した進化形バージョンになっている。
全40本の中でも、少なくともトップ5には入るであろう傑作だ。

のび太が見つけた卵の化石から恐竜の赤ちゃんが生まれ、愛情を持って育てるも本来現代にはいてはいけない生物。
恐竜のためを考えて白亜紀の世界に戻しに行く、という基本プロットは変わらない。
しかし、この40年間の恐竜研究の様々な成果を取り込み、ディテールは大きくブラッシュアップされている。
恐竜の種類はフタバスズキリュウのピー助から、滑空飛行ができる新種の羽毛恐竜の双子キューとミューに変更。
双子のうち、快活なミューに対して、キューは体が小さく尻尾が短いという、「ファインディング・ニモ」的なハンディキャップがあることで、滑空が出来ないという設定が効いている。
キューの成長が、運動が苦手なのび太自身の成長とシンクロしてゆく仕組みだ。

面白いのが、キューとミュー以外の恐竜たちが、非常にリアルな3DCGで描写されていることで、これには最初違和感があったのだが、途中からその意図が明確になりなるほど納得。
オリジナルでは恐竜を捕まえて金持ちに売る、恐竜ハンターの存在が後半の脅威となるが、本作ではその存在は匂わされるものの、直接は出てこない。
かわりに終盤のサスペンスを盛り上げるのが、恐竜時代の終焉を告げる大隕石の衝突というカタストロフィと、近年発見が相次いだ肉食の超巨大翼竜だ。
隕石の辺りは、たぶんに川村元気のプロデュース作「君の名は。」の影響がありそうだが、本作はオリジナルの「のび太の恐竜」のパラレルワールド(?)と思わせる胸アツなオマージュもあり、SF(すこし・不思議)マインド溢れるクライマックスを作り上げている。
キューの持つハンディキャップが、絶滅ではなく進化につながるアイディアは、まさに21世紀的な多様性の表現となっており、老舗シリーズもしっかりアップデートしているのだなと感心。

監督の今井一暁は76年、川村元気は79年と共に70年代に生まれで、TVや漫画で「ドラえもん」に慣れ親しんで育った世代だろう。
観ていてビンビンに伝わってくるのが、作品と作者への愛だ。
作り手の世代が一巡したことで、オリジナルへのリスペクト溢れるストーリーと、テリングの技巧が高度にバランスした快作となった。
まあタイムパトロールに歴史改変はダメ云々言わせるのなら、のび太が卵をかえした時点や、ジュラ紀にアレを落とした時点で、思いっ切り改変してる気がするが、それを言い出すとそもそもドラえもんがのび太を助けに来ること自体が否定されちゃうので、あんまり突っ込むのも野暮だろう。
ちなみにタイムパトロールのジル博士が、生物の歴史への影響度を調べるのに使ってるのが、「T・Pぼん」のチェックカードだったりするのも芸が細かい。
「ドラえもん のび太の新恐竜」は、藤子・F・不二雄先生がこよなく愛した恐竜というモチーフを使い、ワクワク、ドキドキ、ワハハにホロリが全て入った実に楽しい娯楽映画だった。
しかしこれコロナ禍が収まらない中どのぐらい親子の観客が来てくれるのか、ファミリー層の試金石とも言える作品なので、是が非でもヒットして欲しいな。

オリジナルでのび太の恐竜だったフタバスズキリュウの化石は、1968年に福島県で発見された。
遠い昔に地球を支配していた恐竜はロマンを感じさせので、福島の花泉酒造が作るその名も「ロ万(ろまん)純米吟醸」をチョイス。
使用米から酵母、水に至るまで徹底的に地元産に拘って作られた“ザ・地酒”。
喉ごし柔らか、旨みと甘みは上品ですっきりとした味わい。
白亜紀の海を泳ぐフタバスズキリュウを想像しながら、ほろ酔いしたい。

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ショートレビュー「君が世界のはじまり・・・・・評価額1650円」
2020年08月06日 (木) | 編集 |
はじまりの朝は、美しい。

なるほど、最後まで観てタイトルの合点がいった。
大阪のとある高校に通う、平凡な高校生たちの青春群像劇。
小説家としても活躍するふくだももこ監督が、自身の作品「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を再構成してセルフ映画化した。
脚色を担当したのは、山下敦弘とのコンビ作で知られる向井康介。
松本穂香演じる「えん(縁)」を軸に、それぞれに葛藤を抱えた若者たちの日常が描かれる。

えんの惚れっぽい幼馴染の琴子に、学園屈指のモテ男でえんと仲のいい岡田。
父親が心を病み、 苦悩を一人で抱え込んでいる業平。
母親が家出したのは父親のせいだと思っている純と、東京から引っ越して来て地元に馴染めずにいる伊尾。
何人かの物語は密接に絡み合い、何人かは無関係に進んでゆく。
共通するのは、竹を割ったように分かりやすい性格の琴子をのぞいて、皆人に言えない葛藤を内心に抱えていること。
まだ十代の彼らの世界は狭い。
学校と家、閉鎖が決まっている地元のショッピングモール、登下校に使う道がほとんど全てだ。
「小さな街=世界」であることの閉塞が物語を生み、大雨の夜の無人のショッピングモールという舞台で、ブルーハーツの歌と共にダイナミックに収束するという構造。
シネマスコープのアスペクト比を生かした、渡邊雅紀による鮮烈なショットの数々が、映画的な豊かさを感じさせ素晴らしい。
これは言わば令和版の「台風クラブ」で、もう一つの「リバーズ・エッジ」だ。
大雨が全てを洗い流し、清々しい朝に皆が新しい世界にスタートを切る。

だが、中にはそこに辿りつけない者もいる。
映画の冒頭でショッキングな事件が起こる。
果たして、取り返しのつかない事件を起こしたのは誰なのか?という興味が全体を引っ張り、若者たちが問題に向き合う鍵となる。
面白いのは、暖かな家庭に育ち、登場人物の中で一番普通に見える松本穂香のキャラクターだ。
一見すると、特に問題を抱えていない彼女の役割は、「リバーズ・エッジ」の空っぽの二階堂ふみに近いのだが、高い演技力が要求される難役。
実は彼女の本名は「ゆかり」というのだが、小学校の頃に琴子から、「あんた、ゆかり言うより、えんっぽいわ」と言われ、琴子からだけ「えん」と呼ばれている。
その名の通り、不思議な吸引力を持つえんの周りには、訳ありの登場人物たちが集まってくるのだが、最後には彼女自身が心に秘めてきた感情も明らかとなる。
それはクライマックスのショッピングモールに、琴子だけがいない理由でもあるのだけど、ちょっと不思議なタイトルを含めて、物語がストンと落ちた。

印象的だったのが、80年代の「台風クラブ」やバブル崩壊後の90年代を舞台とした「リバーズ・エッジ」と比べると、やはり登場人物が総じて柔らかで丸いことだ。
ふくだももこの作家性もあるのだろうが、登場人物のキャラクターの違いは平成生まれのふくだももこと、相米慎二、行定勲との世代差でもあると思う。
十代の若者たちが抱く葛藤そのものは、昭和も平成も変わらないし、だからこそ青春の普遍としてのブルーハーツなんだろう。
しかし、私も日頃から十代の若者と接する仕事をしているが、平成生まれはその状況に置かれた時の反応や考え方が少し違うと感じる。
最低限満ち足りてはいるものの、社会全体が閉塞する時代に育った現在のティーンたちは、自分に対しても他人に対しても、ありのままを受け入れる傾向が強いように思う。
もちろん個人によっても違いはあるが、本作はそんな世代の特質が端的に現れた作品になっているのではなかろうか。 

今回は、朝の光が強烈だったので目覚めの一杯「モーニング・カクテル」をチョイス。
ブランデー30ml、ドライ・ベルモット30ml、ペルノ2dash、ホワイト・キュラソー2dash、マラスキーノ2dash、オレンジ・ビターズ2dashをミキシンググラスでステアし、グラスに注ぐ。
マラスキーノ・チェリーを沈め、レモン・ピールをサッと絞って完成。
名前の通り、ぼんやりした頭も一発で目覚める一杯だ。
強いし、またすぐ眠くなるけど。
ちなみに同名のノンアルカクテルもある。

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海辺の映画館 キネマの玉手箱・・・・・評価額1800円
2020年08月03日 (月) | 編集 |
いつかまた、キネマの天地で。

今年の4月10日に、肺癌のため82年の生涯を閉じた大林宣彦監督の遺作。
鬼才最後の作品は、いろいろな意味で渾身の仕上がりである。
尾道にある古い映画館が閉館の日を迎え、「日本の戦争映画」をテーマに、最後のオールナイト興業が開かれる。
映画を観に来ていた三人の若者たちは、いつの間にかスクリーンの世界に飛び込み、幕末の戊辰戦争から太平洋戦争まで、映画のヒロインたちが戦争の犠牲となるのを目撃する。
上映時間179分に及ぶ大長編も、怒涛の映像コラージュで一気呵成。
晩年の「この空の花-長岡花火物語」からはじまる「戦争三部作」を含め、作者の映画的記憶を内包しつつ、次の世代に伝えたいことを全て言い尽くした。
果たして、これほど完全な「遺言」を残した映画作家が過去にいただろうか。

広島県尾道市。
人々に愛されてきた海辺の小さな映画館「瀬戸内キネマ」が閉館の日を迎えた。
最後のプログラムである「日本の戦争映画」特集を観ていた馬場毬夫(厚木拓郎)、鳥鳳介(細山田隆人)、団茂(細田善彦)は、劇場を襲った稲妻の光と共に映画の世界へとトリップ。
戊辰戦争の白虎隊、婦女隊の悲劇から、日中戦争を経て、太平洋戦争の沖縄戦へ。
毬夫たちは、同じようにスクリーンの内側に取り込まれた希子(吉田玲)と映画のヒロインたちを助けようとするのだが、何度やっても彼女たちは悲劇から逃れられない。
そして彼らは広島の原爆に散った移動劇団「桜隊」と出会い、なんとか彼らを歴史の現実から救い出そうとするのだが・・・・


元々非常に自由な作風だったとは言え、10年代に入ると大林宣彦のイマジネーションは、映画のあらゆるお約束から解き放たれて加速してゆく。
東日本大震災の翌年に公開された「この空の花-長岡花火物語」は、鎮魂の花火として有名な長岡花火大会をモチーフに、都市の持つ遠大な記憶を描いた。
松雪泰子演じる長崎原爆の被爆二世の記者は、時空を超えて届く死者たちの声を聞く。
戊辰戦争の荒廃後、「目先の金よりも未来を担う人材育成を」と説いた小林虎三郎の米百俵の故事から、太平洋戦争へ。
多くの犠牲者を出した長岡空襲から、平和への想いは遥か海を超えてパールハーバーへと広がってゆく。

この映画から始まる戦争の記憶の旅は、AKB48のPVとして作られた「So Long ! THE MOVIE」を第1.5章として間にはさみ、第二章として北海道の芦別を舞台とした「野のなななのか」へと引き継がれる。
ここでは、午後2時46分で止まった時計が、昭和20年の8月と2011年の3月を結び、忘れられた樺太の戦いの記憶が語られる。
そして「戦争三部作」の最終章となったのは、昭和16年の唐津を舞台とした青春群像劇「花筐/HANAGATAMI」だ。
土地の持つ記憶をフィーチャーした前二作とは異なり、この映画は戦争の時代を生きた若者たちの記憶を宿した個人史であり、彼らの抱いている「青春が戦争の消耗品だなんて、まっぴらだ!」という葛藤が現代の我々への問いかけとなっていた。

これら全ての作品は、大林宣彦という稀代の映画作家が創造した脳内ワンダーランド
既存の映画文法は意味を持たず、スクリーンの中では生者も死者も、過去も未来も、現実も虚構もシームレスにコラージュされごちゃ混ぜになっている。
「花筐/HANAGATAMI」が一番わかりやすいが、一本の映画の中にも商業映画デビュー作の「HOUSE / ハウス」やそれ以前の自主制作映画の記憶も封じ込められ、ある種のタイムカプセルともなっているのである。
本作では、高橋幸宏演じる語り部の「爺・ファンタ」として、また本人の姿までスクリーンに登場し、過去の全ての作品を内包する大林宣彦のシネマティック・ワンダーランドの集大成。

私たちは芸術作品と接する時、ある程度自分の記憶なり経験値と照らし合わせて鑑賞している。
だから「映画ってこんなもの」という常識が一切通用しない本作は、普通の映画しか知らない人が観たら、たぶんものすごく入り難い
ストーリーにもテリングにも、法則性がほぼ無いので、何が起こっているのかも分からないかも知れない。
しかしそれでも、次第に溢れんばかりのエモーションの嵐に巻き込まれ、心が激しく揺さぶられるだろう。

瀬戸内キネマのスクリーンの内で、時空を巡りながら展開する“日本の戦争”。
主人公の毬夫たちは、「この空の花-長岡花火物語」で猪俣南が演じた一輪車の少女と同じく、死者の声を届ける役割である少女・希子に導かれ、常盤貴子、成海璃子、山崎紘菜が演じる映画のヒロインたちと時に恋に落ち、時に夫婦となり、いくつもの戦争を経験する。
戊辰戦争では、新政府軍と戦った武家の女性たちによる婦女隊の悲劇。
薙刀の名手だった中野竹子は、敵弾を受けて倒れ、妹に介錯され自害する。
日中戦争では日本軍に捕まった中国人の少女を守って逃走するが、結局彼女は殺されてしまう。
沖縄戦では徴兵されて軍隊に駆り出され、残された妻は日本軍の士官の慰み者にされる。
ちなみに三人の若者の役名、馬場鞠夫はマリオ・バーバ、鳥鳳介はフランソワ・トリュフォー、団茂はドン・シーゲルから取られているらしい。
反対に女性陣は全員が尾道三部作のヒロインの役名で、この辺りも大林宣彦の映画的な記憶としての本作の世界観がよく現れている。

映画の中で戦争の暴力がもたらす真実を知った若者たちは、最後に巡り合った桜隊をなんとか救おうとする。
新藤兼人監督のドキュメンタリードラマ映画「さくら隊散る」でも描かれた移動劇団桜隊は、昭和20年8月6日に、滞在先の広島で原爆に遭遇。
彼らの宿舎があった場所は、爆心地からわずか700メートル。
「ピカ」を見て即死した者五名、「ドン」まで聞いたものの、原爆症で苦しみながら亡くなったもの四名。
日本映画史に燦然と輝く傑作、阪妻版「無法松の一生」でヒロインを演じた名女優・園井恵子も、「ドン」で命を落とした一人だ。
虚構の向こうにあるのは、現実の生と死の記憶。
歴史的な事実を描いた映画は、その悲劇からは逃れられない。

まあ中には史実を描きかえてヒットラーを殺しちゃう、タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」みたいな映画もあるが、所詮は虚構によって別の虚構を作り出しているに過ぎない。
本作の虚構=映画に対するスタンスは違う。
終始貫かれるのは徹底的な映画への愛、というか信頼。
大林宣彦は映画という虚構は現実ではないが、未来の現実を動かせると信じている。
毬夫たちのように、映画によって激しく感情を動かされた人たちが、戦争の無い未来、ヒロインたちが死なない未来を作ると信じているのだ。
それは映画人の楽天的な夢かも知れない。
だが本作は集大成の集大成、誰よりも虚構の力を知る元祖映像の魔術師が、文字通りに命を削って作り上げた今を生きる人々への最後のメッセージ
パワフルな映画体験に圧倒され、その想いの強さに最後には涙が止まらなくなった。
大林監督、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。

今回は20年ぶりに大林映画の舞台となった尾道のお隣、三島市の醉心山根本店の「醉心 純米吟醸」をチョイス。
戊辰戦争前の幕末1860年に創業し、日本画の横山大観の愛飲酒としても有名な銘柄。
こちらはやや辛口で純米吟醸らしく芳潤。
強いクセはなく落ち着いた味わい。
出来れば瀬戸内の地のものと合わせたいが、特に魚介類とのマッチングが抜群だ。

しかしコロナの影響で一旦公開延期になり、本来の公開初日の4月10日に大林宣彦が死去したのも運命的だが、キナ臭さを増す戦後75年目の夏に公開されるのもまた意義深い。
どこまでも映画の神に愛された人だったんだなあ。

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アルプススタンドのはしの方・・・・・評価額1700円
2020年07月28日 (火) | 編集 |
端の方にも、ドラマはある。

真夏の清涼剤のような、とても気持ちのいい作品だ。
舞台は高校野球の甲子園大会。
灼熱の太陽の下、グランドでは埼玉代表の東入間高校が格上の強豪校に挑んでいる。
だが、本作で描かれるのは高校野球の熱戦ではない。
これはグランドでプレーする球児たちとは対照的に、挫折を抱え「しょうがない」と勝負を諦めてしまった四人の高校生たちを描く作品だ。
彼らがいる所こそ、「アルプススタンドのはしの方」なのである。
兵庫県立東播磨高校演劇部の顧問・藪博晶が執筆し、2017年の全国高等学校演劇大会のグランプリに輝いた同名戯曲の映画化。
演劇畑の奥村哲也が映画用に脚色し、城定秀夫監督が鮮やかな青春映画の快作に仕上げた。

夏の甲子園大会の一回戦。
東入間高校野球部の応援をする安田さん(小野莉奈)と田宮さん(西本まりん)は演劇部。
ルールもよく知らない野球の試合にはあまり興味が持てず、アルプススタンドの隅っこで時間を潰している。
近くには元野球部の藤野くん(平井亜門)と、帰宅部で優等生の宮下さん(中村朱里)がいる。
相手チームは格上の強豪校。
熱烈に野球を愛する英語教師の厚木(目次立樹)や、ブラスバンド部の久住さん(黒木ひかり)は懸命に応援するが、東入間高校は打ち込まれ、敗戦ムードが漂い始める。
そんな時、ベンチウォーマーの矢野が代打で起用され、起死回生のヒットを放つ。
チームの勢いが復活し、「もしかしたら勝てるかも」とアルプススタンドは騒めきはじめる。
しかし、先の読めない試合の展開と共に、見守る安田さんたちの心も揺れていた・・・


アルプススタンドの端の方に陣取る、応援に駆り出された生徒たちを描く青春群像劇
演劇部員で、高校演劇関東大会で不戦敗となってしまった、安田さんと田宮さん。
大会に出る前に野球部を辞めた、元ピッチャーの藤野くん。
模試で初めてトップから滑り落ちた、帰宅部の優等生で眼鏡っ娘の宮下さん。
アンサンブルの軸となるのはこの四人。
演劇大会のルールで上演時間60分の制約がある元の戯曲では、登場人物は彼らだけだったと言う。
映画版ではこの四人に絡む形で、野球が大好きなのに、なぜか茶道部の顧問になってしまった熱血教師の厚木と、マウンドで頑張る野球部のエース園田の彼女で、ブラスバンド部を率いる久住さんたちが加わる。
ちなみに舞台となるアルプススタンドとは、甲子園の内野席と外野席の間にある観覧席。
1929年に高校野球(当時は中等学校野球)の人気の高まりと共に増設され、当時の人気漫画家の岡本一平が空に向かってそびえ立つスタンドを見て「アルプス」に擬えたことから、そう呼ばれるようになったという。

映画になっても、構造は非常に演劇的だ。
物語の大半はアルプススタンドの一角で展開し、あとは僅かなシーンがスタンド裏の屋内で描かれるのみ。
グランドで繰り広げられている熱戦は、音は聞こえてくるものの一度たりとも映像としてはスクリーンで描写されない。
この見えない試合の展開が、登場人物の心を変化させる触媒として機能する仕組みだ。
当初、東入間高校はずっと格上の相手に苦戦を強いられている。
厚木や久住さんたちが、勝利を信じて懸命に応援を繰り広げる中、端の方の生徒たちは応援にも全く熱が入らない。

この四人、それぞれに挫折を経験したばかり。
演劇部の安田さんは、自ら執筆した脚本で地区大会、県大会を突破し、関東大会まで駒を進めたものの、田宮さんがインフルエンザにかかったことで、出場が叶わなくなってしまう。
そのために、この二人の間には微妙なわだかまりが残っているのだ。
高校演劇を描いた「幕が上がる」の記事でも紹介したが、高校の演劇大会はスケジュールが独特で、秋の地区大会から始まって、年度内に終わるのは関東大会などのブロック大会まで。
決勝の全国大会は、次年度に行われるので、三年生はたとえ関東大会を突破したとしても全国大会には出られない。
三年生の安田さんにとっては、秋の地区大会に再挑戦したとしても、決勝にいけるのは後輩たちなのである。
だから彼女はすっかり諦めてしまっていて、自分を慰めるように「しょうがない」が口癖となり、原因を作った田宮さんも彼女に気兼ねして言いたいことを言えない。

元野球部の藤野くんは、今まさにグランドでプレーしているエースの園田と自分を比較して、才能のなさを実感。
試合する前に野球部を辞めて、マウンドから降りてしまった。
一方、勉強しか取り柄がない優等生の宮下さんは、園田にほのかな恋心を抱いているが、その園田と実際に付き合っているのは、自分を模試で負かしたブラスバンド部長の久住さんだという、無情な現実に打ちひしがれている。
それぞれに、挫折を経験し「しょうがないよね(自分はこの程度の人間だよ)」と諦めてしまっている四人の心を、目の前で展開している野球部の試合が動かしてゆく。

これは問題を抱えた高校生たちが、それぞれの挫折とどう向き合うのかの物語。
グランドでは東入間高校のナインたちが、格上相手に一歩も怯まず、ジリジリと点差をつめて、遂に9回裏に一点差に追いつく。
一発逆転のかかったチャンスを作るのが、藤野くんが「ヘタクソ」と馬鹿にしていたベンチウォーマーの矢野というのがポイントだ。
藤野くんは自分に才能がないから諦めた。
しかしもっと才能のないはずの矢野は、懸命な努力の結果三年間のクライマックスに起用され、結果を出したのである。
試合の劇的な展開が触媒となり、安田さんの中の「しょうがない」という諦めも、だんだんと「悔しい。もう一度チャレンジしたい」という気持ちに変わってくる。
罪悪感を抱えていた田宮さんもとうとう彼女に心の内を語り、「諦めた理由」が目の前で砕け散った藤野くんも、誰にも気兼ねせずに園田を精一杯応援できた宮下さんも、試合の勝敗に関係なくいつの間にか前を向いている。

人は頑張ってる人の姿を見ていると、自分も背中を押されて頑張りたくなる。
この辺りは先日公開された「のぼる小寺さん」にも通じる。
頑張っている人を見つめる、目線の移動が需要な演出となるのも同様。
本作の場合は、勾配のあるアルプススタンドの構造が効いている。
そびえ立つスタンドの端、つまりスタジアムの熱狂とは一番離れたところから始まった物語は、やがてスタンドの中央で応援する厚木や久住さんを経由して、グランドでプレーするチームと一体になってゆく。
そして登場人物の変化の触媒が、スクリーンに一度も姿を見せないのは、10年代を代表する邦画青春映画となった「桐島、部活やめるってよ」的でもある。
特に姿なきキーパーソンである矢野が、物語のエピローグであることを成し遂げているのは、「桐島」の作中で、ドラフトを待ち続けている三年生のキャプテンのエピソードを思い出した。
最後まで諦めない、というのはやっぱり大切なのである。
本作は、物語の大半がアルプススタンドの一角で展開するごく小さな映画だが、その感動は大作級だ。
安田さんたちと一緒に、見えない試合に一喜一憂しているうちに、特に問題を抱えていなくても何だか感動して、チャレンジしよう、頑張ろうと思えてくる。
今青春真っ只中にいて、何かに挫折してしまった人たちはもちろん、青春の輝きが遠い昔になってしまった人たちも、きっとこの映画から元気をもらえるだろう。

今回は思いっきり夏っぽいカクテル「ブルー・ハワイ」をチョイス。
ブルー・キュラソー20ml、ドライ・ラム30ml、パイナップル・ジュース30ml、レモン・ジュース15mlをシェイクして、クラッシュド・アイスを入れたグラスに注ぐ。
最後にカットしたパイナップルを飾って、ストローを2本さして完成。
ブルー・キュラソーの鮮やかな青に、ラムの優しく甘い香り。
2種類のジュースが作り出す、フルーティーな酸味が青春の味。
ストローを2本さすのは、一応氷詰まりに対応するためと言われているが、ホントは恋人と甘い思い出を作りたいだけ?

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劇場・・・・・評価額1750円
2020年07月23日 (木) | 編集 |
なぜ彼は、「一番安全な場所」から逃げたのか。

終盤、涙が止まらなくなった。
又吉直樹の同名原作は未読だが、これはまさしく「劇場」の映画だ。
小劇団を主宰する、売れない劇作家兼演出家の永田が、役者志望の学生・沙希と恋に落ちてから、およそ10年間の物語。
無情に過ぎてゆく時間に、懸命に抗う永田を演じる山崎賢人と、彼を支える沙希役の松岡茉優が素晴らしい。
行定勲監督は「リバーズ・エッジ」、オムニバス映画の「その瞬間、僕は泣きたくなった CINEMA FIGHTERS project」の一編「海風」に続いて、心揺さぶる鮮烈な傑作を放った。
本作は今年の4月に松竹配給で公開される予定だったが、コロナの影響で延期となり、結果的にユーロスペースをはじめとしたミニシアターでの劇場公開と、Amazonプライムによる配信開始が同時という異例のケースとなった。
ポストコロナの映画の新しいカタチとしても、一つの試金石となるだろう。

友人の野原(寛一郎)と共に、小劇団「おろか」を主宰する永田(山崎賢人)。
しかし永田のラジカルな作風は酷評されていて、客足も伸びない。
ついには団員たちにも見放され、劇団は半ば解散状態に。
そんなある日、永田は街で偶然自分と同じ靴を履いていた沙希(松岡茉優)を見かけ、声を掛ける。
服飾系の学校に通う彼女は、中学高校と演劇部に所属し、女優になる夢を抱いて上京していた。
やがて下北沢の沙希のアパートへ転がり込んだ永田は、新作のヒロインに彼女を起用し、舞台は初めて成功を収める。
しかしそれ以降、永田は彼女を役者として起用することはなく、ますます演劇に没頭してゆく。
沙希はそんな永田に自分の夢を重ね、懸命に支え続けるのだが、二人の間にある理想と現実の乖離は少しずつ溝を生んでいた。
二人が出会ってから10年近い歳月が過ぎた頃、沙希はある決意を口にする・・・・


この映画は、山崎賢人のダメ人間っぷりを愛でる作品だ。
まず最初の二人の出会いからして、ほとんど変質者。
イケメンであることは隠しようがないが、ボサボサ頭に無精髭で挙動不審。
振り返ったら奴がいた段階で、私だったら悲鳴あげて逃げるわ(笑
いつの間にか沙希の部屋に転がり込むのは、ある意味バンドマンと小劇団関係者のお約束。
なし崩し的に同棲することになって、最初こそ一緒に作った舞台が成功して良い感じなのだが、ここでケチな嫉妬心が顔を出す。
自分の脚本や演出よりも、沙希の演技が評価されるのが気に食わず、共同作業をやめてしまう。
結果、永田は役者志望だった沙希の夢と才能を潰してしまうのだ。

それでも彼女が何も言わずに支えてくれるものだから、この男はますます調子に乗る。
二人が同棲を始めてしばらく経った頃、永田のダメさを象徴するシーンがある。
沙希の実家から食べ物が送られて来て、彼女が何の気なしに母親が「送っても半分は知らない男に食べられると思うとイヤだ〜」と話していたと冗談めかして言うと、途端に不機嫌になり「オレ沙希ちゃんのオカン嫌いだわ」と真顔で言い放つのである。
売れない、認められない、コンプレックスの塊なのに、自意識過剰で自分大好き。
普通に考えればとんでもない彼氏なんだけど、いつまで経っても成長しない、この男に感情移入するのをどうしても止められない。

山崎賢人というと、漫画の実写映画の印象が強い。
「キングダム 」など良くできた作品も多いのだが、漫画原作はベースの絵がある分、どうしてもコスプレ感が先に立ち、俳優としては必ずしも十分な評価がされて来たとは言えなかったと思う。
だが本作では、理想と現実の間で足掻き続ける若者を説得力たっぷりに演じ、圧巻の名演だ。
間違いなくキャリアベストで、今年の演技賞には必ず絡んでくるだろう。

対して、松岡茉優演じる沙希は、芸術系ダメ人間の目線ではもはや理想のミューズである。
映画の前半の沙希は、いつもニコニコして献身的にヒモ状態の永田を支え、どんなに彼が我儘で酷いことを言っても、すぐに許してくれる。
まさに永田にとっては「一番安全な場所」であり、自分を殺してでも相手の全てを受け入れちゃうので、ある意味絶対にダメ人間と組み合わせてはいけないタイプの人だ。
あえてだろう、前半は基本的に沙希の内面はほとんど描かれない。
永田に母親を貶された時など、たまに感情をあらわにすることはあるが、それも相当に押し殺した最低限の感情の発露。
ひたすら寛容に、文句ひとつ言わずに永田の夢を後押しする慈愛の塊の様な存在だ。

だが沙希との生活を続けることは、永田にとっては水から煮られて気づかないうちに死んでしまうカエルになることを意味する。
彼女といれば、基本的に何もしないでも生きていけるのだが、それでは創作者としては終わってしまう。
ダメ人間だが、自尊心は高い永田は、ぬるま湯の誘惑の危険性は本能的に理解しているのだ。
しかし永田が仕事場を借りて部屋を出ることは、沙希にとっては自分の夢と引き換えに作った、「一番安全な場所」すら否定されたことと同じ。
物語の終盤になって、それまで永田のやりたい放題の影に隠れていた彼女の内面がようやく前面に出てくる。
共依存の関係で、長年に渡って絡み合ってしまった感情はやるせなく、とても切ない。
同じ方向を向いると思っていた二人の間にはいつの間にか大きな溝ができていて、共に人生の岐路に立っているのだ。
本作がユニークなのは、若い二人の恋愛映画でありながら、描写としては徹底的にプラトニックで、キスシーンすらないこと。
これも二人の葛藤が、精神的なものだということを強調するためだろう。

もし劇団で沙希との共同作業を続けていたら。
もし仕事部屋を別に借りなかったら。
もし永田がもう少し彼女を思いやっていれば、現在は変わっていたかもしれない。
別れと同時に大いなる反省の時を迎えて、永田はようやく二人の葛藤を演劇として昇華する。
これは言わば演劇という虚構の現実を夢見た若者の、青春の始まりと終わりを描いた行定勲版の「ラ・ラ・ランド」だ。
異なるのは、あの映画がエマ・ストーンとライアン・ゴズリング双方の立場から描かれていたのに対し、こちらは基本的に男目線。
”IFの現実”に落とし込むのは同じでも、結局のところ彼女の青春を食い潰して、ようやく夢を叶えてゴメンなさいなのだから、調子の良い話ではある。
でも、映画は別に道徳の教本みたいに、“正しいこと”を描くものではない。
ダメ人間をダメ人間として描き、ダメ人間を愛してしまったが故の彼女の失敗もそのまま描いている本作の登場人物は、どこまでも人間的で切なく愛おしい。
この社会では、誰もが何かしらの後悔を抱え、明日の成功を夢見て、今日を懸命に生きている。
原作とは違うというラストの描写も、実に映画的で素晴らしかった。

ところで、本作はスクリーンで観てから配信という順で鑑賞した。
多くの観客と共に、ミニシアターのスクリーン越しに見る小劇場は、非常に感覚的な距離感が近い。
まるで劇場の中に、もう一つの劇場がある感じ。
一方で、明るいリビングのモニターに映し出される小劇場は、客観性が強調されて少し遠く感じるが、たった一人で永田に感情移入しながらの鑑賞もなかなか味わい深い。
鑑賞形態でどの様に印象が変わるのか、コロナの時代がもたらした“実験”としても興味深い映画体験だった。

今回は、下北沢を舞台にした青春ストーリーなので、下町の安い居酒屋でよく見かける「バイスサワー」をチョイス。
株式会社コダマ飲料の製造する、ピンク色のサワーの焼酎割。
甲種焼酎90mlを氷を入れたグラスに注ぎ、バイスサワー200mlで割るだけ。
甘酸っぱくほのかな紫蘇の香りがフレッシュで、クセもなく飲み飽きない。
長らく業務用にしか売られていなかったので、店でしか飲めない味だったが、今はネット通販のおかげで家飲みでも楽しめる様になった。

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