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新感染半島 ファイナル・ステージ・・・・・評価額1700円
2021年01月03日 (日) | 編集 |
今度は戦争だ!

ゾンビ映画の歴史を書き換えた、ヨン・サンホ監督の大ヒット作「新感染 ファイナル・エクスプレス」から4年後。
終末の世界となったかつての祖国から、残された大量のドル札を持ち出すため、死地へと足を踏み入れる元軍人たちの冒険を描く待望の続編。
これで「ソウル・ステーション/パンデミック」から始まった、それぞれにタッチの違うユニークな三部作が完結したことになる。
このシリーズは毎回登場人物が入れ替わるが、新たな主役となるのは、カン・ドンウォン演じる贖罪と後悔の記憶を抱える元軍人ジョンソク。
廃墟となった祖国で、彼と行動を共にすることになる生き残り女性のミンジョンを、イ・ジョンヒョンが演じる。
本国では、コロナが一時下火になっていた夏休みシーズンに公開され、大ヒット。
興行街が息を吹きかえす、日本でいうところの「鬼滅の刃」の役割を果たした。
※核心部分に触れています。

国家をたった1日で壊滅させた、ゾンビウィルスのパンデミックから4年。
生き残った韓国人たちは難民として周辺国に散り散りとなり、差別と貧困の中で生きていた。
元軍人のジョンソク(カン・ドンウォン)は、4年前に姉の家族と共に海路で脱出に成功するも、船で起こった感染によって姉と甥を失い、香港で荒んだ生活を送っている。
ある日、ジョンソクは地元のボスから韓国に残された2千万ドルを回収する仕事を依頼される。
半分の取り分を約束されたジョンソクは、義兄のチョルミン(キム・ドユン)ら生き残りの韓国人たちとチームを組み、仁川へと上陸。
一行はゾンビが夜目が効かないことを利用し、目的のトラックを見つけたものの、大きな音を立ててしまったために膨大な数のゾンビに囲まれてしまう。
チョルミンはトラックの荷台に隠れたものの、ジョンソクはゾンビの群れの中で孤立。
すると、突然二人の少女が乗ったSUVが現れ、彼を救出する。
ジョンソクを助けたジュニ(イ・レ)とユジン(イ・イレウォン)は、母親のミンジョン(イ・ジョンヒョン)と“師団長”と呼ばれる心を病んだ元軍人のキム(クォン・へヒョ)と、隠れるように暮らしていた。
しかし荒廃し、死の世界となった祖国で、生き残っていたのは彼らだけではなかった・・・・


異才ヨン・サンホが生み出した三部作は、映画史的にも希有な作品だ。
何しろ作家と世界観は共通だが、それぞれに登場人物もジャンルも表現手法すら全く異なるのだ。
一作目の「ソウル・ステーション パンデミック」は、ゾンビウィルスのパンデミックの始まりをアニメーションで描く。
主人公は風俗嬢とホームレスという社会の低層の人たちで、彼らの間で始まったパンデミックを、政府は反政府暴動と勘違いし、鎮圧しようとするのである。
前門の警察、後門のゾンビに囲まれた人々には、どこにも逃げ場がない。
ここでは、ゾンビ現象は社会のセーフティネットから忘れられた人々と同一視されている。
興行上の理由から公開順は逆になったが、第二作の「新感染 ファイナル・エクスプレス」は、一転して実写映画となり、韓国社会の縮図として高速列車KTXに乗り合わせた人々が描かれる。
主人公となるのは一作目と対照的に、冷酷なエリートファンドマネージャーと、その優しく聡明な娘。
未曾有のパニックの中、非共感キャラクターの主人公は、やがて利他の行為を出来るようになり、遂に娘への究極の愛を実現する。
この作品におけるゾンビは、いわば理性なき人間の欲望の象徴として描かれている。

そして第三弾となる本作は、廃墟と化した大都市・仁川を舞台としたバトルアクションだ。
ゾンビはもはや危険な小道具の一つと化し、最大の敵は人間性を失った人間に設定されているのが最大の特徴。
実写映画ではあるが、舞台やアクションの多くは3DCGで描かれていて、いわば実写とアニメーションのハイブリッド
アニメーションからキャリアをスタートし、実写を経験したヨン・サンホにとっては、存分に手腕を発揮できる状況が整ったと言えるだろう。

本作の内容を端的に表現すれば、物語の入り口は「エイリアン2」で、出口は「マッドマックス」である。
主人公のジョンソクは、パンデミックを生き延びた元軍人。
彼は「エイリアン2」のリプリーと同じように、せっかく生き延びたのに経済的な理由で死地へと逆戻りする。
前作のレビューで、目的地が釜山であることに込められた意味は書いたが、本作が一度は祖国を去ることを余儀なくされた軍人の、“仁川上陸”から始まるのも同じ文脈だろう。
しかし現金を積んだトラックの回収という任務は、ゾンビの襲撃によってあっさり失敗。
すると今度は、ポストアポカリプト物の代表作である、「マッドマックス」的世界へと急展開するのである。
パンデミック後のゾンビが跋扈する韓国でも、生き残っている人間は僅かながら存在する。
ジョンソクを救出するミンジョンの一家以外にも、601部隊と呼ばれる軍の部隊が要塞を作って籠城していてるのだ。
どっかで見たようなトゲトゲの車を駆り、”野良犬”と呼ばれる外部の生存者を使った残酷なデスゲームに興じる、ヒャッハーな無法者集団と化した彼らこそが、ジョンソクらにとってゾンビ以上の脅威となる。
社会から法と秩序が消え、欲望の赴くまま行動するようになれば、それはもはやゾンビも人間も一緒という訳だ。

ぶっちゃけ、人間ドラマとしては前作よりも明らかに弱い。
ジョンソクは、韓国を脱出する時に助けを求めるミンジョンを一度見捨てている。
さらに船の中では姉と甥を助けられず、ずっと後悔と贖罪の念を抱えていて、だからこそ今度こそは誰も見殺しにしないという強い意思が彼の行動原理となっている。
だが、やはり親子の究極の愛をドラマチックに描いた前作に比べてしまうと、守るべき対象が姉の夫だったり、赤の他人だったり、主人公にとって存在がやや遠いのだ。
代わりに、アクション活劇としては列車という密室から解放され、前作を遥かに凌駕する凄いことをやっている。
ゾンビ相手の戦いだけでなく、601部隊に囚われたチョルミンの救出劇、都市全体を舞台としたクライマックスの怒涛のカーチェイスと見せ場はてんこ盛りだ。
特に廃墟の仁川で、ゾンビを轢き殺しながらどつき合うカーチェイスを見ると、ヨン・サンホはやっぱりアニメーション畑の人だなと感じる。
シチュエーション的には「マッドマックス」なのだが、本作の舞台は広大な砂漠ではなく路地や立体交差が複雑に入り組んだ大都市だ。
ここを縦横無尽に駆け巡るカーチェイスは、CGであることを全く隠そうとせず、物理的にありえない動きを嬉々として作ってる。
だからこのシークエンスだけ抜き出すと、やってることはむしろアニメーション映画の「REDLINE」とかに近い。
ちなみに荒廃した複雑怪奇な都市の世界観は、大友克洋の漫画「AKIRA」も参考にしたそう。
言われてみると、確かに退廃的なイメージはよく似ている。

最後の最後にエモーショナルな見せ場は残るものの、本作は前作のような“泣けるゾンビ映画”ではなくなった。
とはいえ、ポストアポカリプトの世界を描く、マッドでヒャッハーな楽しさは増大したし、これはこれで十分に面白い。
601部隊を率いるソ大尉やファン軍曹のクズっぷりとか、最後まで人間の醜さをこれでもかと強調する、ヨン・サンホ本来の作家性はこっちの方がより強く出ている。
まあその分、ファミリー映画としての間口はやや狭まった気はするが。

それにしても、列車縛りはなくなったんだから、邦題から「新」は外せばよかったのに。
作品にそぐわないダジャレだけじゃなく、非常に語呂の悪い邦題になっちゃってるじゃないか。
「ファイナル・ステージ」も意味不明だし、前作以上のワースト邦題オブ・ザ・イヤーだな。

今回は前作と同じく「ゾンビ」をチョイス。
ホワイトラム30ml、ゴールドラム30ml、ダークラム30ml、アプリコットブランデー15ml、オレンジジュース 20ml、パイナップルジュース 20ml、レモンジュース 10ml、グレナデンシロップ 10mlをシェイクして、氷を入れたゾンビグラスに注ぐ。
あえて酔いを早めるため、複数のラムを使っているのだが、考案された時のオリジナルレシピではさらに多く、5種類ものラムを混ぜていたという。
意外にもフルーティーでフレッシュな味わいだが、飲んでいるうちにだんだん酩酊し、ゾンビと化してしまう危険なカクテルだ。

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コメント
この記事へのコメント
ヒャッハー
ノラネコさん☆
お正月にヒャッハーと楽しむのにピッタリな映画でしたね。
これが3部作で、最初がアニメだったとは知りませんでした。
入口がエイリアン2とはなるほど!です。真ん中はバイオハザード+カイジ+AKIRAで、出口がマッドマックスですね♪
2021/01/04(月) 00:14:28 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
ヒャッハーな展開は、いい意味で予想を裏切ってくれました。
このシリーズは全部面白いので、「ソウル・ステーション」もぜひ。
ヨン・サンホの作家性が一番強く出ているのは一作目です。
2021/01/07(木) 19:29:54 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
確かに「新感染」と設定を同一にする三部作だけど、話が繋がってる訳ではないから「新感染」は外しても良かったのかも。興行的には前回と同じゾンビ物ですよとアピールしたかったんでしょうね。直接、話が繋がってないから「新感染2」とかも塩梅悪いし、難しいですね。
2021/01/19(火) 12:12:47 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
そもそも前作は日本で大してヒットしてないから、単純に「新」をとって「感染半島」で良いんじゃないかと思うんですよ。
昔あった「感染列島」と紛らわしくはあるけど、「しんかんせんはんとう」って語呂が悪すぎて。
2021/01/19(火) 21:28:30 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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