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俺は、君のためにこそ死ににいく・・・・・評価額950円
2007年05月22日 (火) | 編集 |
都知事、入魂の一作。
「俺は、君のためにこそ死ににいく」というまるで軍歌みたいなタイトルに、製作委員会のクレジットにズラズラと並んだ右系メディア
ある意味で、久々に政治的な遠慮の無い思いっきりの良い戦争映画である。
確かに言いたい事は伝わってくるが、映画としてのネックは肝心の都知事の脚本だ。

昭和二十年、鹿児島県知覧。
太平洋戦争も終盤に差し迫り、追い詰められた日本は、ついに禁断の戦法というべき「特攻」に手を出す。
特攻隊の基地となった知覧で食堂を経営する鳥濱トメ(岸恵子)の元には、毎日の様に基地の若い特攻隊員たちがやってくる。
一度出撃すれば決して帰ることの出来ない隊員たちにとって、親身になってくれるトメはまるで母の様な存在だった。
やがて戦争が終わるまでの数ヶ月間、トメは様々な思いを胸に死地へ旅立つ沢山の若者たちを見送る事になる・・・


まあ観る前からこれほど予測のつく作品も無いので、観る気は無かったのだが、主演の岸恵子「私は、若い彼ら(特攻隊員)を殺した国家というものに大変怒りを感じている。ずいぶんと悩んで出演を決めました」と発言しているのを聞いて、観てみようかと考えを変えた。
なるほど確かに、特攻という物を考え出した指導者たちのグロテスクさは良く出ているし、特攻隊員のキャラクターも、通り一遍のステロタイプに陥るのを避けて、なるべく多角的に特攻という行為とそれに直面した人間を描こうという意欲は感じる。
しかし、石原慎太郎は映画の脚本の書き方を忘れてしまったのではないか。
あまりにも視点がとっ散らかってしまって、映画の前半はまるでシーンの断片をツギハギしたようなとりとめの無い話になってしまっている。
初めは、この映画は多くの特攻隊員に母の様に慕われたという鳥濱トメという女性の視点で、決して帰ることの無い旅に出てゆく多くの若者達を描く作品なのかと思っていたが、どうもそうではない。
鳥濱トメは物語のコアにいるものの、描かれ方は他の登場人物と対して変わらず、群像劇の一登場人物という感じなのだ。
群像劇としても、一人一人の描き方が非常に断片的な上に、登場人物はどんどん特攻していなくなってしまうので、ちょこっと感情移入したらはい次という感じで視点の置き所がない。
後半、徳重聡演じる中西少尉率いる部隊が赴任してくると、ようやく物語りは彼らを中心に回り始めるが、それでも感情の流れが断ち切られる様な、落ち着きの無い展開は最後まで変わらない。

撮り方も変だ。
ただでさえキャラクターが薄っぺらになりがちな群像劇なのに、人物の表情を捉えたカットが異様に少ない。
カメラは、まるで親の仇のようにクローズアップを嫌うのだ。
オープニングの妙に窮屈な画面構成といい、寄るべきところで逆に引いてゆく奇妙なカットといい、この映画の画作りには妙なミスマッチ感が漂う。
新城卓監督が群像劇に慣れていないのか、演出的にも全体に非常に観づらい作品になってしまっている。

この映画に描かれる指導者たちは、「負けるにも負け方がある」とか「国体を守るため」など理屈を使って特攻という行為を正当化しようとするが、結果的に特攻で戦局は変わらなかったし、無条件降伏によって「負け方」も「国体」も絵に描いた餅にしかならなかった。
天皇が今も存在しているのは、別に5000人の若者が特攻したからではなく、戦後の国際政治の力学がもたらした米国の理性的な計算の結果である。
少なくとも現在、特攻を仕掛けられた米国において、特攻とは戦時中の日本人がいかに狂信的なキチガイであったかを物語る行為であって、間違っても日本人の勇気や心意気とは捕らえられていない。
実際、客観的に観れば特攻とは犬死以外の何物でもなく、それを命じた指揮官たちは無能な愚か者であろう。
しかし、実際に特攻した若者たちには、それぞれに意思や想いがあり、彼らの生き方(死に方)そのものは尊重すべきだというこの映画のスタンスには一定の説得力がある。
特攻隊員に個性の強い俳優を配し、爆弾を捨てては帰ってくるという筒井道隆演じる田端少尉や、仲間の隊員が先に特攻してしまい、死に急いでいる窪塚洋介演じる板東少尉など興味深いキャラクターも多い。
せっかく鳥濱トメという語部がいるのだから、映画はもう少し登場人物を絞り込んで、彼女のどっしりとした目線で個性的な若者たちの生き様を追ったほうが良かったのではないだろうか。
また、彼らのキャラクターに魅力があるからこそ、明らかに意図を持ってしつこく繰り返される「靖国神社であおう」の台詞や、後半言い訳の様に挿入される大西将軍の切腹などは、現代人である石原慎太郎の顔が見えて少し興醒めだった。
まあそれは同時にこの映画に現在性という点では評価すべき事なのかもしれないが、政治的な映画であるゆえに、このあたりの捉え方は観る者の政治的な立場によって変わるだろう。
ちなみに私は、都知事選で彼には投票していない。

今回は知覧の地酒である知覧酒造の芋焼酎「ほたる」をチョイス。
劇中でも語られている様に、知覧は蛍の多い街で、特攻が始まってからは死んだ若者たちの魂に蛍のはかない光が重ねあわされたという。
このお酒も、そんな知覧の人々の戦没者への想いが形になった物。
芋の風味はそれほど強烈でなく、どちらかというとマイルドで飲みやすい。
特攻隊員を見守り続けたトメさんの様に、母を感じるお酒だ。

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コメント
この記事へのコメント
トメさん
TBどうもです。
>せっかく鳥濱トメという語部がいるのだから・・・
そうですよね。
私も、トメさんの語りで、トメさん視点の若者と、トメさん自身を魅せる作品にすれば良かったのでは?なんてちょっと考えていました。

お金を使った割には、微妙な出来でした。

2007/05/22(火) 18:15:54 | URL | たいむ #-[ 編集]
こんばんは♪
確かになんだかすごくもったいない映画だなーって思いました。
ただ見せ付けられているだけで何も心に響いてこなかったんです。一緒に行ったお友達は号泣していたから私が変なのかなー?
アップがないのは見ててすごく気になりました。
別の人を徳重くんだと思っていましたから!

ちなみに私も投票は別の人で、、、☆
2007/05/22(火) 19:49:34 | URL | きらら #-[ 編集]
私も全く同じ感想を持ちました。画面が暗い上に表情のアップが少ないため。人物の苦悩や心情が伝わり難かったです。群像劇のせいでしょうか。特攻に疑問を感じ始めている田邊少尉は興味深い人物でしたが、彼の苦悩もあまり掘り下げられないうちに死んでしまったのは残念です。全体的にも焦点が絞られていないため散漫な印象でした。

2007/05/22(火) 20:08:33 | URL | さくら #-[ 編集]
こんばんは
>たいむさん
せっかく彼女の語りで物語を始めているのに、語り部の役割を振らないのは妙でした。
かといって演出家の視点も定まっていないし、非常に観づらい映画になってしまっていました。

>きららさん
キャラの描きこみが決定的に不足してますよね。
これでは感情移入しきれない。
時間的に足りないにもかかわらず表情を捕らえないのですから、正直何を考えて演出しているのか判りません。

>さくらさん
興味深いキャラクターはいるのにもったいないですね。
本来この映画の趣旨は、死んでいった特攻隊員たちの思いを現在に伝える事だと思うのですが、この作りでは本当に表層しか描けていません。
作り方を失敗してると思いました。
2007/05/22(火) 22:48:35 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんはー!
おばんです。この映画、立場上、観たいんだけど観ると血圧上がりそうなんでイヤなんです。そんでもって、人間観的に信頼がおけるノラネコさんのレビューを拝見してしまいました。いつもながら冷静さとパッションが同居した鋭さで感服いたします。

>少なくとも現在、特攻を仕掛けられた米国において、特攻とは
>戦時中の日本人がいかに狂信的なキチガイであったかを物語る
>行為であって、間違っても日本人の勇気や心意気とは
>捕らえられていない。

そうそうそう、まさしくそうなんですよ。
このへんをまったく誤解して、というか想像力の無さをさらけ出して「特攻こそ米国に真の畏怖を感じさせた誇るべき行為!」とか信じ込んでいる言説を目にすることが意外と多くて、なんか泣けてきます。

あれって実際USAから見たら狂犬以外の何物でもなくて、畏怖どころか保健所で駆除する対象にすぎません。とかいうと犬に対して可哀相な表現になるな。うむー。でもそういうものだと思いますよホントに。

狂犬だろうがなんだろうがUSAに一矢むくいれば良し!とする価値観は、人間以下です。自爆テロ肯定と大差ありません。で、そんな精神性を「愛する人を、守りたかった」などという言葉で飾る行為は大嫌いです。特攻戦術に否応なく巻き込まれて殺されていったパイロットたちが浮かばれるとは思えません。

というわけで、どうもありがとうございました。気が向いたら観に行って自分なりにレビュー書きたいと思います。でも『バベル』観た直後だからなー(笑) 
2007/05/23(水) 00:51:45 | URL | 桜樹ルイ16世 #MVcbpAmw[ 編集]
こんばんは
>桜樹ルイ16世さん
お久しぶりです。
私は米国で長く暮らしましたので、肌身に染みて判るのですが、アメリカというのは潜在的に強いライバルを求める傾向があるんです。
たとえ敵であっても堂々たる相手にはリスペクトする。
チェ・ゲバラやロンメル将軍の人気が非常に高かったりするのも、そのあたりの心理が影響してると思います。
その点で、真珠湾でケチつけたとは言え、太平洋でガチンコ勝負した日本海軍は十分リスペクト対象で、あちらの軍人さんなどにもファンが多かったりするのですが、特攻だけは別です。
リスペクトの対象は、「理解可能」という条件が付きます。
特攻は理解不能な狂信のシンボルであって、決してまともな相手ではないという感覚ですね。
イスラム原理主義ゲリラの自爆攻撃に「カミカゼ」という枕言葉がつくことに、日本人は反発しますがあれは米国人にとってはまったく同じです。
アラブ人にだって、個々の思いや信念はあるでしょうからね。
そのあたりを理解してないと、特攻の歴史的位置付けに関しても勘違いしてしまうでしょうね。
畏怖を与えようとした相手に、まったくそうは思われてない時点で、特攻という戦術事態が壮大な勘違いだったと言うことですから。
2007/05/23(水) 01:27:36 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんにちは
ノラネコさん、こんにちは。TB&コメントありがとうございました。

「靖国神社であおう」
『硫黄島からの手紙』でこの言葉を聞いた時は、戦争当時の日本兵の心理の異常さを垣間見る事が出来ましたが、今回の場合、戦争を美化しているようにしか聞こえませんでした。その辺りがどうしても駄目でしたね。
特攻という行為そのものが受け入れられないと、この映画を楽しむ事は出来ないでしょうね。
2007/05/23(水) 07:11:29 | URL | えめきん #-[ 編集]
おはよーございます。
>たとえ敵であっても堂々たる相手にはリスペクトする。

『眼下の敵』なんかはそういう映画でしたね。でもそのあとで『U-571』のような駄作を堂々とつくってしまうのもUSAのお茶目なところです(笑)

>リスペクトの対象は、「理解可能」という条件が付きます。

日本の右寄りの観点からすると、その「理解可能」の基準設定そのものがUSAの勝手さ傲慢さのあらわれということになるんですけど、なんかそれはやはり間違っている気がします。もうこれは自然法の範囲の話でというか。

>そのあたりを理解してないと、特攻の歴史的位置付けに関しても
>勘違いしてしまうでしょうね。

そうなんですよね。「相手の論理」もこちらの論理の延長で一人決めしたがりますね。相手側に大いに問題がある場合でもこのやり口を続けていると問題アリアリなのは確実なので、昨今の中韓バッシングのセンスとか見ると鬱になります。

海外で「思想・哲学的に」評価の高い日本映画作品というのは、そうした狭い了見の重力圏を脱することのできる素質を持ったものなのか、あるいは日本人の作り手とはまったく別の観点で勝手に解釈されているのか、よくわからんなー、としばしば思います。
2007/05/23(水) 07:20:30 | URL | 桜樹ルイ16世 #MVcbpAmw[ 編集]
タイトルに難あり。
ノラネコさん、達也です。

自分も観る気は無かったのですが、
『パッチギ2』でやたら揶揄・罵倒されていることもあり、
観てきました。
映画としての出来は、そう悪いとは思いませんでしたが、
クリントの『硫黄島2部作』を観た後では、
到底納得できるアプローチとは思えません。
もう、無条件降伏するしかないでしょう。
なにより、そのイケテないタイトルが問題です。
映画館の窓口で思わず
『死ににゆく一枚』と、言ってしまいました(笑)。
あっ、『300』も観ましたので、
近いうちにそちらへもお邪魔します。
今夜は、『パイレーツ』の先行に突撃してまいります。
2007/05/24(木) 09:35:15 | URL | TATSUYA #-[ 編集]
こんばんは
>えめきんさん
硫黄島では自然だった「靖国神社であおう」という台詞がどうにもわざとらしい。
どうもこれを言わせたくてたまらないという意図が見えてしまって、しつこいんじゃ!と言いたくなってしまいました。
作り手のセンスの問題でしょうね。

>桜樹ルイ16世さん
そうですね、
日本人に限らないですが、自分の考えるように相手も考えてくれるという、何の根拠もない思い込みで生きてる人はずいぶん多いように思います。
日中韓のネット上での罵りあいなんて将来を悲観したくなります。
結局このあたりは想像力の欠如なのかなあとも思います。
まあ映画を含む文化っていうのは、受け手が勘違いして、そこから創造もしなかったような世界が新たに生まれることもあると思います。
受け手が完成させるのが文化ですからね。

>TATSUYAさん
タイトルは・・・何と言うかもう時代がずれてるとしか言いようが無いですね(笑
この軍歌みたいなタイトルでずいぶん客を失ってると思いますよ。
しかし、俺は君のために死ぬとか言われても、そんな事言われても重いと思うんですけどね。
2007/05/25(金) 23:05:42 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんは
長らくご無沙汰していました。
登場人物の描き方については、ほぼ同感です。かなり大味で薄っぺらい群像劇という印象でしたね。
石原氏は、C・イーストウッドをいくぶん意識していたようですが、取って付けたような大西瀧治郎の切腹場面にせよ、隊員たちの「靖国で合おう」というセリフにせよ、どれもこれも作者の視線が日本国内にしか向いていないんですよね。国内の観客を納得させることしか考えていないというか。かなり制作費をかけたようですが、硫黄島二部作とは比べるべくもない、スケールの小さな映画でした。
2007/05/26(土) 01:06:53 | URL | 狗山椀太郎 #Q7lkgqJM[ 編集]
こんばんは
>狗山椀太郎さん
イーストウッドと比べちゃうとあまりにもかわいそうな気もしますが、ちょっとお粗末な出来でしたね。
キャラクターは観客が自分を重ねやすい様に、あえてあっさり描いてるとも言えますが、群像劇でというのはいろんなタイプのキャラがいるから、しっかり描いた方が感情移入できる対象が見つけやすい物なのですが・・・
現状では単に薄っぺらなだけになってしまっています。
国内向けというよりも、石原氏の支持層向けなのじゃないでしょうか。
2007/05/27(日) 00:21:57 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
それはあまりにも
内容をたまたま見て投稿しました。
色々みなさんの意見がありますが、本当に歴史を知っているのか疑問を持ちました。確かに内容的にはエピソードを詰め込みすぎたところや、冒頭の「日本はアジアを開放するために云々」の台詞についてはかなり問題があるとは思います。
しかし、靖国で会おうという台詞は別に石原慎太郎が作ったわけでもなく、実際に隊員たちが言った言葉である。
右よりだとか薄っぺらだとか興ざめしたという前に何故隊員たちがそういった台詞を言ったか考えなければならない。
「靖国の2本目の桜の木で・・・」という台詞は隊長が隊員たちに明確な意識を持たせ、途中ではぐれて墜落したり、敵機による攻撃から気を奮い立たせるように言ったことです。
また、特攻を犬死と言いますが、余りの日本の抵抗の激しさに本土上陸をした場合の損害を予想したアメリカは、本土上陸を避ける戦略をとった事実から、少なくとも本土上陸による多数の一般市民の犠牲を回避する一助をしたことは事実です。
この映画を見て右よりだとか、薄っぺらだとか言っているのは、戦後特攻隊員を軍国主義の象徴だとか、テロリストと変わらないと言っていた人々と同じではないでしょうか?
特攻を美化することはいけないことだと思いますが、まったく状況の違う今の立場から勝手なことを言うのではなく、もっと歴史を勉強してみては。
2007/06/05(火) 16:28:04 | URL | たなご #-[ 編集]
こんばんは
>たなごさん
大前提として、私はここで歴史を評価していませんし、突っ込んで語るつもりもありません。
ここでは、「俺は、君のために死ににいく」という一本の映画を評価しているのです。
この映画は別に歴史そのものではなく、石原慎太郎という作家が歴史的事実をベースとして書き、新城卓という監督が撮り、何人かの俳優に演じられたフィクションに過ぎません。
そもそも「歴史を描く」などという事は不可能です。描けるのは過ぎ去った過去を、作者の思想や観察を通して見た歴史の断片にすぎません。
この作品も石原、新城といった「作り手の描きたい歴史」にすぎない事は、特攻にまつわる様々な重要な事実を、あえて描いていない事でも明らかですね。
例えば特攻第1号である関大尉が残した言葉を何故描かないのか。
それが彼らの考える映画のテーマを描くのに、邪魔、あるいは都合が悪いからでしょう。
それは実は映画としては悪いことではない。
映画である以上は作者に伝えたいことがあり、そのために必要なことを描けば良いからです。
ただ、、この作品では作り手の描きたいことが伝わってこない、伝えた方が下手糞であると言っているのです。
薄っぺらなのは特攻隊員や歴史的事実ではなく、石原慎太郎の脚本であり、新城卓の演出です。
「靖国であおう」と言っても良いのです。問題は、その撮り方、作品の中での位置付けです。
貴方のこの映画に対する解釈にしても、そう思われるのはこの映画以外の情報をお持ちだからでしょう。
この映画だけ観た人が貴方と同じように考えるとは思えません。
一本の映画である以上、その中で作者の言いたいことが人に伝わるように作らなければなりません。
その意味で、私にとってこの映画はきわめて薄っぺらな失敗作です。
2007/06/05(火) 21:02:49 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
都知事は都知事の仕事をしてほしい
こんにちは~またお邪魔します。
300のほうでも何度も渡来しましたが、TB難しいですね。今度はどうでしょう?
私も石原氏は、小説の書き方を忘れていると思いました。
もう、小説家ではなく、都知事として本腰を入れて欲しいものです。
遠景からの撮影が多かったし、ぐっと踏み込んだ感情を抱きにくかったですね。
なんとなく、記録映画のような、あさの連続テレビ小説のような・・・
2007/06/06(水) 14:23:49 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
再び
色々意見を言っていただいてありがとうございます。
この映画についていいたいことが伝わらなかったとのことですが、私には十分伝わりました。
今までの特攻を扱った話は、お涙の部分ばかり強調して最後は軍艦に突っ込んで終わりといった描き方ですが、この話では特攻隊員の生活の状況、憲兵の存在、生き残った人の戦後の苦しみ、特攻した隊員への不条理な戦後論調といった部分は不十分ながら盛り込まれています。
関大尉の言葉が出てこないのもこの映画の趣旨である「特攻で散った若者に対する尊敬」とは関係しないからでないでしょうか。
関大尉が命令を聞いたとき数秒頭を掻き毟って「わかりました」といった事実をきちんと表現しているだけでも今までのものより評価できます。
石原慎太郎という人物は私自身も思想を含め色々な問題があると思います。
しかし、日本のジャーナリズムに絶望してほとんど語る事のなかったトメさんが石原氏にはきちんと話をした事実は特攻に対する氏のスタンスが偏っていなかったからではないでしょうか。
志願という名の命令で若くして命を落とした若者に対して、これほど不条理な扱いをしている国は世界なかで日本だけです。
戦争や作戦としての特攻の描き方の是非とは別に、死んだものに対して現代の日本人が考えなければいけないことをこの映画はある程度きちんと提示してあると思います。
2007/06/06(水) 19:47:23 | URL | たなご #-[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
どうも入らないみたいですね。
FC2はtbを受けることに関してはわりと相性の問題が無いブログだったんですが・・・。
石原氏に関しては、最近の作品はまったく読んでないので、小説家としてどうなのかは判りませんが、映画の脚本としてはボロボロだったと思います。
まあ彼の脚本だけじゃなくて、演出や撮影にも違和感を感じました。
どうも作品のコンセプトがはじめからボケてたような気がします。
正直なところ、映画のファーストカットの異様に窮屈な画面を観たときから、「オイオイ、この映画だいじょうぶか?」と思っていました。

>たなごさん
確かに死者への敬意は感じます。
その点ではおっしゃる通りなのですが、同時に私は死者を都合よく利用しようとする作為も感じます。
関大尉に関しては、この映画では単にお国のために潔く死ぬ男にしか見えません。
しかし彼の本心はこの作品で描かれなかった痛烈な皮肉の言葉として残っているのですから、それを黙殺したこの作品は関大尉という実在した人物を都合よく歪曲して自分たちのテーマを伝える道具に使ったわけです。
それは死者に対する真摯な態度とはとても思えません。
「特攻で散った若者たちへの尊敬」を描きたいなら、なおさら彼らの真意を伝えなければならないでしょう。
「靖国であおう」という言葉にしても、隊員たちがどのような想いで使っていたのかは私も良く存じております。
しかし、この映画では本来の意味よりも、映画で「この台詞を使う事」の方が作り手にとって重要であった様に思われてなりません。
死んでいった特攻隊員たちに対する無理解と不条理な扱いが戦後日本にあったのは確かだと思います。
また石原氏は彼らへの敬意をもっているのでしょうが、同時に彼らを自分のイデオロギー表現の道具として使っているのも、この作品の一面だと思いますよ。
結局のところ、これは感傷的な映画であると同時に、非常に政治的な映画です。
そのこと自体は映画の一つの形として悪いとは思いませんが、下手糞な映画であるという評価は変わりません。
2007/06/06(水) 23:46:52 | URL | ノラネコ #-[ 編集]
非日常的な戦争、それも国が滅びるかもしれないという大戦争で、負けそうだから白旗揚げて、「ハイ、降参」とはいかないでしょう。(特に昔の日本人は) 戦争をテレビゲームと勘違いしてはいけません。当時白人国家に敗北するということは、今でこそ「国際世論の目があるから無茶はできない・・・・」などとお考えではなかろうか?アフリカの黒人や、アメリカのインディアン、オーストラリアのアボリジニーらの辿った運命をご存知だろうか?

「今の平和な感覚」で「当時の戦争」を時代背景も無視しながら評価すれば到底理解に苦しむだろう。

昭和19年10月25日、関行男大尉の率いる神風特別攻撃隊「敷島隊」の5機は、ルソン島西部のマパラカット飛行場から出撃し、レイテ湾のアメリカ艦隊に突入していったのである。この特攻攻撃を皮切りに、終戦までに陸海軍合わせて3375機の特攻機が出撃し、4279名の命が散った。もっとも、特攻攻撃を受けて沈没・損傷した連合軍艦艇は350余隻を数え、連合軍将兵を震えあがらせた。 しかし、戦中「軍神」と称えられ持てはやされた神風特攻隊のパイロットは戦後「犬死」、特攻に失敗して生き残った者たちは「特攻崩れ」と呼ばれ蔑まれたという。

一部の特攻隊員たちはすでに、自分の死が戦後の日本の講和条約に有利に働くことさえ予見していました。

特攻隊の猛烈な抵抗があったから、日本はドイツのように、国を「分割」されることもなく、ポツダム宣言の中に記してある通りに「有条件降伏」で戦争終結できたのではないでしょうか?都合のいいとこだけ黙殺してはいけませんよ。(戦後アメリカによる日本は「無条件降伏」をしたというデマが常識となってしまったことは痛恨の極み)

まぁ、そんな危険分子は放っておけないということで、戦後アメリカは日本のマスコミや教育を通じて徹底的な洗脳プログラムを慣行していきますが。お陰で、自国のことを好きなだけ非難して国力を低下させてくれる自虐史観というものの誕生です。(今の40代から60代がまさに、ソレ)

自爆テロと、カミカゼ特攻隊との違いも分らない大人は子供に何を教えられるのでしょうか?

「戦争はダメだよ?」「平和が一番!」
「戦争よりも、話し合い!!!」
「負けそうになればすぐ白旗あげなさい」
「また、すぐに平和が戻ってくるよ?」
2007/06/09(土) 19:24:12 | URL | しんくん #-[ 編集]
こんばんは
>しんくんさん
失礼ながら、貴殿のような歴史観をお持ちの方々と、所謂自虐史観の方々は、自分の主張に都合よく歴史を解釈し、しかもご自分でその事に気付いていないという点で、私にはまったく似たもの同士に見えます。
まあいずれにしても、ここは歴史認識の是非を議論する場ではないので、皇国史観でも自虐史観でも美しい国でも何でも良いです。
私の中で一つはっきりしているのは、どんなテーマであれ、この映画が語るべきことをしっかりと伝えられていないという事実だけです。
2007/06/09(土) 23:43:21 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
そうですね。

映画は飽くまで「作品」なので、いろいろな人に様々な批評をされて味が出ていくものなのだと思いますよ。特に日本の場合、幼稚な他の国々と違って世論が単純明快に合致しませんからねぇ。その辺りがこの国の特色なのかもしれませんが、いいのやら、悪いのやら。

まぁ、コノ調子で今後ともいろいろな戦争映画が作られていけばよいと思います。もちろんどんな作品にしろ賛否両論あるでしょうから。

観もしないでとやかくいう輩は論外ですね^^;

お勧めの戦争映画は「プライド」「ムルテガ」「男たちの大和」「親父たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」です。日本人が戦争映画を作るとどうしても99%単純明快な「反戦」作品になっちゃって面白味に欠けてたのですが、最近(ハリウッドにも刺激されて)頑張ってますね。

「出口のない海」はまぁ、政治色を薄めに作ってたみたいですけど、ちょっと引っかかる箇所が多かったので「?」でした。

では。
2007/06/10(日) 14:48:44 | URL | しんくん #-[ 編集]
こんにちは
>しんくんさん
>観もしないでとやかくいう輩は論外ですね^^;
それはその通りだと思います。
この映画も某映画監督が観る前から批判していた様ですが、料理を食べないで美味い不味いを言う様なもので論外ですね。
私としてはいろんな考え方があっていいし、戦争映画も通り一遍でない物の出現は期待します。
ただ、しんくんさんが例にあげられた作品を含めて、いまだ多くの日本映画はイデオロギーの呪縛から逃れられず、映画としては甚だ観難い奇形的な作品になってしまっているというのが正直なところで、この作品もその一本であると思います。
その意味で、イーストウッドが提示した「日本の戦争映画の一つの形」は多くの教示を含んでいるのではないでしょうか。
2007/06/10(日) 16:08:32 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
映画として批評しなさい。

特攻の実像と膨大なる資料も知らず

特攻を評する無かれ。
2012/06/01(金) 00:26:37 | URL | K #-[ 編集]
やれやれ
>k
君よりよっぽど多くの資料を知ってると思うよ( ̄▽ ̄)
2012/06/01(金) 00:42:50 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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貴様と俺とは\&quot;狂気\&quot;の桜  ~桜舞う季節に飛ぶ蛍に見る、戦争の狂気昭和19年(1944年)秋、特攻隊の出撃基地となった鹿児島県知覧町を舞台に、若くして命を散らしていった特攻隊員と彼らに暖かく接して出撃する最後まで見送っていった食堂経営者・鳥濱ト
2007/05/22(火) 16:25:26 | シネマログ  映画レビュー・クチコミ 映画レビュー
真実の物語だと言う。けれど、リアリティが感じられないのは何故だろうか?なんだかとっても明るい隊員たち。実際、この物語に登場する隊員達はとても若いのだから、馬鹿騒ぎして盛り上がる年頃なのかもしれないのだけれど。。。(以下、若干ネタに触れてい
2007/05/22(火) 18:11:06 | たいむのひとりごと
「俺は、君のためにこそ死ににいく」は太平洋戦争で敗戦濃厚だった日本帝国軍が行った飛行機特攻で命を散らした若者たちとそれを見守る事しかできなかった鳥濱トメさんの生涯が描かれている。石原東京都知事総指揮の映画としても話題だが、この時代からみた特攻について改め
2007/05/22(火) 22:13:50 | オールマイティにコメンテート
特攻隊員から母のように慕われた鳥濱トメさん。彼女に聞かせてもらった隊員たちの真実の声。苛酷な時代を生きた、美しい日本人の姿を残しておきたい。『思い返せば返すほど、み~んな素晴しか、美しか若者たちでございもした。』愛する人を、....
2007/05/22(火) 22:38:42 | ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!
太平洋戦争の末期、敗戦濃厚の日本帝国の切り札として展開された特攻作戦。次々と帰れぬ戦いに飛び立っていく若者達、そんな彼らを見守る一人の女性がいた。「特攻の母」と呼ばれ、多くの特攻兵達に慕われていた鳥浜トメの視点から特攻隊員の最後の生き様を描く。舞台挨...
2007/05/23(水) 06:57:23 | 5125年映画の旅
  『死ににゆく』一枚ください。 大阪梅田のブルク7では、次回上映予定の映画の予告を、待合ロビーのモニターで常時流している。この映画を知ったのは、そのモニターを観てなのだが、『へぇーかなりレベルの高い特撮
2007/05/24(木) 09:28:10 | TATSUYAのシネマコンプレックス
太平洋戦争で不利な戦況となった日本軍は、最後の手段として戦闘機に爆弾を搭載し、敵艦に体当たりする特別攻撃隊を編成する。 軍指定の食堂を構え、飛行兵たちから慕われていた鳥濱トメは、母親代わりとして慈愛の心で見守り続けていく。 やがて昭和20年8月15日終戦。しか
2007/05/24(木) 21:58:57 | 象のロケット
★監督:新城卓(2007年 日本作品) MOVIX京都にて。 ★あらすじ(Yahoo!ムービーより引...
2007/05/26(土) 00:31:50 | 犬儒学派的牧歌
映画 『  俺は、君のためにこそ死ににいく  』[試写会鑑賞]2007年:日本 【2007年5月12日公開】[ 上映劇場  ]監督:新城卓脚本:石原慎太郎【キャスト】 岸惠子 徳重聡 窪塚洋介 筒井道隆 寺田農木村昇 渡辺大 蓮ハルク 前川康之 中村友也多部未華子 宮
2007/05/26(土) 14:38:29 | やっぱり邦画好き…
今となっては現職の東京都知事から、美しい日本と美しかった日本の若者達を取り戻すために書いた脚本といわれると、いささか政治的な匂いがしてしまう・・・ 1941年12月日本軍はハワイ真珠湾奇襲に成功するも、1942年6月ミッドウェー海戦に惨敗して背走を続け、1943年2月ガ
2007/05/26(土) 22:27:56 | 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~
(2007年・東映/監督:新城 卓) 太平洋戦争末期、特攻隊員から母のように慕われた、鳥濱トメさんを主人公にした実話の物語。 私は、右も左も関係なくどんな映画でも、面白ければ何で
2007/05/28(月) 02:08:47 | お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法
俺は、君のためにこそ死ににいく上映時間 2時間20分監督 新城卓出演 岸惠子 徳重聡 窪塚洋介 筒井道隆 多部未華子 前川泰之 評価 4点(10点満点)会場 お台場シネマメディアージュ スクリーン3 「監督・ばんざい!」試写会の座席指定券を引換に....
2007/05/28(月) 11:27:36 | メルブロ
****************************太平洋戦争末期の1944年秋、連合軍の圧倒的な戦力を前に敗戦に次ぐ敗戦を喫した日本軍は、戦闘機に爆弾を搭載して敵艦に体当たりする特別攻撃隊、所謂「特攻隊」の編成を決める。「国の未来を背負って立つ若者
2007/06/02(土) 01:51:13 | ば○こう○ちの納得いかないコーナー
「石原映画」でもう一つ違和感があったのは、大西瀧治郎中将の描き方だ。冒頭にフィリピンのマバ
2007/06/02(土) 11:04:16 | 土佐高知の雑記帳
石原の特攻映画を観て来た。 http://www.chiran1945.jp/ 本当は石原に金を落とすなんぞ真っ平ゴメン。しかしだ、世の中には「仕方なくても観なくてはならない映画」ってものがあるのだよ。 シブシブ俺は、川崎チネチッタに足を運んだのだった。
2007/06/24(日) 09:20:06 | 反米嫌日戦線「狼」(醜敵殲滅)
2007年:日本 脚本・製作総指揮:石原慎太郎 監督:新城卓 出演:徳重聡、窪塚洋介、岸恵子、筒井道隆、戸田菜穂、桜井幸子、多部未華子 軍指定の富屋食堂を営み「特効の母」として慕われていた実在の女性、鳥濱トメさんの視点から、若き特攻隊員たちの熱く哀しい青...
2009/09/22(火) 14:46:25 | mama