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2021年06月05日 (土) | 編集 |
より良き世界を求めて。
元トーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンが2018年に発表した同名アルバムを元に、ブロードウェイで上演したコンサートショウを、スパイク・リーがドキュメンタリー映画化した作品。
バーンのドキュメンタリーというと、トーキング・ヘッズ時代の85年に、ロサンゼルスで行われたライブを、ジョナサン・デミがフィルムに収めた「ストップ・メイキング・センス」が有名。
「意味を考えるな!」と訴えたあの作品同様に、また皮肉っぽいタイトルだなと思ったが、映画を観て驚いた。
これは本当に、まだ見ぬユートピアを求めるバーンの、いやアメリカの遠大な旅を描いた骨太の作品だった。
ブロードウェイの老舗劇場、ハドソンシアターに設えられた舞台は、恐ろしくシンプルだ。
明るいグレーに塗られた床の両サイドとバックの三方を、すだれ状に加工された金属チェーンのカーテンが取り巻いているだけ。
そこにまずバーンが登場し、次いで二人のダンサー、そしてギタリストとベーシストと、すだれを通ってどんどんパフォーマーが増えてゆく。
その数、バーンを含めて12人。
彼らの持つ楽器は、アナログはもちろんデジタルまでもがすべてケーブルレスとなっていて、目まぐるしくポジションを入れ替えながら、トーキング・ヘッズ時代の楽曲を含む計21曲を披露する盛り沢山。
冒頭、アルバム曲の"Here"のところで、バーンは脳の話をする。
人間の脳のニューロンは、赤ん坊のころが一番密接に絡み合っていて、成長するにつれて不必要となる部分が失われてゆくのだという。
ここから、怒涛のパフォーマンスラッシュと共に、楽曲のチョイスに重要なメッセージを含ませてくるのだ。
選挙人登録への呼びかけと、二つのバージョンの"Everybody's Coming to My House”では、好悪相半ばする人間同士の関係を。
ジャネール・モネイのBLMプロテストソング、"Hell You Talmbout"では、警察の理不尽な暴力に倒れた黒人たちの名前のリストが呼び上げられる。
ちなみにこの曲の時だけ、勢い余って映像が劇場から飛び出してしまうのは、いかにもスパイク・リー。
自らも幼いころにスコットランドから移民したバーンは、今こそアメリカ社会の失われたニューロンを取り戻そうと叫ぶ。
この世界は、人間と人間の繋がりで出来ている。
人々が一番関心があるのは他の人のこと。
だから、舞台からは人間と必要不可欠な楽器以外は排除する。
性別も国籍も人種も異なる、バーンと11人のパフォーマーは、全員裸足で舞台と同系色の明るいグレーの衣装を着ているのだが、この色は照明によって、青っぽくも、赤っぽくも、何色にも変化してゆく。
人間しかいない舞台の上で、表現される本当の多様性。
そして、”We're on a road to paradise. Here we go, here we go.(ぼくたちは楽園へと向かう道の途中。さあ行こう、さあ行こう)”と歌う"Road to Nowhere"である。
途中から、なるほど本作はより良き世界を探す、内なる旅の物語なのだと気付いたので、〆はこの曲だろうなと予想していたが、まさにピッタリ。
このショウの初演はアルバム発売と同時の2018年3月から11月。
タイトルの、上下逆さまになった「ユートピア」が示す様に、当時はバーンの中でも分断を煽るトランプ政権への皮肉が先行していたのだろう。
だが、スパイク・リーが撮影したのは2019年の10月からコロナ禍によってブロードウェイの劇場が閉鎖された20年2月まで上演されていた改良版だ。
おそらく、撮影されたのは劇場が閉まる直前だろう。
昨年の大統領選挙直前の10月にリリースされた本作では、「絶望しているヒマはない」とばかりにエネルギッシュに希望を歌い上げる。
トーキング・ヘッズが活躍していた時代も、人種や階層での分断はあったが、その構造はシンプルで何が問題かも皆分かっていた。
それ故にあの頃は、「意味を考えるな!」でも許されたが、今はこのままだと本当に社会がバラバラになってしまう。
だから楽曲のテーマを、分かりやすくショウのストーリーに組み込んで語る。
奇妙でセンスはいいけど、理屈っぽくて近寄りがたいという人も多かったデヴィッド・バーンが、ここまで観客に歩み寄っているのには正直驚かされた。
強い問題意識を持ち、知的でユーモラスでラブリーで、しかも動ける!
御年69歳のバーンは、この映画の撮影時でも67歳くらいだろう。
中断しているハドソンシアターでの公演は、今年の9月から再開されるという。
数え70の古希にして、ノリノリでダンスしながら未来への希望を歌うバーン爺ちゃんが、カッコ良すぎて泣けてしまう。
今回は、ブロードウェイのある街、「ニューヨーク」の名を持つカクテルをチョイス。
ライまたはバーボンウィスキー45ml、ライムジュース15ml、グレナデン・シロップ1/2tsp、砂糖1tspをシェイクしてグラスに注ぎ、オレンジピールを絞りかけて完成。
ウィスキーの濃厚なコクを、清涼なライムが程よく中和し、甘酸っぱくてほろ苦い後味。
まさにバーンのような、成熟した大人に似合うカクテルだ。
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元トーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンが2018年に発表した同名アルバムを元に、ブロードウェイで上演したコンサートショウを、スパイク・リーがドキュメンタリー映画化した作品。
バーンのドキュメンタリーというと、トーキング・ヘッズ時代の85年に、ロサンゼルスで行われたライブを、ジョナサン・デミがフィルムに収めた「ストップ・メイキング・センス」が有名。
「意味を考えるな!」と訴えたあの作品同様に、また皮肉っぽいタイトルだなと思ったが、映画を観て驚いた。
これは本当に、まだ見ぬユートピアを求めるバーンの、いやアメリカの遠大な旅を描いた骨太の作品だった。
ブロードウェイの老舗劇場、ハドソンシアターに設えられた舞台は、恐ろしくシンプルだ。
明るいグレーに塗られた床の両サイドとバックの三方を、すだれ状に加工された金属チェーンのカーテンが取り巻いているだけ。
そこにまずバーンが登場し、次いで二人のダンサー、そしてギタリストとベーシストと、すだれを通ってどんどんパフォーマーが増えてゆく。
その数、バーンを含めて12人。
彼らの持つ楽器は、アナログはもちろんデジタルまでもがすべてケーブルレスとなっていて、目まぐるしくポジションを入れ替えながら、トーキング・ヘッズ時代の楽曲を含む計21曲を披露する盛り沢山。
冒頭、アルバム曲の"Here"のところで、バーンは脳の話をする。
人間の脳のニューロンは、赤ん坊のころが一番密接に絡み合っていて、成長するにつれて不必要となる部分が失われてゆくのだという。
ここから、怒涛のパフォーマンスラッシュと共に、楽曲のチョイスに重要なメッセージを含ませてくるのだ。
選挙人登録への呼びかけと、二つのバージョンの"Everybody's Coming to My House”では、好悪相半ばする人間同士の関係を。
ジャネール・モネイのBLMプロテストソング、"Hell You Talmbout"では、警察の理不尽な暴力に倒れた黒人たちの名前のリストが呼び上げられる。
ちなみにこの曲の時だけ、勢い余って映像が劇場から飛び出してしまうのは、いかにもスパイク・リー。
自らも幼いころにスコットランドから移民したバーンは、今こそアメリカ社会の失われたニューロンを取り戻そうと叫ぶ。
この世界は、人間と人間の繋がりで出来ている。
人々が一番関心があるのは他の人のこと。
だから、舞台からは人間と必要不可欠な楽器以外は排除する。
性別も国籍も人種も異なる、バーンと11人のパフォーマーは、全員裸足で舞台と同系色の明るいグレーの衣装を着ているのだが、この色は照明によって、青っぽくも、赤っぽくも、何色にも変化してゆく。
人間しかいない舞台の上で、表現される本当の多様性。
そして、”We're on a road to paradise. Here we go, here we go.(ぼくたちは楽園へと向かう道の途中。さあ行こう、さあ行こう)”と歌う"Road to Nowhere"である。
途中から、なるほど本作はより良き世界を探す、内なる旅の物語なのだと気付いたので、〆はこの曲だろうなと予想していたが、まさにピッタリ。
このショウの初演はアルバム発売と同時の2018年3月から11月。
タイトルの、上下逆さまになった「ユートピア」が示す様に、当時はバーンの中でも分断を煽るトランプ政権への皮肉が先行していたのだろう。
だが、スパイク・リーが撮影したのは2019年の10月からコロナ禍によってブロードウェイの劇場が閉鎖された20年2月まで上演されていた改良版だ。
おそらく、撮影されたのは劇場が閉まる直前だろう。
昨年の大統領選挙直前の10月にリリースされた本作では、「絶望しているヒマはない」とばかりにエネルギッシュに希望を歌い上げる。
トーキング・ヘッズが活躍していた時代も、人種や階層での分断はあったが、その構造はシンプルで何が問題かも皆分かっていた。
それ故にあの頃は、「意味を考えるな!」でも許されたが、今はこのままだと本当に社会がバラバラになってしまう。
だから楽曲のテーマを、分かりやすくショウのストーリーに組み込んで語る。
奇妙でセンスはいいけど、理屈っぽくて近寄りがたいという人も多かったデヴィッド・バーンが、ここまで観客に歩み寄っているのには正直驚かされた。
強い問題意識を持ち、知的でユーモラスでラブリーで、しかも動ける!
御年69歳のバーンは、この映画の撮影時でも67歳くらいだろう。
中断しているハドソンシアターでの公演は、今年の9月から再開されるという。
数え70の古希にして、ノリノリでダンスしながら未来への希望を歌うバーン爺ちゃんが、カッコ良すぎて泣けてしまう。
今回は、ブロードウェイのある街、「ニューヨーク」の名を持つカクテルをチョイス。
ライまたはバーボンウィスキー45ml、ライムジュース15ml、グレナデン・シロップ1/2tsp、砂糖1tspをシェイクしてグラスに注ぎ、オレンジピールを絞りかけて完成。
ウィスキーの濃厚なコクを、清涼なライムが程よく中和し、甘酸っぱくてほろ苦い後味。
まさにバーンのような、成熟した大人に似合うカクテルだ。

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◆『アメリカン・ユートピア』新文芸坐
▲画像は後から。
五つ星評価で【★★★★楽しいやんけ】
2021年最後の鑑賞。
ツイッターでの第一声感想↓
社会的なメッセージはあえて横に置いておいて、あの気が狂うような音の蹂躙は魅力。これはネイティブでないので訳詞を読む形になるが、これを吹替にも出来ないしね。
ちょっと残念がってるが、十分楽しんだ。当日新文芸坐では「発声不可・強制スタンダップ上映...
2022/01/14(金) 22:44:36 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章
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