2011年11月01日 (火) | 編集 |
音楽が繋ぐ、血脈の絆。
アメリカ中部、オザーク高地の村を舞台に、貧しく閉鎖的な社会に暮らす一人の少女の、孤独な戦いを描いたハードなヒューマンドラマ。
ダニエル・ウッドレルの原作小説を、これが長編二作目となるデブラ・グラニック監督がプロデューサーのアン・ロッセリーニと共同で脚色し、映画化した。
主人公の少女、リーを演じるのは「あの日、欲望の大地で」「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」の若き演技派、ジェニファー・ローレンス。
サンダンス映画祭グランプリ、本年度アカデミー賞主要4部門ノミネートなど、多くの映画賞に輝いた話題作だ。
ミズーリ州オザーク高地。
リー・ドーリー(ジェニファー・ローレンス)は17歳にして、幼い弟妹と心を病んだ母親の生活を支えている。
父親はドラッグの密造で逮捕され、保釈後に行方不明になった。
ある日、保安官の訪問を受けたリーは、家と土地が父の保釈金の担保になっており、彼が裁判に出廷しなければ、家を失う事を告げられる。
生活を守るために父の行方を捜し始めたリーは、貧困と犯罪が渦巻くオザークのダークサイドに足を踏み入れてゆく・・・
冒頭、主人公の住む薄汚れたログハウスの描写と共に、哀愁を帯びた素朴なメロディが流れる。
アメリカの音楽に詳しい人なら、これがミズーリ州の州歌でもある「ミズーリ・ワルツ」である事に気づくだろう。
元々この歌は、この地の吟遊詩人によって歌い継がれてきた、ヒルビリーと呼ばれる民謡の一つだった。
後に、カントリーミュージックの原型となるヒルビリーを生み出し、その名の由来となったのは、19世紀半ば以降にアメリカに渡って来たスコットランド人の農民たちだ。
遅れてきた移民である彼らは、肥沃な平地を購入することが出来ず、ある者はゴールドラッシュに沸く西部を目指し、ある者はアメリカ東部から中部にかけて広がるアパラチア・オザークの山間に入植し、ヒルビリーと呼ばれる様になる。
寒冷な山の入植地では、当然ながら穀物は十分に育たず、牧畜や狩猟などで補って何とか食つなぐが、やがて中西部の大穀倉地帯が開けると、山間の小規模農家はますます孤立する。
いくら働いても生活は豊かにならず、故郷から持って来た楽器で音楽を奏で、密造酒をあおって気を紛らわせる。
そんな山の民の音楽が、南部アフリカ系音楽と融合する事で独特の民謡音楽、ヒルビリーが生まれたのである。
更にアメリカ各地の様々な音楽の要素を取り入れて、今日のカントリーミュージックが確立するのは、20世紀に入りラジオが普及した以降の事だ。
言わば貧困が生み出した音楽であるが、実際この地方は今でも貧しいままだ。
主要産業である炭鉱は、第二次世界大戦後に閉山と機械化によって雇用が激減、それに代わる産業も育たなかったため、慢性的に失業率が高い。
主人公のリーの家も犯罪に手を染めた父親が失踪し、廃人同様になってしまった母と幼い弟妹の面倒を一人で見ているために学校にも行けない。
馬の干草すら買えず、森でリスを撃ったり、隣家の好意に甘えたりして、最低限の食べ物だけは確保する綱渡りの日々。
軍隊に入ることも考えたが、訓練所に家族を連れて行くことは出来ないと、あっさり門前払いされてしまう。
彼女の抱えている状況を見ると、これが世界で最も強大で、最も裕福な国の物語とはとても思えない。
まるで第三世界の映画を観ている気分になるが、これもまたアメリカの持つ秘められた一面である。
既に人生お先真っ暗、八方ふさがりの状況の中、更なる困難がリーを襲う。
失踪した父が、家族の暮す家と土地を担保に保釈金を捻出していた事が分かり、彼が裁判当日に出廷しないと、逃亡したとみなされて一週間で家を没収されてしまうのだ。
そうなっても何処にも行く当てのないリーは、家族を守るために父の行方を捜し始める。
しかし、村中ほぼ親戚だらけで、その殆んどがならず者として犯罪で生計を立てている特殊な社会である。
当然リーの探索は歓迎されず、それどころかあちこちで妨害や脅しにあう始末。
やがて彼女は、どうやら父が一族の掟を破り、共犯者の名前を当局に売ったことで、密かに処刑されたらしい事を知る。
その悲劇的な事実すら、リーにとってはもはや驚くべき事ではなく、父が死んだなら死んだで、今度はその証拠として死体を探し出さねばならないのだ。
否応無しに、一家の主として振舞わざるを得ない彼女は、もはや若き肝っ玉母さんとして何者をも恐れず突き進むしかない。
そして、その行動は周囲との更なる軋轢を生み出すことになるのである。
ここで面白いのは、彼らの社会では男があまり前面に出てこない事だ。
リーの伯父で、一族の間でも恐れられているらしいティアドロップが、男性キャラクターで唯一能動的な役割を果たし、物語の終盤でリーの助けとなるが、基本的に男たちは裏社会で蠢いている得体の知れない存在として描かれる。
接触する事すら難しい閉鎖世界に引きこもった男たちに代わって、この作品の中で現実と向き合い、人生という物語を前に動かしているのは女たちだ。
主人公のリーは勿論のこと、乳飲み子を抱えながら彼女に手を貸す友人のゲイルも、一族のボスの妻で、リーに容赦なく制裁を加えるメラブも、それぞれの立場でしっかりと地に足をつけた強い女として描かれる。
永遠の冬に閉ざされた様な、何処にも希望の見えない世界の中でも、彼女たちはそれぞれの“守るべきもの”を認識し、そのためには犠牲も厭わない。
タイトルの「ウィンターズ・ボーン」の意味が明かされる瞬間、リーもまた悲しい壁を越え、父を探す孤独な戦いは、図らずも彼女にとってヒルビリーの伝統を受け継ぐ一人の女として、自立への道となるのである。
リーを演じるジェニファー・ローレンスの、凛とした目力が凄みを感じさせる。
当初、キレイすぎて山奥の娘には見えないと言われた彼女は、最終選考のあったニューヨークの会場にわざと深夜の直行便で駆けつけ、充血してギラギラした目でオーディションに挑んでこの役を勝ち取ったと言う。
見上げた女優根性ではないか。
彼女の作り上げたリーは、どんな絶望的な逆境にもめげず、傷だらけになっても家族のために立ち上がり、過酷な人生の試練に向かい合うタフさを見せる。
彼女の明日に待つものは一体何か。
この映画に悪役はいない。
あるのは因習と貧困が齎す絶望と、その中で懸命に生きている人間たちの姿だ。
たとえリーが家を失わなかったとしても、自転車操業のその日暮らしは変わらず、彼女自身にも、弟や妹にも豊かで満ち足りた未来があるとは思えない。
しかし、自ら傷つくことを恐れない彼女の必死の行動に、全てを諦めていたティアドロップが心の動揺を見せ、彼女の家に愛しげに小さな命を運び込む事に、微かな救いを感じる。
永遠の冬も、いつも吹雪だとは限らない。
代々受け継がれたバンジョーの奏でる素朴な音色は、厳しい土地に生きてきた逞しい人間の魂の音色だ。
希望はまだ見えない。
だが、リーが貫き通した強い心さえあれば、絶望に負けない事は出来るのである。
今回は、ヒルビリーの故郷スコットランドからスコッチウィスキーの代表的銘柄「グレンフィディック 18年エンシェントリザーブ」をチョイス。
スムースでフルーティな甘みと、パワフルだが温かみのあるフルボディな味わいは、まるでヒルビリーの女たちの様だ。
素晴らしい出来栄えのサントラを聞きながら、じっくりと味わいたい。
そう言えば、クシャクシャの札束で保釈金の残りを払ったのは、結局誰だったんだろう。
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アメリカ中部、オザーク高地の村を舞台に、貧しく閉鎖的な社会に暮らす一人の少女の、孤独な戦いを描いたハードなヒューマンドラマ。
ダニエル・ウッドレルの原作小説を、これが長編二作目となるデブラ・グラニック監督がプロデューサーのアン・ロッセリーニと共同で脚色し、映画化した。
主人公の少女、リーを演じるのは「あの日、欲望の大地で」「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」の若き演技派、ジェニファー・ローレンス。
サンダンス映画祭グランプリ、本年度アカデミー賞主要4部門ノミネートなど、多くの映画賞に輝いた話題作だ。
ミズーリ州オザーク高地。
リー・ドーリー(ジェニファー・ローレンス)は17歳にして、幼い弟妹と心を病んだ母親の生活を支えている。
父親はドラッグの密造で逮捕され、保釈後に行方不明になった。
ある日、保安官の訪問を受けたリーは、家と土地が父の保釈金の担保になっており、彼が裁判に出廷しなければ、家を失う事を告げられる。
生活を守るために父の行方を捜し始めたリーは、貧困と犯罪が渦巻くオザークのダークサイドに足を踏み入れてゆく・・・
冒頭、主人公の住む薄汚れたログハウスの描写と共に、哀愁を帯びた素朴なメロディが流れる。
アメリカの音楽に詳しい人なら、これがミズーリ州の州歌でもある「ミズーリ・ワルツ」である事に気づくだろう。
元々この歌は、この地の吟遊詩人によって歌い継がれてきた、ヒルビリーと呼ばれる民謡の一つだった。
後に、カントリーミュージックの原型となるヒルビリーを生み出し、その名の由来となったのは、19世紀半ば以降にアメリカに渡って来たスコットランド人の農民たちだ。
遅れてきた移民である彼らは、肥沃な平地を購入することが出来ず、ある者はゴールドラッシュに沸く西部を目指し、ある者はアメリカ東部から中部にかけて広がるアパラチア・オザークの山間に入植し、ヒルビリーと呼ばれる様になる。
寒冷な山の入植地では、当然ながら穀物は十分に育たず、牧畜や狩猟などで補って何とか食つなぐが、やがて中西部の大穀倉地帯が開けると、山間の小規模農家はますます孤立する。
いくら働いても生活は豊かにならず、故郷から持って来た楽器で音楽を奏で、密造酒をあおって気を紛らわせる。
そんな山の民の音楽が、南部アフリカ系音楽と融合する事で独特の民謡音楽、ヒルビリーが生まれたのである。
更にアメリカ各地の様々な音楽の要素を取り入れて、今日のカントリーミュージックが確立するのは、20世紀に入りラジオが普及した以降の事だ。
言わば貧困が生み出した音楽であるが、実際この地方は今でも貧しいままだ。
主要産業である炭鉱は、第二次世界大戦後に閉山と機械化によって雇用が激減、それに代わる産業も育たなかったため、慢性的に失業率が高い。
主人公のリーの家も犯罪に手を染めた父親が失踪し、廃人同様になってしまった母と幼い弟妹の面倒を一人で見ているために学校にも行けない。
馬の干草すら買えず、森でリスを撃ったり、隣家の好意に甘えたりして、最低限の食べ物だけは確保する綱渡りの日々。
軍隊に入ることも考えたが、訓練所に家族を連れて行くことは出来ないと、あっさり門前払いされてしまう。
彼女の抱えている状況を見ると、これが世界で最も強大で、最も裕福な国の物語とはとても思えない。
まるで第三世界の映画を観ている気分になるが、これもまたアメリカの持つ秘められた一面である。
既に人生お先真っ暗、八方ふさがりの状況の中、更なる困難がリーを襲う。
失踪した父が、家族の暮す家と土地を担保に保釈金を捻出していた事が分かり、彼が裁判当日に出廷しないと、逃亡したとみなされて一週間で家を没収されてしまうのだ。
そうなっても何処にも行く当てのないリーは、家族を守るために父の行方を捜し始める。
しかし、村中ほぼ親戚だらけで、その殆んどがならず者として犯罪で生計を立てている特殊な社会である。
当然リーの探索は歓迎されず、それどころかあちこちで妨害や脅しにあう始末。
やがて彼女は、どうやら父が一族の掟を破り、共犯者の名前を当局に売ったことで、密かに処刑されたらしい事を知る。
その悲劇的な事実すら、リーにとってはもはや驚くべき事ではなく、父が死んだなら死んだで、今度はその証拠として死体を探し出さねばならないのだ。
否応無しに、一家の主として振舞わざるを得ない彼女は、もはや若き肝っ玉母さんとして何者をも恐れず突き進むしかない。
そして、その行動は周囲との更なる軋轢を生み出すことになるのである。
ここで面白いのは、彼らの社会では男があまり前面に出てこない事だ。
リーの伯父で、一族の間でも恐れられているらしいティアドロップが、男性キャラクターで唯一能動的な役割を果たし、物語の終盤でリーの助けとなるが、基本的に男たちは裏社会で蠢いている得体の知れない存在として描かれる。
接触する事すら難しい閉鎖世界に引きこもった男たちに代わって、この作品の中で現実と向き合い、人生という物語を前に動かしているのは女たちだ。
主人公のリーは勿論のこと、乳飲み子を抱えながら彼女に手を貸す友人のゲイルも、一族のボスの妻で、リーに容赦なく制裁を加えるメラブも、それぞれの立場でしっかりと地に足をつけた強い女として描かれる。
永遠の冬に閉ざされた様な、何処にも希望の見えない世界の中でも、彼女たちはそれぞれの“守るべきもの”を認識し、そのためには犠牲も厭わない。
タイトルの「ウィンターズ・ボーン」の意味が明かされる瞬間、リーもまた悲しい壁を越え、父を探す孤独な戦いは、図らずも彼女にとってヒルビリーの伝統を受け継ぐ一人の女として、自立への道となるのである。
リーを演じるジェニファー・ローレンスの、凛とした目力が凄みを感じさせる。
当初、キレイすぎて山奥の娘には見えないと言われた彼女は、最終選考のあったニューヨークの会場にわざと深夜の直行便で駆けつけ、充血してギラギラした目でオーディションに挑んでこの役を勝ち取ったと言う。
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たとえリーが家を失わなかったとしても、自転車操業のその日暮らしは変わらず、彼女自身にも、弟や妹にも豊かで満ち足りた未来があるとは思えない。
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希望はまだ見えない。
だが、リーが貫き通した強い心さえあれば、絶望に負けない事は出来るのである。
今回は、ヒルビリーの故郷スコットランドからスコッチウィスキーの代表的銘柄「グレンフィディック 18年エンシェントリザーブ」をチョイス。
スムースでフルーティな甘みと、パワフルだが温かみのあるフルボディな味わいは、まるでヒルビリーの女たちの様だ。
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この記事へのコメント
こんにちは、コメントありがとうございます☆
TBはこなかったです。
私ニガテでした、入って5分でうとうと。
めったにないんですけどね、、、眠気との戦い
映画には面白さを求めてしまう私には不向きでした~、バッドエンディングな映画は好きなんですけど、、、。
TBはこなかったです。
私ニガテでした、入って5分でうとうと。
めったにないんですけどね、、、眠気との戦い
映画には面白さを求めてしまう私には不向きでした~、バッドエンディングな映画は好きなんですけど、、、。
>migさん
あれ・・・またダメ?
もう一回入れたけどどうでしょう。
そうですか、まあこれが大好きって人も珍しいかも。
感動するとか、泣けるとかではなくて、ズーンと重い問いかけをされて、答えを出せないような感覚です。
あれ・・・またダメ?
もう一回入れたけどどうでしょう。
そうですか、まあこれが大好きって人も珍しいかも。
感動するとか、泣けるとかではなくて、ズーンと重い問いかけをされて、答えを出せないような感覚です。
2011/11/02(水) 22:23:30 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんは、ノラネコさん♪
スラムの貧困街とはまた違うアメリカの一面なんでしょうね。
タイトルの『ウィンターズ・ボーン』も「冬のような場所に生まれて」って意味かと思っていたら、意外にもマンマな内容で…ww。
観た後は無性に黄昏れちゃう映画ですよね~。
スラムの貧困街とはまた違うアメリカの一面なんでしょうね。
タイトルの『ウィンターズ・ボーン』も「冬のような場所に生まれて」って意味かと思っていたら、意外にもマンマな内容で…ww。
観た後は無性に黄昏れちゃう映画ですよね~。
そうですか、ジェニファーはそこまでやっていたのですか。正直言ってそう美人という程でもないけれど、彼女は演技派女優として若くして一流の域にちかづいていますね。
何を置いても生きるという強烈な覚悟を見せ付けられ圧倒されました。
何を置いても生きるという強烈な覚悟を見せ付けられ圧倒されました。
2011/11/03(木) 00:29:36 | URL | KLY #5spKqTaY[ 編集]
ノラネコさん、こんにちは☆
丁寧な解説、いつもながら素晴らしいです。
都会のならず者に比べて、ずっと根深い恐ろしさを感じたのは、きっとこの因習のせいなのでしょうね。
関わらなければ、恐ろしい目にも遭わない都会と比べて、周りが全部ならず者の親戚・・・みたいな場所では、逃れようが無いだけでなく、生活もできなくなっちゃう分、恐ろしさが想像以上でしょうね。
リーの力強さに圧倒されました。
丁寧な解説、いつもながら素晴らしいです。
都会のならず者に比べて、ずっと根深い恐ろしさを感じたのは、きっとこの因習のせいなのでしょうね。
関わらなければ、恐ろしい目にも遭わない都会と比べて、周りが全部ならず者の親戚・・・みたいな場所では、逃れようが無いだけでなく、生活もできなくなっちゃう分、恐ろしさが想像以上でしょうね。
リーの力強さに圧倒されました。
なるほど、この映画で描かれる集落は、そういうバックグラウンドがあったのですね。「貧困」「犯罪」「因習」が脈々と生き続けている地域、という認識はありましたが、詳しくは知りませんでした。非常に勉強になりました。
この映画、もちろん悲惨で不幸な生活および事件を描いてはいるのですが、私としては「じゃあ自分たちは彼らよりも絶対に幸せなのか」という思い頭のなかをぐるんぐるんしてしまいました。確かに豊かさという点も安全性という点でも、我々の生活は彼らよりもずっと上。でも、彼らには我々が意図をもって努力しなくては得られないモノ、「絆」があるのではないか、と。もちろん、この映画の世界に入っていって生活したいとは思わないわけなのですが。
いずれにせよ、いろいろな問いを投げ掛け、自分に刺激を与えてくれる素晴らしい映画でした。
この映画、もちろん悲惨で不幸な生活および事件を描いてはいるのですが、私としては「じゃあ自分たちは彼らよりも絶対に幸せなのか」という思い頭のなかをぐるんぐるんしてしまいました。確かに豊かさという点も安全性という点でも、我々の生活は彼らよりもずっと上。でも、彼らには我々が意図をもって努力しなくては得られないモノ、「絆」があるのではないか、と。もちろん、この映画の世界に入っていって生活したいとは思わないわけなのですが。
いずれにせよ、いろいろな問いを投げ掛け、自分に刺激を与えてくれる素晴らしい映画でした。
>ともやさん
ああ、それは“ボーン”違いですね(笑
都会のスラムも色々な問題を抱えているけど、この映画に描かれたのはまた別の閉鎖世界ですね。
これもまたアメリカな訳ですが、ある意味こういう社会が未だに存在できるあたりに懐の深さを感じます。
>KLYさん
「あの日、欲望の大地で」でも大した存在感でしたが、やはり彼女は大変な逸材ですね。
リーのキャラクターのリアリティが無ければ、全く成立しない映画ですから、見事な役作りだったと思います。
本当に田舎の娘・・というか田舎の母ちゃんに見えますからねえ。
>ノルウェーまだ~むさん
都会はまだ逃げ出せる場所もありそうですが、あの山奥じゃ、関わらないで生きてゆくことは出来ないですからね。
たぶん日本ももう少し古い時代にはこういう社会のリアリティがあったと思います。
この映画の状況がもうちょっと拗れると横溝ミステリーになりそうですもん。
>マサルさん
昔ヒルビリーの多いアパラチアの街を通りかかった事がありますけど、レストランで感じたよそ者への視線の痛さ・・・(苦
社会の広域化とコミュニティの絆の関係は、必ず提起されるテーマみたいな物ですが、あの世界を受け入れる事ができたなら案外居心地が良いのかもしれないなあとは思います。
アメリカにはこういう古い伝統を持つミニマム文化が色々と残されていますけど、受け継ぐ人がいなければ無くなってしまうわけですから、そこには何かがあるのでしょう。
とは言え、あの村の住人にはなりたくないなあ。
ああ、それは“ボーン”違いですね(笑
都会のスラムも色々な問題を抱えているけど、この映画に描かれたのはまた別の閉鎖世界ですね。
これもまたアメリカな訳ですが、ある意味こういう社会が未だに存在できるあたりに懐の深さを感じます。
>KLYさん
「あの日、欲望の大地で」でも大した存在感でしたが、やはり彼女は大変な逸材ですね。
リーのキャラクターのリアリティが無ければ、全く成立しない映画ですから、見事な役作りだったと思います。
本当に田舎の娘・・というか田舎の母ちゃんに見えますからねえ。
>ノルウェーまだ~むさん
都会はまだ逃げ出せる場所もありそうですが、あの山奥じゃ、関わらないで生きてゆくことは出来ないですからね。
たぶん日本ももう少し古い時代にはこういう社会のリアリティがあったと思います。
この映画の状況がもうちょっと拗れると横溝ミステリーになりそうですもん。
>マサルさん
昔ヒルビリーの多いアパラチアの街を通りかかった事がありますけど、レストランで感じたよそ者への視線の痛さ・・・(苦
社会の広域化とコミュニティの絆の関係は、必ず提起されるテーマみたいな物ですが、あの世界を受け入れる事ができたなら案外居心地が良いのかもしれないなあとは思います。
アメリカにはこういう古い伝統を持つミニマム文化が色々と残されていますけど、受け継ぐ人がいなければ無くなってしまうわけですから、そこには何かがあるのでしょう。
とは言え、あの村の住人にはなりたくないなあ。
2011/11/04(金) 22:25:33 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
凄い分析ブログ!
また訪問させていただきます!
また訪問させていただきます!
>きゅーさん
ありがとうございます。
機会がありましたらまたきてください。
ありがとうございます。
機会がありましたらまたきてください。
2011/11/08(火) 22:08:50 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
途中でだれることが無い、素晴らしい内容でした。不文律を含んでルールがあるところ(死に至る罰則も含めて)がこれまた(誤解を恐れずに言えば)素晴らしいです。主人公はまだ17歳(冒頭の高校風景が効いてます)、のしかかる不幸と災難に家族を守るために淡々と挑戦していく。言葉を失います。
2011/11/13(日) 19:02:02 | URL | さゆりん #mQop/nM.[ 編集]
>さゆりんさん
ヘビーな話ですが、ビシッと太い背骨の入った力強い物語でした。
僅か17歳にして大人にならざるを得ないのが良い事か悪い事かはわかりませんが、彼女のキャラクターには人間としての強さを感じます。
ヘビーな話ですが、ビシッと太い背骨の入った力強い物語でした。
僅か17歳にして大人にならざるを得ないのが良い事か悪い事かはわかりませんが、彼女のキャラクターには人間としての強さを感じます。
2011/11/13(日) 22:29:39 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
今日は、はじめまして。「愛のむきだしなの監督がすすめていたのがきっかけで、借りて見てみました。実は以前から気にはなていたのでしが、見終えて悪くない映画だったと思えています。切実であり、シリアスな話しの合間の子供たちの無邪気ささそれに癒されもしました。特に三人が道のべを歩いていて、主人公が妹にハウスのアルファベットのスペルを教えた、そのシーンが印象的であります。
さて、小生は趣味で俳句や短歌、陶芸。お茶を少し習っておりますが、お気に入りの短歌三首をご紹介させていただきます。(Dankon!)
草の葉に置く身は露と消ゆるとも 意は法の華に注がん〈日応上人〉
わが願ひエスペラントの歌まつり人類同胞こぞりてエルサレムの野に〈大本五代教主〉
なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな〈日本語の起源・言霊百神〉
さて、小生は趣味で俳句や短歌、陶芸。お茶を少し習っておりますが、お気に入りの短歌三首をご紹介させていただきます。(Dankon!)
草の葉に置く身は露と消ゆるとも 意は法の華に注がん〈日応上人〉
わが願ひエスペラントの歌まつり人類同胞こぞりてエルサレムの野に〈大本五代教主〉
なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな〈日本語の起源・言霊百神〉
2014/09/25(木) 11:20:21 | URL | 辻 #-[ 編集]
>辻さん
へえ、園子温さんがこれをおススメなんですか。
確かにこういう得たいの知れないコミュニティは彼の映画ともなんとなく通じるものがある気がします。
なるほど、なんだか納得です。
短歌もありがとうございます。
へえ、園子温さんがこれをおススメなんですか。
確かにこういう得たいの知れないコミュニティは彼の映画ともなんとなく通じるものがある気がします。
なるほど、なんだか納得です。
短歌もありがとうございます。
2014/09/30(火) 23:12:47 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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2011/11/03(木) 06:07:07 | Nice One!! @goo
葉の落ちた冬の森はどこか物哀しい。
だけど同じ冬の森でも、ノルウェーで体験した森は寒くてもどこかあったかい。
どうしようもなく殺伐としたかんじがするのは、そこがアメリカの闇だからなのか・・・
2011/11/03(木) 10:58:45 | ノルウェー暮らし・イン・原宿
アメリカ中西部ミズーリ州のオザーク高原。
17歳のリー(ジェニファー・ローレンス)は、心を病んだ母と幼い弟と妹の世話に励み、その日暮らしの生活を切り盛りしていた。
ドラッグの売人をしていた父親...
2011/11/04(金) 03:09:10 | 心のままに映画の風景
現在公開中のアメリカ映画、「ウィンターズ・ボーン」(監督:デブラ・グラニク)です。新宿武蔵野館で観賞しました。 少し前のマル激でこんなことが論じられていました。 「昭和30年代と比較して、殺人等の凶悪犯罪は圧倒的に減っている。とくに怨恨を動機とした犯罪の現...
2011/11/04(金) 17:33:20 | Men @ Work
「ウインターズ・ボーン」★★★
ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークス、
ケヴィン・ブレズナハン、デイル・ディッキー、
ギャレット・ディラハント 、シェリル・リー出演
デブラ・グラニック 監督、
100分 、 2010年 アメリカ
(原題:Winter's Bone )
2011/11/05(土) 10:32:55 | soramove
2010年:アメリカ映画、デブラ・グラニック監督、ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークス、ケヴィン・ブレズナハン、デイル・ディッキー、ギャレット・ディラハント出演。
2011/11/05(土) 19:40:36 | ~青いそよ風が吹く街角~
評価:★★★☆【3,5点】(13)
私を州境に連れてって!とはどっち方面なのだろうか。
2011/11/06(日) 11:14:16 | 映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ~
WINTER'S BONE
17歳のリー(ジェニファー・ローレンス)は、保釈中の父が失踪。心を病ん
だ母を抱え、12歳の弟と6歳の妹の面倒を見ながら暮らしていた。保釈金
の担保になっている家と森...
2011/11/07(月) 20:02:17 | 真紅のthinkingdays
『ウィンターズ・ボーン』をTOHOシネマズシャンテで見ました。
(1)予告編を見たのと、『あの日、欲望の大地で』で主人公の娘時代を演じたり、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』で女性ミュータントとして活躍したジェニファー・ローレンスが主役で出演するという...
2011/11/09(水) 05:32:15 | 映画的・絵画的・音楽的
11日のことですが、映画「ウィンターズ・ボーン」を鑑賞しました。
自宅と土地を担保に仮釈放し 失踪した父親
家、家族を守るため 少女は父親探しを始めるのだが・・・
フィクションとはいえ、まだアメリカにも
このような現実があるという驚き
村の掟、血のつながり・...
2011/11/20(日) 11:41:16 | 笑う学生の生活
今月の映画を観る会の作品です。
私はピンと来なかったので、
映画館に行くまで正式タイトルが。。。( ^ _ ^;
でもサンダンス映画祭でグランプリ&脚本賞の2冠に輝き、
アカデミー賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞の4部門で、
ノミネートされた作品?...
2011/11/28(月) 21:57:19 | 映画、言いたい放題!
11-70.ウィンターズ・ボーン■原題:Winter's Bone■製作年・国:2010年、アメリカ■上映時間:100分■字幕:杉田朋子■鑑賞日:11月13日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■料金:1,800円□監督・脚本:デブラ・グラニック□製作・脚本:アン・ロッ...
2011/12/24(土) 18:52:25 | kintyre's Diary 新館
あらすじ父親が逮捕され、自宅と土地を保釈金の担保にしたまま失踪家を立ち退くまで残された期間は1週間、17歳のリーは父親を捜すが・・・。解説アカデミー賞作品賞主演女優賞助...
2012/01/06(金) 09:20:31 | 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映...
あらすじ父親が逮捕され、自宅と土地を保釈金の担保にしたまま失踪家を立ち退くまで残
2012/01/06(金) 09:20:46 | 虎団Jr. 虎ックバック専用機
家族を守るため、失踪した父親捜しの旅に出る17歳の少女の姿を描くヒューマンドラマ。監督は本作が長編2作目となる新鋭デブラ・グラニック。出演は「X-MEN:ファースト・ジェネレー ...
2012/01/25(水) 11:02:03 | パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ
ウィンターズ・ボーン@ギンレイホール
2012/02/04(土) 16:58:26 | あーうぃ だにぇっと
新作DVDで早くも登場
解説
残された家族を守るため、失踪(しっそう)父親捜しの旅に出た少女の
姿を描く人間ドラマ。
薬物中毒や貧困といった社会問題を盛り込み、過酷な境遇を力強く生き
る少女の成長物語を紡ぎ、サンダンス映画祭グランプリなど世界各地の
...
2012/04/05(木) 21:47:23 | A Day In The Life
WINTER'S BONE/10年/米/100分/犯罪サスペンス・ドラマ/PG12/劇場公開(2011/10/29)
-監督-
デブラ・グラニック
-脚本-
デブラ・グラニック
-出演-
◆ジェニファー・ローレンス…リー・ドリー
主な出演作:『X-MEN:ファースト・ジェネレーシ?...
2012/04/09(月) 00:58:48 | 銀幕大帝α
人々が閉鎖的に暮らすにもほどがある荒涼とした山村が舞台。17歳の少女リーは、幼い弟妹と心を病んだ母を抱えて、何とか生活していた。しかし、失踪した父親は家と土地を保釈金の...
2012/09/13(木) 09:20:54 | いやいやえん
ウィンターズ・ボーン
17歳の少女が一家を守る為、
気丈に閉塞したムラで
父親の失踪の真相を探る...
【個人評価:★★☆ (2.5P)】 (自宅鑑賞)
原作:ダニエル・ウッドレル
2013/01/01(火) 16:33:37 | cinema-days 映画な日々
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