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ショートレビュー「寄生獣・・・・・評価額1700円」
2014年12月11日 (木) | 編集 |
慎ましく、喰い尽せ。

人間の脳を乗っ取り、捕食する謎の寄生生物が出現した世界で、ひょんな事から右腕だけを乗っ取られてしまった高校生を描くSFサスペンス。
90年代のアフタヌーン系を代表する、岩明均の傑作漫画、初の実写映画化である。
元々人気も高く、映像化が待望されていた作品だが、権利が長期間ハリウッドに抑えられていたので、連載終了後ほぼ20年を経てようやく企画が実現した。
映画は前後編の二部作で、予想通りに絶妙なところで今回は終了。
まあまだ半分だけなのだけど、山崎貴監督の着実な進化を感じさせる見事な出来栄えだ。
ジャンルは全く異なるのだけど、彼は「STAND BY ME ドラえもん」に引き続いて、伝説的な漫画を最良の形でスクリーンに移し替えたのではないか。

前篇の上映時間は109分、トータルで4時間ほどと考えれば、プロットの取捨選択はこれ以外に無いと思える。
全10巻に及ぶ原作は、ちょうど地球温暖化現象が注目され、エコロジー問題が世界的なイッシューとなり始めた1988年に第一話が発表された。
“Save the Earth”が叫ばれ、そもそも人類の存在自体が地球にとっては害悪なのでは?と問われる時代にあって、大いなる意思によって、“人類を駆除する種”がある日突然現れるという原作は実にタイムリーな作品だったのだ。
もっとも、この設定自体は現在でも十分説得力があるが、テーマとしてはここ四半世紀の間にやや普遍化し過ぎたきらいがある。

そこで本作は、原作でも主人公の泉新一が抱えている唯一絶対的なトラウマ、母親に対して抱いている複雑な罪悪感を明確に物語のコアとした。
物語からある人物の存在をバッサリと切っているのも、母性を巡る葛藤を軸に展開する以上、正しい判断だろう。
エコロジー部分は物語の大きな背景として存在し、前篇でまず新一は贖罪と復讐が組み合わさった親殺しを経験するが、それは同時に寄生された人間という視点では同族殺しでもある。
ある意味同じ境遇の“元人間”を殺して、殺して、最後には自分自身という矛盾が残る“仮面ライダーの決意”を新一にさせる為には、前編のミッドポイントまでに母子関係を強調する以外にない。
しかも上手いのは、完全に途中で終わっているにも関わらず、新一の葛藤にはきちんと達成を感じさせ、その解が次作にむけてより大きな葛藤を生み出す事で、前後編に分けた事による不完全燃焼な印象を最小限にしている事。
長大な原作をまとめているので、ごく僅かなダイジェスト感は残るものの、山崎貴と古沢良太によるロジカルに構成された脚色は出色の出来である。

あと総じてキャストが良い。
ぶっちゃけ漫画のキャラには誰一人として似てないし、あえて似せようともしていないが、映画はやっぱりコスプレショーじゃないという事を、本作の登場人物たちが証明している。
特に新一と奇妙なバディを組む、寄生生物ミギーの声を演じる阿部サダヲが素晴らしい。
本作とメディアミックスで、原作により忠実なテレビアニメ版「寄生獣 セイの格率」も放送されているが、あちらのミギーは声優の平野綾。
アニメの世界にはもちろんフィットするのだけど、彼女の声だと実写世界ではおそらく浮いてしまう。
阿部サダヲのミギーは演技的にぴったりなだけでなく、持ち前のウィットに富んだ口調が朴訥な染谷将太との掛け合いに上手くはまり、ともすれば殺伐としそうな世界観の中で、絶妙なユーモアを醸し出している。

エンドクレジット後に、来年公開の完結編の予告付。
これがまた実に面白そうで、ポスプロに時間のかかる作品だから仕方がないけど、半年のおあずけはちょっと辛い。

今回は岩明均が現在連載中の「ヒストリエ」の舞台、ギリシャから血の様な赤、「メガス・エノス アギオルギティコ /カベルネ・ソーヴィニヨン」をチョイス。
ヘラクレスの血と呼ばれる固有種のアギオルギティコ80%、カベルネ・ソーヴィニヨン20% で作られる赤は、フルボディで腰が強くフルーティ。
ちなみに映画の方の血糊の量は控えめだが、これはまあ作品規模を考えれば当然だろう。
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コメント
この記事へのコメント
いつも読ませてもらっています。
>権利が長期間ハリウッドに抑えられていたので
このマンガの権利はキャメロンだと言われていますね。
当時キャメロンが「寄生獣」作ると話題になったが実のところ、
ターミネーター2の時、T-1000の手が変化するのを、訴えられないように
とりあえず権利を押さえたというのが真相のようです。
2014/12/15(月) 14:16:30 | URL | まっくろねこ #-[ 編集]
大成功
ノラネコさん☆
漫画原作でここまでいいかんじに仕上げた数少ない例なのではないでしょうか。
私もアニメ見ているところですが、主人公の新一も彼女も、ずっと原作にイメージが近いのにちゃんと現代っ子になっていて、本当に見事でした。
全ての役者さんが素晴らしかったですねー
後編楽しみ!!
2014/12/15(月) 23:42:18 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
いつも楽しく読ませていただいております。原作をリアルタイムで読んでいた私としてもとても満足のいく映画でした。あのグ◯描写をどうするのかと思ってましたが、そこそこ忠実に再現してたし、原作の回収もやっていて見た後も興奮が続きました。また、万能細胞が取り囃されるなか、このタイミングで公開された事も運命的なモノを感じます。SATが出てきたり、2ちゃんねるの下りなど、現在をうまく描写していておもしろかったし、続編も期待しています。
2014/12/23(火) 22:11:00 | URL | ずみっちょ #mQop/nM.[ 編集]
こんばんは
>まっくろねこさん
それはもう四半世紀前の連載中にあった噂ですよね。
最近までずっと権利を抑えてたのは、連載終了後に映画化に動いたニューラインシネマです。
結局ハリウッドでは作られなかったので、ようやく日本に権利が戻ってきた訳です。

>ノルウェーまだ~むさん
ほんとにこれはお見事でした。
原作のプロットに忠実に、でも確実にコンパクトにしつつ、テーマを明確化しているんですから。
完結編まで半年も待たされるのが辛いです。
それまでに原作を読み返そうかな。

>ずみっちょさん
そうですね。
さすがに血糊の量は控えめですけど、そこまで忠実にやるとR15になっちゃうから。
連載終了後20年近いギャップも殆ど感じさせませんでしたね。
続編も期待しても大丈夫だと信じます。
2014/12/28(日) 23:06:10 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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映像化不可能と言われていた岩明均の同名人気漫画を、『永遠の0』などのVFXの名人・山崎貴監督が実写映画化。人間の脳をのっとり寄生し、人間を食べて生きる寄生獣と、その寄生獣が右手に寄生してしまった高校生の戦いを描いたSFドラマだ。主演は『ヒミズ』の染谷将太、共演に『悪人』の深津絵里や橋本愛、『クローズEXPLODE』の東出昌大、阿部サダヲらが出演している。
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