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酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
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ハニーランド 永遠の谷・・・・・評価額1750円
2020年07月02日 (木) | 編集 |
人と蜂、自然の作り出すハーモニー。

これは凄い映画だ。
長い歴史を持つ米国アカデミー賞で、史上初めて長編ドキュメンタリー賞と国際映画賞(旧・外国語映画賞)にダブルノミネートされた作品。
リューボ・ステファノとタマラ・コテフスカ両監督が生み出した、「ハニーランド 永遠の谷」の舞台となるのは、バルカン半島にある旧ユーゴスラビアの国、北マケドニアのほぼ中央部。
人里離れた山奥の谷の電気も水道もない古びた家に、自然養蜂家の中年女性ハティツェ・ムラトヴァが年老いて寝たきりとなった盲目の母親とひっそりと暮らしている。
小さな村に暮らすのは二人だけ。
自宅の庭や自然の岩棚などにある蜜蜂の巣から蜂蜜をとり、首都のスコピエに売りに行くことで生計を立てている。
彼女のポリシーは、蜂から半分だけ蜜をもらって半分は残す
これが自然の恩恵をずっと維持するための、無理のないラインなのだ。

ところがある時、ずっと空き家だった隣の家に、トレーラーを引っ張ってトルコ人の大家族が引っ越してくる。
孤独だった生活が、動物や子供たちの喧騒で突然賑やかになり、ハティツェも嬉しそう。
酪農を営む彼らは蜂蜜が良いお金になるのを知ると、見よう見まねで養蜂に挑戦をはじめる。
初めのうちは、ベテランのハティツェの助言に従って堅実にやっていたのだが、卸売業者に急かされて無謀な取引契約を結んだあたりから徐々に様子が変わってくる。
目先の金のために巣から蜂蜜を全部とってしまったら、当然蜂は飢える。
すると蜂は蜜を求めて、近くの別の巣を襲うようになり、蜂同士の殺し合いで数が減ってゆく。
さらに、牧草を増やすために谷に生えている自然の植生を燃やせば、蜂が集める蜜の元が無くなってしまう。
やがて無理な養蜂と生態系への無知は、彼らの蜂だけでなくハティツェが大切に守ってきた谷の自然に重大な影響を与えはじめる。
色んなネイチャードキュメンタリーを観てきたが、美しく調和した風景を壊すのは、いつだって人間の欲望なのだ。

本作の最大の特徴は、ドキュメンタリー映画でありながら劇映画の様な綺麗な三幕構成のストーリーがあり、非常にドラマチックなこと。
アカデミー賞では「パラサイト 半地下の家族」旋風に敗れはしたものの、長編ドキュメンタリー部門だけでなく、国際映画賞にもノミネートされたのはこの辺りが評価されたのだろう。
安易なナレーションには頼らず、時にカメラは荘厳な自然の景観を映し出し、時にハティツェの人生が刻まれた味わい深い表情を描写する。
おそらく照明などはほとんど使われておらず、光源も蝋燭などそこにあるものだけだろう。
本作のフィルムメーカーたちは、実に3年の歳月を費やし、撮影されたフッテージは400時間に及ぶと言う。
この膨大な映像のバリエーションがあってこそ、まるで劇映画のような山あり谷ありのストーリーを、紡ぎ出すことが出来たのだと思う。

時には山羊のように危険な崖を登り、少しずつ蜂蜜を採取するハティツェの生活は、一見すると都市に住む私たちとは、まるでかけ離れているようだ。
しかしスコピエに出た時に髪染めを買って、村には誰もいないのにお洒落していたり、亡き父親の考えで結婚できなかった過去を振り返ったりするシーンに、生身の女性の人生のドラマがリアリティたっぷりに浮かび上がってくる。
彼女の直面している状況は孤独で厳しいが、永遠に明けない冬はない。
一部は破壊されてしまった谷の自然も、やがて自己修復力によって、元どおりになるだろう。
国の歴史よりもずっと古くから、この土地で繰り返されてきたであろう、人間を含めた生と死のサイクルがこの映画からは見えてくる。
人間と蜂と、谷の自然を見つめることで見えてくる、命のストーリー。
驚くべき傑作である。

今回は、高知県の菊水酒造の作る蜂蜜酒のミード、「シークレット・オブ・クレオパトラ」をチョイス。
人類が飲んだ最初の酒は、木の洞などにたまった蜂蜜と雨水などが混じり合い、自然発酵して出来たものと考えられている。
ミードはあらゆるアルコール文化の源流なのだ。
銘柄はミードが古代エジプトの女王、クレオパトラの愛飲酒だっという話から。
蜂蜜が花の種類によって味が異なる様に、ミードもまた蜂蜜によって大きく味わいが違ってくるが、こちらはレンゲ蜂蜜を使用。
蜂蜜を使っているといっても甘さは控えめで、CPも高いのでデザートワイン感覚で普段使い出来る。

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ショートレビュー「ソニック・ザ・ムービー・・・・・評価額1600円」
2020年06月28日 (日) | 編集 |
超音速ヒーローの誕生!

任天堂がマリオにピカチュウなら、ライバルのセガには宇宙から来た青い高速ハリネズミ、“ソニック・ザ・ヘッジホッグ”がいる。
1991年、懐かしのメガドライブ版でのデビュー以来30年。
セガを代表するゲームキャラクター、アニメーションキャラクターとして人気を博してきたソニックが、満を侍して映画に登場。
特にキャラクター人気の高いアメリカでは、コロナ禍前の2月に公開され、昨年の「名探偵ピカチュウ」を超えてゲーム原作の映画の興業記録を作った作品だ。

子供の頃からその秘められた“スーパーパワー”を敵に狙われていたソニックは、地球へと逃されてモンタナ州の田舎町、グリーンヒルで人間から隠れながらひっそり暮らしている。
しかしある時、孤独に耐えかねて”スーパーパワー”を発動してしまったところ、ジム・キャリーが怪演するマッドサイエンティストのドクター・ロボトニック(エッグマン)に見つかってしまう。
ちなみにグリーンヒルとはもともとゲームのファーストレベルのステージ名だが、南国の楽園風のデザインで映画版のソニックが生まれた星に近い。
もはや安住の地では無くなった地球を離れ、別の惑星へと脱出するために必要なワープリングを取り戻すため、ソニックはジェームズ・マースデン演じる“ドーナツ卿”こと保安官のトムとバディを組み、大都会サンフランシスコを目指すことになる。

誰もが楽しめるファミリームービーの主人公は、誰もが共感できる葛藤を抱えていなければならない。
本作の場合は「孤独」という分かりやすさ。
グリーンヒルでは、周りに多くの人間が暮らし、みな友達や愛する人がいる。
だが逃げ続けるソニックは、誰からも知られず、誰からも愛されず、たった一人で生きていかねばならない境遇。
初めて姿を明かしたトムとの出会いと冒険を通して、ソニックは孤独を脱却するのと同時に、守らねばならない仲間を得るのだ。
逃げるのをやめて、自分の力で生きてゆく自由を掴み取る筋立ては、1ミリも定石を外さないので、終始安心して観ていられる。
居場所を巡るソニックの選択が、トムの人生の決断に影響を与えるあたりも、ドラマ的な深みまでは行かないがよく考えられている。

昨年5月のティザートレイラー発表の時点では、目が小さくて人間臭い四頭身プロポーションだったソニックのデザインも、不評の嵐を受けて突貫工事で過去のゲームやアニメーション、ディズニーの「シュガー・ラッシュ」にゲスト出演した時を思わせる三頭身キャラクターに修正され、馴染みの姿に。
トレードマークの赤い靴を手に入れるエピソードも出てくる。
最初のデザインは、実写映画ならではの新しいイメージを生み出そうとする意欲の現れだったと思うが、あのまんまのソニックだったら、正直ヒットしなかっただろうなあ。
まあこれは本作に限ったことじゃないんだけど、雛形のあるキャラクターのデザインはまことに難しい。
ソニックの人気と知名度が、生まれ故郷の日本よりも遥かに高いアメリカでの映画化は、相当に難しかったことだろう。

しかし、修正されたソニックも十分魅力的なのだが、本作のMVPは間違いなく久々登場のジム・キャリーだ。
嬉々として嫌味な悪役を演じ、その漫画チックで毒のあるユーモアでCGのキャラすら喰ってしまうのだから素晴らしい。
彼の繰り出すギミック満載のメカとのゲームライクなバトルも楽しく、最後まで飽きさせない。
ところでエッグマンといえば、ハゲ頭にながーいボサボサの口髭がトレードマークだが、本作ではドクター・ロボトニックとしてカイゼル髭で登場する彼が、いかにしてその姿となるのかの変遷も見どころだ。

「ソニック・ザ・ムービー」は「名探偵ピカチュウ」と共に、すでに半世紀の歴史を持った“ゲームカルチャー”に対する愛が強く感じられる作品で、ゲーム版やアニメーション版を知らない人でも楽しめる。
ちなみにクレジット中には、二段階で次回作の内容を示唆するオマケあり。
既に収益の損益ラインはクリアし、続編の製作は決定済み。
次はソニックが大好きな、“あのキャラクター”との共演が実現しそうだ。

今回はソニックのカラーリングに合わせ、青いカクテル「スカイダイビング」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、ブルー・キュラソー20ml、ライムジュース10mlをシェイクして、グラスに注ぐ。
キュラソーの甘味とライムの酸味がラムを引き立て、涼しげな見た目の通りにスッキリとした味わいのカクテルだ。

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ショートレビュー「泣きたい私は猫をかぶる・・・・・評価★★★★+0.3」
2020年06月23日 (火) | 編集 |
猫の愛、人間の愛。

Netflixオリジナルアニメーション。
とは言っても、本作は元々今年の6月5日に劇場公開が予定されていたのだが、コロナ禍の影響でネトフリ直行となってしまった作品。
おそらく劇場のブッキングの混乱はしばらく続くだろうし、世界中で似たようなケースが続出するのではないかな。
まあよく出来た作品だから、出来ればスクリーンで観たかったが、とりあえず作品が無駄に死蔵されず、ほぼ予定通りのスケジュールでファンに届けられることになったのは喜ばしい。

本作は傑作「ペンギン・ハイウェイ」を世に出した、新興アニメーションスタジオ「スタジオ・コロリド」の長編第二作。
今回は「心が叫びたがってるんだ」「空の青さを知る人よ」の岡田麿里のオリジナル脚本を、「美少女戦士セーラームーン」などのベテラン演出家の佐藤順一と「ペンギン・ハイウェイ」で絵コンテを担当した柴山智隆の共同監督で映画化。
淡い色彩の美しいアニメーションで描かれるのは、ひょんなことから猫に変身できる魔法を手に入れた、中二少女のリリカルな成長物語だ。

主人公の笹木美代は、クラスメイトから「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれ、常に一生懸命で元気いっぱいの少女。
クラスメイトの日之出賢人に想いをよせ、毎日のように全力で「好き」アピールしているが、全然相手にされていない。
そんな美代は、祭りの縁日で出会った奇妙なお面屋から、かぶると猫に変身できるお面をもらい、毎夜白猫の姿となって賢人と逢瀬を重ねているのだ。
もちろん賢人は、死んだ愛犬の生まれ変わりと信じる白猫が、文字通りに猫をかぶった美代だとは知らない。

実は美代には、変身の魔法以外にも秘密がある。
両親が離婚して、一緒に暮らす父はその後再婚。
継母はよくしてくれているのだが、美代はどうしても気を遣ってしまう。
実母は実母で今さら美代と暮らしたいと言い出し、彼女は二人の母親の間で板挟みになってしまっているのだ。
賢人への猛アタックも、親たちのややこしい事情を見ているからこその、彼女の愛し愛されたがりの感情の発露なのである。

一見天真爛漫だが家庭環境が複雑で、人知れず色々こじらせてる主人公。
このキャラクターの内面描写のリアリティこそ、岡田麿里脚本の真骨頂。
ワンアイディアから始まる物語は、序盤「心が叫びたがってるんだ」を思わせるが、本作では「愛されない人間より、いっそ愛される猫になりたい」と思った美代が元に戻れなくなり、そこから成長のステージとして、「千と千尋の神隠し」的な異世界への冒険に物語が広がってゆく。
高校生が主人公だった「ここさけ」や「空青」よりも、年少のこちらはファンタジー色が強いのが特徴だ。

招き猫通りが有名な焼物の街、常滑のロケーションがいい。
聖地巡礼なる言葉もすっかり定着したが、陶芸窯のレンガ煙突が並ぶ街並みは初めからちょっとした非日常感があり、こう言った現実からのファンタジーの裏打ちは、日本のアニメーション作品の大きな魅力になっていると思う。
あのファンタジックに魅力的な街なら、実は異世界に繋がっていると思えるし、実際に行ってみたくなるもの。

猫の姿のまま冒険の旅に出た美代は、初めて心の中の問題と初めてきちんと向き合い、愛の意味を考え、思春期という未知の海に漕ぎだすための大きな成長を果たす。
美代を演じるのは志田未来。
米林宏昌監督の「借りぐらしのアリエッティ」などで声優としても定評のある人だが、本作でも中二少女の絡みあった心を繊細に表現して素晴らしい。
主人公だけじゃなくて、登場人物全員の葛藤へのソリューションが用意されているのもいい。
誰もが物語を通して少しだけ変化し、物語の始まりより少しだけ幸せになる

そして猫飼いとしては、美代が変身した白猫のキャラクターも可愛いのだが、別のある猫と飼い主の絆のエピソードには思わず涙腺が・・・
本作では猫と人間の時間の違い、寿命の違いが物語のキーになっていて、あの猫は自分の命が残り少ないのを承知で飼い主との終の猫生を選んだんだよなあ。
この辺りは岡田麿里が初監督した「さよならの朝に約束の花をかざろう」にも通じる、切なくて優しい絆を感じさせる。
普遍性のある青春ファンタジーだが、猫飼いは余計に自分の子が愛しくなるだろう。

今回は舞台となる常滑の地酒、澤田酒造の「白老 大吟醸」をチョイス。
山田錦を40%まで精米して作り上げられる一本は、吟醸酒らしいフルーティーで芳醇な香りが特徴。
やや辛口で、海の幸はもちろん、肉料理などとも相性がいい。
これからの季節は冷でいただきたい。

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ザ・ファイブ・ブラッズ・・・・・評価★★★★+0.7 
2020年06月19日 (金) | 編集 |
もう一つの“地獄の黙示録”。

Netflixオリジナル作品。
ベトナム戦争の四人の黒人帰還兵が、戦死した隊長の遺骨収集と隠された金塊を探すために、数十年ぶりにベトナムを訪れる。
彼らは記憶に導かれ、様々な思い出が埋まっているジャングルの奥地を目指すのだが、金塊への欲望と考え方の違いから軋轢が生じ、予期せぬ事件を引き起こす。
ダニー・ビルソンと故ポール・デ・メオが2013年に執筆したシナリオ「The Last Tour」をベースに、スパイク・リーが人種差別への怒りを前面に出してリライト。
デルロイ・リンドー、クラーク・ピーターズ、ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロックが今は老人となった四人の帰還兵を演じ、彼らの人生を変えた亡き隊長を「ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマンが演じる。
例によって色々詰め込んでるので、えらくバランスは悪いのに、パワフルで目が離せないくらいに面白いのはさすがリーだ。

ベトナム戦争から半世紀。
同じ部隊に所属していたポール(デルロイ・リンドー)、オーティス(クラーク・ピーターズ)、エディ(ノーム・ルイス)、メルヴィン(イザイア・ウィットロックJr)の四人は、戦死したノーマン隊長(チャドウィック・ボーズマン)の遺骨と、当時ひょんなことから手に入れ、ジャングルに隠したCIAの金塊を探すため、再びベトナムの地に降り立つ。
ポールの息子、ディッド(ジョナサン・メイジャーズ)も同行することになり、五人のアメリカ人はガイドのヴィン(ジョニー・グエン)と共に、目的地へと向かう。
かつて戦場だったジャングルの奥地で、彼らはノーマンの遺骨と金塊を見つけることに成功したが、地雷除去のNGOに所属するヘディ(メラニー・ティエリー)たちに金塊を見られてしまう。
予期せぬ事態に五人は困惑するが、そこへ現地のギャングたちが襲いかかってくる。
金塊を換金するために雇った裏社会の顔役のデローシュ(ジャン・レノ)が、利益を独占しようと裏切ったのだ。
一度は撃退したものの、ここは敵の地元で状況は圧倒的に不利。
再びの地獄へと堕ちた元老兵士たちは、ヴィンやヘディの協力を得て戦うことを決意するのだが・・・・


これまた、スパイク・リーの怒りのパワーに満ちた大怪作だ。
前作の「ブラック・クランズマン」は、70年代初期を舞台に、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)への奇妙な潜入捜査に挑んだ黒人警官を描く、異色の人種差別サスペンスだった。

その同じ時代に、ベトナムのジャングルでは多くの黒人の兵士たちが戦っていた。
米国の人口に黒人が占める割合はわずかに11%だが、ベトナムに派遣された黒人兵の割合は32%にものぼる。
第二次世界大戦や朝鮮戦争では、白人と黒人の部隊が分けられていアメリカ陸軍は、公民権法の成立を受けてベトナム戦争では基本的に混成部隊。
この戦争で初めて人種の壁を越え、肌の色の違う同胞と”戦友”となった者も多かった。
しかしそれでも研究によると、ベトナム戦争の黒人帰還兵がPTSDを発症する確率は、白人兵士の二倍に達するという。
これは黒人兵により危険な任務が与えられ、凄惨な戦場を体験してきたことを意味するのだが、ベトナム戦争での黒人兵を描いた作品は相対的に少ない。
もちろん、いろいろな映画にキャラクターとしては出てくるし、主役級が黒人の作品もある。
しかし人種葛藤をテーマにベトナム戦争を描いた作品は実際皆無で、本作の存在は画期的だ。
ある意味アメリカ社会全体に喧嘩を売ってるような話なので、全てのスタジオに断られ、Netflix直行というのも然もありなん。

スパイク・リーの作品の例に漏れず、いろいろな要素が闇鍋的にぶち込まれているので、序盤の印象はゴチャゴチャしていて作品の骨格はなかなか見えてこない。
はじまってしばらくは、お爺ちゃんたちの緩い観光旅行が続くのだけど、中盤から彼らの中に疼く殺戮と狂気の記憶が前面に出て緊迫度が増してくる。
四人が訪れるクラブのDJブースの背後には「Apocalypse Now」の巨大な文字が輝き、すっかり近代化され高層ビルが建ち並ぶホーチミン市から、一行が船でジャングルへと入っていくシーンではワーグナーの「ワルキューレの騎行」が鳴り響く。
リーは同じくベトナム戦争をモチーフとしたフランシス・コッポラの伝説的な大作、「地獄の黙示録」を換骨奪胎し、四人の帰還兵の“闇の奥”への旅を描く。
ジャングルの深淵で彼らを待ち受けるカーツ大佐に当たるのが、本作ではチャドウィック・ボーズマン演じるノーマン隊長だ。
ただし、カーツと違ってノーマンは何十年も前に死んでいる。
彼は全ての黒人の開放を願う高潔な思想を持ち、戦争の中でも部下たちに大きな影響を与えた人物で、死してなお彼らを精神的に支配しているのである。

特に、帰還兵たちの中でもPTSDの症状がひどく、攻撃的な言動を繰り返し、実質的な主人公とも言えるポールに関しては、ノーマンとの間に決して他人には言えない秘密を抱えていることもあり、描かれる感情も非常に複雑。
旅をしながら過去のノーマンと対話し、そのトラウマの根元と向き合うポールを演じるデルロイ・リンドーが圧巻の素晴らしさ。
狂気が滲み出る怒りの独白の演技は、同時に彼が負った絶対に癒せない深い心の傷を感じさせ、まことに秀逸だ。
おそらくリンドーは、本年度の映画賞の演技部門に確実に絡んでくるだろう。

7年前にビルソンとデ・メオが「The Last Tour」を書き上げた時、本作の主人公は白人の設定だったそうだが、リーが参加して黒人設定になったことで、新たなテーマが付与され驚くべき未見性を備えた作品となった。
ノーマンに影響を受けた四人の帰還兵が抱える葛藤のベースにも、今も昔も変わらないアメリカ社会への怒りと批判が組み込まれてことで、本作には大きな思想的バックボーンが入った。
戦時中を描く回想シーン(もしくは記憶の中のシーン)では、ノーマンだけ若く他の四人は老人となった彼らがそのまま演じてるのが面白い。
本作で帰還兵たちが辿る闇の奥への冒険は、地理的なものだけでなく、過去の記憶への帰還と絡み合い、より精神的な旅となっているのだ。

しかし、コロナ禍の中で本作の配信がスタートしたのと時を同じくして、米国では白人警官に黒人男性が殺された事件をきっかけに「Black lives matter」の一大ムーブメントが始まった。
この標語自体は2013年から使われているので、本作の中にも出てくる。
図らずもタイムリーな公開になってしまったが、やっぱり時代に呼ばれる映画というのはあるのだと思う。
「アメリカのために、有色人種や飢えで苦しむ人々を撃つのは良心が許さない。彼らは俺を侮辱したり、犬をけしかけたりしてない」
冒頭、ベトナム戦争への徴兵を拒否し、長年に渡って政府と闘ったモハメド・アリのニュース映像から始まる本作は、全編からマイノリティーである黒人が白人のルールの下で生きる苦難と理不尽さが滲み出る。
「金持ち(白人)の息子は大学へ行き、貧乏人(有色人種)の息子は戦争へ行く」
この構図は今なお変わってないのかもしれない。

今回はベトナムのビール「333(バーバーバー)」をチョイス。
国内シェア7割を誇るトップブランドのピスルナーで、高温多湿の南国のビールらしく、さっぱりとしたテイスト。
ベトナムのビールの中では苦味が強目で、ほんのりとフルーティーな香りが漂い、爽やかに喉を潤してくれる。
東南アジアではビールジョッキに氷が入ってることが多いが、このビールも氷入りで飲むとより気分が高まる。
ちなみに「333」という名前は、ラッキー7的なベトナムの幸運の数字なんだとか。

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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語・・・・・評価額1800円
2020年06月14日 (日) | 編集 |
女たちの生きる道。

グレタ・ガーウィク、シアーシャ・ローナンという「レディ・バード」の監督・主演コンビが、ルイーザ・メイ・オルコットによる米国文学の不朽の名作「若草物語」を映画化。
ガーウィクは、南北戦争下のマサチューセッツに暮らす、マーチ家の四姉妹の物語を巧みに脚色し、詩情に溢れ21世紀に相応しい視点を持ったフレッシュな作品に仕上げた。
原作は四部作だが、本作で描かれるのはニューヨークで作家修行中の次女ジョーの“今”を起点とした第二部と、四姉妹の輝かしい少女時代を描く第一部がほとんど。
この二つの時代が、時系列を行き来する形で平行に描かれることで、モダンなテーマが導き出されるという構造を持つ。
キャストの素晴らしさは言うまでもなく、撮影監督のヨリック・ル・ソーが紡ぐ美しくリリカルな映像、アカデミー賞を受賞したジャクリーヌ・デュランによる四姉妹それぞれの個性が際立つ衣装デザインなど、テリング面も非常に完成度が高い。
コロナ禍によって日本公開が三ヶ月も延期されていたが、十分に待った甲斐のある傑作だ。

マーチ家の次女ジョー(シアーシャ・ローナン)は作家志望。
ニューヨークで住み込みの家庭教師をしながら、大衆小説を書いている。
しかし、売るために読者に媚びた小説になってしまっていることを、同じ下宿に住む大学教授のフレデリック(ルイ・ガレル)に見抜かれて、意気消沈。
そんな時、マサチューセッツの実家から病気がちの三女ベス(エリザ・スカンレン)の具合が悪いと言う連絡が入り、久しぶりに故郷へ戻る列車に乗り込んだジョーは、懐かしい夢をみる。
それは南北戦争下、マーチ家の女たちが出征した父の留守を守っていた7年前の記憶。
美しい長女のメグ(エマ・ワトソン)、慈愛に満ちた三女のベス、絵が得意でおしゃまな四女のエイミー(フローレンス・ピュー)、そしてボーイッシュで勝気なジョー。
隣家に住むローリー(ティモシー・シャラメ)を加えた5人で、青春を謳歌していた時代の夢。
やがて故郷へと帰り着いたジョーは、すっかり痩せ細ってしまったベスと共に、海辺の街に療養に出ることを決める。
同じ頃、おば(メリル・ストリーブ)の世話係としてヨーロッパへと渡っていたエイミーは、ローリーと思わぬ再会を果たすのだが・・・・


「若草物語」は非常に愛された小説で、過去に映画やテレビドラマ、果ては日本のテレビアニメーションまで何度も映像化されている。
中でも評価が高い1933年のジョージ・キューカー版ではキャサリン・ヘプバーンが、49年のマーヴィン・ルロイ版ではジューン・アリソンが、94年のジリアン・アームストロング版ではウィノナ・ライダーと、常に旬の若手女優がジョーを演じてきた。
本作のシアーシャ・ローナンは、歴代ジョーの中でも後述する物語の視点の違いもあって、一味違ったキャラクターになっている。

基本的なプロットは、原作に忠実。
四者四様のマーチ姉妹の物語を通して、女性の生き方や幸せの意味が描かれてゆくのだが、22歳となったジョーの葛藤を物語の起点としたことがポイント。
彼女は一応作家となったものの、売れるものを欲しがる編集者の言いなりで、クリエイターとして描きたいものを書けていない。
その背景となっているのが、19世紀の女性の置かれた社会環境だ。
映画の中でも繰り返し言われるのが、「女の幸せは結婚にしかない」と言う言葉。
女性は経済的に自立できない。
結婚して子供が生まれても、その子供は夫のもの。
まともに稼げる女性の職業は、女優か売春婦くらいしかない。
そんな風潮に反発するジョーは、ローリーの熱烈な求婚を断ってでも、作家として成功することで家族を含む世間に自分を認めさせようとしている。
そのためには売れるものを書かなければならないのだけど、虚無感は強まるばかり。
一方、幸せな結婚をしたはずの長女のメグは経済的に困窮し、画家を目指しているエイミーも才能に限界を感じ家族の安定のためにも金持ちとの結婚を考えている。
そして、自分よりも他人のことを思いやっていた優しいベスは、重い病で死の淵にある。

今よりもはるかに、女性が自由に生きることが難しかった時代。
四姉妹それぞれが、思い通りにならない人生の現実に翻弄される第二部を物語のベースとし、ジョーを語り部に記憶としての第一部を描く構造とすることで、オルコットが本当に描きたかった物語が見えてくると言うわけ。
本作では基本的に過去の描写は全てジョーの見た夢であり、物語の終盤で彼女が執筆する「若草物語」というフィクションに封じ込まれている。
面白いのは“現在=現実”は冬の季節で寒色基調、戦時下でも家族皆が幸せだった“少女時代=フィクション”は暖かみのある暖色基調で描かれていること。
原作小説がオルコットの自伝的な作品であることはよく知られているが、ガーウィクは物語上のジョーを原作者オルコットと同一視する工夫を取り入れている。
小説のジョーは自分の理解者となったフレデリックと結婚するのだが、本作ではここで物語が二つに分かれる。
一つは「若草物語」を脱稿し編集者と契約交渉をするジョー、もう一つは同じくジョーを主人公とした小説のエンディング。
もちろん前者は寒色で、後者は暖色で描かれている。

ジョーが最初の小説を売り込みに行った時、編集者に言われるのが「女性キャラを出すなら最後は結婚させること。さもなくば殺せ」という当時の娯楽小説のお約束。
オルコット自身は生涯独身を貫いた急進的なフェミニストであり、自由な生き方を模索するジョーが結婚して幸せになるというラストを本当は描きたくなかったはず。
そこで本作はジョーの人生を現実とフィクションに分け、メタ構造とすることで小説のラストはあくまでも出来過ぎたフィクションという扱いにしているのである。
同時に、大人になった四姉妹の迎える経済的な苦境や、著作権を安値で買い取ろうとする編集者とジョーのウィットに富んだ会話を通して、フェミニズムの目指す人生の選択の多様性は、結局女性が自立し経済力を持たねば得られないことを説く。
本作では3人の登場人物が“第四の壁”を越えてスクリーンのこちら側に語りかけてくる描写もあるが、物語を重層的なメタ構造にすることで、作者が本当に意図したであろう原作のその先を描き出したのは見事だ。

それにしてもマーチ家の女優陣凄過ぎ。
キャプテン・シアーシャに率いられるのは、メリル・ストリーブ、ローラ・ダーン、エマ・ワトソン、エリザ・スカンレン、フローレンス・ピューと、ベテランから若手までまさに演技派女優のアベンジャーズ状態。
ティモシー・シャラメをはじめ男性陣も頑張っているけど、この迫力にはタジタジだ。
彼女たちの中では一番知名度の低いベス役のエリザ・スカンレンが地味に素晴らしく、その薄幸の人生が本作の作り出す情感の多くを占めている。
ジョーが「若草物語」を生み出すきっかけとなるのも、彼女との死別なのである。
映画の最後で、ジョーの想いのこもった「若草物語」はとうとう本になるのだが、一冊の本が丁寧に仕上げられてゆく描写と、その作業を見守るジョーの優しい眼差しが、創作物へのリスペクトに満ちていてとても素敵だった。
ちなみに「若草物語」の初版には、映画に出てきた赤色装丁の他にも緑や茶など複数色があるらしいのだが、赤が選ばれているのは、本作の衣装デザインでジョーのキーカラーが赤に設定されているからだろう。

ところで、一大ムーブメントとなった「Black lives matter」の影響で本作と同じ時代を舞台とした「風と共に去りぬ」への風当たりが強くなっているという。
まあスパイク・リーの「ブラック・クランズマン」でも槍玉に上がっていたし、降って湧いた話ではないのだけど、南北戦争前の南部を美化して差別的だとして、配信サービスから消えつつあるとか。
同じ女性の自立を描いていても、今なお愛されリメイクされる「若草物語」とは対照的な扱いだが、これに限ったことではないけど、現在の基準に当てはめて単純に否定して蓋をするより、作品が作られた時代背景や問題点を知らせつつ、アクセシビリティは確保される方が文化として健全だと思うんだけどな。
めちゃめちゃ面白い映画であることは確かだし。

今回はジョーが夢を追うニューヨークの地ビール「ブルックリンラガー」をチョイス。
伝統のウィンナースタイルで作られるこのビールは、禁酒法以前のニューヨークに多く存在した、ドイツ系醸造所の味を復活させるため、1998年に創業した銘柄。
おそらくジョーの時代のニューヨークでも飲まれていたであろう、フルーティで適度な苦みと深いコク、ホップ感を持つ欧州風の一本だ。

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