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2020年04月10日 (金) | 編集 |
それは、受け継がれてゆく人生のループ。
新型コロナウィルスのパンデミックという映画さながらの緊急事態により、東京の映画館は全てクローズとなってしまい、映画ブログもネタがない。
まだレビューしてない作品はあるけど、せっかくなので引きこもり生活に潤いを与えてくれる配信作品をご紹介。
評価は映画館と違って料金がないので満点⭐️五つ。
Amazonプライムビデオで4月3日から配信が始まったばかりの「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」は、スウェーデンのアーティスト、シモン・ストーレンハーグの同名の物語付きイラスト集を原作にした異色のSFアンソロジー。
地下に“ループ”と呼ばれる巨大な研究施設がある街を舞台に、住人たちの身に起こるちょっと不思議な出来事を描いている。
全8話で構成されるシリーズは、第一話のマーク・ロマネクから始まり、第4話アンドリュー・スタントン、最終第8話ジョディ・フォスターと言った大物たちが各話の監督として参加している話題作だ。
全体を統括するショーランナーと脚本を担当したナサニエル・ハルパーンは、アーリー80’sの世界観で描かれるシリーズを貫く二つの原則を設定している。
一つは、1話完結のシリーズを通して、主人公がバトンタッチしてゆくこと。
あるエピソードの主人公は、必ず過去のエピソードで脇役として顔を出している。
もう一つは、各エピソードの主人公が、特定の“感情”に関する葛藤を抱えているということ。
例えばマーク・ロマネクが格調高く描く第一話「Loop」は、ループで働く科学者を母に持つ少女が、偶然に知り合った少年と共に突然失踪した母を探す物語だが、主人公はビジネスライクな親子関係から、母性へのわだかまりを抱いている。
第二話「Transpose」では、第一話で登場した少年の兄が主人公となり、憧れの友達に対する複雑な思春期のコンプレックスが描かれる。
そして第三話「Stasis」では、第二話の主人公が想いを寄せていた少女の、恋のトキメキが永遠に続けば良いのに、と願う乙女心といった具合。
SFとは言っても、ありがちなドラマの様に、広がり続ける世界観の謎で魅せようとはしていない。
基本は丁寧に作られた心理ドラマで、ぶっちゃけかなり地味だ。
この作品の特徴は、圧倒的にクオリティの高い映像と全編に漂う詩情。
事件を巻き起こす謎めいたアイテムは色々出てくるのだが、その正体などは一切描かれず、SF的な超常現象が主人公が密かに抱えている潜在的葛藤を顕在化する役割を負う。
シリーズを通してリリシズム溢れる佳作が続き、一歩引いて全8話を見ると第一話の主人公の少女とその息子が全体主人公となり、受け継がれてゆく人生で、生と死と時間に関する壮大なループを形作るという凝った構造。
どのエピソードも味わいがあるが、少年が“死”の意味を知るアンドリュー・スタントン監督の第四話「Echo Sphere」が一番好き。
人間の本質を突き詰めるためのSFであり、例えばドゥニ・ヴィルヌーヴの「メッセージ」とか、森見登美彦の小説を石田祐康が映画化した「ペンギン・ハイウェイ」あたりが好きな人はハマりそう。
一話完結とは言っても全体構成はきっちりと計算されているので、順番通りに観ることをオススメする。
今回は、夢うつつの世界で展開する作品ゆえカクテルの「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40ml、オレンジ・キュラソー20ml、ぺルノ1dashを、氷と共にシェイクしてグラスに注ぐ。
ブランデーのコクのある甘味とオレンジの風味が組み合わさり、ぺルノが両方を引き立てる。
甘口の優しい味わいのカクテルだが、何気に飲む人を夢に誘うくらいに強い。
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新型コロナウィルスのパンデミックという映画さながらの緊急事態により、東京の映画館は全てクローズとなってしまい、映画ブログもネタがない。
まだレビューしてない作品はあるけど、せっかくなので引きこもり生活に潤いを与えてくれる配信作品をご紹介。
評価は映画館と違って料金がないので満点⭐️五つ。
Amazonプライムビデオで4月3日から配信が始まったばかりの「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」は、スウェーデンのアーティスト、シモン・ストーレンハーグの同名の物語付きイラスト集を原作にした異色のSFアンソロジー。
地下に“ループ”と呼ばれる巨大な研究施設がある街を舞台に、住人たちの身に起こるちょっと不思議な出来事を描いている。
全8話で構成されるシリーズは、第一話のマーク・ロマネクから始まり、第4話アンドリュー・スタントン、最終第8話ジョディ・フォスターと言った大物たちが各話の監督として参加している話題作だ。
全体を統括するショーランナーと脚本を担当したナサニエル・ハルパーンは、アーリー80’sの世界観で描かれるシリーズを貫く二つの原則を設定している。
一つは、1話完結のシリーズを通して、主人公がバトンタッチしてゆくこと。
あるエピソードの主人公は、必ず過去のエピソードで脇役として顔を出している。
もう一つは、各エピソードの主人公が、特定の“感情”に関する葛藤を抱えているということ。
例えばマーク・ロマネクが格調高く描く第一話「Loop」は、ループで働く科学者を母に持つ少女が、偶然に知り合った少年と共に突然失踪した母を探す物語だが、主人公はビジネスライクな親子関係から、母性へのわだかまりを抱いている。
第二話「Transpose」では、第一話で登場した少年の兄が主人公となり、憧れの友達に対する複雑な思春期のコンプレックスが描かれる。
そして第三話「Stasis」では、第二話の主人公が想いを寄せていた少女の、恋のトキメキが永遠に続けば良いのに、と願う乙女心といった具合。
SFとは言っても、ありがちなドラマの様に、広がり続ける世界観の謎で魅せようとはしていない。
基本は丁寧に作られた心理ドラマで、ぶっちゃけかなり地味だ。
この作品の特徴は、圧倒的にクオリティの高い映像と全編に漂う詩情。
事件を巻き起こす謎めいたアイテムは色々出てくるのだが、その正体などは一切描かれず、SF的な超常現象が主人公が密かに抱えている潜在的葛藤を顕在化する役割を負う。
シリーズを通してリリシズム溢れる佳作が続き、一歩引いて全8話を見ると第一話の主人公の少女とその息子が全体主人公となり、受け継がれてゆく人生で、生と死と時間に関する壮大なループを形作るという凝った構造。
どのエピソードも味わいがあるが、少年が“死”の意味を知るアンドリュー・スタントン監督の第四話「Echo Sphere」が一番好き。
人間の本質を突き詰めるためのSFであり、例えばドゥニ・ヴィルヌーヴの「メッセージ」とか、森見登美彦の小説を石田祐康が映画化した「ペンギン・ハイウェイ」あたりが好きな人はハマりそう。
一話完結とは言っても全体構成はきっちりと計算されているので、順番通りに観ることをオススメする。
今回は、夢うつつの世界で展開する作品ゆえカクテルの「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40ml、オレンジ・キュラソー20ml、ぺルノ1dashを、氷と共にシェイクしてグラスに注ぐ。
ブランデーのコクのある甘味とオレンジの風味が組み合わさり、ぺルノが両方を引き立てる。
甘口の優しい味わいのカクテルだが、何気に飲む人を夢に誘うくらいに強い。

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2010年11月06日 (土) | 編集 |
「ミスト」以来となるフランク・ダラボンの最新作は、何とゾンビ物のテレビシリーズだ。
ロバート・カークマンによるグラフィックノベル、“The Walking Dead”を原作にしており、放送するAMCは、パイロット版を作らずに6話で構成されるファーストシーズン全体に初めからゴーサインを出したという。
10月31日のハロウィンにダラボン自身がメガホンを取った第一話が放送され、IMDBのユーザー評価でも11月8日現在で9.5ポイントという圧倒的な支持を得ている。
保安官のリック(アンドリュー・リンカーン)は、逃亡犯との銃撃戦で被弾し、意識を失って入院する。
彼が目覚めた時、世界は終わっていた。
まるで戦争でも起こったかのように、街中に死体が積み上げられ、軍の車両やヘリコプターまでが放置されている。
呆然とするリックは、偶然出会った親子に助けられる。
彼らによると、突然出現した奇病によって、死んだ人間が蘇って生きている人間を襲い始め、瞬く間に社会は崩壊してしまったという。
唯一安全な場所がアトランタにあるらしいのだが・・・・
ありそうで実は珍しい連続ドラマのゾンビ物。
たぶん、イギリス製の「デッド・セット」ぐらいしか過去に例は無いのでは?
通常アメリカの大作ドラマは、パイロット版を放送して、その反響によってシリーズ化するかどうかが決定される。
6話というミニシリーズとはいえ、いきなり全話制作というのは原作の知名度と、ダラボンの信用ゆえだろうか。
実際、第一話はさすがの出来栄えである。
意識を失った主人公が、目覚めたらゾンビが跋扈する終末の世界だったというのは、ダニー・ボイルの「28日後」を思わせる。
まあこれは原作の出版当時にもパクリ論争があったらしいが、映画版「バイオ・ハザード」の冒頭も似たような物だし、ザック・スナイダー版の「ドーン・オブ・ザ・デッド」も、朝起きたらゾンビの世界になっていたという点では同じである。
類型的ではあるが、とにかく主人公を情報から遮断し、理解不能な状況へと叩き込むには最も適した展開であることは確かだろう。
第一話は、とりあえず全体の起承転結の起という感じである。
突然ゾンビワールドに目覚めてしまった主人公リックが、何とか家へ帰るものの妻子の姿は見えず、偶然出会った避難民の父子に救われて、絶望的な状況を教えられる。
彼らの家族を巡る悲しいドラマを絡めながらも、リックが妻子を探すためにアトランタへと向うというのが基本的な流れ。
無駄な描写が無く、テンポ良く物語を進めつつも、サブキャラクターのエピソードを効果的に使って、物語のキーワードが“家族”である事を示唆し、ついでに次回以降の展開のヒントも終盤に配置する。
そして、続きが観たくなる絶妙のポイントでの“To be continued”というオチ。
ダラボンの魅力はやはり圧倒的な脚本力であると思うが、本作もまた脚本の教科書になりそうな仕上がりだ。
原作を未読なので、第一話のみの印象ではあるが、二話目以降もリックがサバイバルしながら家族を探す物語が中心にあり、そこに生き残った様々な人々が絡んでくる、という展開になるようだ。
ダラボンのことだから、終末世界に比喩された濃密な人間ドラマが展開するのだろうし、彼の作品に特徴的な独特の宗教性が、どのように盛り込まれてゆくのか、あるいはゆかないのかも興味深い。
凄く楽しみであるのだが、第一話はFOXチャンネルで放送されるのに、第二話以降はFOXムービーでしか観られないという。
戦略的というか、意地悪というか・・・たぶん、DVD化は来年だろうし、この続きを観るためだけに、追加料金を出して契約するか、悩みどころである。
まだ正式決定はしていないようだが、この出来ならシーズン2以降も続くだろうし・・・・う~ん、悩ましい。
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ロバート・カークマンによるグラフィックノベル、“The Walking Dead”を原作にしており、放送するAMCは、パイロット版を作らずに6話で構成されるファーストシーズン全体に初めからゴーサインを出したという。
10月31日のハロウィンにダラボン自身がメガホンを取った第一話が放送され、IMDBのユーザー評価でも11月8日現在で9.5ポイントという圧倒的な支持を得ている。
保安官のリック(アンドリュー・リンカーン)は、逃亡犯との銃撃戦で被弾し、意識を失って入院する。
彼が目覚めた時、世界は終わっていた。
まるで戦争でも起こったかのように、街中に死体が積み上げられ、軍の車両やヘリコプターまでが放置されている。
呆然とするリックは、偶然出会った親子に助けられる。
彼らによると、突然出現した奇病によって、死んだ人間が蘇って生きている人間を襲い始め、瞬く間に社会は崩壊してしまったという。
唯一安全な場所がアトランタにあるらしいのだが・・・・
ありそうで実は珍しい連続ドラマのゾンビ物。
たぶん、イギリス製の「デッド・セット」ぐらいしか過去に例は無いのでは?
通常アメリカの大作ドラマは、パイロット版を放送して、その反響によってシリーズ化するかどうかが決定される。
6話というミニシリーズとはいえ、いきなり全話制作というのは原作の知名度と、ダラボンの信用ゆえだろうか。
実際、第一話はさすがの出来栄えである。
意識を失った主人公が、目覚めたらゾンビが跋扈する終末の世界だったというのは、ダニー・ボイルの「28日後」を思わせる。
まあこれは原作の出版当時にもパクリ論争があったらしいが、映画版「バイオ・ハザード」の冒頭も似たような物だし、ザック・スナイダー版の「ドーン・オブ・ザ・デッド」も、朝起きたらゾンビの世界になっていたという点では同じである。
類型的ではあるが、とにかく主人公を情報から遮断し、理解不能な状況へと叩き込むには最も適した展開であることは確かだろう。
第一話は、とりあえず全体の起承転結の起という感じである。
突然ゾンビワールドに目覚めてしまった主人公リックが、何とか家へ帰るものの妻子の姿は見えず、偶然出会った避難民の父子に救われて、絶望的な状況を教えられる。
彼らの家族を巡る悲しいドラマを絡めながらも、リックが妻子を探すためにアトランタへと向うというのが基本的な流れ。
無駄な描写が無く、テンポ良く物語を進めつつも、サブキャラクターのエピソードを効果的に使って、物語のキーワードが“家族”である事を示唆し、ついでに次回以降の展開のヒントも終盤に配置する。
そして、続きが観たくなる絶妙のポイントでの“To be continued”というオチ。
ダラボンの魅力はやはり圧倒的な脚本力であると思うが、本作もまた脚本の教科書になりそうな仕上がりだ。
原作を未読なので、第一話のみの印象ではあるが、二話目以降もリックがサバイバルしながら家族を探す物語が中心にあり、そこに生き残った様々な人々が絡んでくる、という展開になるようだ。
ダラボンのことだから、終末世界に比喩された濃密な人間ドラマが展開するのだろうし、彼の作品に特徴的な独特の宗教性が、どのように盛り込まれてゆくのか、あるいはゆかないのかも興味深い。
凄く楽しみであるのだが、第一話はFOXチャンネルで放送されるのに、第二話以降はFOXムービーでしか観られないという。
戦略的というか、意地悪というか・・・たぶん、DVD化は来年だろうし、この続きを観るためだけに、追加料金を出して契約するか、悩みどころである。
まだ正式決定はしていないようだが、この出来ならシーズン2以降も続くだろうし・・・・う~ん、悩ましい。

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2010年09月08日 (水) | 編集 |
2008年に米国で放送を開始した「FRINGE(フリンジ)」は、まさに現代版の「X‐ファイル」と言えるだろう。
“パターン”と呼ばれる超常現象に、FBI捜査官のオリビア・ダナムと、無頼漢の天才ピーター・ビショップ、それにピーターの父でマッドサイエンティストのウォルター・ビショップ博士が挑む。
やがてパターンの出現には、我々の世界と平行して存在する“もう一つの世界”が関わっている事がわかってくる、という物だ。
まあ一部ではパクリという声もある様で、実際否定しがたい部分もあるが、私はある種の進化系として楽しんでいる。
テレビドラマ史に一時代を築いたあの番組が、21世紀の初頭に終了して以降も、超常現象を扱ったドラマは沢山作られてきたが、恐らくJ・J・エイブラムスはそのどれもが微妙に「X‐ファイル」のマーケットを外している事に気付き、かなり意図的に似せて作ったのだと思う。
実際、両ドラマのコンセプトは非常に近い。
物語は全体に大きな流れを持つものの、基本的には一話完結で、扱うネタはSFからホラーの領域まで幅広く、主人公はどちらもFBI捜査官で、対照的な性格の男女がペアを組む。
彼らの過去に巨大な陰謀が見え隠れし、謎が謎を呼ぶ形で世界観が広がって行くのも同じ。
「フリンジ」におけるパラレルワールドの“もう一つの世界”を巡る謎は、「X-ファイル」のエイリアンの地球侵入を置き換えたものだ。
そもそも「LOST」や「クローバーフィールド HAKAISHA」でもエイブラムスが用いた、ティーザー的なストーリー展開の元祖が「X-ファイル」だとも言えるだろう。
だが同時に相違点もある。
「X-ファイル」がシリーズの末期に力を失っていった原因は、風呂敷を広げすぎて単発のエピソードとエイリアンを巡る謎というドラマのバランスが崩れ、全体が流れを失ってダラダラとした展開に陥ってしまったことにある。
対して「フリンジ」では一話ごとのエピソードに対して、“もう一つの世界”の比重がドラマ全体で強く、どちらかと言うと単発のエピソードが全体のサブストーリーとなる構成になっており、容易に「X-ファイル」の陥った罠には嵌らない様に工夫されている。
またオリビアとピーターという二人の主人公にプラスして、かなり不思議ちゃんなマッドサイエンティストのウォルターを登場させて、トライアングルを形作り、チーム物にしているのも最近のヒットドラマの法則通りだ。
セカンドシーズンでは、いよいよ作品の世界観が全体像を見せつつあるという印象だ。
第一話となる「A New Day in the Old Town」で監督・脚本を努めるのは、「ビューティフルマインド」のアカデミー賞脚本家アキヴァ・ゴールズマン。
昨年ファーストシーズンの「悪夢」で監督デビューしたゴールズマンだが、セカンドシーズンでは第一話と二部構成となる最終回のエピソードで監督を務めている。
最も重要な新シーズンの掴みを負かされるのだから、演出家としての手腕もかなりのもの。
第一話では、前シーズンの最終回で“もう一つの世界”へと消えたオリビアが意外な形で帰還するところから始まり、彼女を追って姿を自在に変える異世界の兵士、シェイプシフターが登場し、スリリングに展開する。
オリビアの命を狙う見えない敵とのサスペンスを描きながら、セカンドシーズンの世界観をじんわりとオープンにしてゆくストーリーテリングの手腕はさすがに上手い。
このシェイプシフターというキャラクターは「X-ファイル」の無敵兵士に良く似たキャラクターだが、ある意外性のある人物に姿を変えるので今後かなり物語に関与してきそうだ。
第二話の「Night of Desirable Objects」は「セッション9」や「マシニスト」のブラッド・アンダーソン監督作品。
ある田舎町で人々が失踪する事件が発生、どうやら彼らは何か捕食生物によって地中に引きずり込まれた事がわかる。
こちらはうって変わって古典的なモンスターホラーで、単発物としての色彩が強い作品だ。
セカンドシーズンでは第十話の「Grey Matters」を監督しているヤノット・シュワルツにも注目したい。
90年代以降はテレビや母国フランスでの仕事が多い大ベテランだが、元々B級SFの佳作「燃える昆虫軍団」や「JAWS2」などの監督として知られるだけあって、サスペンス物も手堅い。
それに何よりもこの人の最高傑作は、故クリストファー・リーヴとジェーン・シーモアの時空を超えたロマンスを描いた「ある日どこかで」であろう。
この作品の原作者が、超常現象ドラマの元祖とも言える「トワイライトゾーン」に多くの物語を提供しているリチャード・マシスンである事を考えると、最も相応しい演出家と言えるかもしれない。
ちなみにアキヴァ・ゴールズマンが脚本を手掛けた「アイ・アム・レジェンド」もマシスンの原作である。
まあ必ずしも成功とは言えない作品だったが・・・・。
何れにしても、テレビ初期から続く超常現象ドラマの正統な継承作品と言える「フリンジ」は、今後の展開が楽しみな作品である。
米国ではもうすぐサードシーズンが始まるというが、とりあえずこちらはセカンドシーズン。
エイブラムスの生み出したもう一つのヒットシリーズ「LOST」がいよいよ大団円を迎えるので、今後はこちらにもますます力が入るだろう。
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“パターン”と呼ばれる超常現象に、FBI捜査官のオリビア・ダナムと、無頼漢の天才ピーター・ビショップ、それにピーターの父でマッドサイエンティストのウォルター・ビショップ博士が挑む。
やがてパターンの出現には、我々の世界と平行して存在する“もう一つの世界”が関わっている事がわかってくる、という物だ。
まあ一部ではパクリという声もある様で、実際否定しがたい部分もあるが、私はある種の進化系として楽しんでいる。
テレビドラマ史に一時代を築いたあの番組が、21世紀の初頭に終了して以降も、超常現象を扱ったドラマは沢山作られてきたが、恐らくJ・J・エイブラムスはそのどれもが微妙に「X‐ファイル」のマーケットを外している事に気付き、かなり意図的に似せて作ったのだと思う。
実際、両ドラマのコンセプトは非常に近い。
物語は全体に大きな流れを持つものの、基本的には一話完結で、扱うネタはSFからホラーの領域まで幅広く、主人公はどちらもFBI捜査官で、対照的な性格の男女がペアを組む。
彼らの過去に巨大な陰謀が見え隠れし、謎が謎を呼ぶ形で世界観が広がって行くのも同じ。
「フリンジ」におけるパラレルワールドの“もう一つの世界”を巡る謎は、「X-ファイル」のエイリアンの地球侵入を置き換えたものだ。
そもそも「LOST」や「クローバーフィールド HAKAISHA」でもエイブラムスが用いた、ティーザー的なストーリー展開の元祖が「X-ファイル」だとも言えるだろう。
だが同時に相違点もある。
「X-ファイル」がシリーズの末期に力を失っていった原因は、風呂敷を広げすぎて単発のエピソードとエイリアンを巡る謎というドラマのバランスが崩れ、全体が流れを失ってダラダラとした展開に陥ってしまったことにある。
対して「フリンジ」では一話ごとのエピソードに対して、“もう一つの世界”の比重がドラマ全体で強く、どちらかと言うと単発のエピソードが全体のサブストーリーとなる構成になっており、容易に「X-ファイル」の陥った罠には嵌らない様に工夫されている。
またオリビアとピーターという二人の主人公にプラスして、かなり不思議ちゃんなマッドサイエンティストのウォルターを登場させて、トライアングルを形作り、チーム物にしているのも最近のヒットドラマの法則通りだ。
セカンドシーズンでは、いよいよ作品の世界観が全体像を見せつつあるという印象だ。
第一話となる「A New Day in the Old Town」で監督・脚本を努めるのは、「ビューティフルマインド」のアカデミー賞脚本家アキヴァ・ゴールズマン。
昨年ファーストシーズンの「悪夢」で監督デビューしたゴールズマンだが、セカンドシーズンでは第一話と二部構成となる最終回のエピソードで監督を務めている。
最も重要な新シーズンの掴みを負かされるのだから、演出家としての手腕もかなりのもの。
第一話では、前シーズンの最終回で“もう一つの世界”へと消えたオリビアが意外な形で帰還するところから始まり、彼女を追って姿を自在に変える異世界の兵士、シェイプシフターが登場し、スリリングに展開する。
オリビアの命を狙う見えない敵とのサスペンスを描きながら、セカンドシーズンの世界観をじんわりとオープンにしてゆくストーリーテリングの手腕はさすがに上手い。
このシェイプシフターというキャラクターは「X-ファイル」の無敵兵士に良く似たキャラクターだが、ある意外性のある人物に姿を変えるので今後かなり物語に関与してきそうだ。
第二話の「Night of Desirable Objects」は「セッション9」や「マシニスト」のブラッド・アンダーソン監督作品。
ある田舎町で人々が失踪する事件が発生、どうやら彼らは何か捕食生物によって地中に引きずり込まれた事がわかる。
こちらはうって変わって古典的なモンスターホラーで、単発物としての色彩が強い作品だ。
セカンドシーズンでは第十話の「Grey Matters」を監督しているヤノット・シュワルツにも注目したい。
90年代以降はテレビや母国フランスでの仕事が多い大ベテランだが、元々B級SFの佳作「燃える昆虫軍団」や「JAWS2」などの監督として知られるだけあって、サスペンス物も手堅い。
それに何よりもこの人の最高傑作は、故クリストファー・リーヴとジェーン・シーモアの時空を超えたロマンスを描いた「ある日どこかで」であろう。
この作品の原作者が、超常現象ドラマの元祖とも言える「トワイライトゾーン」に多くの物語を提供しているリチャード・マシスンである事を考えると、最も相応しい演出家と言えるかもしれない。
ちなみにアキヴァ・ゴールズマンが脚本を手掛けた「アイ・アム・レジェンド」もマシスンの原作である。
まあ必ずしも成功とは言えない作品だったが・・・・。
何れにしても、テレビ初期から続く超常現象ドラマの正統な継承作品と言える「フリンジ」は、今後の展開が楽しみな作品である。
米国ではもうすぐサードシーズンが始まるというが、とりあえずこちらはセカンドシーズン。
エイブラムスの生み出したもう一つのヒットシリーズ「LOST」がいよいよ大団円を迎えるので、今後はこちらにもますます力が入るだろう。

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2009年10月30日 (金) | 編集 |
最近あまりテレビドラマを観なくなってしまった。
ドラマなのかバラエティのコントなのかわからないような、安っぽい番組が幅を利かせ、物語の面白さを追求した作品が少なくなってしまったからだ。
だが、今クールは久々に毎週の放送が楽しみな作品がある。
TBSの日曜劇場枠で放送中の「JIN‐仁‐」である。
原作は「六三四の剣」「龍‐RON‐」などで知られる村上もとかによる人気漫画で、これをドラマ版セカチューの森下佳子が脚色し、大沢たかお主演でドラマ化している。
現代の脳外科医、南方仁が激動の幕末にタイムスリップ、21世紀の医学技術を駆使して江戸の人々を救ってゆくというのが物語の骨子だ。
様々な要素が詰め込まれ、一歩間違うと限りなくとっ散らかって、チャチな代物になってしまいそうな題材だが、少なくとも第三話までは非常に良く出来ていた。
原作漫画のしっかり練られたプロットを生かして脚色し、実写ドラマならではのディテール描写が光るという漫画原作では理想的な作りとなっているのだ。
まず、これはSFであると同時に、人間の生と死を扱い、元々ドラマチックな秀作の多い医療物である。
いくら最新の知識があっても、近代的な設備が全くない江戸時代で、果たしてどうやって患者を治すのかというプロセスが綿密に描かれている。
手術に大工道具を使ったり、点滴用の針を簪職人に作らせたり、現代よりも格段に困難な状況下の「IFの世界」というSF設定が最大限生かされてスリリングだ。
またこの作品には坂本竜馬や勝海舟、緒方洪庵といった日本人があこがれる幕末のヒーローたちが登場し、彼らと関わる事で未来を変えてしまうのではないかというタイムトラベルラーお約束の葛藤に、目の前の患者を見捨てられないという医者としての葛藤が交錯しドラマを盛り上げる
さらに画作りのスケールが大きい。
最近のドラマは、現代劇でもちんまりしたセットの狭苦しい印象の作品が多いが、これはロケーションとセット、VFXを巧みにミックスし、可能な限り画に広がりを持たせようとしている。
一方で江戸暮らしのディテールも細かく描かれているので、言わば異世界に飛び込んだストレンジャーである主人公の目線で、幕末の江戸庶民の暮らしを観察するような面白さもある。
元々の話が良く出来ているのに加えて、マクロとミクロでディテールに拘った綿密な作りこみが生きているのだ。
「GOEMON」の霧隠才蔵役が記憶に新しい大沢たかおは、原作キャラを思い浮かべると似てるような似てないような、ビミョーな感じではあるが、ドラマ単体のキャラクターとしては好演と言える。
ヒロインを演じるのは、2002年の「おとうさん」以来7年ぶりの連ドラ出演となる中谷美紀と綾瀬はるかという、華やかさに演技力を兼ね備えた美女二人。
中谷美紀は、妖艶ながら影のあるキャラクターである花魁の野風を演じる。
対する綾瀬はるか演じる旗本の娘、橘咲は仁に影響されて医術への情熱に目覚めるという、ストレートで爽やかなキャラで、この対照的な二人が仁を挟んでコントラストのある三角関係を形作る。
面白いのはドラマの脚色で、21世紀の世界に野風とそっくりな仁の恋人、友永未来というオリジナルのキャラクターを作っている事で、これによって「ある日どこかで」の様な時空を越えたラブストーリーの要素が入り、幕末の三人とあわせて四角関係になっており、原作とは少し違った方向性も持っている。
タイムトラベル物のSFであり、医療物であり、ブストーリー。
「JIN‐仁‐」は、正に幕の内弁当のような賑やかなドラマで、先の読めない物語を追うワクワクする楽しさがある。
話しよし、役者よし、ビジュアルよしの三拍子揃った観応えのある作品である。
仁がタイムスリップするきっかけになった、胎児の形をした奇形腫瘍など、ティザー的に配された謎の解明を含めて、今後未来の恋人との関係がどうなってゆくのか、ドラマオリジナルの展開も期待したい。
どうか12月まで失速しませんように。
ところで、このドラマを観ていて、25年ほど前に放送された「大江戸神仙伝」という単発ドラマを思い出した。
こちらは製薬会社のサラリーマンが江戸にタイムスリップし、薬を作って病気を治してしまった事から、「神仙様」と崇拝される様になるというもの。
石川英輔の小説を故・藤田敏八が監督し、史実に合わせて江戸の住人に全員背の低い俳優をキャスティングするなど、映像的にもこだわりのある力作だったと記憶している。
どこかソフト化してくれないかなあ。
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ドラマなのかバラエティのコントなのかわからないような、安っぽい番組が幅を利かせ、物語の面白さを追求した作品が少なくなってしまったからだ。
だが、今クールは久々に毎週の放送が楽しみな作品がある。
TBSの日曜劇場枠で放送中の「JIN‐仁‐」である。
原作は「六三四の剣」「龍‐RON‐」などで知られる村上もとかによる人気漫画で、これをドラマ版セカチューの森下佳子が脚色し、大沢たかお主演でドラマ化している。
現代の脳外科医、南方仁が激動の幕末にタイムスリップ、21世紀の医学技術を駆使して江戸の人々を救ってゆくというのが物語の骨子だ。
様々な要素が詰め込まれ、一歩間違うと限りなくとっ散らかって、チャチな代物になってしまいそうな題材だが、少なくとも第三話までは非常に良く出来ていた。
原作漫画のしっかり練られたプロットを生かして脚色し、実写ドラマならではのディテール描写が光るという漫画原作では理想的な作りとなっているのだ。
まず、これはSFであると同時に、人間の生と死を扱い、元々ドラマチックな秀作の多い医療物である。
いくら最新の知識があっても、近代的な設備が全くない江戸時代で、果たしてどうやって患者を治すのかというプロセスが綿密に描かれている。
手術に大工道具を使ったり、点滴用の針を簪職人に作らせたり、現代よりも格段に困難な状況下の「IFの世界」というSF設定が最大限生かされてスリリングだ。
またこの作品には坂本竜馬や勝海舟、緒方洪庵といった日本人があこがれる幕末のヒーローたちが登場し、彼らと関わる事で未来を変えてしまうのではないかというタイムトラベルラーお約束の葛藤に、目の前の患者を見捨てられないという医者としての葛藤が交錯しドラマを盛り上げる
さらに画作りのスケールが大きい。
最近のドラマは、現代劇でもちんまりしたセットの狭苦しい印象の作品が多いが、これはロケーションとセット、VFXを巧みにミックスし、可能な限り画に広がりを持たせようとしている。
一方で江戸暮らしのディテールも細かく描かれているので、言わば異世界に飛び込んだストレンジャーである主人公の目線で、幕末の江戸庶民の暮らしを観察するような面白さもある。
元々の話が良く出来ているのに加えて、マクロとミクロでディテールに拘った綿密な作りこみが生きているのだ。
「GOEMON」の霧隠才蔵役が記憶に新しい大沢たかおは、原作キャラを思い浮かべると似てるような似てないような、ビミョーな感じではあるが、ドラマ単体のキャラクターとしては好演と言える。
ヒロインを演じるのは、2002年の「おとうさん」以来7年ぶりの連ドラ出演となる中谷美紀と綾瀬はるかという、華やかさに演技力を兼ね備えた美女二人。
中谷美紀は、妖艶ながら影のあるキャラクターである花魁の野風を演じる。
対する綾瀬はるか演じる旗本の娘、橘咲は仁に影響されて医術への情熱に目覚めるという、ストレートで爽やかなキャラで、この対照的な二人が仁を挟んでコントラストのある三角関係を形作る。
面白いのはドラマの脚色で、21世紀の世界に野風とそっくりな仁の恋人、友永未来というオリジナルのキャラクターを作っている事で、これによって「ある日どこかで」の様な時空を越えたラブストーリーの要素が入り、幕末の三人とあわせて四角関係になっており、原作とは少し違った方向性も持っている。
タイムトラベル物のSFであり、医療物であり、ブストーリー。
「JIN‐仁‐」は、正に幕の内弁当のような賑やかなドラマで、先の読めない物語を追うワクワクする楽しさがある。
話しよし、役者よし、ビジュアルよしの三拍子揃った観応えのある作品である。
仁がタイムスリップするきっかけになった、胎児の形をした奇形腫瘍など、ティザー的に配された謎の解明を含めて、今後未来の恋人との関係がどうなってゆくのか、ドラマオリジナルの展開も期待したい。
どうか12月まで失速しませんように。
ところで、このドラマを観ていて、25年ほど前に放送された「大江戸神仙伝」という単発ドラマを思い出した。
こちらは製薬会社のサラリーマンが江戸にタイムスリップし、薬を作って病気を治してしまった事から、「神仙様」と崇拝される様になるというもの。
石川英輔の小説を故・藤田敏八が監督し、史実に合わせて江戸の住人に全員背の低い俳優をキャスティングするなど、映像的にもこだわりのある力作だったと記憶している。
どこかソフト化してくれないかなあ。

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2006年01月08日 (日) | 編集 |
VIVA!菅野美穂!
正月に録っておいた「里見八犬伝」を今頃観た。
たぶん83年の深作欣二監督作以来の映像化。
深作版が思いっきり脚色されてるのに対して、馬琴の原作にはこっちの方が近い。
テレビドラマとしては、という括りになるが、作品自体も結構楽しめた。
テーマ的にも、戦による「不の連鎖」を持ってきているあたり、現在への主張があって好感が持てる。
「いま、会いにゆきます」の土井裕泰監督の演出は、相変わらず強い個性は無いが、手堅い。
ビジュアルは正直言って、「ロード・オブ・ザ・リング」やら「トロイ」やら観慣れた目にはかなりチープだし、やたらナレーションで説明し過ぎとか、脚本上の時間軸がおかしいとか突っ込みどころは色々あるが、テレビにしては頑張ってるという感じ。
が、ほぼ五時間という長さのおかげで、キャラクターをそれなりに描きこめていて、悪役を含めて結構面白い造形になっている。
タッキー初めとする八犬士は、馬琴の原作みたいに神童ではなく、個性豊かな若き豪傑で、このあたりは21世紀に映像化するには正解だろう。
しかし誰より素晴らしいのは、悪役玉梓を演じた菅野美穂である。
実質八犬士を一人で相手にしてるような物だが、存在感で全く負けてないどころか圧倒している。
観終わって一番心に残るのは、八犬士の活躍じゃなくて玉梓の悲しみなんだから。
テレビドラマなどではわりと普通の役を演じている事が多いが、やはりこの人の真骨頂は「異形の心」を演じている時である。
本人には心外かもしれないが、個人的には故岸田森のスピリットを受け継ぐ、日本最高の怪奇スターであると思ってる。(もちろんそれだけじゃないけどね)
彼女ほどの才能が、いまだ決定打といえる映画の代表作を持っていないのはある意味映画界の罪である。
「DOLLS」は印象的だったが、持てるポテンシャルはあんな物ではないだろう。
悪役サイドでは、日ごろから岸田森フリークを公言している、佐野史郎の怪しさ炸裂のキャラクターも中々面白かった。
日本のテレビ局にも、こういう古典文学ベースのドラマに、もっと積極的に取り組んで欲しいところだ。
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深作版「八犬伝」 これはこれで面白い。
北野武監督作品「DOLLS」いまの所これが一番印象的だった
正月に録っておいた「里見八犬伝」を今頃観た。
たぶん83年の深作欣二監督作以来の映像化。
深作版が思いっきり脚色されてるのに対して、馬琴の原作にはこっちの方が近い。
テレビドラマとしては、という括りになるが、作品自体も結構楽しめた。
テーマ的にも、戦による「不の連鎖」を持ってきているあたり、現在への主張があって好感が持てる。
「いま、会いにゆきます」の土井裕泰監督の演出は、相変わらず強い個性は無いが、手堅い。
ビジュアルは正直言って、「ロード・オブ・ザ・リング」やら「トロイ」やら観慣れた目にはかなりチープだし、やたらナレーションで説明し過ぎとか、脚本上の時間軸がおかしいとか突っ込みどころは色々あるが、テレビにしては頑張ってるという感じ。
が、ほぼ五時間という長さのおかげで、キャラクターをそれなりに描きこめていて、悪役を含めて結構面白い造形になっている。
タッキー初めとする八犬士は、馬琴の原作みたいに神童ではなく、個性豊かな若き豪傑で、このあたりは21世紀に映像化するには正解だろう。
しかし誰より素晴らしいのは、悪役玉梓を演じた菅野美穂である。
実質八犬士を一人で相手にしてるような物だが、存在感で全く負けてないどころか圧倒している。
観終わって一番心に残るのは、八犬士の活躍じゃなくて玉梓の悲しみなんだから。
テレビドラマなどではわりと普通の役を演じている事が多いが、やはりこの人の真骨頂は「異形の心」を演じている時である。
本人には心外かもしれないが、個人的には故岸田森のスピリットを受け継ぐ、日本最高の怪奇スターであると思ってる。(もちろんそれだけじゃないけどね)
彼女ほどの才能が、いまだ決定打といえる映画の代表作を持っていないのはある意味映画界の罪である。
「DOLLS」は印象的だったが、持てるポテンシャルはあんな物ではないだろう。
悪役サイドでは、日ごろから岸田森フリークを公言している、佐野史郎の怪しさ炸裂のキャラクターも中々面白かった。
日本のテレビ局にも、こういう古典文学ベースのドラマに、もっと積極的に取り組んで欲しいところだ。

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深作版「八犬伝」 これはこれで面白い。
北野武監督作品「DOLLS」いまの所これが一番印象的だった