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2005年10月31日 (月) | 編集 |
「コープス・ブライド」の丁寧に作りこまれたファンタジーワールドに浸りながら、一人の偉大な映像作家の事を思い出していた。
彼の名はジム・ヘンソン。
今から15年ほど前だったろうか、当時留学生だった私は、アメリカ人の学友からショッキングなニュースを聞いた。
「ジム・ヘンソンが死んだ!」
「ええっ!いつ!?」
その日、アメリカ中がヘンソンの死を嘆き、悲しんだ。
ヘンソンは、日本では一般には「セサミストリートのカエルの声の人」という程度の認識でしかなく、むしろパートナーのフランク・オズの方がSWのヨーダ役などで知られているかもしれない。
だがジム・ヘンソンことジェームス・マーリィ・ヘンソンは、アメリカ人にとって偉大な文化的アイコンである。
彼の早すぎる死去の時、殆どあらゆる週刊誌は表紙で微笑む故人の写真と追悼記事で埋まった。
日本で手塚治虫が死去した時を思い浮かべていただければ判るだろうか。
勿論その中心的な功績はセサミストリートによる物なのだが、その認知度は日本の比ではなく、一言でいってある世代までのアメリカ人は、ほぼ全て「セサミストリートで育った」幼少期を持つ、といっても過言ではないのだ。
セサミストリートの成功によって、テレビ番組の添え物に過ぎなかったパペットという表現方法は、一つの独立したジャンルとなり、多くのフォローワーを世界中に生み出した。
また彼の元からは多くの優れクリエイターが巣立った。
だがヘンソンが凄いのは、セサミの成功で得た信用と経済力でパペットの新たな地平を切り開こうとした事だ。
そうして生まれたのが、登場人物全てがリアルなパペットで表現された「ダーククリスタル」であり、人間とパペットの共演による「ラビリンス/魔王の迷宮」だ。
ヘンソン自身がセサミストリートとそのパペット達を愛していたのは間違いの無いところだが、ヌイグルミショー然としたセサミを離れたこうした映画は、明るく楽しげなセサミストリートとは対照的に、かなり暗く、退廃的な芸術性の漂うファンタジー世界だった。
ある意味でマニアックかつストイックな作りのせいか、セサミ系以外のヘンソンのパペット映画は残念ながら興行的にはあまり成功しなかったが、技術的にも芸術的にも非常にアグレッシブな挑戦だった。
そんな彼の作品の中で、もっとも詩的な美しさに溢れている傑作が、1988年に放送されたテレビシリーズ「ストーリーテラー」だ。
欧州の民話を、「ラビリンス」で確立した人間の俳優とパペットの共演で表現した物で、いわば実写版の「まんが日本昔話」だ。
物語は良く知られた物が多く、「美女と野獣」や「シンデレラ」の様にディズニーアニメで映画化された物語も含まれている。
だが、無理やりハッピーエンドにするので「民話を殺す」と言われたディズニーと違い、「ストーリーテラー」はかなり民話の原型に近く、実際に観てみると「元々はこんな話だったのか」と驚くかもしれない。
(まあ、ディズニーの民話改変に関してはまたの機会に触れてみたい。)
「まんが日本昔話」が民話の世界を表現するのに、切り絵や影絵アニメーションなど様々な手法を駆使していたのと同じく、「ストーリーテラー」もまた影絵の手法や物語を絵画調の世界にに閉じ込めるなど工夫を凝らしており、それが不思議と物語に詩情を加える効果をはたしている。
「ストーリーテラー」の第一シーズンは全九話で、ヘンソンは「心のない巨人」「兵士と死に神」の二編を自身で監督している。
このうち特に「心のない巨人」は、ある意味で”ストーリーテラー”ヘンソンの真骨頂とも言うべき傑作。
ヘンソン自身は、何れ世界中の民話をこのシリーズで取り上げていきたいと語っており、日本の昔話も収集していたという。
彼の死後、プロデューサーとしてのみ参加した「ストーリーテラー/ギリシャ編」が放送されたが、残念ながら最初のシリーズほどのクオリティは持ち合わせておらず、シリーズはヘンソンの死と共に打ち止めとなってしまった。
何とも残念な話だが、セサミストリートでしかヘンソンを知らない人には、是非この「ストーリー・テラー」の美しさを知ってもらいたいものである。
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セサミでゴルフ!

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ヘンソンの世界。ストーリテラーはうちの家宝です。
彼の名はジム・ヘンソン。
今から15年ほど前だったろうか、当時留学生だった私は、アメリカ人の学友からショッキングなニュースを聞いた。
「ジム・ヘンソンが死んだ!」
「ええっ!いつ!?」
その日、アメリカ中がヘンソンの死を嘆き、悲しんだ。
ヘンソンは、日本では一般には「セサミストリートのカエルの声の人」という程度の認識でしかなく、むしろパートナーのフランク・オズの方がSWのヨーダ役などで知られているかもしれない。
だがジム・ヘンソンことジェームス・マーリィ・ヘンソンは、アメリカ人にとって偉大な文化的アイコンである。
彼の早すぎる死去の時、殆どあらゆる週刊誌は表紙で微笑む故人の写真と追悼記事で埋まった。
日本で手塚治虫が死去した時を思い浮かべていただければ判るだろうか。
勿論その中心的な功績はセサミストリートによる物なのだが、その認知度は日本の比ではなく、一言でいってある世代までのアメリカ人は、ほぼ全て「セサミストリートで育った」幼少期を持つ、といっても過言ではないのだ。
セサミストリートの成功によって、テレビ番組の添え物に過ぎなかったパペットという表現方法は、一つの独立したジャンルとなり、多くのフォローワーを世界中に生み出した。
また彼の元からは多くの優れクリエイターが巣立った。
だがヘンソンが凄いのは、セサミの成功で得た信用と経済力でパペットの新たな地平を切り開こうとした事だ。
そうして生まれたのが、登場人物全てがリアルなパペットで表現された「ダーククリスタル」であり、人間とパペットの共演による「ラビリンス/魔王の迷宮」だ。
ヘンソン自身がセサミストリートとそのパペット達を愛していたのは間違いの無いところだが、ヌイグルミショー然としたセサミを離れたこうした映画は、明るく楽しげなセサミストリートとは対照的に、かなり暗く、退廃的な芸術性の漂うファンタジー世界だった。
ある意味でマニアックかつストイックな作りのせいか、セサミ系以外のヘンソンのパペット映画は残念ながら興行的にはあまり成功しなかったが、技術的にも芸術的にも非常にアグレッシブな挑戦だった。
そんな彼の作品の中で、もっとも詩的な美しさに溢れている傑作が、1988年に放送されたテレビシリーズ「ストーリーテラー」だ。
欧州の民話を、「ラビリンス」で確立した人間の俳優とパペットの共演で表現した物で、いわば実写版の「まんが日本昔話」だ。
物語は良く知られた物が多く、「美女と野獣」や「シンデレラ」の様にディズニーアニメで映画化された物語も含まれている。
だが、無理やりハッピーエンドにするので「民話を殺す」と言われたディズニーと違い、「ストーリーテラー」はかなり民話の原型に近く、実際に観てみると「元々はこんな話だったのか」と驚くかもしれない。
(まあ、ディズニーの民話改変に関してはまたの機会に触れてみたい。)
「まんが日本昔話」が民話の世界を表現するのに、切り絵や影絵アニメーションなど様々な手法を駆使していたのと同じく、「ストーリーテラー」もまた影絵の手法や物語を絵画調の世界にに閉じ込めるなど工夫を凝らしており、それが不思議と物語に詩情を加える効果をはたしている。
「ストーリーテラー」の第一シーズンは全九話で、ヘンソンは「心のない巨人」「兵士と死に神」の二編を自身で監督している。
このうち特に「心のない巨人」は、ある意味で”ストーリーテラー”ヘンソンの真骨頂とも言うべき傑作。
ヘンソン自身は、何れ世界中の民話をこのシリーズで取り上げていきたいと語っており、日本の昔話も収集していたという。
彼の死後、プロデューサーとしてのみ参加した「ストーリーテラー/ギリシャ編」が放送されたが、残念ながら最初のシリーズほどのクオリティは持ち合わせておらず、シリーズはヘンソンの死と共に打ち止めとなってしまった。
何とも残念な話だが、セサミストリートでしかヘンソンを知らない人には、是非この「ストーリー・テラー」の美しさを知ってもらいたいものである。

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2005年10月30日 (日) | 編集 |
子供の頃、「刑事コロンボ」が大好きだった。
コロンボって当時の刑事ドラマとしては異色で、いつも犯人が罪を犯す場面から始まるので、謎解きや犯人当ての面白さは無い。
代わりにコロンボと犯人役との丁々発止のやりあいや、重箱の隅をつつくような推理で完全犯罪を崩し、少しずつ犯人の仕掛けたパズルを解いてゆくような面白さがあったんだよね。
さて、「運命じゃない人」は基本的に人も死なないし、スリリングなアクションも無いけど、観ていてなんとなくコロンボを思い出した痛快なサスペンスコメディ。
本筋は、失恋の痛手を引きずる主人公(とってもいい人)が、一夜の恋に落ちるごく小さな物語。
が、主人公にからむ別々の登場人物の視点が加わり、時系列をシャッフルして語られ始めるや、小さなシンプルな物語は、複雑に入り組んだパズルのようなコンムービーという別の顔を見せる。
婚約破棄された不幸な女、幼馴染の探偵、峯不二子風女詐欺師、ヤクザの組長。
こんな面々が、ヤクザの組長の2000万円という大金の行方も絡んで、それぞれの思惑で主人公の夜に関わってゆく。
同じ物語を別々の語り部の視点によって語り、物語を重層的に浮かび上がらせるという手法は、黒澤明監督の「羅生門」で知られるようになり、海外では「Rashomon Case」という法律用語にもなった。
この手法を時系列のシャッフルというスタイルで再構築したのが(それ以前に無いわけではないが)タランティーノで、「運命じゃない人」はある意味タランティーノの子であり、黒澤の孫で、コロンボの甥っ子である、と思う。
これが長編デビューとなる内田けんじは、実は「寅さん」が大好きなのだそうで、なるほどこの会話による展開の上手さは、確かに山田洋二を思わせるものもある。
内田けんじ自身による脚本は、緻密に計算され、良く練られている。
一級と呼ばれるサスペンス映画が常にそうであるように、この作品も脚本の良さがストレートに出て、推理小説のような複雑な構造の物語が、登場人物たちの軽妙な会話を繋ぎとしてサクサクと気持ちよく展開してゆくのだ。
低予算を逆手にとり、登場人物と舞台を絞りこんだのも見事。
首都圏ではもう終わってしまったが、地方はこれから公開される地域も多いので、機会があれば是非ご覧あれ。
老若男女誰にでもお勧めできる快作だ。
こんな洒落た映画に似合うのはワイン。
内田監督が映画を学んだカリフォルニアと映画にちなんでCOPPOLAの"SOFIA"をお勧め。
今や映画監督としてよりワイナリーのオヤジと化してるフランシス・コッポラが、娘の名前をつけてしまったお祭りスパークリングワイン。
ワインというよりアルコール入りの清涼飲料水って感じで軽く飲めて、なかなか美味しい。
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![ソフィア[2004]フランシス・コッポラ(泡・白)【0509スペシャルセール】](http://image.rakuten.co.jp/wshop/data/ws-mall-img/wine-takamura/img64/img10341033008.jpeg)
”ソフィア”なかなか美味しい

こちらは缶入り。ストローで飲むべし
祝DVD発売!
原作本。こちらも面白かった。
コロンボって当時の刑事ドラマとしては異色で、いつも犯人が罪を犯す場面から始まるので、謎解きや犯人当ての面白さは無い。
代わりにコロンボと犯人役との丁々発止のやりあいや、重箱の隅をつつくような推理で完全犯罪を崩し、少しずつ犯人の仕掛けたパズルを解いてゆくような面白さがあったんだよね。
さて、「運命じゃない人」は基本的に人も死なないし、スリリングなアクションも無いけど、観ていてなんとなくコロンボを思い出した痛快なサスペンスコメディ。
本筋は、失恋の痛手を引きずる主人公(とってもいい人)が、一夜の恋に落ちるごく小さな物語。
が、主人公にからむ別々の登場人物の視点が加わり、時系列をシャッフルして語られ始めるや、小さなシンプルな物語は、複雑に入り組んだパズルのようなコンムービーという別の顔を見せる。
婚約破棄された不幸な女、幼馴染の探偵、峯不二子風女詐欺師、ヤクザの組長。
こんな面々が、ヤクザの組長の2000万円という大金の行方も絡んで、それぞれの思惑で主人公の夜に関わってゆく。
同じ物語を別々の語り部の視点によって語り、物語を重層的に浮かび上がらせるという手法は、黒澤明監督の「羅生門」で知られるようになり、海外では「Rashomon Case」という法律用語にもなった。
この手法を時系列のシャッフルというスタイルで再構築したのが(それ以前に無いわけではないが)タランティーノで、「運命じゃない人」はある意味タランティーノの子であり、黒澤の孫で、コロンボの甥っ子である、と思う。
これが長編デビューとなる内田けんじは、実は「寅さん」が大好きなのだそうで、なるほどこの会話による展開の上手さは、確かに山田洋二を思わせるものもある。
内田けんじ自身による脚本は、緻密に計算され、良く練られている。
一級と呼ばれるサスペンス映画が常にそうであるように、この作品も脚本の良さがストレートに出て、推理小説のような複雑な構造の物語が、登場人物たちの軽妙な会話を繋ぎとしてサクサクと気持ちよく展開してゆくのだ。
低予算を逆手にとり、登場人物と舞台を絞りこんだのも見事。
首都圏ではもう終わってしまったが、地方はこれから公開される地域も多いので、機会があれば是非ご覧あれ。
老若男女誰にでもお勧めできる快作だ。
こんな洒落た映画に似合うのはワイン。
内田監督が映画を学んだカリフォルニアと映画にちなんでCOPPOLAの"SOFIA"をお勧め。
今や映画監督としてよりワイナリーのオヤジと化してるフランシス・コッポラが、娘の名前をつけてしまったお祭りスパークリングワイン。
ワインというよりアルコール入りの清涼飲料水って感じで軽く飲めて、なかなか美味しい。

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”ソフィア”なかなか美味しい

こちらは缶入り。ストローで飲むべし
祝DVD発売!
原作本。こちらも面白かった。


2005年10月29日 (土) | 編集 |
ちょっと前だけど、UFOキャッチャー流行ったね。
私もけっこうやったけど、狙ってたのは「ナイトメア・ビフォアー・クリスマス」のフェギアさ。
まあ幾つか取ったけど、原価の10倍くらいは機械に飲み込まれた気がする・・・。
その「ナイトメア」から12年、「ジェームスとジャイアントピーチ」から9年ぶりのティム・バートンのストップモーションアニメ。
もっともこの二作は監督としてはクレジットされていないから、初の監督作品だ。
成金一家の気の弱い青年ビクターが、没落貴族のお嬢様ビクトリアと結婚させられることに。
最初は気乗りしない二人だったが、会ってみるとお互い一目ぼれ。
ところがビクターは、長ったらしい結婚式の誓いの言葉を森で練習しているうちに、うっかりして枯れ枝に見えた「死体」の指に結婚指輪を嵌めて誓いの言葉を言ってしまったから大変。
死体花嫁(コープス・ブライド)は「お受けします」と大喜び。
ビクターは死者の街に連れて行かれてしまう。
本筋と関係ないけど、主人公二人の名前はブレイク・エドワーズ監督の「ビクター/ビクトリア」から来てるのかな?
「似たもの同士」という意味でなら正しくオマージュになるんだけど。
デビューの頃からずっと変わらないけど、ティム・バートンのテーマは異形のものへの愛だ。
彼の映画では、しばしば普通である物より、異形で忌み嫌われる物の方が本質的に美しさを持っている。
この映画は生人の街は殆んど彩度が無く、まるでモノクロの様で、登場人物も主人公達を除けば根暗で浅ましく、ろくな人間が出てこない。
対照的に死者の街は色彩に溢れ、皆愉快で人生(?)をエンジョイしている。
キャラクターデザインなんて生きてる人間も含めて、みな日野日出志か犬木加奈子の漫画に出てくるようなブキミな風貌なのだが、出てきて1分もすると何とも魅力的に見えてくるから、やはりこの監督の異形愛は筋金入りだ。
死体花嫁と人間のフィアンセ、この二人の結婚に夢見る乙女と若干優柔不断なビクターの三角関係なのだが、この三人は皆「良い人」であって、観客は全員に感情移入出来る。
観ている方は全員に幸せになって欲しいのだが、果たしてどうなるの?という興味で観客を引っ張り、最終的に見事な落しどころを作っているバートンは、やはり「ビッグ・フィッシュ」を作ってから一皮剥けた印象がある。
技術的にも「ナイトメア」のモデルアニメーション+パペトゥーン(*1)の技法をさらに進化させ、人形の頭部にある種のスモールスケールメカニカルを仕込む事で、非常に細かな演技を行える様になっている。
さらに特筆すべきはモーションの滑らかさで、これはモデルアニメーションの限界を超えているのではないかというくらい素晴らしい出来栄えだ。
クリエイターの端くれとしては、DVDが発売されたら、ぜひともメイキングを観てみたいものである。
値踏みは1500円。
77分という尺の中でよく出来てるけど、この魅力的な世界をもうちょっと長く見せてくれたら1600円でも良かった。
でもこの長さゆえ引き締まってる気もするし、作品としてはこれで良いのかも。
この映画に合わせたい酒は、やっぱりチョイロマンチックなカクテルかな。
コープス・キッスならぬ、エンジェル・キッスをチョイス。
クレームドカカオと生クリームを3:1の割合。さらに真っ赤なチェリーをのせて出来上がり。
このカクテルの生クリームは天使の唇を模した物なのだが、今日は可憐な死体花嫁に乾杯。
追記:この映画のラストで何となくデジャヴを感じたのだが、考えてみると(ネタバレなので書かないが)ラストの表現は日本のCGアニメ「ガラクタ通りのステイン/エピローグ」にそっくりな描写がある。
こちらも知る人ぞ知る異色の和製ダークファンタジーだが、ティム・バートンは観たんだろうか。
日本人でも知らない様な作品を観ているとしたら凄いな。
*1「パペトゥーン」あらかじめ様々な表情の頭部や形の違う体のパーツを作っておき、置き換えでアニメーションを作る技法。
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ナイトメアー・ビフォア・クリスマス ワールドタイマー
私、これ持ってます

ナイトメア・ビフォア・クリスマス ジャンボプラッシュ・ジャック
添い寝可能です。死体花嫁版が出たら買う?
地味な映画ですが、絵本も映画も好きです
和製ダークファンタジー。バートン好きならお勧めです
私もけっこうやったけど、狙ってたのは「ナイトメア・ビフォアー・クリスマス」のフェギアさ。
まあ幾つか取ったけど、原価の10倍くらいは機械に飲み込まれた気がする・・・。
その「ナイトメア」から12年、「ジェームスとジャイアントピーチ」から9年ぶりのティム・バートンのストップモーションアニメ。
もっともこの二作は監督としてはクレジットされていないから、初の監督作品だ。
成金一家の気の弱い青年ビクターが、没落貴族のお嬢様ビクトリアと結婚させられることに。
最初は気乗りしない二人だったが、会ってみるとお互い一目ぼれ。
ところがビクターは、長ったらしい結婚式の誓いの言葉を森で練習しているうちに、うっかりして枯れ枝に見えた「死体」の指に結婚指輪を嵌めて誓いの言葉を言ってしまったから大変。
死体花嫁(コープス・ブライド)は「お受けします」と大喜び。
ビクターは死者の街に連れて行かれてしまう。
本筋と関係ないけど、主人公二人の名前はブレイク・エドワーズ監督の「ビクター/ビクトリア」から来てるのかな?
「似たもの同士」という意味でなら正しくオマージュになるんだけど。
デビューの頃からずっと変わらないけど、ティム・バートンのテーマは異形のものへの愛だ。
彼の映画では、しばしば普通である物より、異形で忌み嫌われる物の方が本質的に美しさを持っている。
この映画は生人の街は殆んど彩度が無く、まるでモノクロの様で、登場人物も主人公達を除けば根暗で浅ましく、ろくな人間が出てこない。
対照的に死者の街は色彩に溢れ、皆愉快で人生(?)をエンジョイしている。
キャラクターデザインなんて生きてる人間も含めて、みな日野日出志か犬木加奈子の漫画に出てくるようなブキミな風貌なのだが、出てきて1分もすると何とも魅力的に見えてくるから、やはりこの監督の異形愛は筋金入りだ。
死体花嫁と人間のフィアンセ、この二人の結婚に夢見る乙女と若干優柔不断なビクターの三角関係なのだが、この三人は皆「良い人」であって、観客は全員に感情移入出来る。
観ている方は全員に幸せになって欲しいのだが、果たしてどうなるの?という興味で観客を引っ張り、最終的に見事な落しどころを作っているバートンは、やはり「ビッグ・フィッシュ」を作ってから一皮剥けた印象がある。
技術的にも「ナイトメア」のモデルアニメーション+パペトゥーン(*1)の技法をさらに進化させ、人形の頭部にある種のスモールスケールメカニカルを仕込む事で、非常に細かな演技を行える様になっている。
さらに特筆すべきはモーションの滑らかさで、これはモデルアニメーションの限界を超えているのではないかというくらい素晴らしい出来栄えだ。
クリエイターの端くれとしては、DVDが発売されたら、ぜひともメイキングを観てみたいものである。
値踏みは1500円。
77分という尺の中でよく出来てるけど、この魅力的な世界をもうちょっと長く見せてくれたら1600円でも良かった。
でもこの長さゆえ引き締まってる気もするし、作品としてはこれで良いのかも。
この映画に合わせたい酒は、やっぱりチョイロマンチックなカクテルかな。
コープス・キッスならぬ、エンジェル・キッスをチョイス。
クレームドカカオと生クリームを3:1の割合。さらに真っ赤なチェリーをのせて出来上がり。
このカクテルの生クリームは天使の唇を模した物なのだが、今日は可憐な死体花嫁に乾杯。
追記:この映画のラストで何となくデジャヴを感じたのだが、考えてみると(ネタバレなので書かないが)ラストの表現は日本のCGアニメ「ガラクタ通りのステイン/エピローグ」にそっくりな描写がある。
こちらも知る人ぞ知る異色の和製ダークファンタジーだが、ティム・バートンは観たんだろうか。
日本人でも知らない様な作品を観ているとしたら凄いな。
*1「パペトゥーン」あらかじめ様々な表情の頭部や形の違う体のパーツを作っておき、置き換えでアニメーションを作る技法。

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私、これ持ってます
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和製ダークファンタジー。バートン好きならお勧めです


2005年10月25日 (火) | 編集 |
今日は映画じゃなくてテレビの話。
最近忙しいせいもあってか、気付いたら全然テレビドラマを観なくなっていた。
以前は結構観てたんだけどな、最近のは出てる人知らないし(爆
何より毎週ってのが疲れる・・・。
やっぱり連ドラは時間のある学生か、別の意味で時間のあるおばちゃんの物なのか?と思いつつあった。
で、そんな私が久々に嵌っちゃったのが「宮廷女官/チャングムの誓い」
いや、李英愛は好きな女優だし、前々から気にはなってたんだけど、うちは貧乏なんでBSが無い・・・
DVDで観るにはあまりにも本数多いし、と諦めていたんだけど、とうとう地上波で始まったじゃないですか。
まだ子供時代で李英愛にはなってないんだけど、陰謀に巻き込まれた両親の元に生まれた複雑な生い立ちから、苦労の末宮中に上がるまで、一気に観てしまいましたよ。
チャングムとは、女性として史上初めて朝鮮王の主治医になり、医食同源を実践した実在の人物らしいが、その実像は朝鮮王の記録にたった一文記されているだけの謎の人物なのだそうだ。
従ってこのドラマの内容も殆んどがフィクションという事になるけど、脚本家は古今東西のドラマチックな筋立て、神話的要素を取り込んで良い意味でB級テイストを残した娯楽作に仕立てている。
チャングムの誕生が謎の導師(仙人?)によって運命的に予言されるあたり、娯楽を判ってるね~イイね~。
土曜日が楽しみで、すっかり嵌っちゃった感じ。
こうなると続きが知りたくて、DVDに手を伸ばすか悩みどころなんですな。
毎週毎週楽しみに観るのが大河ドラマの醍醐味っていう気もするし(タダだし)ね。
こんなチャングムにあわせるのはやっぱり韓国のどぶろく風酒「マッコウリ」でしょう。
洗練とは対極の味で、かなり飲む人を選ぶけど、ちょい甘酒に似た昔ながらのあったかさを感じる酒です。
ドラマの中で出てくる500年前の酒もこんな感じだったのかな。
韓国料理屋の他、最近ではアジア系のマーケットでも置いてる所が多くなりました。
機会があればお試しあれ。
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2006年版カレンダー出ました
買うべきか買わざるべきか、迷ってます
あの美味そうな宮廷料理を作ってみる?
李英愛の映画ではこれが一番好きかな。大人のラブストーリーですな。
最近忙しいせいもあってか、気付いたら全然テレビドラマを観なくなっていた。
以前は結構観てたんだけどな、最近のは出てる人知らないし(爆
何より毎週ってのが疲れる・・・。
やっぱり連ドラは時間のある学生か、別の意味で時間のあるおばちゃんの物なのか?と思いつつあった。
で、そんな私が久々に嵌っちゃったのが「宮廷女官/チャングムの誓い」
いや、李英愛は好きな女優だし、前々から気にはなってたんだけど、うちは貧乏なんでBSが無い・・・
DVDで観るにはあまりにも本数多いし、と諦めていたんだけど、とうとう地上波で始まったじゃないですか。
まだ子供時代で李英愛にはなってないんだけど、陰謀に巻き込まれた両親の元に生まれた複雑な生い立ちから、苦労の末宮中に上がるまで、一気に観てしまいましたよ。
チャングムとは、女性として史上初めて朝鮮王の主治医になり、医食同源を実践した実在の人物らしいが、その実像は朝鮮王の記録にたった一文記されているだけの謎の人物なのだそうだ。
従ってこのドラマの内容も殆んどがフィクションという事になるけど、脚本家は古今東西のドラマチックな筋立て、神話的要素を取り込んで良い意味でB級テイストを残した娯楽作に仕立てている。
チャングムの誕生が謎の導師(仙人?)によって運命的に予言されるあたり、娯楽を判ってるね~イイね~。
土曜日が楽しみで、すっかり嵌っちゃった感じ。
こうなると続きが知りたくて、DVDに手を伸ばすか悩みどころなんですな。
毎週毎週楽しみに観るのが大河ドラマの醍醐味っていう気もするし(タダだし)ね。
こんなチャングムにあわせるのはやっぱり韓国のどぶろく風酒「マッコウリ」でしょう。
洗練とは対極の味で、かなり飲む人を選ぶけど、ちょい甘酒に似た昔ながらのあったかさを感じる酒です。
ドラマの中で出てくる500年前の酒もこんな感じだったのかな。
韓国料理屋の他、最近ではアジア系のマーケットでも置いてる所が多くなりました。
機会があればお試しあれ。

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買うべきか買わざるべきか、迷ってます
あの美味そうな宮廷料理を作ってみる?
李英愛の映画ではこれが一番好きかな。大人のラブストーリーですな。


2005年10月23日 (日) | 編集 |
カウボーイハットのオタク監督ロバート・ロドリゲスが、フランク・ミラー原作のコミックスを、原作者自身を共同監督に迎えて作り上げた超異色作。
ロドリゲスがテキサスの自宅前に作った自分のスタジオで、好き勝手に撮った、壮大な自主映画でもある。
万人向けではないが、フィルムノワール、アメコミといったキーワードにピンとくる人は観てそんは無いはずだ。
「SIN CITY(罪の街)」と呼ばれる虚構の大都会を舞台に、三つの物語が交錯するオムニバス映画で、まずこの舞台となる街が面白い。
ニューヨークか禁酒法時代のシカゴあたりがモデル見たいだけど、見事なまでにギャングと娼婦と警官しかいない。(笑
市民は何処やねん・・・・・
これは東映の仁侠映画の、ヤクザと情婦しかいない街みたいなもんで、この話が基本的に、フィルムノワールをテーマとしたファンタジーである事を観客に強く示唆する。
舞台の次はキャラクターだ。
それぞれの話はどれもくたびれたオヤジが主人公で、愛する女を命をかけて守るという基本設定は共通してるが、お話自体は別々。
漫画を模した極端にコントラストの強い白黒世界で、オヤジたちが異様に格好良いのだ。
この格好よさは尋常じゃない。
演出のさじ加減が絶妙で、これ以上やるとただのギャグになってしまうというギリギリのところで踏みとどまっている。
このあたりは流石、「漫画」を知っているフランク・ミラーを共同監督に迎えた効果かもしれない。
「スパイキッズ」シリーズや「レジェンド・オブ・メキシコ」を見る限り、ロドリゲスって調子にのって限界超えちゃう事が多いから。
大いに楽しんだけど、唯一不満といえば不満なのが、男達を手玉にとるタイプのファムファタールが出てこない事。
まあ今回はあくまでもオヤジの格好よさを描いたという事で、すでに決定してる「シン・シティ2」「シン・シティ3」に期待しよう。
値踏みは1700¥。堪能した。
さて、付け合せの酒だが、基本的に日本酒党の私もさすがにこれを観て日本酒を呑みたいとは思わなかった。
原作者の名前にちなんでミラービールでは如何だろうか。
北米らしいあっさりテイスト。ポテチ片手にカウチするのにぴったりだ。
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ロバート・ロドリゲスの原点
ロドリゲスがテキサスの自宅前に作った自分のスタジオで、好き勝手に撮った、壮大な自主映画でもある。
万人向けではないが、フィルムノワール、アメコミといったキーワードにピンとくる人は観てそんは無いはずだ。
「SIN CITY(罪の街)」と呼ばれる虚構の大都会を舞台に、三つの物語が交錯するオムニバス映画で、まずこの舞台となる街が面白い。
ニューヨークか禁酒法時代のシカゴあたりがモデル見たいだけど、見事なまでにギャングと娼婦と警官しかいない。(笑
市民は何処やねん・・・・・
これは東映の仁侠映画の、ヤクザと情婦しかいない街みたいなもんで、この話が基本的に、フィルムノワールをテーマとしたファンタジーである事を観客に強く示唆する。
舞台の次はキャラクターだ。
それぞれの話はどれもくたびれたオヤジが主人公で、愛する女を命をかけて守るという基本設定は共通してるが、お話自体は別々。
漫画を模した極端にコントラストの強い白黒世界で、オヤジたちが異様に格好良いのだ。
この格好よさは尋常じゃない。
演出のさじ加減が絶妙で、これ以上やるとただのギャグになってしまうというギリギリのところで踏みとどまっている。
このあたりは流石、「漫画」を知っているフランク・ミラーを共同監督に迎えた効果かもしれない。
「スパイキッズ」シリーズや「レジェンド・オブ・メキシコ」を見る限り、ロドリゲスって調子にのって限界超えちゃう事が多いから。
大いに楽しんだけど、唯一不満といえば不満なのが、男達を手玉にとるタイプのファムファタールが出てこない事。
まあ今回はあくまでもオヤジの格好よさを描いたという事で、すでに決定してる「シン・シティ2」「シン・シティ3」に期待しよう。
値踏みは1700¥。堪能した。
さて、付け合せの酒だが、基本的に日本酒党の私もさすがにこれを観て日本酒を呑みたいとは思わなかった。
原作者の名前にちなんでミラービールでは如何だろうか。
北米らしいあっさりテイスト。ポテチ片手にカウチするのにぴったりだ。

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ロバート・ロドリゲスの原点


2005年10月22日 (土) | 編集 |
世間ではヨン様ヨン様とうるさいが、これは中々しっとりした良い映画だった。
妻が不倫相手と事故を起こし、その結果不倫相手の妻と出会い、ダブル不倫するという、往年の大映ドラマ、いや韓国ドラマあたりならグッチャグッチャの怨念ドラマになりそうな設定である。
もっともホ・ジノの映画だからそんな風に劇的に物語が展開したりはしない。
図らずも出会ってしまった夫と、妻の不倫相手の連れ合いが、病院での介護を通じて少しずつ感情を通じ合わせてゆく様が淡々と描かれる。
日常を丁寧に描いて、その中で登場人物の感情の機微を描くというホ・ジノのスタイルは変わっていないが、「八月のクリスマス」→「春の日は過ぎ行く」→「四月の雪」と来て、若干作為的になってきている嫌いがある。
一例を上げると、前半主人公二人が偶然顔を合わせる描写があまりにも多すぎる。
いくら二人が病院とホテルという狭い範囲にいるという設定にしても、同じような出会いの描写ばかり繰り返されるといかにも「作ってます」という感じに見えちゃうんだけどな。
まあ後半になると物語の展開もスムーズになって、段々と世界に入っていけるので気にはならなくなるんだけど。
しかしこの映画でもっとも素晴らしく、見ごたえがあるのは実はヨン様である。
この作品では優しそうで平凡な夫を演じながら、スターのオーラで作品全体を引っ張っている。
前作のスキャンダルもそうだが、この人しっかりとした演技力を持ったカメレオンアクターである。
嘘だと思ったらスキャンダルと見比べればよい。
まるっきり別人にしか見えない。
甘ったるい作られた笑顔の奥には、演技者としての鋭い目がある。
伊達に酸いも甘いも噛み分けたオバサマ達を熱狂させている訳ではないのだ。
というか、正直オバサマたちの選球眼は相当鋭いと思わされた二時間だった。
私の値踏みは・・・1500円かな。レイトショーだったんで十分元は取れました。
こんな地味ながら匠の技を堪能した後は、やはり日本酒。
本日は「あさ開 純米酒」を付け合せてみる。
強い個性は無いが、優しいテイストの飲みやすい酒で、あっさりと喉を通ってゆくので、後味が殆ど残らない。
個人的にはもう少しコクが欲しいが、知らず知らずに量を飲んで気づいた時にはほろ酔い気分。
淡々としたホ・ジノの映画には、淡く繊細なこちらがあうだろう。
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妻が不倫相手と事故を起こし、その結果不倫相手の妻と出会い、ダブル不倫するという、往年の大映ドラマ、いや韓国ドラマあたりならグッチャグッチャの怨念ドラマになりそうな設定である。
もっともホ・ジノの映画だからそんな風に劇的に物語が展開したりはしない。
図らずも出会ってしまった夫と、妻の不倫相手の連れ合いが、病院での介護を通じて少しずつ感情を通じ合わせてゆく様が淡々と描かれる。
日常を丁寧に描いて、その中で登場人物の感情の機微を描くというホ・ジノのスタイルは変わっていないが、「八月のクリスマス」→「春の日は過ぎ行く」→「四月の雪」と来て、若干作為的になってきている嫌いがある。
一例を上げると、前半主人公二人が偶然顔を合わせる描写があまりにも多すぎる。
いくら二人が病院とホテルという狭い範囲にいるという設定にしても、同じような出会いの描写ばかり繰り返されるといかにも「作ってます」という感じに見えちゃうんだけどな。
まあ後半になると物語の展開もスムーズになって、段々と世界に入っていけるので気にはならなくなるんだけど。
しかしこの映画でもっとも素晴らしく、見ごたえがあるのは実はヨン様である。
この作品では優しそうで平凡な夫を演じながら、スターのオーラで作品全体を引っ張っている。
前作のスキャンダルもそうだが、この人しっかりとした演技力を持ったカメレオンアクターである。
嘘だと思ったらスキャンダルと見比べればよい。
まるっきり別人にしか見えない。
甘ったるい作られた笑顔の奥には、演技者としての鋭い目がある。
伊達に酸いも甘いも噛み分けたオバサマ達を熱狂させている訳ではないのだ。
というか、正直オバサマたちの選球眼は相当鋭いと思わされた二時間だった。
私の値踏みは・・・1500円かな。レイトショーだったんで十分元は取れました。
こんな地味ながら匠の技を堪能した後は、やはり日本酒。
本日は「あさ開 純米酒」を付け合せてみる。
強い個性は無いが、優しいテイストの飲みやすい酒で、あっさりと喉を通ってゆくので、後味が殆ど残らない。
個人的にはもう少しコクが欲しいが、知らず知らずに量を飲んで気づいた時にはほろ酔い気分。
淡々としたホ・ジノの映画には、淡く繊細なこちらがあうだろう。

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