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ミュンヘン・・・・・評価額1750円
2006年02月05日 (日) | 編集 |
久々に本気のスピルバーグは、やはり凄い。
暗殺者になる使命を受け入れる事で、永遠の重荷を背負ってしまった一人の男の長く悲しい心の旅を描く、ある種のロードムービー。
「ミュンヘン」は、20世紀の現実世界を舞台にした、とてもダークなもう一つの「ロード・オブ・ザ・リング」だ。
今回指輪を運ぶのは、エリック・バナ演じるイスラエルの工作員アヴナー。
悲しい憂いを湛える目が印象的だ。

1972年、ドイツ、ミュンヘンの夏季オリンピック。
パレスチナゲリラ「黒い九月」がイスラエル選手団を人質に取り篭城。
ドイツ当局の不手際もあって、人質全員が死亡するという事件が起こる。
イスラエル政府は、事件を計画したパレスチナ幹部に対する報復の暗殺作戦を決断する。
暗殺者として選ばれたのは、情報機関モサドに属するドイツ系イスラエル人のアヴナー。
彼の任務はそれぞれのジャンルのスペシャリストを集めたチームと共に、11人のパレスチナ人「テロリスト」を処刑する事・・・。


旅の仲間は5人。
アヴナー、強烈な民族主義者で車両係のスティーヴ、爆弾担当のロバート(だが本業は玩具屋)。
本業は家具屋だが、文書偽造担当のハンス、そして現場に証拠を残さないための掃除屋のカール
どの面々もスペシャリストと呼ぶには中途半端で、リーダーのアヴナーからして元々警護官で、工作任務に付いた事も人を殺した事も無いという素人。
既にこの時点で、国家の捨て駒に過ぎないのが何となく判る。

物語は終始この5人を中心に、暗殺作戦の細部を徹底的に細かく描く。
荒唐無稽な「ミッション・インポッシブル」や「007」と違って、素人集団のリアルな暗殺作戦なんで、その作戦は実に手際が悪い。
自分たちでは相手の場所を突き止めることすら出来ず、怪しい情報屋に頼らざるを得ないし、爆弾はいつも出来損ないだし、CIAには邪魔されるしで、やっとの思いで何とか任務を遂行してゆく。
ここには娯楽映画の様なカタルシスは全く無いし、ドラマ的な抑揚も希薄だ。
だが、その分「人ひとりを殺す事の重み」がズシリと伝わってくる。
テロリストに正義の鉄槌を下していると思っていたのに、リストに無い人間を巻き添えにし、ついには自分たち自身が狙われる。
相手にしてみれば自分たちこそがテロリストであって、テロリスト同士の殺し合いに過ぎない事にようやく気付き始めるアヴナーたち。
11人を狙った事に対する報復で、その何倍、何十倍もの犠牲が出ている現実も、彼らの精神を少しずつ蝕んでゆく。

情報屋ルイの手違い(では無いような気もするが)で、アヴナー達が敵であるPLOゲリラと同宿するシーンは印象的だ。
アヴナーがゲリラのリーダーに聞く。
「あの何も無い国に本当に帰りたいと思うのか?」
「勿論だ。心のそこからそう思う」
自分たちと敵は、立場が違うだけで、同じ思いを持った鏡のような存在。
ならば殺し合いも無限連鎖になるだけ。

「ミュンヘン」には、パレスチナ問題に対する新しい提案やビジョンは何も無い。
そもそもパレスチナ問題の根本的な解決法などたった一つしかないのは、もう何十年も前から誰もが判っている事だ。
しかしミュンヘン事件から30年以上が経過しても、結局ずっと足踏みが続いている。
あまりにも長く続きすぎて、ともすれば我々は問題の存在すら忘れてしまいそうになる。
その意味で、スピルバーグのような人が、当たり前の事を声を上げて伝える事はとても大事なのだろうと思う。
ユダヤ人であるスピルバーグが、見方によってはイスラエル批判ともとられ得る作品を作る事は、とても勇気がいる事だっただろう。

劇中、アヴナーが繰り返し見る、ミュンヘン事件を再現した悪夢が象徴的だ。
結局、アヴナー達はあの晩ミュンヘンで起こった事のリピートをやっているだけで、そこから一歩も動く事が出来なかった。
そして永遠に続く悪夢に足を踏み入れてしまったのだ。
指輪を滅ぼす使命を果たしたために、結局この世での安息を失ってしまったフロドと同じように、アヴナーもまた一生悪夢から解放される事はないのだろう。

疲れ果てたアヴナーが静かに佇むラストカット、そこには70年代と現代を繋ぐ「ある物」が映し出される。
我々もまた、悪夢から醒める事を未だ許されていない。

この映画には「ヤルデン・マウント・ハーモン」レッドを付け合せたい。
映画に負けない強いボディを持つ上質の酒。
近年世界的な評価を得ているイスラエルのワインだが、実はその多くが中東戦争でシリアから占領したゴラン高原で栽培されている。
ゴラン高原は日本の自衛隊がPKO部隊として派遣されている地域だが、パレスチナ問題が解決されると、シリアに返還される可能性が高い。
もしイスラム教国のシリアに返還されると、イスラエルワインは幻の酒になるかもしれない。
味だけでなく、色々な意味で考えさせてくれるワインである。

・・・ちなみに50円の中途半端なマイナスは、旅の仲間のバックグラウンドをもう少し見せてくれても良かったのでは?と思うから。
でも現状でもしっかりとバランスはとれてるから、この作劇の中では、ほぼパーフェクトだと思う。

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ヤルデン・マウントハーモン・レッド
ヤルデン・マウントハーモン・レッド  \1880


映画のベースとなったノンフィクション


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