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ジャーヘッド・・・・・評価額1300円
2006年02月25日 (土) | 編集 |
「ジャーヘッド」という不思議な言葉は、海兵隊員を意味する隠語で、そり上げた頭が瓶(jar)に見えることからその名が付いたといわれる。
だが一方で、海兵隊員を「頭が空っぽ」と揶揄する言葉でもある。

アメリカの映画館に行くと、よく軍隊の新兵募集CMが流れている。
世界に冠たるアメリカ軍だから、CMにもえらく金がかかっていて、よく出来てる物も多いのだが、数年前に一本のCMが話題になった事がある。
ゲームを彷彿とさせるファンタジー世界で、主人公が悪の城に仕掛けられた様々なトラップを果敢に突破、ついに巨大なドラゴンの様なボスキャラと対決する。
てっきり映画の予告編かと思いきや、ボスキャラを倒した瞬間、魔法の光に包まれた主人公は、今までのみすぼらしい格好からビシッとした制服に身を包んだ海兵隊員に生まれ変わるではないか!
私は思わず鼻からコークを噴出したね。
「Hey yo! 今日から君も正義の味方!」とは流石に言わなかったけど、アメリカ海兵隊が戦う相手はドラゴンかい!
これ観て「よ~し、俺もアメリカのために正義の味方になるぞお」とか思う奴がいたら、そっちのほうが怖いんだが(笑

このCMに象徴される様に、アメリカでも海兵隊の一般的なイメージっていうのは、他の3軍に比べてちょっと肉体派というか、マッチョで男臭く、勇敢だが頭はあんまり良くない集団という感じだ。
まあ戦場では真っ先に前線に送り込まれる斬り込み隊なんで、勇猛果敢な戦闘プロフェッショナルとして尊敬されてる一面もあるんだけどね。
「ジャーヘッド」は、そんな海兵隊に入隊したアンソニー・スオフォードのノンフィクションを基にした、ちょっと奇妙な湾岸戦争体験記。

1989年。
父も祖父も元海兵隊員という家庭に生まれたスオフォードは、自分も憧れのアメリカ海兵隊に入隊する。
新兵訓練所、そこは普通の若者が数ヶ月の訓練を経て殺人兵器へと生まれ変わる場所。
鬼教官による過酷な訓練に耐え、スオフォードは海兵隊でもエリートである偵察狙撃手に抜擢される。
やがてスウォフォード達が一人前の海兵隊員になった1990年、サダム・フセインのイラクが隣国クウェートに侵攻。
アメリカはクウェート奪還のために湾岸地域に50万を超える大軍を送り込む。
ついに訪れた実戦への期待に胸躍らせるスオフォードだったが、到着した場所は敵の姿も見えない砂漠の真中。
彼らは空爆により敵を主力が殲滅されるまで、一発の弾丸を撃つ事も無く、延々と待たされる事になる・・


非常に丁寧に作られた作品で、今までの戦争映画には無い新しい視点もある。
高く評価できる映画なのだが、同時にどうしても物足りない印象が残ってしまう。
たぶん「ジャーヘッド」の不幸は、その内容から「フルメタルジャケット」という映画史上のマスターピースと比べられてしまう事だろう。
実際のところ、海兵隊という舞台、比較的インテリの主人公のモノローグによって語られる手法、そして前半が新兵訓練所のシークエンス、後半が出征した戦場のシークエンスという構成上の特徴までえらく似通っている。
もちろん2本の作品は時代も設定も違うし、テーマ的にも微妙に異なっているが、劇中の台詞を借りれば、「Every war movie is different. Every war movie is the same」という感じで、非常に似た印象になってしまっている。

もっとも、新兵訓練所が兵隊の人間的感情を消しさり、殺人マシーンを作り上げる様は2本とも同様だが、戦地へ派遣されてからの展開は大きく異なる。
ベトナムを描いた「フルメタルジャケット」の登場人物たちが、戦場で戦う事で精神を麻痺させていくのに対して、「ジャーヘッド」は逆に戦わない事が精神を狂わせる。

湾岸に多国籍軍の兵力が集まるまでの駐留期間は最初に展開した部隊の場合半年。更に開戦しても最初の一ヶ月はず~と空爆。
この間、50万を超える派遣軍は、砂漠のキャンプで酷暑の中延々と待たされた。
殺すための訓練を受け、殺すために戦場にいるのに、何もする事が無い。
何しろ舞台は砂漠の真中、しかもイスラムの国なので、ベトナムみたいな歓楽街も無い。
ぶっちゃけ50万人が壁の無い刑務所にいるような物で、戦う相手は敵の兵隊ではなくて、暇と無力感という自己の内面の敵となる。
そして湾岸戦争は戦闘の殆どが空軍による爆撃で方がつき、地上戦は突入後僅か4日で終わってしまった。
実際にイラク軍との戦闘に参加した兵士はほんの一握りで、スオフォード達を含む殆どの兵士は一発の弾丸を放つ事も無く帰路につく。
彼らは何のためにあの時、あの場所に存在したのか。
勿論軍事戦略などを考えれば、大軍が駐留する事自体に意味があったのかもしれない。
が、殺し殺される覚悟で、極限までテンションを上げた若者達の思いは、行き場を失って静かに彼らの内面を破壊してゆく。

この点で、確かに「ジャーヘッド」は新しい。
戦わず、暇を持て余すことで自己を失って行く登場人物たちは、過去の戦争映画とは一線を画している。
戦場では、結局戦うも地獄、戦わないも地獄。
外面と内面の両方に敵がいる。
ただ、惜しむらくは登場人物が個性的過ぎ、というか初めからかなりイカれた連中として描かれているので、内面との戦いで段々と精神崩壊を起こしている様には必ずしも見えないのだ。
戦争で待たされ過ぎて少しヒステリックになってはいるけど、こいつら初めから殺す気満々のおかしな連中だったじゃんと思ってしまう。
このあたりは、兵士の内面の変貌をメリハリたっぷりに描いた「フルメタルジャケット」とはっきり差が出てしまう所だ。
「アメリカン・ビューティー」「ロード・トゥ・パーディション」のサム・メンデスの演出は相変わらず丁寧だが、今回は脚本段階からキャラクターにもう少し抑揚をつけても良かったのではないかと思う。

スオフォードを演じるジェイク・ギレンホールは好演しているが、私はむしろ相棒の狙撃観測手トロイを演じたピーター・サスガードが強く印象に残った。
劇中でスオフォードとトロイに訪れた、唯一の「殺しの機会」を空軍に奪われて、「せめて一人くらい殺させてくれー!」と駄々子の様に咽び泣くシーンは本編の白眉だったと思う。
ジェイミー・フォックスの鬼上官は、この手の映画の定番キャラクターだが、定番以上のインパクトは無かった。

この映画を例えて言うなら、トンコツをじっくり煮込んでしっかりと味をとった美味しいラーメンなのだが、なんか昔食べたもっと美味しいラーメンと味が似ているのでどうしても比べてしまい、どこか物足りなく感じてしまう、そんな映画。
勿論、映画は本来単体で評価すべきなのだが、まるでメンデスからキューブリックへの挑戦状なのかと思うくらい印象が似てるんだから仕方がない。
人間がやけにちっぽけに感じる砂漠の偵察や、漆黒の闇の中の地獄のような油田火災など、ビジュアルイメージは独特の物を作り出しているが、物語的な類似性を払拭するまでは至っていない。
逆に言えば、ベトナム戦争と湾岸戦争という二十年もの間隔のある戦争を描いて、これほど似た印象の作品が出来るというのは、ある意味でアメリカが歴史から何にも学んでおらず、本質的に変わっていない事の証明でもあり、その点興味深い。
もっとも私の場合、たまたま一月ほど前に「フルメタルジャケット」をDVDで再観賞していたのだが、観ていなければ200円分くらい印象が違ったかもしれない。

まあ確実に言えるのは、この映画を観た世界中の人々は、絶対アメリカと戦争したいとは思わないだろうという事。
だってアメリカと戦争すると、こんなイカれた頭の悪そうな兵隊たちがどっと攻めてくるんですぜ(笑

さて、今回は海兵隊の由来から一本。
アメリカ海兵隊は独立戦争当時の1775年11月、フィラデルフィアの酒場で結成されたという逸話があるくらい酒とは縁が深い。
元々は海軍の陸戦隊なので、当初の隊員は船乗り上がりが多かったと言われる。
当時の船乗りの飲み物と言えば、やはりシェリー酒。
冷蔵設備のない時代に長期の船旅の間も変質しないため、アルコール度数を上げた独特の風味は当時も今も愛されている。
シェリー酒を名乗る事ができるのはスペインのヘレス産のものだけだが、今回は「オロロソ・アルブレッホ」。
喉越しはとても滑らかですっきりしており、灼熱の砂漠で飲んでも美味しい。・・・たぶん。

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切れ味すっきり12年熟成シェリー!オロロソ・アルブレッホ
切れ味すっきり12年熟成シェリー!オロロソ・アルブレッホ \3124


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