2006年03月29日 (水) | 編集 |
ラップランドという地名を初めて知ったのは、たぶん「ニルスの不思議な旅」を読んだ時だ。
スカンジナビアとロシアの北極圏に跨る、広大な森と湖の世界。
夏になると太陽の沈まぬ白夜が、冬になると太陽の登らない極夜もある不思議な土地。
そしてそこは様々な神話・伝説を生んだサーミ人たちが暮らす、物語の故郷でもある。
これはそんなラップランドが戦場となった、20世紀のある時期の物語。
ちなみに妖精は出てこない(笑
フィンランド北極圏の地、ラップランド。
そこではロシア軍とドイツ軍、ドイツに同盟していたフィンランド軍が戦っていた。
平和主義者であるフィンランド軍の狙撃兵ヴェイッコは、戦いを放棄した罪でドイツ軍の軍服を着せられて、鎖で岩に繋がれたまま置き去りにされてしまう。
彼は僅かに残された食料と装備で、数日間かけてなんとか岩を砕いて杭を引き抜くと、鎖を引きずったまま歩き出だした。
ロシア軍大尉イワン(アレクサンドル・ロゴシュキン)は歴戦の勇士だが、仲間に売られ秘密警察に逮捕される。
だがイワンを乗せた護送車は味方の誤爆によって破壊され、彼も重傷を負う。
たまたま通りかかった近くに住むサーミ人の女アンニ(アンニ=クリスティーナ・ユーソ)は、瀕死のイワンを自分の小屋まで運び、看病してやることにする。
一方、鎖を外したいヴェイッコも、道具を借りようとアンニの家にやってくる。
未亡人のアンニは久々に現れた「いい男」二人を、自分の小屋にかくまってやることにした。
北極圏の小屋で顔を合わせた二人の兵士と一人の女。
ところが、困った事にアンニ、ヴェイッコ、イワンはお互いの言語を全く理解することができなかったのだ・・・・
第二次世界大戦の頃の話だけど、なんとなく「むか~し、むかしの物語」ってフレーズが似合いそうだ。
民話的な長閑さと、寓話性が印象的な佳作。
言葉が通じないフィンランド人、ロシア人、サーミ人の三人は、それぞれ実際にその言語のネイティブが演じている。
実際のところ、この三つの言語の違いなんて聞き慣れない耳にはまったく判らないのだけど、日本語と韓国語と中国語で喋りあうような物かと思うと何となく想像できる。
登場人物が互いの言葉を理解しないで、それぞれの勝手な解釈で行動し、それが思いも寄らない可笑しさを生み出すというのは、コメディの定番の一つ。
映画の大半は大してドラマチックな事も起こらず、この三人の心の行き違いが生み出す、ユーモラスな日常を描写しているのだが、ベタベタなのは判っていてもやっぱり笑ってしまう。
恐らく意図的だと思うが、アレクサンドル・ロゴシュキン監督の演出テンポも恐ろしくのんび~り、ま~たりしてる。
例えば岩に鎖でつながれたヴェイッコが、自由になろうと必死に岩を砕くさまを延々と数十分間に渡って見せる。
ハリウッド映画ならどんなに粘ってもこの半分だろう。
人によっては退屈するかもしれないが、観てるうちに段々とこのテンポに慣れてきて、気持ちもま~たりしてくるから不思議。
このラップランド時間に身を委ねられるかどうかが評価の分かれ目かもしれない。
言葉の通じない二人の兵士は、最初のうちはそれぞれの色眼鏡で互いを見ている。
イワンはヴェイッコを、ファシストのドイツ兵だと思い込み、隙あらば殺そうとしているし、ヴェイッコはイワンを頭の固い戦争屋のロシア人だと思ってる。
だがアンニの存在によって、敵対する二人の兵士に、やがて変化が訪れる。
未亡人アンニにとっての二人は、兵士でも外国人でもない。
ただ久々に彼女の前に現れた「いい男たち」。
どっちかと言うと欲望の対象だ(笑
言語という社会性から解き放たれ、己の欲望に正直になった時、三人は初めて素の人間として互いを見つめる。
兵士としての敵対は、次第に男としての敵対に変わり、固定観念が引き起こす「ある事件」をきっかけに、色眼鏡は遂に色を失う。
戦場から解き放たれた兵士たちは、アンニの小屋でただの人間に戻り、やがて去って行く。
映画の後半は殆ど3人しか出てこないのだが、厳しい自然の中で気の向くままに生きているアンニ役のサーミ人女優、アンニ=クリスティーナ・ユーソがとても良い。
小汚い格好をしているが、ちょっとしたしぐさがチャーミングで、固定観念にとらわれた二人の男たちとは対照的な自然体の生き方を、存在感たっぷりに演じている。
もっとも、一見世間とは関わり無く生きてる様に見える彼女だが、どうやら夫は兵隊にとられて戦死した様だから、やはり外の世界と無関係ではいられないのではあるが。
このあたりのちょっとしたディティールが映画に深みを加えている。
ところでタイトルの「ククーシュカ」って劇中にも何の説明も無かったんで、何の言葉かと思ったんだけど、どうやらロシア語で「カッコー」の意味。
カッコーは狙撃兵を表す隠語でもあり、アンニの本名でもある。
またカッコーは他人の巣に卵を産んで、育てさせる鳥でもある。
映画を観終わると結構意味深な気がする・・・
さて、この映画には当然ウォッカ・・・では強すぎる。
ここはラップランド美人アンニに引っ掛けて、日本酒の「南部美人」を。
スッキリとしたシャープな飲み口と心地よい香味は正に美人の名に相応しい。
遠野物語を生んだ岩手県は、民話と伝説の里。
雪深い日本のラップランド・・・かな?
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夏になると太陽の沈まぬ白夜が、冬になると太陽の登らない極夜もある不思議な土地。
そしてそこは様々な神話・伝説を生んだサーミ人たちが暮らす、物語の故郷でもある。
これはそんなラップランドが戦場となった、20世紀のある時期の物語。
ちなみに妖精は出てこない(笑
フィンランド北極圏の地、ラップランド。
そこではロシア軍とドイツ軍、ドイツに同盟していたフィンランド軍が戦っていた。
平和主義者であるフィンランド軍の狙撃兵ヴェイッコは、戦いを放棄した罪でドイツ軍の軍服を着せられて、鎖で岩に繋がれたまま置き去りにされてしまう。
彼は僅かに残された食料と装備で、数日間かけてなんとか岩を砕いて杭を引き抜くと、鎖を引きずったまま歩き出だした。
ロシア軍大尉イワン(アレクサンドル・ロゴシュキン)は歴戦の勇士だが、仲間に売られ秘密警察に逮捕される。
だがイワンを乗せた護送車は味方の誤爆によって破壊され、彼も重傷を負う。
たまたま通りかかった近くに住むサーミ人の女アンニ(アンニ=クリスティーナ・ユーソ)は、瀕死のイワンを自分の小屋まで運び、看病してやることにする。
一方、鎖を外したいヴェイッコも、道具を借りようとアンニの家にやってくる。
未亡人のアンニは久々に現れた「いい男」二人を、自分の小屋にかくまってやることにした。
北極圏の小屋で顔を合わせた二人の兵士と一人の女。
ところが、困った事にアンニ、ヴェイッコ、イワンはお互いの言語を全く理解することができなかったのだ・・・・
第二次世界大戦の頃の話だけど、なんとなく「むか~し、むかしの物語」ってフレーズが似合いそうだ。
民話的な長閑さと、寓話性が印象的な佳作。
言葉が通じないフィンランド人、ロシア人、サーミ人の三人は、それぞれ実際にその言語のネイティブが演じている。
実際のところ、この三つの言語の違いなんて聞き慣れない耳にはまったく判らないのだけど、日本語と韓国語と中国語で喋りあうような物かと思うと何となく想像できる。
登場人物が互いの言葉を理解しないで、それぞれの勝手な解釈で行動し、それが思いも寄らない可笑しさを生み出すというのは、コメディの定番の一つ。
映画の大半は大してドラマチックな事も起こらず、この三人の心の行き違いが生み出す、ユーモラスな日常を描写しているのだが、ベタベタなのは判っていてもやっぱり笑ってしまう。
恐らく意図的だと思うが、アレクサンドル・ロゴシュキン監督の演出テンポも恐ろしくのんび~り、ま~たりしてる。
例えば岩に鎖でつながれたヴェイッコが、自由になろうと必死に岩を砕くさまを延々と数十分間に渡って見せる。
ハリウッド映画ならどんなに粘ってもこの半分だろう。
人によっては退屈するかもしれないが、観てるうちに段々とこのテンポに慣れてきて、気持ちもま~たりしてくるから不思議。
このラップランド時間に身を委ねられるかどうかが評価の分かれ目かもしれない。
言葉の通じない二人の兵士は、最初のうちはそれぞれの色眼鏡で互いを見ている。
イワンはヴェイッコを、ファシストのドイツ兵だと思い込み、隙あらば殺そうとしているし、ヴェイッコはイワンを頭の固い戦争屋のロシア人だと思ってる。
だがアンニの存在によって、敵対する二人の兵士に、やがて変化が訪れる。
未亡人アンニにとっての二人は、兵士でも外国人でもない。
ただ久々に彼女の前に現れた「いい男たち」。
どっちかと言うと欲望の対象だ(笑
言語という社会性から解き放たれ、己の欲望に正直になった時、三人は初めて素の人間として互いを見つめる。
兵士としての敵対は、次第に男としての敵対に変わり、固定観念が引き起こす「ある事件」をきっかけに、色眼鏡は遂に色を失う。
戦場から解き放たれた兵士たちは、アンニの小屋でただの人間に戻り、やがて去って行く。
映画の後半は殆ど3人しか出てこないのだが、厳しい自然の中で気の向くままに生きているアンニ役のサーミ人女優、アンニ=クリスティーナ・ユーソがとても良い。
小汚い格好をしているが、ちょっとしたしぐさがチャーミングで、固定観念にとらわれた二人の男たちとは対照的な自然体の生き方を、存在感たっぷりに演じている。
もっとも、一見世間とは関わり無く生きてる様に見える彼女だが、どうやら夫は兵隊にとられて戦死した様だから、やはり外の世界と無関係ではいられないのではあるが。
このあたりのちょっとしたディティールが映画に深みを加えている。
ところでタイトルの「ククーシュカ」って劇中にも何の説明も無かったんで、何の言葉かと思ったんだけど、どうやらロシア語で「カッコー」の意味。
カッコーは狙撃兵を表す隠語でもあり、アンニの本名でもある。
またカッコーは他人の巣に卵を産んで、育てさせる鳥でもある。
映画を観終わると結構意味深な気がする・・・
さて、この映画には当然ウォッカ・・・では強すぎる。
ここはラップランド美人アンニに引っ掛けて、日本酒の「南部美人」を。
スッキリとしたシャープな飲み口と心地よい香味は正に美人の名に相応しい。
遠野物語を生んだ岩手県は、民話と伝説の里。
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