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2006年05月16日 (火) | 編集 |
ブラジル、リオのスラムで生きる少年たちの姿を鮮烈に描いた、「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス監督のハリウッド進出第一作。
何と「鏡の国の戦争」などで知られる、スパイ・冒険小説の大御所ル・カレの小説を題材に選んできた。
こうなると、深みのある娯楽大作を期待したくなるが、流石にこの人は一筋縄ではいかない。
「ナイロビの蜂」は第一級のサスペンス、ラブストーリーであると同時に、「ホテルルワンダ」や「ロード・オブ・ウォー」などと同様、「アフリカの現実」を扱った硬派な社会派映画でもあるのだ。
在ケニアのイギリス外交官ジャスティン(レイフ・ファインズ)は、ナイロビの空港で、奥地のロキへ向かう妻テッサ(レイチェル・ワイズ)を見送る。
彼女はアフリカの医療問題に取り組んでいるNGO活動家だった。
だが数日後、ジャスティンの元に、トゥルカナ湖の南端でテッサが殺害されたという悲報が届く。
愛する妻はなぜ殺されたのか。
テッサの生前の行動を追うジャスティンは、彼女がアフリカを新薬の実験場とする多国籍製薬会社の告発を計画していた事を知る。
新薬市場の巨額の利権を巡る陰謀が、テッサを死に追いやったという確信を得たジャスティンだったが、陰謀には英外務省の幹部も絡んでおり、彼自身も命を狙われる。
妻テッサの本当の姿を知ったジャスティンは、一人真相を探るべく動き始める・・・。
一組の夫婦の深い愛を描いたラブストーリーと、先進国に食い物にされるアフリカの現実を描いた社会派ドラマ。
この全くベクトルの異なる二つの物語を、一本の映画に纏め上げた仕事は見事だ。
たぶんメイレレスという人の中では、個人と社会という物の問題意識が違和感なく溶け合っているのだろう。
「シティ・オブ・ゴッド」でもコンビを組んだセザール・シャローンによるカメラは、アフリカの大地を縦横無尽に駆け抜ける。
メイレレスの演出は、劇映画のセオリーにドキュメンタリーを思わせる第三者的な視点を織り交ぜ、リアリズムを醸し出すと同時に、常に何者かに見張られているような不安感を感じさせる。
ロンドンのシークエンスの、街頭カメラの使い方を含めて、サスペンス演出として実にスリリングだ。
ある意味であまりに重いラストまで、表層的な感傷を排し心の深層に焦点を置いたメイレレスの仕事は、ハリウッド映画的な判りやすさを備えつつ、彼自身の作家性を殺していない。
アメリカに拠点を移した途端、突然個性を失ってしまう作家が多い中、この確固たるスタンスは大いに評価すべきだ。
同時に、原作のル・カレにも敬意を表したい。
この原作は未読なので、どの程度忠実に描かれているのか判らないが、骨子のしっかりとしたプロットは間違いなく彼の物だろう。
70歳を超えて、このような骨太の物語を生み出すエネルギーは流石である。(ちなみに私は小説では「パナマの仕立屋」が好き)
ジャスティンを演じたレイフ・ファインズは、あくまでも語り部として出すぎず、しかし妻の愛の深さに次第に目を開かされる静かな男を巧みに演じた。
そしてレイチェル・ワイズは、心の奥底に切ないほど深い愛を湛えたテッサを演じて、深い印象を残す。
オスカー受賞も納得の名演だ。
ジャスティンがアフリカに赴任する時、テッサは自分から彼にプロポーズする。
プロポーズの言葉は”learn me”(私を探求して)。
意味深なこの言葉は、映画の構造をそのまま表現している。
映画は徹底的に夫ジャスティンの視点で描かれる。
最初のうち、テッサの印象はそれ程良い物ではない。
美しく情熱的だが、少々ヒステリックで目的のためなら手段を選ばない女性に見える。
だがこれはメイレレスの周到な計算。
ジャスティンはテッサを愛しているが、それは彼女を知っている事とは違う。
テッサは彼を愛するが故に壁を作り、容易に内面には入り込めず、実はこの夫婦はお互いの愛の一番深い部分を知らないのだ。
ジャスティン同様に、観客はしばしば独善的にも見えるテッサに戸惑い、その旅路を辿る。
そして彼女の戦いの、本当の姿を知るのだ。
”learn me”
その言葉に導かれる様にテッサを追い、全てを目の当たりにした時、観客は彼女の深い愛と、彼女の命を奪ったアフリカの病巣を知る。
同時にジャスティンは、命をとした旅の果てに、遂にテッサの魂と一体化するのだ。
観終わった印象は深い。
心の奥にドーンと重い物を抱え込んだ気分だ。
しかし、同時に僅かな違和感も感じる。
二人のラブストーリーとしては文句無しだが、政治的なメッセージは少し軽い。
勿論アフリカの現実が軽いのではない。
一本の映画として巧みに纏め上げているが、精神性は完全には融合していないからだ。
二つの別々のメッセージを受け取ったような感じだ。
このあたりは生まれ育ったブラジルを舞台に、より物語とテーマが近かった「シティ・オブ・ゴッド」に比べると、若干の物足りなさを感じる。
しかし、近年稀にみる情念を感じる大人のラブストーリー。
既婚者も独身者も観るべし。
この映画には「ハイランドパーク」の25年物を。
アルコール度数50%を超える本物のスピリットだ。
スコットランド北端の島オークニー島にある、世界最北の蒸留所で作られるこの酒の味わいは、愛の様に深く複雑で、そして重い。
食後酒として定評のあるこの酒は、映画の余韻もより深めてくれるだろう。
これは余韻にじっくりと浸りたくなる映画だ。
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何と「鏡の国の戦争」などで知られる、スパイ・冒険小説の大御所ル・カレの小説を題材に選んできた。
こうなると、深みのある娯楽大作を期待したくなるが、流石にこの人は一筋縄ではいかない。
「ナイロビの蜂」は第一級のサスペンス、ラブストーリーであると同時に、「ホテルルワンダ」や「ロード・オブ・ウォー」などと同様、「アフリカの現実」を扱った硬派な社会派映画でもあるのだ。
在ケニアのイギリス外交官ジャスティン(レイフ・ファインズ)は、ナイロビの空港で、奥地のロキへ向かう妻テッサ(レイチェル・ワイズ)を見送る。
彼女はアフリカの医療問題に取り組んでいるNGO活動家だった。
だが数日後、ジャスティンの元に、トゥルカナ湖の南端でテッサが殺害されたという悲報が届く。
愛する妻はなぜ殺されたのか。
テッサの生前の行動を追うジャスティンは、彼女がアフリカを新薬の実験場とする多国籍製薬会社の告発を計画していた事を知る。
新薬市場の巨額の利権を巡る陰謀が、テッサを死に追いやったという確信を得たジャスティンだったが、陰謀には英外務省の幹部も絡んでおり、彼自身も命を狙われる。
妻テッサの本当の姿を知ったジャスティンは、一人真相を探るべく動き始める・・・。
一組の夫婦の深い愛を描いたラブストーリーと、先進国に食い物にされるアフリカの現実を描いた社会派ドラマ。
この全くベクトルの異なる二つの物語を、一本の映画に纏め上げた仕事は見事だ。
たぶんメイレレスという人の中では、個人と社会という物の問題意識が違和感なく溶け合っているのだろう。
「シティ・オブ・ゴッド」でもコンビを組んだセザール・シャローンによるカメラは、アフリカの大地を縦横無尽に駆け抜ける。
メイレレスの演出は、劇映画のセオリーにドキュメンタリーを思わせる第三者的な視点を織り交ぜ、リアリズムを醸し出すと同時に、常に何者かに見張られているような不安感を感じさせる。
ロンドンのシークエンスの、街頭カメラの使い方を含めて、サスペンス演出として実にスリリングだ。
ある意味であまりに重いラストまで、表層的な感傷を排し心の深層に焦点を置いたメイレレスの仕事は、ハリウッド映画的な判りやすさを備えつつ、彼自身の作家性を殺していない。
アメリカに拠点を移した途端、突然個性を失ってしまう作家が多い中、この確固たるスタンスは大いに評価すべきだ。
同時に、原作のル・カレにも敬意を表したい。
この原作は未読なので、どの程度忠実に描かれているのか判らないが、骨子のしっかりとしたプロットは間違いなく彼の物だろう。
70歳を超えて、このような骨太の物語を生み出すエネルギーは流石である。(ちなみに私は小説では「パナマの仕立屋」が好き)
ジャスティンを演じたレイフ・ファインズは、あくまでも語り部として出すぎず、しかし妻の愛の深さに次第に目を開かされる静かな男を巧みに演じた。
そしてレイチェル・ワイズは、心の奥底に切ないほど深い愛を湛えたテッサを演じて、深い印象を残す。
オスカー受賞も納得の名演だ。
ジャスティンがアフリカに赴任する時、テッサは自分から彼にプロポーズする。
プロポーズの言葉は”learn me”(私を探求して)。
意味深なこの言葉は、映画の構造をそのまま表現している。
映画は徹底的に夫ジャスティンの視点で描かれる。
最初のうち、テッサの印象はそれ程良い物ではない。
美しく情熱的だが、少々ヒステリックで目的のためなら手段を選ばない女性に見える。
だがこれはメイレレスの周到な計算。
ジャスティンはテッサを愛しているが、それは彼女を知っている事とは違う。
テッサは彼を愛するが故に壁を作り、容易に内面には入り込めず、実はこの夫婦はお互いの愛の一番深い部分を知らないのだ。
ジャスティン同様に、観客はしばしば独善的にも見えるテッサに戸惑い、その旅路を辿る。
そして彼女の戦いの、本当の姿を知るのだ。
”learn me”
その言葉に導かれる様にテッサを追い、全てを目の当たりにした時、観客は彼女の深い愛と、彼女の命を奪ったアフリカの病巣を知る。
同時にジャスティンは、命をとした旅の果てに、遂にテッサの魂と一体化するのだ。
観終わった印象は深い。
心の奥にドーンと重い物を抱え込んだ気分だ。
しかし、同時に僅かな違和感も感じる。
二人のラブストーリーとしては文句無しだが、政治的なメッセージは少し軽い。
勿論アフリカの現実が軽いのではない。
一本の映画として巧みに纏め上げているが、精神性は完全には融合していないからだ。
二つの別々のメッセージを受け取ったような感じだ。
このあたりは生まれ育ったブラジルを舞台に、より物語とテーマが近かった「シティ・オブ・ゴッド」に比べると、若干の物足りなさを感じる。
しかし、近年稀にみる情念を感じる大人のラブストーリー。
既婚者も独身者も観るべし。
この映画には「ハイランドパーク」の25年物を。
アルコール度数50%を超える本物のスピリットだ。
スコットランド北端の島オークニー島にある、世界最北の蒸留所で作られるこの酒の味わいは、愛の様に深く複雑で、そして重い。
食後酒として定評のあるこの酒は、映画の余韻もより深めてくれるだろう。
これは余韻にじっくりと浸りたくなる映画だ。

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