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ポセイドン・・・・・評価額1450円
2006年05月28日 (日) | 編集 |
プロデューサーのアーウィン・アレンロナルド・ニーム監督が1972年に世に送り出した「ポセイドン・アドベンチャー」は、低予算のアメリカンニューシネマがハリウッドを席巻する中、巨額の予算を投じたパニックスペクタクル大作というジャンルを定着させた名作だった。
このパニック映画ブームの流れの中で、75年には「JAWS」の大ヒットによりスティーブン・スピルバーグが一躍時の人となり、70年代後半以降のニューハリウッド派による第二の黄金時代に繋がって行く。
今回34年ぶりのリメイク、「ポセイドン」のメガホンを取ったのは、何故か「水物」の作品が多いウォルフガング・ペーターゼン
既に古典としての評価が確定した作品のリメイクであるから、どうしてもオリジナルと比べたくなってしまうのが人の性というもの。

大型クルーズ客船のポセイドン号は、大晦日の夜に突如として発生した超巨大波によって転覆してしまう。
生き残った人々に、船長は救助隊がくるまで動くなと警告する。
しかし、ギャンブラーで元海軍の潜水艦乗りのディラン(ジョシュ・ルーカス)は、船は沈没まで間が無いと判断し、船底にあるプロペラチューブを通って外へ脱出する事を思いつく。
彼の意見に賛同した元NY市長のラムジー(カート・ラッセル)、船の設計士であるネルソン(リチャード・ドレイファス)を始めとする10人の人々は、天地が逆さまになった船内を、上へ上へと登っていくのだが・・・


オリジナルの上映時間は117分。
対してリメイク版は99分とコンパクトになっている。
この18分の上映時間の差が、今回のリメイク版のスタンスを端的に示している。
お話の大まかな流れは同じで、メインの登場人物の数も同じ。
では切られたのは何かというと、人間ドラマである。
 
往年のパニックスペクタクルの特徴の一つは、社会の様々な階層に属する人々が、共通の危機に対して団結してサバイバルするという物だった。
その過程で、それぞれのキャラクターの持っているバックグラウンドや心理が描かれ、物語に深みを加えるのだ。
オリジナルの「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」と言った名作と言われるパニック映画は、例外なく優れた群像劇としての性格を持っていた。

しかし今回のリメイク版は、登場人物の背景を大胆なまでに削ぎ落とし、殆ど語らない。
勿論キャラのインフォメーションが全く無ければ、観客も感情移入出来ないから、簡潔ににおわせる程度には描いている。
例えばカート・ラッセル演じるラムジーの役は、オリジナルでジーン・ハックマンが演じたスコット牧師に当たる。
オリジナルで人々を率いる事になったスコットは、こんな事態に自分を放り込んだ神に対して、ずっと疑問を投げかけている。
苦難の行程を通して、聖職者としてのスコットの人生観や心の変化を細やかに描いていた。
対してリメイク版では、ラムジーが嘗て消防士として大惨事で活躍し、NY市長を務めた「らしい」という情報が与えられる程度で、彼の内面はまったくと言って良いほど描写されない。
他の登場人物も同様で、ちらりと人生模様を感じさせるだけで、深みを感じさせる様なドラマは無く、総じて「ポセイドン」は群像劇としてのドラマ性においてかなり薄い。

しかし、この作品においてこれは必ずしもマイナスばかりではないと思う。
ウォルフガンク・ペーターゼンの演出は、徹底的に危機からのサバイバルを描いているのだが、当然そこには「人間の生と死」という最大限にドラマチックな状況が描かれているからだ。
そこでは良い人間が生き残るとは限らない。
エレベーターシャフトでの決死の綱渡り。
一人の人間に、二人がぶら下がりしがみ付く。
一番下の人間を蹴落とさなければ、皆助からない。
その時、人はどうするのか。何ができて何が出来ないのか。
また、唯一の外への出口であるプロペラチューブ。
しかし高速で回転するプロペラが動いたまま。
誰かが水に沈んだコントロール室でスイッチを切らなければならない。
だがそこは、決して戻ってくる事の出来ない距離にある。
誰が行くのか。
迫り来る炎と水、逃げ場の無い密室に閉じ込められる閉塞感。
さすが潜水艦映画の最高峰、「U・ボート」を生み出したペーターゼン。
この巨大な迷宮からの脱出行のスリリングさは圧巻で、そこには確実に人間の生命のドラマがある。
人間ドラマを生と死という極限のポイントに絞り、後は徹底的にサバイバルアクションで見せると言う目論見は、ある程度成功していると思う。

ちょっと勿体無いなあと思うのは、せっかく船が転覆しているという設定なのに、ビジュアル的にあまり生かされていない事。
オリジナルでは天井(つまり元々は床)からぶら下がった巨大なクリスマスツリーを登っていくという様な、面白い演出があったのだが、リメイク版では上下が逆になっているのがあまりよく判らない。
吹き抜けのホールを渡るあたりは、一番逆さまの面白さが出る所だと思うのだが、セットデザインがそれを強調していない事もあり、普通に通り過ぎてしまう。
このあたりは工夫次第でさらに面白くなった所だと思う。

それに娯楽大作として十分楽しめるのは確かだが、観終わった感慨は人間ドラマに比例して薄い。
なんか、満腹感が無いのだ。
刺激的なメニューを腹八分目くらいまで一気に詰め込んだ感じで、美味しかったけどもうちょっと何か欲しいと言う想いが残る。
その一つの要因に、主役の存在感の無さがあると思う。
ジョシュ・ルーカス演じるディランは、主役であるにも関わらず、登場人物の中でもっともキャラクターの描写が少ない。
観客に提供される情報は彼が二枚目のギャンブラーであると言う程度だ。
最初は皆を見捨てて行こうとする様な、少し非常な男に見えるのに、段々と英雄的な行動をするなどキャラクターも一定しない。
これは内面が全く描かれていないから、彼の精神的な変化が伝わらず、行動だけが変わったように見えてしまうためだ。
せめて主役のディランくらいは、ある程度内面が判るように描く必要があったと思う。

「ポセイドン」はスリリングな娯楽映画で、ジェットコースターのようなスリルを味わうにはぴったりの作品だろう。
トータルで観ると、偉大なオリジナルを超えていないと思うが、これはこれで十分に面白い。

今回は、海神ポセイドンの子、アミカスの名をもつユニークなアメリカンワインを。
西海岸だとやはりナパやサンタバーバラのあるカリフォルニアがワインどころとして有名だが、この「ブルックス・アミカス」はオレゴン産。
オーガニック栽培の葡萄を使った希少なワインは、複雑でフルーティな風味が楽しめ、同時にとても飲みやすい。
私もこのブルックスという人物は最近知ったのだが、残念なことに亡くなってしまい、このビンテージが彼の手がけた最後の年となるそうだ。
クオリティは十分高いので、映画の物足りない部分に満腹感を足してくれるかも知れない。

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ブルックスの意志を次ぐ有志達のがファーストヴィンーテージブルックス・アミカス[2004]

ブルックス・アミカス 2004   ?2457







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