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ハードキャンディ・・・・・評価額1350円
2006年08月09日 (水) | 編集 |
赤頭巾ちゃんの狼狩り。
サンダンス映画祭で大いに話題になり、高い評価を集めた異色のスリラー。
援交女子高生が客の男を襲って金を奪ったという、日本で起こった事件にヒントを得て作られたのだというから、観る前はオヤジ狩りの映画だと思っていた。
しかし実際の映画は、元の事件とは全く異なる、舞台劇のような構造を持つスリリングな密室劇だった。
登場人物は実質二人。
たった一本のロープによって、立場を逆転された狼と赤頭巾ちゃん。
はたして赤頭巾ちゃんの行為は、復讐なのか、それとも無邪気なゲームなのか?

32歳のカメラマン、ジェフ(パトリック・ウィルソン)は、ネットの出会いサイトで知り合った14歳の少女ヘイリー(エレン・ペイジ)を家へ連れ込む。
チョロイ相手と思って喜んだのもつかの間、ヘイリーの作ったカクテルを飲んだジェフは、縛られて意識朦朧とした状態で目を覚ます。
全てはヘイリーの仕掛けた巧妙な罠だった。
失踪したドナという女性の行方を、ジェフに「尋問」するヘイリー。
知らないと言い張るジェフの股間に、ヘイリーは氷を押し当てて感覚を奪う。
「右と左のタマ、どっちを先に切る?」
ヘイリーの、「恐怖のゲーム」が次第にジェフを追い詰めて行く・・・


シチュエーション物として、よく出来ていると思う。
少女はいったい何者なのか、男は真実を語っているのか?
映画の流れの中で、男はどうやら常習的な小児性愛者であり、ドナという女性の失踪に関わりがあるらしい事が判る。
そして少女は男の過去、特にドナとの関わりに関する「自白」を男から引き出そうとする。
この二人の対決は綿密に作りこまれ、互いの人格を抉り取ろうとする言葉のやり取りは実にスリリングだ。
男はその心の中に少女の侵入を許すまじとし、少女は巧みに言葉を操り男の心を手玉に取ろうとする。
このプロセスはよく出来た犯罪映画の、刑事と容疑者の心理戦に近い物があり、ずっと緊迫感が持続する。
ディヴィッド・スレッド監督脚本のブライアン・ネルソンという、共にこれが劇場用映画デビュー作となる二人は、103分という比較的コンパクトな上映時間に、密度の濃いドラマを詰め込み、決して観客を飽きさせない。
一本のロープの存在だけで、男と女、大人と子供という当たり前の立場を逆転させてしまう発想は面白いし、場面転換に少女と男の心を象徴する濃緑の壁を使い、登場人物の心理的流れを途切れさせない工夫なども、なかなか考えられている。

しかし、観ている最中も、観終った後も、どうにもモヤモヤとした未消化な感覚が残り、映画全体の印象はあまり明快ではない。
面白いことは面白いけど、この映画が何を表現したかったのかがイマイチよく判らないのだ。
作品からテーマを額面どおり受け取れば、小児性愛者や性犯罪者への糾弾という事になるのか、それとも少女の持つ二面性の恐ろしさなのか。
どちらともとれるし、どちらだとしても、そのまま受け取って良いのか戸惑いを感じる。
観ている自分の意識が主人公の二人に入っていけない。
何故か?だって二人の主人公はぶっちゃけどっちも犯罪者なのだ。
男はどうやら小児性愛癖のある変態さんの様だが、少女の方もどう見てもいかれたサディスト
ローティーンの少女を毒牙にかけるロリコン男も、クスリで男を眠らせて、タマを切ろうとする暴力少女も、どっちも十分すぎるくらい友達になりたくない存在だ(笑

しかし、戸惑いの決定的な原因は、やはり少女ヘイリーが何者か明かされない事だろう。
物語の流れからすると、どう考えてもドナの関係者かと思わされるのだが、今ひとつはっきりしない。
あまりにも用意周到な罠の仕掛け方、凄惨な拷問の途中で、友達に映画に行こうと電話をするお気楽さ。
一体お前は何者なのかと問う男には、「あなたの手にかかった全ての少女」と嘯く。
演じたエレン・ペイジは圧倒的な熱演で、無邪気な微笑みに隠された凶暴さという、男にとって実に恐ろしいキャラクターを作り上げているのだが、どうもこのキャラクターの元々の設定にリアリティを感じられない。
ちょっと出来過ぎているのだ。
私は途中で、もしかしたらこの娘は実在しないか、本物の幽霊?とM・ナイト・シャマラン的オチを想像したくらいなのだが、どうもそっち系の存在でも無さそうだ。
結局のところ、彼女の行為が復讐なのか、それとも単にスケベ男に対するリンチなのかがわからないので、この物語をどう受け取れば良いのか、観ている自分の中で消化できなかった。

勿論、全てを明かさない事が深みやカタルシスに繋がっている映画もたくさんあるし、最近の作品なら、「隠された記憶」などは、正に「何も明かさない事」が観客の想像力を掻き立てて、映画の世界をグッと深める事に成功していた。
明かさない事を効果として映画に織り込むのであれば、もう少しその事を前提とした脚本作りが必要で、よく出来た密室スリラーである事を認めつつも、私にはこの作品は少しばかり中途半端に感じた。

もし、この作品に魅力を感じた人がいたなら、私は似て非なる作品として「クローゼット・ランド」をお勧めしたい。
1991年のラダ・バラドワジ監督作品。
ある国で絵本作家をしている主人公の女性が、反体制思想の疑いをかけられて拷問にかけられる。
93分のコンパクトな上映時間の間、物語りはたった一つの拷問室で展開し、登場人物はマデリーン・ストウの作家と、アラン・リックマンの拷問官のみ。
恐らくこの作品にも大きな影響を与えた作品だと思う。
知る人ぞ知る心理サスペンスの佳作。
機会があれば是非ご覧あれ。

今回は赤頭巾ちゃんの男狩りのイメージで、カクテル「ハンター」を。
スコッチウィスキーとチェリーリキュールを3:1の割合でステアして完成。
シンプルながら甘味とコクが交じり合って、なかなかに複雑な味わいだ。
深いレッドのビジュアルは、この映画を観てからだと、狩られた狼の血のようにも見える。
くわばらくわばら。

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バランタイン ファイネスト 40°1000ml ?2500


残念ながらビデオ絶版、未DVD化の作品で、字幕付きで観たければ、レンタルビデオを探すか中古品を買うしかない。
しかし、一見の価値のある作品である。




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