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2006年08月15日 (火) | 編集 |
2001年9月11日の朝。
当時アメリカに住んでいた私は、日本からの電話で起こされた。
「今すぐ、テレビをつけろ!大変な事になっているぞ!」
ニュースを見ても、正直最初は何が起こっているのか判らなかった。
え・・・・これ何?映画?
CNNは、WTCのツインタワーに相次いで激突する二機の旅客機の映像を、繰り返し放送していた。
やがてペンダゴンも炎上しているというニュースが流れ、ついにはWTCが巨大な爆煙と共に倒壊した。
日常が突然映画の中に放り込まれた様な、まるで現実感の無い、不思議な感覚だった。
外に出ても、街は死んだようだった。
高層ビルのオフィスが閉鎖され、人が集まる場所は必然的に避けられたので、ダウンタウンからは人通りが消え、人々は生気を失った顔で家路を急いだ。
都市の上空には軍の戦闘機が舞っていた。
やがてニュースの映像は、倒壊するWTCと、日本軍の空襲で炎上するパールハーバーの記録映像へと変わり、新聞には「AMERICA UNDER ATTACK!」の文字が躍った。
何と言うか、漠然と「ああ、戦争が始まったんだ」と思った。
敵も見えない、勝利や敗北すら存在するのか判らない、新しいタイプの戦争。
闇の中をライト無しに走る様な、不安感が社会を覆っていったのを覚えている。
9.11で乗っ取られた飛行機は4機。
3機は目標に到達したが、ワシントンの国会議事堂かホワイトハウスを狙ったと思われる、ユナイテッド93便だけは、目標の遥か手前で墜落した。
墜落直前まで乗客と家族との間で交わされていた電話の内容から、自分たちの運命を知った乗客たちが、犯人グループに戦いを挑んだ結果墜落したと推測されている。
このユナイテッド93便の物語を映画にすると聞いたとき、正直私は嫌悪感を覚えた。
私自身、学生時代の知人をこの事件で亡くしている事もあり、あれからたった5年しか経っていないのに、もう金儲けのネタにするのかと思った。
たぶん犯人と戦った乗客たちの話を、安っぽい英雄物語にするんだろうなという「ハリウッドセオリー」への失望もあった。
実際、映画館で初めて予告編を観た時、自分でも予期しない激しい動悸におそわれて、自分の中での9.11の大きさを実感すると共に「やはりこれは早過ぎるよ」と思ったものだ。
そんな訳で元々観る気はなかったのだが、アメリカ公開時の絶賛に近い評判や、日本で試写を観た人たちの反応、そして何よりもポール・グリーングラス監督が、93便の犠牲者全ての遺族の了承を得て映画化した事を知り、予想していた様な映画とは違うかもしれないと思い、覚悟を決めて観に行った。
結果的に言えば、観て良かったと思う。
私にとって、この映画はあまりにも生々しすぎて、一本の「作品」として観る事は出来なかった。
したがって客観的な評価も出来ないのだが、ポール・グリーングラスはとても真摯に9.11に対してアプローチしていると思う。
映画はユナイテッド93便の運命と、9.11当日の航空管制官や軍の混乱を交互に描いてゆく。
エンドクレジットを読むと、航空管制官や軍人役の人々はキャストに「as himself」が多くて驚かされる。
当日あの現場にいた自分自身を再現する事は、ある意味とても辛い事だと思うのだが、そうまでしても伝えたい物があったのだろう。
この映画に描かれる現場の混乱ぶりは、今までメディアでもあまり触れられなかった部分なので、とても興味深かった。
全く予想外の事態に混乱し、恐れ、それでも何とか事態をコントロールしようとする人々の姿が恐ろしくリアルに描かれている。
ユナイテッド93便は、最後に乗っ取られた飛行機なので、最後の瞬間まで乗客と家族の間に電話のやり取りが続き、機内で何が起こっていたかに関してかなりの部分がわかっている。
映画の後半は、乗っ取られた93便の乗客たちが家族との電話で状況を把握しながら、何とか飛行機を取り返そうとするプロセスが中心となる。
一番印象的だったのは、やはり家族への最後の言葉が皆「I love you」だった事かもしれない。
ユナイテッド93便はニューアークから、当時私の住んでいたサンフランシスコへ向かう便。
私もこの路線は何度か乗った事がある。
あの乗客の中に、偶然自分がいても不思議は無かった。
いや、私は映画を観ている間中あの客席にいた。
もし私だったら、最後に何を伝えるだろうか、どんな行動を取っただろうか・・・・・
映画の最後は、既に誰もが知っている訳だが、この映画には英雄も悪人もいない。
ただ、とてつもなく邪悪な行為と、それに翻弄されながら正気を保とうとする葛藤、生きようとする当たり前の戦いがあるだけだ。
ポール・グリーングラス監督は、映画作家として、また一人の人間として、この事件に対して多くの「言いたい事」があったと思う。
製作経緯や内容のデリケートさを考えれば、強い主張を盛り込むのは始めから難しかったとは思うが、グリーングラスは自分の意見を封印して、あえてこの映画を事象だけで描いた。
それは結果的に良かったと思う。
9.11から世界は変わってしまった。
あれから早5年の歳月が流れたが、世界はまだ見えない戦争の中にある。
事件当日の数千人の犠牲者やその遺族は勿論だが、直接的な犠牲者以外にも、あの事件はもの凄く多くの人の人生を変えただろう。
9.11が何らかの人生の転機となった人は無数にいると思う。
私が十数年暮らしたアメリカを引き払い、今日本で暮らしているのも、決してあの事件と無縁ではない。
そんな多くの人々にとって、9.11という事象を淡々と描いたこの映画は「9.11とは何だったのか?」を考える検証の機会となるだろう。
答えはいまだ見えない。
だが、この事件は社会的にも個人的にも語り継ぎ、考え続けなければならないのだろうと思う。
やはり普通の映画の様には観られなかったので、評価額は付けられない。
この映画に関して、私が言えることは一つ。
もし商業主義的な嫌悪感を感じて、観るのを迷っている人がいたら、そういう人こそ観るべき映画だと思う。
観終わると、あの日の感情が蘇ってきて、どっと疲れる。
しかし、9.11が心のどこかに引っかかっている人にとっては、何かを考える切っ掛けとなりえる映画だろう。
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当時アメリカに住んでいた私は、日本からの電話で起こされた。
「今すぐ、テレビをつけろ!大変な事になっているぞ!」
ニュースを見ても、正直最初は何が起こっているのか判らなかった。
え・・・・これ何?映画?
CNNは、WTCのツインタワーに相次いで激突する二機の旅客機の映像を、繰り返し放送していた。
やがてペンダゴンも炎上しているというニュースが流れ、ついにはWTCが巨大な爆煙と共に倒壊した。
日常が突然映画の中に放り込まれた様な、まるで現実感の無い、不思議な感覚だった。
外に出ても、街は死んだようだった。
高層ビルのオフィスが閉鎖され、人が集まる場所は必然的に避けられたので、ダウンタウンからは人通りが消え、人々は生気を失った顔で家路を急いだ。
都市の上空には軍の戦闘機が舞っていた。
やがてニュースの映像は、倒壊するWTCと、日本軍の空襲で炎上するパールハーバーの記録映像へと変わり、新聞には「AMERICA UNDER ATTACK!」の文字が躍った。
何と言うか、漠然と「ああ、戦争が始まったんだ」と思った。
敵も見えない、勝利や敗北すら存在するのか判らない、新しいタイプの戦争。
闇の中をライト無しに走る様な、不安感が社会を覆っていったのを覚えている。
9.11で乗っ取られた飛行機は4機。
3機は目標に到達したが、ワシントンの国会議事堂かホワイトハウスを狙ったと思われる、ユナイテッド93便だけは、目標の遥か手前で墜落した。
墜落直前まで乗客と家族との間で交わされていた電話の内容から、自分たちの運命を知った乗客たちが、犯人グループに戦いを挑んだ結果墜落したと推測されている。
このユナイテッド93便の物語を映画にすると聞いたとき、正直私は嫌悪感を覚えた。
私自身、学生時代の知人をこの事件で亡くしている事もあり、あれからたった5年しか経っていないのに、もう金儲けのネタにするのかと思った。
たぶん犯人と戦った乗客たちの話を、安っぽい英雄物語にするんだろうなという「ハリウッドセオリー」への失望もあった。
実際、映画館で初めて予告編を観た時、自分でも予期しない激しい動悸におそわれて、自分の中での9.11の大きさを実感すると共に「やはりこれは早過ぎるよ」と思ったものだ。
そんな訳で元々観る気はなかったのだが、アメリカ公開時の絶賛に近い評判や、日本で試写を観た人たちの反応、そして何よりもポール・グリーングラス監督が、93便の犠牲者全ての遺族の了承を得て映画化した事を知り、予想していた様な映画とは違うかもしれないと思い、覚悟を決めて観に行った。
結果的に言えば、観て良かったと思う。
私にとって、この映画はあまりにも生々しすぎて、一本の「作品」として観る事は出来なかった。
したがって客観的な評価も出来ないのだが、ポール・グリーングラスはとても真摯に9.11に対してアプローチしていると思う。
映画はユナイテッド93便の運命と、9.11当日の航空管制官や軍の混乱を交互に描いてゆく。
エンドクレジットを読むと、航空管制官や軍人役の人々はキャストに「as himself」が多くて驚かされる。
当日あの現場にいた自分自身を再現する事は、ある意味とても辛い事だと思うのだが、そうまでしても伝えたい物があったのだろう。
この映画に描かれる現場の混乱ぶりは、今までメディアでもあまり触れられなかった部分なので、とても興味深かった。
全く予想外の事態に混乱し、恐れ、それでも何とか事態をコントロールしようとする人々の姿が恐ろしくリアルに描かれている。
ユナイテッド93便は、最後に乗っ取られた飛行機なので、最後の瞬間まで乗客と家族の間に電話のやり取りが続き、機内で何が起こっていたかに関してかなりの部分がわかっている。
映画の後半は、乗っ取られた93便の乗客たちが家族との電話で状況を把握しながら、何とか飛行機を取り返そうとするプロセスが中心となる。
一番印象的だったのは、やはり家族への最後の言葉が皆「I love you」だった事かもしれない。
ユナイテッド93便はニューアークから、当時私の住んでいたサンフランシスコへ向かう便。
私もこの路線は何度か乗った事がある。
あの乗客の中に、偶然自分がいても不思議は無かった。
いや、私は映画を観ている間中あの客席にいた。
もし私だったら、最後に何を伝えるだろうか、どんな行動を取っただろうか・・・・・
映画の最後は、既に誰もが知っている訳だが、この映画には英雄も悪人もいない。
ただ、とてつもなく邪悪な行為と、それに翻弄されながら正気を保とうとする葛藤、生きようとする当たり前の戦いがあるだけだ。
ポール・グリーングラス監督は、映画作家として、また一人の人間として、この事件に対して多くの「言いたい事」があったと思う。
製作経緯や内容のデリケートさを考えれば、強い主張を盛り込むのは始めから難しかったとは思うが、グリーングラスは自分の意見を封印して、あえてこの映画を事象だけで描いた。
それは結果的に良かったと思う。
9.11から世界は変わってしまった。
あれから早5年の歳月が流れたが、世界はまだ見えない戦争の中にある。
事件当日の数千人の犠牲者やその遺族は勿論だが、直接的な犠牲者以外にも、あの事件はもの凄く多くの人の人生を変えただろう。
9.11が何らかの人生の転機となった人は無数にいると思う。
私が十数年暮らしたアメリカを引き払い、今日本で暮らしているのも、決してあの事件と無縁ではない。
そんな多くの人々にとって、9.11という事象を淡々と描いたこの映画は「9.11とは何だったのか?」を考える検証の機会となるだろう。
答えはいまだ見えない。
だが、この事件は社会的にも個人的にも語り継ぎ、考え続けなければならないのだろうと思う。
やはり普通の映画の様には観られなかったので、評価額は付けられない。
この映画に関して、私が言えることは一つ。
もし商業主義的な嫌悪感を感じて、観るのを迷っている人がいたら、そういう人こそ観るべき映画だと思う。
観終わると、あの日の感情が蘇ってきて、どっと疲れる。
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