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グエムル 漢江の怪物・・・・・評価額1700円
2006年09月03日 (日) | 編集 |
すばらしい。
監督第二作にして、「殺人の追憶」という殿堂級の傑作を物にしたポン・ジュノが、何と「怪獣映画」をやると聞いて以来、観たくてたまらなかった作品だが、今日観て確信した。
ポン・ジュノは、韓国は勿論、現在世界の映画界において、最高の才能の一人である。
この人の映画に「娯楽だから」「社会派だから」というエクスキューズは無い。
時代性のある骨太のプロット、様々な比喩表現を駆使した高い芸術性を持ちながら、完璧に面白い。

2000年。 
漢江上流の米軍基地から、劇薬ホルムアルデヒドが垂れ流されるという事件が発生。
ソウルの中心を流れる大河漢江は汚染される。
6年後、漢江の河川敷で売店を営むパク・ヒボン(ピョン・ヒボン)とその息子カンドゥ(ソン・ガンホ)は、今日も行楽客のためにビールを出したり、スルメを焼いたりする変わり映えのしない毎日を送っている。
すると突然、彼らの前に魚に似た正体不明の巨大生物が出現、人々を襲い始める。
カンドゥは娘のヒョンソを連れて逃げようとするが、一瞬はぐれた瞬間、怪物の長い尾がヒョンソに巻き付き、そのまま漢江に姿を消してしまう。
怪物の犠牲者の合同葬にはカンドゥの弟で飲んだくれのナミル(パク・ヘイル)、妹でアーチェリー選手のナムジュ(ペ・ドゥナ)もやって来た。
ところがそこに政府の役人たちが踏み込み、怪物に接触したカンドゥ一家は、未知のウィルスに感染した疑いで隔離されてしまう。
その夜、カンドゥの携帯電話が鳴る。
電話の向こうから聞こえてくるのは、死んだはずのヒョンソの声だ。
「お父さん、助けて。私は今、大きな排水溝の中・・・」


冒頭の米軍基地のエピソードから、六年後の怪物の出現、少女の拉致にいたるまでの展開は正に圧巻である。
短い時間で状況をしっかりと説明しながら、キャラクターの性格を描写し、尚且つ今までに観た事も無いような怪物スペクタクルを放り込む。
市井の人々の生活に、突如として宇宙からの侵略者が出現する、スピルバーグの「宇宙戦争」を思わせる展開だが、このあたりの演出力は実際スピルバーグ級だ。
観客は、漢江の河川敷で怪物に襲われた人々と同じように、全く無防備のままパニックに襲われる。
そしてヒョンソからの電話によって生存が知らされると、今度は怪物を追う一家の前に、韓国政府やアメリカという予期せぬ壁が立ちふさがり、物語のテーマ性と重層的な構造が明らかになる。

日本の大怪獣「ゴジラ」が米軍の水爆実験により、ケロイドの皮膚を持つ巨大怪獣として生まれ、アメリカの核に対する強い批判をテーマとして持っていたように、今回も原因は米軍である。
2000年に実際に起こったホルムアルデヒドの垂れ流し事件にヒントを得て製作された本作は、怪物自体が米軍とアメリカに対する強い批判のメタファーの性格を持つ。
一部にはその事をもって、この作品を「反米映画」と括る向きもあるようだが、ポン・ジュノの批判精神の矛先は、何もアメリカだけに限らない。
限られた情報に基づくいい加減な報道で、市民がウィルスパニックに陥る状況は、SARS騒動を思わせるし、娘を怪物に拉致された家族の訴えに政府が耳を貸さず、何もしてくれないという状況は北朝鮮による拉致と韓国政府の無策ぶりを思わせる。
基本的にポンジュノの批判は、アメリカ、自国政府、マスコミと、現在韓国における「権力」全てに向けられているように思える。

勿論、モンスター映画で声高に反権力を唱えるような野暮な事はしない。
ポン・ジュノのデビュー作、「ほえる犬は噛まない」以来の、皮肉のスパイスが効いたシニカルな笑いは今回も健在。
カンドゥ一家のユーモラスなキャラクター付けもあって、ナンセンスなギャグを通して現代韓国の歪みが浮かび上がる。
風刺映画の王道的な手法である。
もっともアメリカやWHOが、怪物騒動に無茶な介入をするあたりは、狙いとしてはブラックジョークなのだろうが、映画全体のトーンと今ひとつマッチしておらず、単に荒っぽい展開に見えてしまうのが惜しい。
また同じように狙いは判るがやや饒舌過ぎる音楽も、もうちょっと抑えた方が味わい深くなったと思う。

ポン・ジュノ映画の常連俳優陣は、今回も味ありすぎのソン・ガンホを筆頭に、皆役に嵌っているが、やはり主役は「怪物」だ。
ピーター・ジャクソンが設立したニュージーランドWETAの手による怪物は、魚類とも両生類ともつかない独特のおぞましい造形で、日本的な「怪獣」というよりはハリウッド映画のモンスターに近い。
尻尾を使って橋脚にぶら下がる行動や、両生類のような動きは「レリック」「ミミック」を思わせるが、絶妙なのがサイズ。
小型のトラックくらいの体は大きすぎず小さすぎず、人間には十分恐ろしいが、ちょっと頑張れば倒せそうなサイズである。
生物を超越して、殆んど神のごとき存在となってしまった日本の「怪獣」は、もはや市井の人々の視線に降りてくるのは不可能な存在だが、この怪物は人間によって生み出され、人間と対決するという存在意義を強くにじませる。

7,80年代の韓国の高度成長期は、嘗て「漢江の奇跡」と呼ばれた。
豊かさを象徴する奇跡の河から、今度は得体の知れない怪物が現れる。
淀んだ色の都会の大河は、煌びやかな都市の裏に人知れず消えていった様々な矛盾や闇が沈殿する異界だ。
漢江のナナシの怪物もまた、現代韓国の生み出した不のメタファーなのかもしれない。
庶民であるカンドゥ一家は、そんな怪物に翻弄され、痛ましい犠牲を出しながらも強かに生きてゆく。
彼らの人生もまた、河の流れの様に留まる事は無い。
さてさて、漢江よりももっと沈殿物の多そうな、東京の隅田川あたりには、一体何が潜んでいるのやら。

今回は劇中で象徴的に使われる韓国ビールの「ハイト」でシメを。
韓国のビールは、全体にアメリカのビールと日本のビールの中間的な味わいで、適度なコクとすっきりした喉越しが魅力。
ビールの味はそれぞれの国の気候によってずい分と方向性が違うのだが、これも夏のソウルあたりで飲むと一番旨いのだろう。
日本で飲むならどっちかと言うと秋のイメージかな。


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