fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
アタゴオルは猫の森・・・・・評価額900円
2006年10月10日 (火) | 編集 |
90分のPVを観させられているような作品。
冒頭いきなりミュージカル(?)仕立てのステージシーンから始まるのだが、おなじみ「アタゴオル」の登場人物より先に画面に登場するのは、MC役の石井竜也猫
そう、この作品の音楽監督を務める石井竜也まんまの姿の、全くアタゴオルらしくない猫だ。
この作品の作り手に問いたい。
貴方達は、いったい誰に向けてこの作品を作ったのか?

人間と猫が共に暮らす、不思議の国アタゴオル。
デブ猫ヒデヨシ(山寺宏一)は、湖に沈んだ奇妙な箱を開けてしまうが、それは古代の植物の女王ピレア(夏木マリ)を封印した物だった。
封印をとかれたピレアは、人間や猫を植物化してアタゴオルを支配しようとする。
その時、ヒデヨシの前に輝彦宮(小桜エツ子)と名乗るマメのような小さな生き物が現れる・・・


原作は言うまでもなく、人間と猫が共に暮らす「アタゴオル」を舞台にしたますむらひろしのベストセラー漫画。
今回は、その外伝「ギルドマ」を映画化している。
恐らくこの作品を観に来るお客さんの殆んどは、原作のファンか、少なくともますむら氏の世界に魅力を感じている人たちだろう。
そして、作品のオープニングは、ファンタジー世界へ観客を誘う、一番重要なシークエンスであるはずだ。
ところがこの作品は、アタゴオルとは全く関係ない、限りなく現実の石井竜也で始まってしまう。(なにしろこの人、監督よりクレジットが上なのだ)

正直、私はこのオープニングに引いた。
何で石井竜也?せっかく大物ミュージシャンを招聘したのだから、本編にも出して元を取ろうとでも言うのだろうか?
それとも、音楽監督自らが出演を希望されたのだろうか?
いやいや、自身でも映画監督の経験のある人が、こんな乱暴な事を望むとは思えない。
別に彼が音楽監督なのが問題なのではない。
ぶっちゃけ久々に名前を聞いた人だけど、ネームバリューは確かにあるから映画の宣伝に使うのも良いだろう。
ただ、なぜ本編にまで持ってこなければいけないのか?
「アタゴオル」は盛りの過ぎたミュージシャンに頼らなければ、中味が成立しない程度の話なのか?
わざわざ多くのファンのいる原作をぶち壊してまで、このような作り方をする意図が理解できない。
「ハリー・ポッター」の映画音楽をマイケル・ジャクソンが担当し、本編にマイケル・ジャクソン本人の役で登場したら、ファンはどう思うだろうか?

「銀河鉄道の夜」の様な例外はあるが、どうも大物ミュージシャンとアニメは相性が悪い。
10年ほど前に映画化された「エルマーの冒険」では音楽に小室哲也木根尚登を起用して、妙に音楽が前面にでた喧しい作品になってしまっていた。
今回もしかり。
なぜかこのアタゴオルはミュージカル仕立てで、しかも音楽シーンが物語全体の流れを切ってしまう。
映像的にも、西久保瑞穂監督の演出は黒バックにキャラクターだけがいて、そこにエフェクトの光が舞うという様な、PVチックな画を多用しているので、アクションシーンなど、1カット1カットは綺麗でも、つながりになると位置関係が判らず、画の連続性が無くて躍動感に繋がらない。
あまり原作へのリスペクトを感じないにもかかわらず、キャラクターや世界観の説明は「原作読んで知ってるでしょ」とばかりに端折られてしまっている事もあり、お話自体は、原作の流れから極端に離れた物ではないのに、ぶつ切りのシチュエーションを繋いで作ってあるという印象になってしまっている。
当然ながら物語に織り込まれたテーマ性も、上っ面を撫でただけで終わってしまっている。
主人公のヒデヨシなんて、原作を読んでない人にとってはやたらと騒がしいだけのキャラクターにしか見えないだろう。
私などは知っていても「紅まぐろ紅まぐろと喧しい!」と叱りつけたくなってしまった(笑
後半、輝彦宮と徐々に心を通わせるあたりも、その「徐々に」の描写が決定的に不足しているので、突然性格が変わった様に見えてしまう。
まあ、原作読んでいればある程度脳内補完もできるだろうが、それならもっと原作をリスペクトしろよと言いたくなってしまうのだ。

では、映像的にお話の弱さを補うほどの物をみせてくれるかというとそうでもない。
今回の作品は、あのアタゴオル世界とキャラクターを3DCGで描くというのが大きな特徴であり、またウリだ。
私は同業者として、がんばって画を作っているなあとは思うものの、正直言って全面的に素晴しいとは思えない。
フルCGは、照明と質感の決め込みが難しい。
これが決まっていないと、同じものを撮ってもシーンによってまるで別の質感に見えてしまったり、別の手法で作っているのかと思うくらい違って見えてしまう事がある。
この作品では、日中のアタゴオルのシーンは、わりと原作のイメージに近いイラスト調の質感(彩度とコントラストが高過ぎの気もするが)で統一されているものの、夜のシーン、女王の宮殿のシーンなどでそれぞれ見た目の質感がかなり異なってしまっている。
もっとも夜の一部シーンの極端なグロー&ガウス処理など、明らかに狙ってやっている所もあるが、画に落ち着きが無くてあまり効果的とは思えない。
しっかりと画の決め込みが出来ていれば、こういう小手先の効果はあまり入れる必要は無いのだ。
どうも、監督の画作りの考え方が、フル3Dというよりは中途半端にセルベースの2Dアニメ的な気がする。

同様にキャラクターデザインや美術も、原作に忠実な部分と大きく違う部分で統一感が無いのが気になる。
特にピレアや彼女の宮殿などのデザインは、殆んどオリジナルデザインと言って良いほど原作と違うが、どちらかというとますむらひろしというよりは松本零士みたいで、おかげで魂を食べる描写まで「銀河鉄道999」「喰命聖女」というエピソードを連想してしまった。
一部にハッとするような鮮烈な画もあるだけに、全体の印象として、「これがアタゴオルの世界だ」という基本のイメージを構築できていないのが勿体無い。

全体に「アタゴオルは猫の森」は、関わった人々の思惑が違いすぎて、尚且つそれぞれの考えをすり合わせられないうちに制作してしまった様な印象を受けた。
物語的にも、映像的にも、また企画自体も、最終的にこんな作品にしたいというビジョンが無く、中途半端に原作に忠実で、中途半端に違うというなんともチグハグな印象になってしまった。
映画的には、舞台が固定される後半はやや持ち直すが、通しで観れば原作のダイジェスト以上の物にはなってない。
作り方によっては、新しいタイプのCGアニメになる可能性があっただけに、この仕上がりは少し残念だ。

さて今回は、原作者ますむらひろしの出身地、山形から「東北泉純米吟醸 瑠璃色の海」をチョイス。
酒米雄町を精米歩合45%と大吟醸並に磨き上げた、ちょっと甘口でスッキリしたお酒。
ますむらひろしはお隣岩手県出身の宮沢賢治の漫画化でも知られる人だが、この澄んだお酒からはイーハトーブの春の香りがする。
映画にもこのくらいしっかりした輪郭があれば良かったのに。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね
人気ブログ検索 <br>- ブログフリーク
こちらもクリック!

も一回お願い!

高橋酒造 東北泉 純米吟醸 瑠璃色の海720ml
高橋酒造 東北泉 純米吟醸 瑠璃色の海720ml


原作です


ますむら物ではこれは傑作









スポンサーサイト