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ワールド・トレード・センター
2006年10月14日 (土) | 編集 |
「ワールド・トレード・センター」というそのものズバリのタイトルながら、予告編を観た時「ユナイテッド93」の予告の様なショックは感じなかった。
ニコラス・ケイジというハリウッドスターを前面に出し、典型的な感動物な雰囲気も、この作品をいかにも「作り物」に見せていたからだろう。
しかし、映画が始まって、炎上するWTCが映し出されると、やはり生々しくあの日の感覚が蘇ってきた。
警官たちが、熱さに耐えかねた人が落下するのを目撃するカットでは、思わず目を背けた。
血まみれの人達が生気の無い顔で呆然と歩き、警官たちも状況を把握できないまま救助に入り、やがてビルが倒壊するまでの数十分間は、正直言ってやはりちょっときつかった。

この映画は、9.11のあの日、炎上するWTCに救助に入って倒壊に巻き込まれ、重症を負いながらも奇跡的に助け出された二人の警官と、二人を待ち続けた彼らの家族の物語だ。
同じ日に起こった事を描きながら、オリバー・ストーンの視点は「ユナイテッド93」のポール・グリーングラスとは全く異なる。
グリングラスが、作家としての視点を慎重に消し去り、登場人物への感情移入すらさせないほど、徹底的に「現象」を描いたのに対して、ストーンの視点はあの時、あの場所にいた「個人」をフィーチャーする。
グリーングラスとは対照的に、徹底的に「個」に感情移入させることで、9.11のごく一部を切り取る事に成功している。
手法は違えど、どちらの作品も9.11そのものを俯瞰するのは、意図的に避けている。
それは多分、まだ早すぎるのだ。

ビルが倒壊し、主人公である二人の警官、ジョン・マクローリン(ニコラス・ケイジ)ウィル・ヒメノ(マイケル・ペーニャ)が瓦礫の下に生き埋めになると、映画はある意味で「9.11物」である事を離れる。
スクリーンに映し出されるのは、暗闇の中での二人の生への渇望と、情報錯綜する中で、彼らの帰りを待ち続けるジョンの妻ドナ(マリア・ベロ)とウィルの妻アリソン(マギー・ギレンホール)の姿が殆んどで、実際に描かれている事は普通のディザスタームービーと変わらない。
タイトルを知らずに、ここから映画を観たら、どこかの大地震か何かを描いた作品だと思うかもしれない。
とは言っても、カメラが地上へ出て、倒壊したグランドゼロの瓦礫の山の恐ろしくリアルなセットを映し出すと、やはりこれが人間の起こした邪悪な行為の産物である事を、否応無く思い出さざるをえないのだが。

暗闇の中、動く事も出来ず表情すら殆んど写らない中で、時に気丈で時に人間の弱さをさらけ出すジョンを演じたニコラス・ケイジは「ロード・オブ・ウォー」 に続いて好演。
この人、芝居は相変わらずワンパターンだが、歳をとるにつれて段々と味が出てきた。
回想シーンでつづられる家族との平和な日々の、仏頂面の不器用そうな表情と、瓦礫の下での絶望と苦痛と希望の感情を露にした表情(殆んど見えないのだが、なぜか見える様な気がする)のコントラストが印象的だ。
マイケル・ペーニャは「クラッシュ」で、「透明マントの奇跡」に救われるダニエル役が印象的だったが、ここでもしっかりした存在感を見せる。
この作品、男二人は全く身動きの取れない状況で進んでゆくので、いわば「静」のドラマ。「動」の部分は、彼らの妻たちが担当する。
二人の妻、ドナとアリソンは、何となく夫たちと性格が似ているのが面白い。
やはり似た物夫婦って言うのは実際多いのかもしれない。
ドナはどちらかというと、内面の葛藤を必死に抑え、冷静に振舞おうとする。
演じるのは「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のマリア・ベロ。
私の中ではこの作品のベストアクトは彼女である。
ERのアンナ先生も素晴しい役者になった。
対して、マギー・ギレンホール演じるアリソンは、感情を表にだして自分から動くタイプ。
いかにもラテン系の男性が惚れそうなタイプで、妙にリアルだった。

この作品は、あの9.11の日に起こった小さな奇跡を描いた小品である。
あの日、人類はパンドラの箱が開くのを目撃した。
しかし、あらゆる邪悪と絶望がNYから電波とネットワークに乗って地球を覆ってゆくのを目の当たりにした後で、グランドゼロの瓦礫の下に、小さな善意と希望を観る。
人間は、とてつもなく恐ろしい事も、信じられないくらい美しい事も同時に出来るのだ。
ジョンとウィルが助け出された時の、大きな歓喜。
勿論、この歓喜の外に、何千という絶望と悲しみがあった事もまた事実であり、オリバー・ストーンは声高ではなく、静かにしかしはっきりとメンションする事を忘れない。
内容のセンシティブさ故に、強い主張を織り込めず、やや中途半端ではあるものの、結果的に抑制の効いた演出は、近年の彼の作品の中ではベストだろう。

この映画の後半には、事件を知ってNYに駆けつけた多くの善意の人々が登場する。
現場の人々にとって地獄に仏とは、正にこのことだっただろう。
今回は、その名も「ニューヨーク」で彼らにささやかに乾杯。
バーボン、ライムジュースをそれぞれ45ml、15ml、グレナデンシロップを1tspをシェイクし、グラスに注ぐ。
朝焼けのNYの様に美しく、スッキリしたカクテルだ。

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