2006年10月22日 (日) | 編集 |
「SNAKES ON A PLANE」という、もの凄く判りやすく、且つB級臭いタイトルが受けて、本国では公開のだいぶ前からネット上で「祭り」状態だったパニックホラー。
邦題は残念ながら「スネーク・フライト」と、あまり面白みの無い物に落ち着いてしまったが、このくらい「待ち望まれたB級映画」(笑)も珍しい。
監督は「デッドコースター」のB級野郎、デビッド・R・エリス。
そして主演はB級魂を持つ大スター、サミュエル・L・ジャクソンだ!
ハワイのオアフ島で、ギャングのボスの殺人を目撃してしまった青年ショーン(ネイサン・フィリップス)は、ギャングから命を狙われる。
FBI捜査官のネヴィル・フリン(サミュエル・L・ジャクソン)は、裁判で証人となってもらうために、LAにショーンを連れてゆく事を決意。
二人は飛行機に乗り込むのだが、証言される前にショーンを暗殺しようとするギャングは、大量の毒蛇を時限装置で機内に放ち、飛行機を墜落させようとするのだが・・・
時限装置で蛇を放すくらいなら、始めから爆弾で機体ごと爆破すりゃ良いじゃん、という突っ込みはとりあえず無し。
「駅馬車」で「何でインディアンは馬を撃たない?」というのと同じ事だ。
この映画のプロットは、70年代のパニック映画ブームの頃に、様々なシチュエーションで空の危機を描いて人気だった「エアポート」シリーズに、アニマルホラーをミックスした物。
言ってみれば「エアポート2006/毒蛇軍団の襲撃」だ。
レトロ感覚を刺激する、二つのB級テイストの融合に、ファンは大いなるB級、いやC級映画を期待したのだろうが、完成した映画は予想外にしっかりと作られており、むしろ「A-」くらいの風格がある。
作り手が、この手の物語を上手く作るコツを知っているのだ。
本当のB級映画にありがちな様に、物語があっちこっちへ飛ばず、基本的に飛行機の機内だけの物語に絞ったのがまずポイント。
下手糞な映画だと、物語を大きく見せようと、本筋以外の傍流を並行して描こうとして、かえって貧乏臭くなってしまう。
もう一つは、運命共同体である乗客のキャラクターをしっかりと役割付けして、それぞれに必要な伏線を丁寧に描く事。
この点もまあ合格。
特に客室乗務員四人の描き分けなんて、非常に判りやすく、しかも無理が無い。
また主演のサミュエル・L・ジャクソンが黒人で、ヒロイン役の客室乗務員クレアが白人。
悪役のギャングのボスがアジア系なので、乗客の中にもアジア人の英雄的なキャラクターを配してバランスをとるなど、「政治的に正しい」ハリウッド映画としてもそつが無い。
もっとも、本国のネットで盛り上げていたB級ファンたちは、もっと「どうしょうも無いけど、どこか愛すべき映画」を期待していたのかもしれない。
実のところ私もその口で、「う~む、蛇のCGの出来が良すぎる!これはもっとゴムっぽくなきゃ!」とか観ながら思っていた(笑
出来が良くて文句を言われる映画というのも珍しい。
勿論本当に欠点もある。
本作は二階席のあるボーイング747が舞台となっていて、後半この機体の構造が効果的に使われている。
しかし、飛行機が広すぎて、構造を俯瞰した説明の描写が無いために、位置関係が非常に判り難い。
どこでパニックが起こって、どこへ逃げて、どこが壊れて、どこへ修理しに行くのかが、観客にすんなりと入ってこないので、恐怖感やサスペンスを阻害してしまっている。
747に何度も乗ったことのある人なら何となく判るが、そうでない人は混乱するだろう。
最近では「ポセイドン」で、船の見取り図で脱出経路を確認するという、とても判りやすい説明カットがあったが、この作品でも飛行機の構造と乗客の配置を見せるカットが欲しかった。
最近どうも位置関係の説明が下手で、盛り上がりに欠く作品が多い気がする。
説明カットというのは作り手からすると野暮な物だが、物語によってはどうしても必要な物でもあるのだ。
もっとも、この作品の場合は、あんまりしっかりと見せちゃうと、「蛇があんなところから入ってくる訳無いじゃん」とばれちゃうので、誤魔化した部分もあるとは思うけど。
また登場人物の描写も、セオリー通りとは言うものの、人数が多くて一人一人の描写自体は短い。
そのためドラマチックに成りそうなキャラクターでも、活躍の場を殆んど与えられなかったり、殺され役がわりとどうでも良いキャラクターばっかりだったり、全体にテイストがあっさりとし過ぎている感がある。
よく言えばくどくなくてすっきりしてるのだが、悪く言えば一瞬しか頭に残らない。
まあこの手の映画はそれで良いという気もするが。
「スネーク・フライト」は70年代のB級映画をよく理解した作り手たちが、しっかりと丁寧に作り上げた出来の良い娯楽作品だ。
本当のバカ映画を期待した人には、ある意味で期待ハズレかもしれないが、アニマルホラーとしてだけではなく、航空パニック物としても見せ場はタップリで、週末の夜に見るには調度良い作品だった。
残酷度もそこそこ、バカ度もそこそこ、いたって正しいハリウッド映画である。
今回は蛇だから、ハブ酒・・・ではなくて毒蛇にちなんでカクテルの「イエロー・ラットラー」をチョイス。
「黄色いガラガラ蛇」という名前のわりには、それほど刺激的ではなく、観賞後に喉を潤すのに最適。
ドライジン、スィート・ベルモット、ドライ・ベルモット、オレンジジュースを1:1:1:1でシェイク。
グラスに注いでパール・オニオンを加えて完成。
レシピ本によっては2:1:1:1の割合になっている物もあるが、個人的にはドライジンが強すぎない方がバランスが良いと思う。
× × × × ×
ところで、唐突にご挨拶。
当ブログは今日でちょうど開設一周年を迎えました。
本来自分の勉強の為に作品分析として始めたブログですが、今では予想外に沢山の人達が読みに来てくれるようになりました。
今後は、読んでいただいている事を意識しつつ、よりよい内容に進化させていこうと思っています。
今後とも御愛顧をお願いいたします。
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エアポートシリーズのBOXセット。
第一作「大空港」から「エアポート80」まで。
邦題は残念ながら「スネーク・フライト」と、あまり面白みの無い物に落ち着いてしまったが、このくらい「待ち望まれたB級映画」(笑)も珍しい。
監督は「デッドコースター」のB級野郎、デビッド・R・エリス。
そして主演はB級魂を持つ大スター、サミュエル・L・ジャクソンだ!
ハワイのオアフ島で、ギャングのボスの殺人を目撃してしまった青年ショーン(ネイサン・フィリップス)は、ギャングから命を狙われる。
FBI捜査官のネヴィル・フリン(サミュエル・L・ジャクソン)は、裁判で証人となってもらうために、LAにショーンを連れてゆく事を決意。
二人は飛行機に乗り込むのだが、証言される前にショーンを暗殺しようとするギャングは、大量の毒蛇を時限装置で機内に放ち、飛行機を墜落させようとするのだが・・・
時限装置で蛇を放すくらいなら、始めから爆弾で機体ごと爆破すりゃ良いじゃん、という突っ込みはとりあえず無し。
「駅馬車」で「何でインディアンは馬を撃たない?」というのと同じ事だ。
この映画のプロットは、70年代のパニック映画ブームの頃に、様々なシチュエーションで空の危機を描いて人気だった「エアポート」シリーズに、アニマルホラーをミックスした物。
言ってみれば「エアポート2006/毒蛇軍団の襲撃」だ。
レトロ感覚を刺激する、二つのB級テイストの融合に、ファンは大いなるB級、いやC級映画を期待したのだろうが、完成した映画は予想外にしっかりと作られており、むしろ「A-」くらいの風格がある。
作り手が、この手の物語を上手く作るコツを知っているのだ。
本当のB級映画にありがちな様に、物語があっちこっちへ飛ばず、基本的に飛行機の機内だけの物語に絞ったのがまずポイント。
下手糞な映画だと、物語を大きく見せようと、本筋以外の傍流を並行して描こうとして、かえって貧乏臭くなってしまう。
もう一つは、運命共同体である乗客のキャラクターをしっかりと役割付けして、それぞれに必要な伏線を丁寧に描く事。
この点もまあ合格。
特に客室乗務員四人の描き分けなんて、非常に判りやすく、しかも無理が無い。
また主演のサミュエル・L・ジャクソンが黒人で、ヒロイン役の客室乗務員クレアが白人。
悪役のギャングのボスがアジア系なので、乗客の中にもアジア人の英雄的なキャラクターを配してバランスをとるなど、「政治的に正しい」ハリウッド映画としてもそつが無い。
もっとも、本国のネットで盛り上げていたB級ファンたちは、もっと「どうしょうも無いけど、どこか愛すべき映画」を期待していたのかもしれない。
実のところ私もその口で、「う~む、蛇のCGの出来が良すぎる!これはもっとゴムっぽくなきゃ!」とか観ながら思っていた(笑
出来が良くて文句を言われる映画というのも珍しい。
勿論本当に欠点もある。
本作は二階席のあるボーイング747が舞台となっていて、後半この機体の構造が効果的に使われている。
しかし、飛行機が広すぎて、構造を俯瞰した説明の描写が無いために、位置関係が非常に判り難い。
どこでパニックが起こって、どこへ逃げて、どこが壊れて、どこへ修理しに行くのかが、観客にすんなりと入ってこないので、恐怖感やサスペンスを阻害してしまっている。
747に何度も乗ったことのある人なら何となく判るが、そうでない人は混乱するだろう。
最近では「ポセイドン」で、船の見取り図で脱出経路を確認するという、とても判りやすい説明カットがあったが、この作品でも飛行機の構造と乗客の配置を見せるカットが欲しかった。
最近どうも位置関係の説明が下手で、盛り上がりに欠く作品が多い気がする。
説明カットというのは作り手からすると野暮な物だが、物語によってはどうしても必要な物でもあるのだ。
もっとも、この作品の場合は、あんまりしっかりと見せちゃうと、「蛇があんなところから入ってくる訳無いじゃん」とばれちゃうので、誤魔化した部分もあるとは思うけど。
また登場人物の描写も、セオリー通りとは言うものの、人数が多くて一人一人の描写自体は短い。
そのためドラマチックに成りそうなキャラクターでも、活躍の場を殆んど与えられなかったり、殺され役がわりとどうでも良いキャラクターばっかりだったり、全体にテイストがあっさりとし過ぎている感がある。
よく言えばくどくなくてすっきりしてるのだが、悪く言えば一瞬しか頭に残らない。
まあこの手の映画はそれで良いという気もするが。
「スネーク・フライト」は70年代のB級映画をよく理解した作り手たちが、しっかりと丁寧に作り上げた出来の良い娯楽作品だ。
本当のバカ映画を期待した人には、ある意味で期待ハズレかもしれないが、アニマルホラーとしてだけではなく、航空パニック物としても見せ場はタップリで、週末の夜に見るには調度良い作品だった。
残酷度もそこそこ、バカ度もそこそこ、いたって正しいハリウッド映画である。
今回は蛇だから、ハブ酒・・・ではなくて毒蛇にちなんでカクテルの「イエロー・ラットラー」をチョイス。
「黄色いガラガラ蛇」という名前のわりには、それほど刺激的ではなく、観賞後に喉を潤すのに最適。
ドライジン、スィート・ベルモット、ドライ・ベルモット、オレンジジュースを1:1:1:1でシェイク。
グラスに注いでパール・オニオンを加えて完成。
レシピ本によっては2:1:1:1の割合になっている物もあるが、個人的にはドライジンが強すぎない方がバランスが良いと思う。
× × × × ×
ところで、唐突にご挨拶。
当ブログは今日でちょうど開設一周年を迎えました。
本来自分の勉強の為に作品分析として始めたブログですが、今では予想外に沢山の人達が読みに来てくれるようになりました。
今後は、読んでいただいている事を意識しつつ、よりよい内容に進化させていこうと思っています。
今後とも御愛顧をお願いいたします。

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エアポートシリーズのBOXセット。
第一作「大空港」から「エアポート80」まで。
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