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硫黄島からの手紙 / アメリカの目線
2006年12月25日 (月) | 編集 |
サンフランシスコの、エンバカデロセンターシネマという小さなアートシアターで、「硫黄島からの手紙」を再鑑賞。
一本の映画を二度観るのは、今年初めてである。

最初の記事はこちら

劇場はほぼ満席。映画の性格上、やはり年配者の姿が目立つ。
物が物だけに、観客の反応は判り難いが、米兵が捕虜を射殺するシーンでは、「Oh,No…」といった声にならない呟きが場内を満たす。
アメリカ人にとって、軍は建国以来もっとも信頼を置く政府組織。
失敗した戦争であるベトナム以降ならともかく、正義の戦争という神話が生きていた第二次世界大戦でのこのシーンは、彼らにとってかなりショッキングなのだ。

この日は映画館で、知人の映画資料館スタッフ(既に退職しているそうだが)に会ったので、映画が終わった後、カフェでこの映画について二人で語った。
インテリでリベラル派に属するアメリカ人の観方として、ちょっと面白かったので紹介しよう。

私:どうだった?君は「父親たちの星条旗」には不満があると言っていたが。

彼:そうだ、しかしこの映画を観て、少し考えが変わった。これは君の言うとおり、二本で一つの映画だ。ビジネスだから仕方が無いけど、第一部、第二部と連続上映してくれた方が意図が伝わる。私は「父親たちの星条旗」を観た時に、テーマは伝わってくるが、未完成で満足できないと思った。

私:二本作ると割り切っているから、1本だけでは良くわからない部分がある。今まで二部、三部構成で一つのテーマを語った映画はあったけど、視点を変えるというのは初めてではないか?縦ではなく、横に広げるというか。

彼:そうかもしれない。これは「ラショウモンケース 」を、映画のロジックに取り入れたものかもしれないね。

私:ああ、なるほど。一つの物事を異なる視点から描いた2本の映画を、さらに異なる視点で我々が観ている。私は交錯した視線が、最終的に戦争の本質を浮かび上がらせたと思っている。
確かに「羅生門」だ。アメリカ人にとって、単品としてのこの映画はどんな風に写るのだろう。


彼:う~ん、正直いって私は、観ている間これがクリント・イーストウッドの映画だという事を忘れていた。非常に良く出来た日本映画だ。ただ、思い返して見ると今まで観た日本の戦争映画とも違うんだよ。一言で言えば、鏡のような映画かな。

私:鏡?

彼:つまり、この映画はすこし特殊だ。それは戦争映画ではあるけど、描こうとしているのが何人かの日本人の内面だけだという事。戦闘シーンも、悲劇的な死も、全て彼らの内面を描くためにある。私たちアメリカ人は、だんだんとこの素晴らしい日本の兵士たちに感情移入してゆく。そして、例のあのシーン(捕虜射殺のシーンらしい)で気づくんだ。「おい、やめろ!彼らは私たちと同じ人間だぞ!」ってね。最初は何者かわからない日本兵たちを観ているつもりだったのが、いつのまにか彼らは違う言葉、違う肌の色をしているだけで、私たち自身だということに気づくんだ。

私:それで鏡か。そういえば日本でも「父親たちの星条旗」の感想で、「第二次大戦中のアメリカの苦悩をはじめて知った」という物が多かったな。程度の違いはあれ、戦争のもたらす物は一緒だと。日本ではアメリカが楽勝したというイメージが強いから。

彼:冗談だろ。まさか君もそう思っちゃいまいね。

私:アメリカ史や社会に関しては、かなり勉強したから、私はそうは思わないけど、やはりイメージって強いと思う。まあそれも含めて、この映画は漠然とした戦争へのイメージを壊ししていると思う。

彼:その通り。硫黄島の戦いだけじゃない。イーストウッドの視点は過去と、現在の両方に向いている。この映画を観た人たちのイラク戦争への認識も変わると思うよ。

私:どういう風に?

彼:単純だけど、ニュースでアメリカ軍が武装勢力を30人殺害と聞いたとしたら、「ああ30人の自分たちと同じ人間が殺されたんだ」と思う想像力が生まれるだろう。マスコミは敵でも味方でも民間人の死には反応するけど、兵士の死は当然と思っている。これは長年の情報操作でもあるんだけどね。

私:私もマスコミや過去の戦争映画は、少なくとも敵の兵士に関しては一つの記号としてみなす事が多かったと思う。記号だから死んでも悲しむ必要は無い。でも、カメラの向こうにある現実は違う。

彼:映画の中で、逃亡する日本兵シミズが、バロン西の読んだ手紙に心を動かされるシーンがあっただろう。彼は「私はアメリカ人を知らない」と言っていたけど、これは観ているアメリカ人の言葉でもある。

私:イーストウッドはテーマを直接的に語るのをあえて避けているけど、ここだけはストレートだった。テーマの核心なんだろうね。

彼:アメリカ人が人間だと知って、戦いとは違う道を選んだシミズは、いまだ敵が人間とは知らないアメリカ人に殺される。非常に複雑な思いを抱かせられた。

私:結局、互いを知る事しか無いという事だろうか。こうしてアメリカ人と日本人が硫黄島の映画を作って、それに関して語り合ってるのも考えてみれば不思議な事だよね。私たちは、栗林が幻視した未来に生きているのかな。


映画談義はしばらく続いたのだが、一応硫黄島関連はここまで。
話した内容を思い出しながら描いているので、正確な会話の再現ではないので、あしからず。
私は二本が一つの作品として機能する事で、観る者の国籍にかかわらず普遍的なメッセージがおくられると考えたが、やはり日米でそれぞれの作品の観かたは違えど、同じような想いを抱く事が判った。
この映画のロジックを「羅生門」に例えるのはなるほどと思った。
日本映画も見慣れた、映画を観るプロの意見であり、一般の観客の意見と必ずしも一致するものではないだろうが、「硫黄島からの手紙」はアメリカ人の心にもしっかりと届いている様だ。

※「ラショウモンケース」=黒澤明監督の「羅生門」を語源とする法律用語。一つの事件を複数の関係者の異なる視点から見る事で、まったく違った本質が浮かび上がる事を言う。

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