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それでもボクはやってない・・・・・評価額1550円
2007年02月27日 (火) | 編集 |
大ヒット作「Shall We ダンス?」が公開されたのが1996年だから、実に11年ぶりの新作となる。
何はともあれ、周防正行が第二の長谷川和彦化しなかったのは喜ばしい。
周防映画といえば、主人公がひょんな事から仏教、相撲、社交ダンスといった未知の世界に飛び込み、観客は主人公の目線を借りて、知っている様で知らないディープな世界の魅力を知るというスタイルで一貫しており、今回もそれは変わらない。
唯一違うのは、主人公が足を踏み入れたのが、「裁判」という出来れば一生係わり合いになりたくない代物だということだ。
周防監督は、日本の司法制度に疑念を感じ、「使命感を感じて撮った」という。
映画作家が映画を撮る理由は色々あるだろうが、「世の中に知られていない現実を知らせる」というのは、十分説得力のある理由だと思う。

フリーターの金子徹平(加瀬亮)は、会社の面接に向かう途中、見ず知らずの女子高生に痴漢したとして逮捕される。
やっていないと否認する徹平だが、4ヶ月もの間拘留され、ついに裁判が始まる。
弁護士の荒川(役所広司)と須藤(瀬戸朝香)は、再現実験を行い、徹平に犯行が不可能だという事を立証しようとするのだが・・・


私は一応男性だけど、昔痴漢にあったことがある。
映画館に通い始めた頃だから、まだ可愛い中学生だった私は、映画館で二度にわたって痴漢にあった(相手はおっさん)。
恐怖と屈辱で声を出す事も出来なかった数分間のことは、忘れようにも忘れられない。
当たり前だが、痴漢は卑劣な犯罪であり、その行為を肯定することは決して出来ない。
だが、だからといって、明確な証拠もなしに、被害者の曖昧な証言だけで有罪にされてはたまったものではない。
だいたい、推定無罪という刑事裁判の大原則に背く。

ところが、日本ではそのありえないことが平気でまかり通っているという。
この国では刑事事件の有罪率は99.9%で、一度起訴されたら有罪が覆るのは1000件に1件。
たとえ事件へのかかわりを否認していたとしても、無罪を勝ち取れるのは100件に2,3件だという。
当然ながら、世界の先進国と呼ばれる国の中でも、異常なほど突出した有罪率である。
なぜ?警察が優秀だからだろうか?
勿論それもあるだろうが、要するに「疑わしきは罰せよ」という、原則とは正反対の裁判が行われているからであり、その根源には司法の独立性が不十分という制度的な問題が横渡る。

実のところ、面白かったつまらなかったという視点で、この映画を語る気にはならない。
勿論退屈はしないし、裁判劇として十分良く出来ていると思う。
ただ、これは邦画には珍しい明確なメッセージ映画であり、観る方にもある種の覚悟というか、メッセージを受け取る姿勢を要求する。
周防正行曰く、痴漢冤罪事件にはこの国の司法制度の矛盾点が凝縮されているという。
なるほど、主人公と国家権力との一年ほどの闘争の中には、警察と検察の馴れ合い、硬直した官僚機構となってしまった裁判所の体質、人権問題として諸外国の人権団体からも批判されている代用監獄の問題など、日本の司法の抱えるさまざまな問題が判り易くならべられている。
また裁判の傍聴オタクなるキャラクターを用意し、劇中の描写で説明が足りない部分は、彼らの会話で説明してしまうなど、普通の映画だったらダサい手法も平気で使う。
ぶっちゃけた話、映画の作りとして決してスマートとは言えないが、この映画の場合「日本の司法制度の矛盾点を暴く事」が第一義的な存在意義なので、これで良いのだろう。
それにしても、映画に描かれる日本の裁判の実態に驚く。
いささかオーバーではと思える描写も、基本的に全て実際の裁判で起こった事だというからなおさらだ。
細かな描写はここでは書かないが、これでは誰かを陥れようと思ったら、痴漢加害者に仕立て上げてしまえば簡単な事ではないか。
警察の立証責任がこんなにいい加減で良いなら、確かに冤罪はなくならないだろう。
いつも思うのだが、なんで取り調べを第三者機関の管理の元、全てビデオ録画しないのだろうか。
これだけでも、取調べの時に言った言わない、やったやってないの不毛な論争を避けることが出来ると思うのだが。

「それでもボクはやってない」は、日本の司法というテーマに興味を感じて観に行った観客には、確実に大きなフィードバックを与えてくれる作品だ。
ラストに小さなカタルシスをもって来て、あくまでも映画を観に来た観客も満足させる上手さを含めて、周防正行の仕事は長いブランクを感じさせない。
私は、この映画は中学校や高校の授業で観せるべきだと思う。
もっとも、国旗・国歌の強制に見られるように、骨抜きにされつつある公教育の場では、この映画のように国家制度に対する批判映画を上映するのは、難しい事なのかもしれないが。
司法・教育の独立性はその国の民度を示す重要な指針であることを、いや諸々の制度を含めて日本はそんなに「立派な国」であるかどうかまで、日本人はもう一度自問すべきではないだろうか。
そう考えてこの映画を観ると、現在日本の一つの姿が見えてくるだろう。
それに日本でも、まもなく米国の陪審員制度に近い「裁判員制度」が始まる。
裁判は、もはや全ての日本人にとって人事ではないのだ。

今回は、見事な復活への賛辞を込めて山口県の地酒「周防豊穣」で語呂合わせを。
酒米は平成元年、伊勢神宮の神田で突如として発見された謎の米、イセヒカリ
いったいなぜ突然新種が現れたのかは、いまだに諸説あり、はっきりしないが、正に神様からの贈り物の様な素晴らしい米である事は、この酒を飲んでみても判る。
周防監督の次回作も豊穣であること、そして11年も待たされない事を祈って(笑

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