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パンズ・ラビリンス・・・・・評価額1750円
2007年03月02日 (金) | 編集 |
うわぁ・・・想像していたのと全然違う。
予告編の印象から、ちょっとダークな「不思議な国のアリス」、あるいはアニメ好きの
ギレルモ・デル・トロならスペイン版の「千と千尋の神隠し」的な物を想像していた。
そして映画が始まってからもしばらくの間は、深い森と苔生した遺跡の風情などに、宮崎アニメ的な世界を感じていたのだが、まさか入り口は「千と千尋」でも出口まで行くと「火垂るの墓」だったとは!
正直なところこれほど凹む、いや切なく残酷な作品だとは想像も出来なかった。
メキシコの異才、ギレルモ・デル・トロの、これは間違いなく最高傑作。
戦争で愛する者、愛する世界を次々と失ってゆく少女が夢見る、理想の世界とはつまり・・・

1944年、フランコ独裁体制下のスペイン。
長く続いた内戦は終結に向かっているが、未だ地方の山岳地帯では戦いが続いている。
戦争で父を失ったオフェーリア(イバナ・バケロ)は、フランコ軍将校であるビダル大尉(セルジ・ロペス)と再婚した母カルメン(アリアドナ・ヒル)と共に、父の任地である最前線の山奥にやって来る。
カルメンはビダルの子を妊娠していたが、オフェーリアは、母を自分の世継ぎを生む機械くらいにしか思っていないビダルを決して父親とは認めない。
屋敷にはオフェーリア親子の世話をするメルセデス(マリベル・ベルドゥ)やファレーロ医師(アレックス・アンゲロ)も出入りしているが、実は彼らはレジスタンスの一員で、ビダルとは敵同士。
ある夜、オフェーリアは森で出会ったナナフシの妖精に導かれて、屋敷の奥の森にあるラビリンスに導かれる。
そこには「パン」と名乗る羊頭の男がいて、オフェーリアこそは遠い昔に悲劇の死を遂げた地底の国の姫の生まれ変わりではないかと言う。
パンはオフェーリアが本当に姫かどうかを確かめるために、三つの使命を与えるのだが・・・


ギレルモ・デル・トロは不思議な映画作家だ。
ハリウッドデビュー作となった「ミミック」以来、「ブレイド2」 「ヘルボーイ」といった作品では、B級オタクテイスト溢れるエンターテイナーぶりを発揮するのに対して、母国語であるスペイン語映画になると、本作や同じスペイン内戦を舞台とした「デビルズ・バックボーン」に見られるように、やたらと文学的な世界を展開する。
もっとも、ハリウッド映画も含めて、そのベースにある耽美的な美意識と異形愛は共通しているのだが。

本作の場合、思春期の少女が想像力の翼を広げ、幻想の世界に入り込むというお話自体は、「不思議の国のアリス」以来の定番であり、特に目新しいものでは無い。
実際、第一の使命を果たすとき、オフェーリアは青緑のドレスに白いエプロンという、アリスを思わせる姿で登場する。
だが、そのコスチュームは直ぐに脱いでしまった上に、泥まみれになってしまい、これがアリス的ファンタジーとは一線を画す物語であることが象徴的に描写される。
彼女が入り込む幻想の世界は、現実とはまた違った意味で悪夢的で禍々しく、上映時間に占める割合はごく短いのだが、世界観のデザインと造形は実に見事で強く印象に残る。
クリーチャーデザインは、ちょっと昔のマットジョージ風でもあり、ガマ怪物、いないないばあ怪物(以上、勝手に命名)と、どことなく東洋的な風情もあってユニークだ。
オフェーリアが幻想の世界に出入りするときに使うのが、出入り口を描くとそこにドアが出来る魔法のチョークというアイディアも、昔某漫画で見たような気がするが、このあたりのセンスはデル・トロのオタク趣味を反映しているのかもしれない。
勿論幻想世界の描写だけでなく、現実世界の陰鬱とした世界観も含め、ビジュアルイメージの作りこみは見事で、今年のオスカーで撮影、美術、メイクアップの三冠を制覇したのも納得の仕上がりだ。

物語は現実世界の戦争と、オフェーリアの抱く幻想の世界とが交互に描かれる。
現実世界では、オフェーリアが一番愛した父は戦死し、冷酷な養父がレジスタンスを狩り立て、妊娠中の母親は病に伏せる。
母親以外で唯一オフェーリアが心を許すメルセデスは、実はレジスタンスのスパイでオフェーリアもその正体を知るが、黙っている事を約束する。
フェアリーテイルの世界は、過酷な現実に疲れ切ったオフェーリアが逃げ込んだ先。
現実の世界が彼女を追い詰めれば追い詰めるほど、幻想の世界は力を持って広がり、オフェーリアの精神を取り込んでゆく。
いや、正確には逃げたのではなく、そこは彼女が彼女の世界を守るために、戦う事の出来る場所なのだ。
故に、この世界自体はオフェーリアの望む世界ではなく、そこへ行くまでの試練の場となっている。

大人たちが森で戦っている間、オフェーリアもまた戦っている。
幻想の世界での出来事は、大人たちの世界とは一見関係なさそうだが、そこもまた現実が生み出した世界であり、無関係ではいられない。
彼女自身最初気づいていないのだが、実は自分自身を守るため、妊娠して体調の優れないお母さんを回復させるため、嫌いな養父の子だけども母の胎内に抱かれた弟に愛を与えるため、オフェーリアは怪物たちの待つ世界で試練を受け、マンドレイクの魔法に自らの血を与える。
しかし、お母さんが魔法を拒絶し、現実がまたも愛する者を奪っていった時、物語の結末とオフェーリアの運命は決まったのかもしれない。
現実から生まれた幻想の世界が、現実に拒絶された時、オフェーリアに残された唯一の道は、幻想の世界で望みを叶える事。
しかし、彼女に課された最後の試練とは・・・

映画のラストは、深い。
果たして、これは悲劇なのか、それともオフェーリアの視点からはハッピーエンドなのか、観る者の心の奥底に重い余韻を残して物語は幕を閉じる。
秋の日本公開まではだいぶ間があるので、今回核心部分のネタバレは避けたが、秋にもう一度観て、改めてディープに語ってみたい作品である。
ファンタジーの装いではあるが、子供が巻き込まれる凄惨な戦争映画でもある。
大人でも目を背けたくなる描写もあり、幼い子供に観せたらトラウマ化必至の作品なので注意。
基本的には大人のための映画だ。

今回は血のように濃い、スペインの赤ワイン「ヴィーニャス・デ・ガイン」の2003年をチョイス。
スペイン有数のワイン産地リオハの名品。
今まさにこのワインを飲みながらこの文章を書いているが、ロバート・パーカーが93ポイントを付けるのも納得の仕上がりだ。
パーカーほど詩的な表現力は持ち合わせていないが、オフェーリアの幻想のような繊細さと、午前十一時の太陽のような陽気さを併せ持つ、映画に劣らぬ名作だと言っておこう。

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ヴィーニャス・デ・ガイン


スペイン内戦を舞台にした異色作。本作の源流か。


ハリウッド進出作は、ゴキブリホラー。虫への偏愛ぶりは本作でも健在。


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