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ブラックブック・・・・・評価額1600円
2007年04月03日 (火) | 編集 |
ポール・バーホーベン渾身の力作。
「四番目の男」以来、実に23年ぶりに故郷オランダでメガホンを取った本作は、自身の名を世界に知らしめた傑作「女王陛下の戦士」と同じ、第二次大戦下のオランダを舞台としたサスペンス大作だ。
原点に回帰したバーホーベンの演出は、巨匠の風格すら漂う。

第二次大戦末期のオランダ。
隠れ家に住むユダヤ人のラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、国外に逃がすというレジスタンスを名乗る男に騙され、ドイツ軍の待ち伏せで家族全員を射殺されてしまう。
抗独レジスタンスのリーダー、カイパース(デレク・デ・リント)に身を寄せたラヘルは、エリスと名を変えてレジスタンス活動に身を投じる。
エリスはレジスタンスの勇士アッカーマンス(トム・ホフマン)と組んで、ドイツ軍情報将校ムンツェ(セバスチャン・コッホ)に接近する。
ドイツ軍のパーティで、家族を殺した男、フランケン(ワルデマー・コブス)を見つけたエリスは、レジスタンスの裏切り者とフランケンが癒着し、ユダヤ人を騙して金品を略奪している事実を突き止めるのだが・・・・


バーホーベンと言えば、エロスとバイオレンス。
それは御歳68歳の今も変わらない。
以前何かのインタビューでバーホーベンが語っていたのだが、子供時代をナチ占領下で過ごし、暴力と死が日常の風景であったという経験は、彼自身の中の「何か」を壊してしまったと言う。
死体が街に転がり、隣人が連行され突然この世から消える。
そんな光景を見て育ったからか、この人の映画からは「人間とは、どのみちこんなモノさ」という諦めの無常観が漂う。
「トータルリコール」ではヒーローであるはずのシュワちゃんが、平気で通行人を盾にするし、「スターシップ・トルーパーズ」では洗脳された兵士たちが無感動に殺し、あっけなく死ぬ。
善悪の問題ではなく、人はごく簡単に死ぬし、だからこそ自分が助かるためなら何でもする強さを持つ。
バーホーベンの世界では、死は日常の一部であり、同時に生の証としての強烈なセックスが作品世界の天秤を均等に保つ。

この無常観故に、本作は極めてユニークな視点を持ちえている。
映画はユダヤ人女性のラヘルがレジスタンス活動に身を投じ、様々な危機を掻い潜りながら、やがてナチスと裏切り者の陰謀を暴くまでの物語である。
驚くべき事に、この映画に描かれている事は基本的に史実を元にしており、登場人物もほぼ実在するという。
正に事実は小説より奇なりだが、この物語は作り方によっていくらでも社会派になるし、「政治的に正しい」歴史物にも仕上げられるだろう。
だが、どこかで「人間なんて」と達観しているバーホーベンは、事の善悪や歴史的・政治的意味合いには興味がない様で、徹底的に個々の人間の思惑が織り成すパーソナルな事象として事の顛末を描く。
結果的に歴史物でも社会派でもなく、優れた娯楽サスペンス映画が誕生したのだ。

かといって、決して軽い作品では無い。
第二次大戦末期、ドイツの降伏も秒読みとなっている微妙な時期に、征服者とレジスタンス、そして双方に通じる事となるユダヤの主人公が織り成すモザイクのような人間模様は、見応えがある。
ここには紋切り型のステロタイプはいない。
何人ものレジスタンスを死に追いやったナチス情報将校ムンツェは、一個人になると切手を愛好する知的な紳士だし、ユダヤ人の死体から金品を剥ぎ取る品性下劣なフランケンは、音楽家でピアノの名手の顔を持つ。
最後までドイツの勝利と権威を信じていた誇り高き将軍は、敗戦が決まるとコロッと敵の協力者となり部下に責任を転嫁する。
誰もが英雄視するレジスタンスの英雄も、ナチスの協力者としての恐るべき裏の顔を持つ。
抑圧されていたオランダ民衆も、解放された途端今度はナチス協力者への抑圧を始める。
ラヘルと同じように、戦時下のオランダでレジスタンスのスパイとして活動していた事で知られるオードリー・ヘップバーンの伝記ドキュメンタリーで、このあたりの実際の映像を観た事があるが、解放直後の市民によるナチス協力者狩りは、かなり凄惨な物だったようで、本作の中でも進駐してきたカナダ軍将校が「ナチスと変わらない」と吐き捨てる描写がる。
結局のところ、掲げる旗が変わっただけで人間の所業は何も変わらないのだ。
観客は、主人公であるラヘルの目を借りて、二時間二十五分の間、これ等一癖も二癖もある登場人物たちの騙しあいを目にし、最後にはこう思うのだ「人間て、何と悲しい・・・」と。

この映画の無常観は、戦後のラヘルを追ったラストシーンでますます明確となる。
ラヘルは力強く生きてはいるが、結局人間というものの業からは解放されはしない。
人間というのは、正と不の狭間でもがきながら生きてゆくしかないのだという、ある意味でとても悲しいラストである。
ここでは、例えばイーストウッド映画にあるような、この世の無常を理解しながらも、心のどこかで人間の正の部分をより強く信じる性善説は力を失う。
個人的にはどこか性善説を信じていたい気がするが、バーホーベンの描く「ブラックブック」の世界も、間違いなくこの世の一面なのだろう。
人間とはかくも悲しく、いとおしい存在である。

今回はオランダを代表するビール、ハイネケン「ダーク」をチョイス。
普通のハイネケンと異なり、どちらかというドイツビールのようなテイストが特徴。
オランダとドイツの複雑な歴史的関係を思わせて、本作の様な映画を観た後だと中々に味わい深い。

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