2007年05月02日 (水) | 編集 |
私はサム・ライミ監督の「スパイダーマン」シリーズが大好きだ。
特に、派手な特撮アクションとヒーローの悲哀たっぷりの物語が高度にバランスした「2」は、数あるアメコミヒーロー映画の中でも最高傑作だと思っている。
そのライミが、「スパイダーマン3」ではついに「復讐」をテーマに描くという。
ヒーローの復讐!しかもビジュアル的に実に格好良いブラックスパイダーマンも登場だ!
おまけになんと今回はニューゴブリン、サンドマン、ヴェノムと敵が3人もいるという!
もしかしたら、もしかすると、これはとんでもなく凄い作品になるのではないか?
・・・・という期待をしたのは私だけではないだろうが、面白いことは面白いが結果はやや微妙。
スパイダーマンとして日々活躍するピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は、とうとうMJ(キルスティン・ダンスト)へのプロポーズを決意する。
ところが、自己中な行動が災いして、プロポーズ作戦は失敗。
落ち込むピーターのもとへ、叔父殺しの真犯人マルコ(トーマス・へイデン・チャーチ)が脱獄したという知らせが来る。
復讐心に駆られたピーターは、宿主の攻撃性を増幅させる謎の黒いアメーバ状生命体に取り付かれてしまい、ブラックスパイダーマンになってしまう。
逃亡中の事故で体を粒子化出来るサンドマンとなったマルコの前に、復讐と憎しみの権化となったピーターが立ちはだかるのだが・・・・
本作の冒頭で、スパイダーマンことピーター・パーカーは少し天狗になっている。
スーパーヒーローとして認められ、恋人MJとの交際も順調、つまり世界が自分を中心に回っている状態だ。
当然ながら、子供っぽい超人と周りの関係はすぐにギクシャクしだす。
スパイダーマンを父グリーン・ゴブリンの仇と信じる嘗ての親友ハリーには付け狙われ、カメラマンとしてのキャリアにもエディー・ブロックというライバルが現れる。
特にMJとの関係悪化は天狗のピーターに効果覿面、今度は高校時代のネクラ少年に逆戻りしたような狼狽っぷりが痛々しい。
そんなピーターの前に現れたのが叔父さん殺しの真犯人サンドマンと、宇宙から飛来した宿主の攻撃性を増幅する寄生生命体とくれば、蜘蛛男のダークサイド転落は決まったような物だ。
それぞれに復讐心を秘めた超人たちが大バトルを繰り広げ、やがてその無意味さを悟ったスパイダーマンが悲しみの地平に立つ。
その姿が、大人の観客には映画の世界を超えて普遍性をもったテーマを感じさせる、観る前はそんなイメージを想像していたのだが・・・。
ちょっと話を詰め込み過ぎではないか。
確かテレビのインタビューでサム・ライミか脚本家の兄さん、アイヴァン・ライミが言っていたと思うのだが、元々このプロットにヴェノムはいなかったらしい。
今までの登場人物が、70年代あたりまでの原作に登場するキャラクターばかりなのを気にかけたプロデューサーの助言で、今の子供たちに馴染みの深いヴェノムを加えてプロットを練り直したらしいが、やはりこの話の中に盛り込むには無理があったと思う。
本来なら、脱ぎ捨てられたブラックスパイダーマンのスーツを、エディー・ブロックが見つけるあたりで終わらせて、続きは「4」にご期待という感じだったのだろう。
ちなみにいつの間にかスパイダーマンは三部作という扱いになっているようだが、ライミ自身はすでに4の準備に入っていると発言しているらしい?いったいどうなってんの??
この作品でヴェノムが登場した事で、復讐に駆られたピーターとハリーという二人の男の情念が、サンドマンを間に挟んで交錯するという綺麗な物語構造が壊れてしまい、全体のエピソードをまとめるのに四苦八苦という印象になってしまっている。
それでもキャラクター一人一人を追ってみれば、それなりにきちんと感情がつながっているのは大したものだが、何しろ描かなければならない描写が多すぎて、ドラマ全体にぶつ切り感が出てしまっている。
特にクライマックスに至る流れはかなり駆け足で、ピーター・パーカーが突然ハリーに助けを求めるあたりは心理描写の不足で違和感があったし、ハリーの変心も唐突に見える。
シリーズ最長の二時間二十分を費やしても、物語は上手くまとめきれたとは思えない。
それにただでさえ、今回の物語はピーター自身の復讐がテーマとなっていて、物語のスケールは元々大きくないのに、相当セコイ復讐心に駆られたヴェノムがプラスされたことで、さらに小さな話になってしまった。
ぶっちゃけた話、「スパイダーマン3」はお互いを嫌いな超人男子たちによるちっちゃな喧嘩であり、小学校の教室で毎日繰り広げられている事の、拡大版に過ぎない。
頭の悪い超人男子たちの、意地の張り合いに巻き込まれてばかりのMJには同情するが、話がちんまりとし過ぎていて、テーマが映画の枠を超えてこないのだ。
もちろん、映画史上最高額とも言われるバジェットが注ぎ込まれたビジュアルは圧巻だし、ベタなのは判っていても、少年漫画的なハリーの助太刀にはワクワクしてしまった。
ベン伯父さんの死の真相が明らかになり、スパイダーマンがサンドマンを「許す」と言うのも新しい。
「スパイダーマン3」は、決してつまらない作品ではない。
ただ、意欲作ではあるが、少し欲張りすぎてしまったが故に、前二作を超えていない。
アメコミアクション映画としては、依然としてハイレベルな仕上がりと言えるのだが、観ている方としてはやはりシリーズ物には進化を期待したくなる。
復讐と憎しみの連鎖に陥ってしまった子供っぽい超人と言う、現在アメリカを省みても実に面白そうなテーマ性を持ちながら、それを表現すべき物語の混乱が残念だ。
まあ、これはこれで十分楽しめるので、次なる作品での飛躍に期待しよう。
今回はピーターのプロポーズ大作戦から、シャンパンの名品カナール・デュシェーヌの「グラン・キュヴェ ロゼ」をチョイス。
そういえばカメオ出演なんてもんじゃないノリノリ(悪ノリ)演技で、怪しいフランス人マネージャーを演じてたブルース・キャンベルは可笑しかった。
次はスパイダーマンvsキャプテンスーパーマーケットでも良いかな(笑
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特に、派手な特撮アクションとヒーローの悲哀たっぷりの物語が高度にバランスした「2」は、数あるアメコミヒーロー映画の中でも最高傑作だと思っている。
そのライミが、「スパイダーマン3」ではついに「復讐」をテーマに描くという。
ヒーローの復讐!しかもビジュアル的に実に格好良いブラックスパイダーマンも登場だ!
おまけになんと今回はニューゴブリン、サンドマン、ヴェノムと敵が3人もいるという!
もしかしたら、もしかすると、これはとんでもなく凄い作品になるのではないか?
・・・・という期待をしたのは私だけではないだろうが、面白いことは面白いが結果はやや微妙。
スパイダーマンとして日々活躍するピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は、とうとうMJ(キルスティン・ダンスト)へのプロポーズを決意する。
ところが、自己中な行動が災いして、プロポーズ作戦は失敗。
落ち込むピーターのもとへ、叔父殺しの真犯人マルコ(トーマス・へイデン・チャーチ)が脱獄したという知らせが来る。
復讐心に駆られたピーターは、宿主の攻撃性を増幅させる謎の黒いアメーバ状生命体に取り付かれてしまい、ブラックスパイダーマンになってしまう。
逃亡中の事故で体を粒子化出来るサンドマンとなったマルコの前に、復讐と憎しみの権化となったピーターが立ちはだかるのだが・・・・
本作の冒頭で、スパイダーマンことピーター・パーカーは少し天狗になっている。
スーパーヒーローとして認められ、恋人MJとの交際も順調、つまり世界が自分を中心に回っている状態だ。
当然ながら、子供っぽい超人と周りの関係はすぐにギクシャクしだす。
スパイダーマンを父グリーン・ゴブリンの仇と信じる嘗ての親友ハリーには付け狙われ、カメラマンとしてのキャリアにもエディー・ブロックというライバルが現れる。
特にMJとの関係悪化は天狗のピーターに効果覿面、今度は高校時代のネクラ少年に逆戻りしたような狼狽っぷりが痛々しい。
そんなピーターの前に現れたのが叔父さん殺しの真犯人サンドマンと、宇宙から飛来した宿主の攻撃性を増幅する寄生生命体とくれば、蜘蛛男のダークサイド転落は決まったような物だ。
それぞれに復讐心を秘めた超人たちが大バトルを繰り広げ、やがてその無意味さを悟ったスパイダーマンが悲しみの地平に立つ。
その姿が、大人の観客には映画の世界を超えて普遍性をもったテーマを感じさせる、観る前はそんなイメージを想像していたのだが・・・。
ちょっと話を詰め込み過ぎではないか。
確かテレビのインタビューでサム・ライミか脚本家の兄さん、アイヴァン・ライミが言っていたと思うのだが、元々このプロットにヴェノムはいなかったらしい。
今までの登場人物が、70年代あたりまでの原作に登場するキャラクターばかりなのを気にかけたプロデューサーの助言で、今の子供たちに馴染みの深いヴェノムを加えてプロットを練り直したらしいが、やはりこの話の中に盛り込むには無理があったと思う。
本来なら、脱ぎ捨てられたブラックスパイダーマンのスーツを、エディー・ブロックが見つけるあたりで終わらせて、続きは「4」にご期待という感じだったのだろう。
ちなみにいつの間にかスパイダーマンは三部作という扱いになっているようだが、ライミ自身はすでに4の準備に入っていると発言しているらしい?いったいどうなってんの??
この作品でヴェノムが登場した事で、復讐に駆られたピーターとハリーという二人の男の情念が、サンドマンを間に挟んで交錯するという綺麗な物語構造が壊れてしまい、全体のエピソードをまとめるのに四苦八苦という印象になってしまっている。
それでもキャラクター一人一人を追ってみれば、それなりにきちんと感情がつながっているのは大したものだが、何しろ描かなければならない描写が多すぎて、ドラマ全体にぶつ切り感が出てしまっている。
特にクライマックスに至る流れはかなり駆け足で、ピーター・パーカーが突然ハリーに助けを求めるあたりは心理描写の不足で違和感があったし、ハリーの変心も唐突に見える。
シリーズ最長の二時間二十分を費やしても、物語は上手くまとめきれたとは思えない。
それにただでさえ、今回の物語はピーター自身の復讐がテーマとなっていて、物語のスケールは元々大きくないのに、相当セコイ復讐心に駆られたヴェノムがプラスされたことで、さらに小さな話になってしまった。
ぶっちゃけた話、「スパイダーマン3」はお互いを嫌いな超人男子たちによるちっちゃな喧嘩であり、小学校の教室で毎日繰り広げられている事の、拡大版に過ぎない。
頭の悪い超人男子たちの、意地の張り合いに巻き込まれてばかりのMJには同情するが、話がちんまりとし過ぎていて、テーマが映画の枠を超えてこないのだ。
もちろん、映画史上最高額とも言われるバジェットが注ぎ込まれたビジュアルは圧巻だし、ベタなのは判っていても、少年漫画的なハリーの助太刀にはワクワクしてしまった。
ベン伯父さんの死の真相が明らかになり、スパイダーマンがサンドマンを「許す」と言うのも新しい。
「スパイダーマン3」は、決してつまらない作品ではない。
ただ、意欲作ではあるが、少し欲張りすぎてしまったが故に、前二作を超えていない。
アメコミアクション映画としては、依然としてハイレベルな仕上がりと言えるのだが、観ている方としてはやはりシリーズ物には進化を期待したくなる。
復讐と憎しみの連鎖に陥ってしまった子供っぽい超人と言う、現在アメリカを省みても実に面白そうなテーマ性を持ちながら、それを表現すべき物語の混乱が残念だ。
まあ、これはこれで十分楽しめるので、次なる作品での飛躍に期待しよう。
今回はピーターのプロポーズ大作戦から、シャンパンの名品カナール・デュシェーヌの「グラン・キュヴェ ロゼ」をチョイス。
そういえばカメオ出演なんてもんじゃないノリノリ(悪ノリ)演技で、怪しいフランス人マネージャーを演じてたブルース・キャンベルは可笑しかった。
次はスパイダーマンvsキャプテンスーパーマーケットでも良いかな(笑

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