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クィーン・・・・・評価額1550円
2007年05月19日 (土) | 編集 |
「ゲゲゲの鬼太郎」が日本のコスプレショーなら、「クイーン」は由緒正しい大英帝国的コスプレショー。
ダイアナ妃の突然の事故死から一週間の英国王室と政府の混乱と葛藤を、エリザベス女王と当時就任したばかりのブレア首相を軸に描いた作品だが、「オイオイこれっていいのかよ~?」と心配になるくらい大胆に「実話風フィクション」として描ききっている。
どこまで事実に基づいているのかは知らないが、実際にこんな風だったんだろうなと思わせるだけの説得力があるのだ。

1997年8月、元英国皇太子妃ダイアナが突然の事故でこの世を去る。
英国の世論が一気にダイアナを悼むムードに包まれる中、エリザベス女王(ヘレン・ミレン)はコメントを出さない。
英国王室にとって、ダイアナはトラブルメーカーであって、既に離婚して王室を出た身。
本来ならもう関わりあわないのが筋なのだ。
新しい時代に合わせて、王室としても弔意を示すべきだというチャールズ皇太子(アレックス・ジェニングス)の意見も、女王にはメディアに迎合し王室の権威を貶める行為にしか見えない。
しかしメディアを通して沈黙を守る王室の姿勢が大きく報道され、王室は薄情だという批判世論が巻き起こる。
就任したばかりのブレア首相(マイケル・シーン)は、頑なな女王の心を動かそうと普請するが、次第に君主として確固たる信念を持つ女王の心情に引かれてゆく・・・・


これ、観終わって一番気になったのは、「一体今何故これを作ったのか?」という部分だった。
お話としては十分面白かったが、企画意図というか、作り手が観客に何を投げかけているのかが良く見えず、それが引っかかっていた。
まさか英国王室を使って、そっくりさんのコスプレショーがやりたかった訳でもないだろうし。
しかし、よくよく考えてみると、これはイギリス映画であって、かの地の観客にとってはまさに自分たちの社会をシニカルに風刺した社会派映画であるのだろう。
王室をどうするのか、王室とどう付き合ってゆくのかというのは国の未来を左右する一大事という訳で、おそらく英国民にとって一番王室の存在が揺れたあの一週間を描くというのは、日本人がこれを観るのとはまったく違った意味合いがあるのだと思う。
日本人にとっては、例えば昭和天皇の大葬の礼前後の一週間の皇室を描いた様な物かもしれない。

ベテラン、スティーブン・フリアーズ監督は、二重のロジックを使って英国民にとって王室とは何なのかを問いかける。
一つ目は勿論タイトルロールのクィーン・エリザベス二世を通して。
もう一つは事実よりもメディアによって揺り動かされる英国人を通して。
英国の伝統と格式の守護者として、好むと好まざるを得ずに自分に課せられた運命にあくまでも忠実に生きようとするエリザベス。
しかし、その心はメディアというフィルターにかけられ、想いは国民に届かない。
大地に根を張った大木の様に強固な、女王の心の中にある彼女が守るべきと考える英国と、メディアの報道によっていかようにも移ろう現実の英国の乖離。
ブレア首相は、メディアのフィルターを外して、女王に接する事の出来た「稀有な庶民」という役回りと言えるかも知れない。
普通なら、何らかの比喩表現によって描かれるであろう物語を、そのまんま実在する女王を主人公として描いたのが本作の最大の特徴だろう。
右向け右的なビッグブラザー的世界観が、王室や政府という国家権力からでなく、むしろマスコミを媒介とした民意から感じ取れるのも面白い。

それにしても王とはかくも孤独な存在なのか。
映画の中で女王は誰に対しても本心を見せない。
国民に選ばれた代表者たるブレア首相に対しても、自分の夫であるフィリップ殿下に対しても、実の息子であるチャールズ皇太子に対してもだ。
唯一、実母であるエリザベス皇太后に対してだけはある程度心を許すが、それも女王としてではなく、一人の母と娘としての触れ合いに見える。
そんな女王が、広大な狩場で一人ぼっちになったとき、心の堰が切れたように嗚咽し、自分をさらけ出すのは本編でもっとも印象的なシーンだ。
女王はこの後、立派な王冠のような角を蓄えた一頭の牡鹿と出会い、彼に追いすがる人間(つまり自分の家族なのだが)から逃そうとする。
彼女にとって、猟犬に追い立てられる平原の孤独な王の姿は、その瞬間に誰よりもシンパシーを感じる相手だったのだろう。

先日、アメリカを訪問したエリザベス女王の公式晩餐会でのスピーチを読んで、彼女の感じてきた孤独の一端が見えた気がした。
スピーチの中で、彼女は自分に謁見した英国首相たちの事を述べているのだが、何しろ彼女の女王としての記憶はチャーチルまで遡るのだ!
数年の任期で去ってゆく首相たちと違い、彼女の任期は一生続く。
半世紀以上君臨してきた君主の重み。
半世紀以上の権力の孤独に耐える痛み。

本作でオスカーを受賞したヘレン・ミレン演じるエリザベス女王を筆頭に、ブレア首相夫妻やチャールズ皇太子などおなじみの面々がドキュメンタリーかと思うくらいのそっくりショーを見せる。
特に、動じないエリザベス女王に対して、彼女の人柄に触れて大きく価値観を変えられるブレア首相はいわば対となるキャラクターで、演じるのマイケル・シーンも、なかなかの好演。
もっとも劇似っぷりでは、ブレア夫人役のヘレン・マッコーニーが一番凄いかもしれないが。

それにしても、すべて実在する存命の人物を使って、ここまで内面に踏み込んだフィクションを作ってしまい、しかもそれが許されるあたりに、英国の文化の懐の深さを感じる。
スティーブン・フリアーズは、今まで省みられる事の無かった「クイーン」の内面に踏み込み、ある意味で現在の英国人に公平に考える切欠を与えたのかもしれない。
まあ、この映画を観てる我々自身も本当かどうか判らない事に感情移入している点で、映画の大衆と変わらないのだが。
是非ともエリザベス女王本人の感想が聞いてみたいものである。

今回はベリーブラザーズ&ラッドブラン・ド・ブラン ブリュットをチョイス。
一応英国王室御用達なのだが、お酒に限らず御用達アイテムは沢山あるので、あんまりこだわる事も無い。
BBRは醸造業者では無くワイン商で、各地の優秀なワインを自社セレクションとしてブランド化して販売している。
こちらはメニル産のシャンパンで、比較的リーズナブルながら、フルーティーで飲みやすい女性的な味ながら芯のしっかりした酒で、どこか劇中のエリザベス女王を思わせる。


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