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俺は、君のためにこそ死ににいく・・・・・評価額950円
2007年05月22日 (火) | 編集 |
都知事、入魂の一作。
「俺は、君のためにこそ死ににいく」というまるで軍歌みたいなタイトルに、製作委員会のクレジットにズラズラと並んだ右系メディア
ある意味で、久々に政治的な遠慮の無い思いっきりの良い戦争映画である。
確かに言いたい事は伝わってくるが、映画としてのネックは肝心の都知事の脚本だ。

昭和二十年、鹿児島県知覧。
太平洋戦争も終盤に差し迫り、追い詰められた日本は、ついに禁断の戦法というべき「特攻」に手を出す。
特攻隊の基地となった知覧で食堂を経営する鳥濱トメ(岸恵子)の元には、毎日の様に基地の若い特攻隊員たちがやってくる。
一度出撃すれば決して帰ることの出来ない隊員たちにとって、親身になってくれるトメはまるで母の様な存在だった。
やがて戦争が終わるまでの数ヶ月間、トメは様々な思いを胸に死地へ旅立つ沢山の若者たちを見送る事になる・・・


まあ観る前からこれほど予測のつく作品も無いので、観る気は無かったのだが、主演の岸恵子「私は、若い彼ら(特攻隊員)を殺した国家というものに大変怒りを感じている。ずいぶんと悩んで出演を決めました」と発言しているのを聞いて、観てみようかと考えを変えた。
なるほど確かに、特攻という物を考え出した指導者たちのグロテスクさは良く出ているし、特攻隊員のキャラクターも、通り一遍のステロタイプに陥るのを避けて、なるべく多角的に特攻という行為とそれに直面した人間を描こうという意欲は感じる。
しかし、石原慎太郎は映画の脚本の書き方を忘れてしまったのではないか。
あまりにも視点がとっ散らかってしまって、映画の前半はまるでシーンの断片をツギハギしたようなとりとめの無い話になってしまっている。
初めは、この映画は多くの特攻隊員に母の様に慕われたという鳥濱トメという女性の視点で、決して帰ることの無い旅に出てゆく多くの若者達を描く作品なのかと思っていたが、どうもそうではない。
鳥濱トメは物語のコアにいるものの、描かれ方は他の登場人物と対して変わらず、群像劇の一登場人物という感じなのだ。
群像劇としても、一人一人の描き方が非常に断片的な上に、登場人物はどんどん特攻していなくなってしまうので、ちょこっと感情移入したらはい次という感じで視点の置き所がない。
後半、徳重聡演じる中西少尉率いる部隊が赴任してくると、ようやく物語りは彼らを中心に回り始めるが、それでも感情の流れが断ち切られる様な、落ち着きの無い展開は最後まで変わらない。

撮り方も変だ。
ただでさえキャラクターが薄っぺらになりがちな群像劇なのに、人物の表情を捉えたカットが異様に少ない。
カメラは、まるで親の仇のようにクローズアップを嫌うのだ。
オープニングの妙に窮屈な画面構成といい、寄るべきところで逆に引いてゆく奇妙なカットといい、この映画の画作りには妙なミスマッチ感が漂う。
新城卓監督が群像劇に慣れていないのか、演出的にも全体に非常に観づらい作品になってしまっている。

この映画に描かれる指導者たちは、「負けるにも負け方がある」とか「国体を守るため」など理屈を使って特攻という行為を正当化しようとするが、結果的に特攻で戦局は変わらなかったし、無条件降伏によって「負け方」も「国体」も絵に描いた餅にしかならなかった。
天皇が今も存在しているのは、別に5000人の若者が特攻したからではなく、戦後の国際政治の力学がもたらした米国の理性的な計算の結果である。
少なくとも現在、特攻を仕掛けられた米国において、特攻とは戦時中の日本人がいかに狂信的なキチガイであったかを物語る行為であって、間違っても日本人の勇気や心意気とは捕らえられていない。
実際、客観的に観れば特攻とは犬死以外の何物でもなく、それを命じた指揮官たちは無能な愚か者であろう。
しかし、実際に特攻した若者たちには、それぞれに意思や想いがあり、彼らの生き方(死に方)そのものは尊重すべきだというこの映画のスタンスには一定の説得力がある。
特攻隊員に個性の強い俳優を配し、爆弾を捨てては帰ってくるという筒井道隆演じる田端少尉や、仲間の隊員が先に特攻してしまい、死に急いでいる窪塚洋介演じる板東少尉など興味深いキャラクターも多い。
せっかく鳥濱トメという語部がいるのだから、映画はもう少し登場人物を絞り込んで、彼女のどっしりとした目線で個性的な若者たちの生き様を追ったほうが良かったのではないだろうか。
また、彼らのキャラクターに魅力があるからこそ、明らかに意図を持ってしつこく繰り返される「靖国神社であおう」の台詞や、後半言い訳の様に挿入される大西将軍の切腹などは、現代人である石原慎太郎の顔が見えて少し興醒めだった。
まあそれは同時にこの映画に現在性という点では評価すべき事なのかもしれないが、政治的な映画であるゆえに、このあたりの捉え方は観る者の政治的な立場によって変わるだろう。
ちなみに私は、都知事選で彼には投票していない。

今回は知覧の地酒である知覧酒造の芋焼酎「ほたる」をチョイス。
劇中でも語られている様に、知覧は蛍の多い街で、特攻が始まってからは死んだ若者たちの魂に蛍のはかない光が重ねあわされたという。
このお酒も、そんな知覧の人々の戦没者への想いが形になった物。
芋の風味はそれほど強烈でなく、どちらかというとマイルドで飲みやすい。
特攻隊員を見守り続けたトメさんの様に、母を感じるお酒だ。

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