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ルネッサンス・・・・・評価額1300円
2007年07月18日 (水) | 編集 |
近未来のパリを舞台にしたSFフィルムノワール
全編にわたって、殆ど白と黒だけの極端なハイコントラスト画面で表現され、演出上のキーとなる一部分を除いて色が存在しない。
リアルに作りこまれたキャラクターと美術は、一見して実写なのかアニメなのか戸惑うが、モーションキャプチャーを用いた3DCGアニメである。
物語そのものはオーソドックスな物で、このエキセントリックな映像が本作をアニメ史の中でも特異なものとしている。
「ルネッサンス」というタイトルは、一般にはヨーロッパの芸術におけるギリシャ・ローマ文化の復興運動として知られているが、本来は中世的価値観からの人間性の解放を目的とした文化運動であり、どちらかというと元の意味の方が内容に引っ掛けられている。

西暦2054年、パリ。
アンチエイジング技術で急成長する、医療関連企業アヴァロンの若手研究員イローナ(ロモーラ・ガライ)が何者かに誘拐される。
事件を担当したカラス刑事(ダニエル・クレイグ)は、元アヴァロンの研究者で現在は街の診療所の医師であるムラー博士の過去の研究をイローナが探っていた事を突き止める。
カラスは、アヴァロンの社員でもあるイローナの姉ビスレーン(キャスリン・マコーマック)の協力のもとに、ムラー博士(イアン・ホルム)らが2006年に行った恐るべき実験の秘密を探り出す。
早老症治療の副作用として生まれたその秘密は、人類の生と死に関する常識を覆す可能性を秘めていた・・・


フランスはアニメーションの母国である。
映画が発明される以前の19世紀後半には、既にプラクシノスコープという映写機を使い、エミール・レイノーによる手描き動画アニメーションが制作されていた。
その後、(諸説あるものの)メリエスによるストップモーション技法の発見や、最初のアニメ作家とされるエミール・コールによって、映画フィルムによる近代アニメーションの歴史が始まる。
以来、現在に至るまで、ヨーロッパのアニメ大国フランスからは、時たまアヴァンギャルドで斬新な作品が登場するのである。
この作品の白と黒だけで表現される世界も、少なくとも全編これで表現した作品は過去には存在しなかっただろう。
しかし、正直なところ全体としての印象は、技法の斬新さとは裏腹に、あまり独自性が感じられないのだ。
最初から最後まで、どこかで観たような既視感がつきまとう。

まず連想するのは、実写映画ながらデジタル技術を駆使して、まるで漫画のような世界観を作り上げた「シン・シティ」だ。
この作品ほど極端ではなかったが、コントラストが高く明暗がくっきりとした画作りはもちろん、舞台となる街そのものを陰の主役に据えたあたりもよく似ている。
物語そのものは、クラッシクなフィルムノワール調なのも同じだ。
そして日本アニメ。
物語のキーとなるの早老症の子供たちからは、誰でも「AKIRA」を連想するだろうし、敵の暗殺者達が使う透明コスチュームは「攻殻機動隊」だ。
ディテールだけではなくて、全体のタッチや物語の展開はどことなく押井守+リドリー・スコット(のブレラン)を思わせる。
勿論パクリというわけではないのだが、クリスチャン・ヴォルクマンの演出、アレクサンル・ド・ラ・パトリエールマチュー・デラポルトの脚本は、あまりにも無邪気に重要なポイントに、映画的な記憶の引用がちりばめられていて、どうしても気になってしまう。

この作品を特徴付けているビジュアルも、斬新に感じられるのは慣れるまでの間。
一度こんな物だというイメージが出来てしまえば、驚きがずっと続くわけでもなく、むしろ情報量が少ない分、登場人物の顔が判別しにくくて困る。
さすがに眉毛に特徴のある主人公はわかったが、サブキャラなんて途中で誰が誰なのかよく判らないカットも多かった。
この表現自体は面白いけど、例えば背景はこれでやって、キャラクターは演技が伝わりやすい別の手法と組み合わせても良かったんじゃないだろうか。

もっとも、こうした点を押さえた上で、一本のSFフィルムノワールとしてこの映画を評価すれば、特に傑出した作品ではないが、つまらない訳でもない。
物語はしっかりと作られているし、複線もきちんと張られている。
主人公の背景がムスリム移民であったり、昨今のフランス社会のリアリズムが反映されているのも、さりげなく作品に奥行きを与えている。
テーマ性も最後にはベタベタな台詞で説明してしまっているものの、一応観た者にしっかりと伝わる様には作ってある。
そういえば、このテーマの説明台詞は殆ど映画版の「銀河鉄道999」そのものだった。
この監督と脚本家、よほど日本のアニメが好きと見える。
まあ、この「ルネッサンス」という作品を冷静に観ると、お話やテーマ性はありきたりな物で、正直なところ、このビジュアルが無ければもっと印象の薄い作品だったことは間違いないだろう。
この画で2時間近い作品を作ろうというチャレンジは評価するし、ビジュアルがアニメーション映画という表現において極めて重要なポイントであることは言うまでもないが、作品そのものの印象はまずまずの出来栄えの普通の近未来SFであり、それ以上ではない。
勿論、ユニークな作品であることは確かで、その意味では十分に観る価値のある作品である。

今回はフレンチノワールという事で、フランスのスピリッツ、コニャックから「マーテルVSOP」をチョイス。
今から300年ほど前に、ジャン・マーテルによって設立されていらい、一族経営を守り続ける老舗。
コニャックの良さである口当たりのやわらかさと、深いコクを兼ね備える名品である。
映画は、この酒のような深みが少々欠けていた。

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