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ピアノの森・・・・・評価額1350円
2007年07月25日 (水) | 編集 |
私は、音楽を聴くのは好きだが、演奏するほうはからっきし苦手だ。
絶対音感なんて望むべくも無く、小学校の発表会で私だけ縦笛が上手く吹けず、先生から「全体の迷惑になるから、吹くまねだけして、音を出さないでね!」と、残酷な指令を受けたくらい酷い(笑
だから、どんな楽器でもスラスラと弾いている人を見ると、それだけで何だか尊敬してしまう。
この「ピアノの森」は、私とは対照的に音楽の神に祝福された、二人の少年の物語だ。

代々ピアニストの家系に生まれた雨宮修平(神木降之介)は、家庭の事情で引っ越した田舎街で、深い森の奥から聞こえてくる、不思議なピアノの旋律を聴く。
森にうち捨てられた古いピアノを演奏していたのは、修平の小学校のクラスメートとなった一ノ瀬海(上戸彩)。
裕福な修平とは対照的に、貧しい母子家庭で育った海は、運命に導かれるようにこの森でピアノと出会い、独学で演奏していたのだった。
幼い頃から英才教育を受けてきた修平は、天性と思える海のピアノを聴いて衝撃を受ける。
海の弾いている森のピアノは、元々は小学校の音楽教師の阿字野壮介(宮迫博之)の物だった。
若い頃天才と謳われたピアニストだった阿字野は、自分以外には演奏できないと思っていた特殊なピアノを、海が弾きこなすのを偶然見てしまう。
その天才を確信した阿字野は、海にピアノを教えようとするのだが・・・・


原作は一色まことの人気漫画で、何となく気にはなっていたのだが、私は読んだことがない。
おそらくは原作を全部映画化している訳ではなくて、その導入部にあたる何巻かを纏めた物語なのだろう。
実際映画の印象は、長大な大河ドラマの「序章」という感じだ。

物語そのものは、ものすごく判りやすい。
幼い頃からエリート教育を受けてきた主人公の前に、正に音楽の神に選ばれたとしか思えない天才が現れる。
しかもその天才は自分の才能に対する自覚が無いから、色々なものを犠牲にしてピアノに打ち込んできた主人公は、ますます彼の才能に嫉妬する。
そして悲劇的な過去を持つ嘗ての名ピアニストが、無自覚な天才を頂点へと導こうとする。
これは音楽物に限らず、古今東西の映画や漫画、小説で繰り返し描写されてきた王道中の王道のプロットだ。
この粗筋だけ読んでも、多くの人が「ガラスの仮面」「ヒカルの碁」、あるいは「アマデウス」におけるサリエリとモーツアルトの関係を思い浮かべることだろう。
「ピアノの森」は、キャラクターのルックスも含めて、この物語の黄金比とも言うべきプロットに忠実であり、その意味では新鮮味はない。
しかし、王道の物語というのは、そのままで見やすくて面白いのも確かなのだ。
物語の大枠はもう決まっているから、あとはその決まりきったお約束にどう話のディテールを載せてゆくかの勝負になる。
この辺は、小島正幸監督の演出も、奇を衒わない正攻法ながら、音楽の神秘性をうまく使っていてなかなか楽しめる。
原作でどう表現されているのかは判らないが、モーツアルトの幽霊なんて面白いアイディアだと思う。

音楽の神秘性とえば、やはり深い森に佇むピアノがこの作品を際立たせるキービジュアルといえるだろう。
自然の中に投げ出されたピアノというと、ジェーン・カンピオン監督の「ピアノ・レッスン」の砂浜のピアノがまず思い浮かぶが、まるで天然のステージのような森の広場で、月光に浮かび上がるピアノというこの作品の美しさもなかなかの物だ。
それにしても、自然の中にある楽器と音楽というのは何とも普遍的な美を感じさせる。
一説によれば、音楽の起源は遠く原始の時代に遡り、人々の心に直接訴えかける魔力を持つと同時に、神々に捧げられた神聖な物であったという。
アミニズムの時代には、本来が自然の中で演奏する物であったのかもしれない。
よくよく考えると、森に捨てられたピアノなんて、湿気と雨ですぐにボロボロになってしまうだろうが、これをある種の神話的ファンタジーとして捉えれば、強い説得力を持つ描写と言えるだろう。

ビジュアルイメージを支える映像は美しく、なかなか丁寧な仕事がなされているし、演奏シーンも見事だ。
音楽に合わせて画を作るのは、見た目よりもずっと大変なのだが、これは少なくとも素人目には違和感を感じなかった。
もちろん、物が物だけに音楽のクオリティ自体もハイレベルな物が求められるが、ピアノの音には聞惚れた。
正直なところ音楽に関しては映画みたいに細かな分析は出来ないけれど、心に響く良い演奏だったと思う。

「ピアノの森」は、これから長く続くのであろう二人のピアニストのライバル物語の導入部として、なかなか良く出来ている。
おそらくかなり原作に忠実なのだろうと創造できるが、逆に言えば映画としてはそれが欠点ともいえる。
とりあえずそつなく、エピソードを過不足無く並べて纏めましたという感覚がどうしても抜けず、原作の動くプロモ映像に見えなくもないのだ。
実際のところ、私はこの作品を観て、この映画の続きを観たいというよりは、原作の漫画を全部読んでみたくなった。
もっとも、音楽とシンクロした映像の面白さや、美しい色彩で表現されたビジュアルなどはアニメーション映画ならではの物であり、原作を読んだ人が観たとしても、それなりの感慨を抱かせてくれる作品ではあるのだと思う。

今回は、カリフォルニアを代表するワインの一つ、その名も「作品番号1」を意味する「オーパス・ワン」をチョイス。
音楽用語からとられたその名前通り、まるで美しいピアノ曲のような、繊細で優美な芸術品。
正直言って、これとあわせると映画の方がオードブルになってしまうのだが、オーパス・ワン自体が十分メインとなって人々に感動を与える力のある酒だ。
近年日本で異常な人気となって、バカ高くなってしまっているのが少し残念だが、カリフォルニアワインの真の実力を証明する一品である。

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