fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
インランド・エンパイア・・・・・評価額1450円
2007年08月17日 (金) | 編集 |
デビット・リンチの悪夢的迷宮。
「インランド・エンパイア」は、女優志望のヒロインが迷い込んだハリウッドという幻想を描いた傑作「マルホランド・ドライブ」と対を成す様な作品だ。
リンチによって作品として提示され、無数の観客の脳内に創造される虚構の帝国
今回、彼の内なるハリウッドをさ迷うのは、ローラ・ダーン演じる映画女優ニッキー・グレース。
例によってリンチらしい独創の世界だが、ぶっ飛び具合はターボがかかって加速しており、観方によってはほとんど実験映画と言っていいほど難解かつ不条理な作品になっている。

映画女優のニッキー・グレース(ローラ・ダーン)は、キングスリー・スチュワート監督(ジェレミー・アイアンズ)の新作映画「暗い明日の空の上で」の主演に選ばれる。
ところが、セットで不穏な事が起き、監督はニッキーと相手役のデヴォン(ジャスティン・セロー)に、この映画の秘密を明かす。
実は「暗い明日の空の上で」は、ジプシー民話を元にした未完のポーランド映画「47」のリメイクであり、元の映画は撮影中に主演二人が殺害されたことから中止になったという、いわく付きの作品だったのだ。
やがて、撮影が進むうちにニッキーは映画と現実の区別がつかなくなってゆく・・・


おそらく、リンチの映画を知らない人がこの映画を観たら、相当戸惑うだろう。
ほとんど全編ダウナー系のドラッグでもやって、バッドトリップしている様な作品だ。
物語は一応あるとはいえ、それは作品の進行上ほとんど意味を持たず、無数に分断された壊れたパーツに過ぎない。
劇中の台詞にもあるように、「何が前で何が後だったかわからない」様な作りになっているのだ。
リンチは、このつかみ所の無い物語をさらに小技を効かせて破壊してゆく。
ビデオ撮りでわざとキネコ感を強調した様な荒い映像に、全編に渡って被せられる不気味で不快なノイズ。
会話シーンの切り替えしでは、互いを見る俳優の目線を意図的にずらせて、観客の違和感を誘う。
複数の時空に存在する登場人物が、突然現れては物語を遮り、単体では意味不明の台詞を言う。
さらには登場人物の演技の気持ち悪い「間」!
まさしくリンチ節全開である。

とは言え、全く整合性を無視して作られている訳ではない。
少なくとも主人公のニッキーに関しては、壊れたパズルのピースを脳内で組み立てると、一通り筋が通っている事が解る。
本筋に纏わりつくように描写される様々なエピソードによる「混沌」が、整然とした物語をわざと破壊する仕掛けになっており、観客はストレートに筋を追うことが出来ず、リンチの迷宮に迷わされる。
これは当然作家のロジックであって、決してデタラメに作っている訳ではないのだ。
もっとも、普通の映画のように文学的ロジックできっちりと設計されているという訳でもなく、整合性はあくまでもこの世界の底にかすかに感じられる程度。
作家の志向するベクトルがそちらを向いていない事も事実だろう。
本作でstreet person#2を演じた裕木奈江によると、彼女の役は最初ホームレスガールという設定だけが明らかにされ、後日数ページの彼女の台詞だけのスクリプトを送ってきたそうだ。
元々リンチは、明確な脚本無しに撮影するのが何時もの事らしいが、この話からも本作がかなり直感的なプロセスで作られている事がわかる。

まるでデビット・リンチという映画作家の脳内迷宮のような本作、観客は常に形を変えるアメーバの様な、フワフワとした悪夢的な世界に投げ込まれた様なものだ。
一生懸命ピースを頭の中で組み立てて、物語を追うのも良いし、ストレートに映画に浸って、映像ドラッグでトリップするのも良い。
一応、素直な見方をすれば「インランド・エンパイア」とは虚構のハリウッド、あるいは映画そのものであり、映画という表現をいかに知覚するかという作家から観客への問いかけの様に思える。
あるいは、映画という虚構を通してある種の真実を描いた寓話なのかもしれない。
たぶん、どちらも間違ってはいない。
元々映画のテーマは映画作家の頭の中にしか正解は無いものだが、普通はそのテーマを観客に伝えるために、様々なロジックと工夫を凝らして物語を紡いでゆく。
だから往々にして、受け手が感じたテーマこそが「その作品の表現したかったもの」と捉えて良いのだろうが、この作品の場合は、観客が作品を知覚するという事そのものがテーマであるように思える。
したがって、ここには正解は観た観客の数だけあるのだろう。
ある意味で、映画という表現の根源にもっとも忠実な作品と言えるかもしれない。
 
しかし、まあバッドトリップで三時間はさすがに長い。
劇場の椅子があまり良く無くて、お尻が痛くなって困った。
私の場合、もうちょっと短い方が心地よく浸れたかな。

今回は、結構力のある酒じゃないと負けてしまう。
「コル ソラーレ」の赤をチョイス。
イタリアのアンティノリとワシントンのシャトー・サンミッシェルの合作による良質の赤。
その出自の通り、高級イタリアワインを強く連想させる。
口当たりはとてもしっとりとして優美、かつボディもしっかりしていて、くっきりとした味の輪郭を感じることが出来る。
不気味な悪夢のような映画から、現実の喜びへとしっかりと連れ戻してくれるだろう。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね
人気ブログ検索 <br>- ブログフリーク
こちらもクリック!

も一回お願い!






スポンサーサイト