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インベージョン・・・・・評価額1250円
2007年08月23日 (木) | 編集 |
ジャック・フィニイ原作の侵略SFの古典「盗まれた街(ボディ・スナッチャーの襲撃)」の、実に四度目となるリメイクである。
ドン・シーゲル、フィリップ・カウフマン、アベル・フェラーラに続いてメガホンを取るのは、ドイツの鬼才オリヴァー・ヒルシュピーゲル
この話はリメイクを重ねるごとに、原作から離れてゆく傾向があり、三度目の「ボディ・スナッチャーズ」(1993)などは、設定以外殆どオリジナルの内容だったが、今回はそれよりは原作に近い作りになっている。
過去の映画化は、作品の出来は別として、どちらかというとB級SFの括りで語られる事が多かったが、今回は何と二コール・キッドマン、ダニエル・グレイグ、ジェフリー・ライトとオールスターキャストの大作だ。

地球に帰還する途中のスペースシャトルが事故で墜落。
機体は未知の細胞組織で汚染されており、現場に赴いたタッカー・カウフマン(ジェレミー・ノーサム)はその破片で手を切ってしまう。
タッカーの元妻で医師のキャロル・ベンネル(二コール・キッドマン)は、離婚した後一人息子のオリバー(ジャクソン・ボンド)と暮らしている。
同じく医師である恋人のベン・ドリスコル(ダニエル・グレイグ)との仲も順調だが、ある日患者の女性が奇妙な事を訴える。
彼女の夫が、何者かに変わってしまったというのだ。
見た目も、記憶も間違いなく夫だが、中身が別人だと言う。
その日を堺に、キャロルは街の様子が徐々に変わっている事に気付く。
雑踏の中、まるで感情がない様に無表情に街に立つ人々。
その数はだんだんと増えていっていき、やがては彼女の身近な人々にも異変が起こり始める。
そんなある日、キャロルは面会のためにオリバーをタッカーに預けるのだが・・・・


あまりにも有名なフィニイの原作は、様々な作品に影響を与えてきた、侵略SFのパイオニアの一つである。
今回を含めて四度の映画化の他にも、ロバート・ロドリゲスの「パラサイト」などの映画、藤子・F・不二夫の「流血鬼」や岩明均の「寄生獣」をはじめとする漫画など、インスパイアされた作品は各ジャンルに無数に存在する。
物語が普遍的で骨子がしっかりしていて、なおかつ映像化しやすいという事であるが、別の言い方をすれば、それだけ手垢に塗れた原作という事になる。
それゆえに、過去の映画化の際も、毎回様々な工夫を凝らしていた。
最初の映画化であり、かなり原作に忠実だったドン・シーゲル版「ボディ・スナッチャー 恐怖の街」(1956)と、伝説となった人面犬を初め力の入った特殊メイクと、冷たく乾いた映像が印象的だったフィリップ・カウフマン版「SF/ボディ・スナッチャー」(1978)は既に映画としても古典の仲間入りをしていると言っても良いだろう。
三作目のアベル・フェラーラ版がかなり思い切った脚色をして、今ひとつ不評だったからか、今回は物語そのものは原作回帰の姿勢が見られる。
その分、ボディ・スナッチャーの設定、物語のテーマ性に新しい味付けをしているのだ。

まず、今回はエイリアンの人体乗っ取りの手法が違う。
前作までのボディ・スナッチャーは、犠牲となる人間から、巨大なサヤエンドウの様なサナギが生え、その中にエイリアン化したクローンが作られる。
クローンが生まれると、元になっている人間は干からびて死んでしまう。
対して今回のボディ・スナッチャーは、墜落したスペースシャトルの破片にくっ付いて、地上にばら撒かれたエイリアンウィルスであり、睡眠中に感染した人間の細胞を急激に取り込み、元の体を乗っ取って支配する。
途中でエイリアンウィルスの細胞皮膜に覆われて、サナギ化する描写はあるものの、異星人の侵略というよりは、ウィルスによるミューテーション、つまりは「進化」という設定である。

なるほど、「es [エス]」「ヒットラー~最期の12日間~」と言った人間心理を鋭く突いた佳作を物にしてきた、オリヴァー・ヒルシュピーゲルらしい方向性の脚色である。
突然の進化に伴う、人間性というものの激変に直面した時、人はどう思い、どういう行動をとるのか、あるいはとるべきなのかというテーマは極めて興味深い。
全ての人間が同じ価値観を共有し、戦争も飢餓も暴力も存在しない世界。
それはある意味で人類が夢見てきたユートピアに他ならない。
そして、新しい価値観に対抗するのが、人類のもっとも古い良心とも言うべき「母性」であり、原作では男性だった主人公の医師が女性になっているのも、この対立構図を際立たせるためだろう・
理想郷の出現を人類は受け入れるのか否かというテーマは、過去の三作とは一線を画している。

しかし、残念ながらこのテーマ性は最後の最後まで物語の前面に出ることは無いのである。
伝え聞くところによると、ヒルシュピーゲルはスタジオと大もめにもめ、クレジットはされていないものの、最終的に作品はウォシャウスキー兄弟に委ねられ、「Vフォー・ヴェンデッタ」ジェームス・マクティーグ監督が現場を仕切って仕上げたという。
おそらくヒルシュピーゲルの目指した物は、もっと心理劇としての色彩の強いものだったと想像するが、完成した作品は限りなく「普通」である。
途中まで撮られた作品を引き継いだという事で、ウォシャウスキー兄弟やマクティーグにしても、自分の個性を存分に出すという訳にもいかなかっただろう。
物語の骨組みは最低保障が付いている様なものだから、決してつまらなくは無いし、娯楽SFとしてアベレージには達しているが、深いテーマ性が垣間見えるだけに、この不完全燃焼は少々残念だ。
完成した「インベージョン」は、平凡な出来栄えのSFサスペンスであり、強く印象に残るのが、二コール・キッドマンの美貌だけというのは、作品の持つポテンシャルからすると勿体無い気がする。

今回は原作のジャック・フィニイの生まれ故郷ミルウォーキーから、「ミラージェニュインドラフト」をチョイス。
ミルウォーキーはミラーをはじめ複数のビール会社が本拠を置く、世界で最も有名なビール都市の一つ。
中学生の頃、札幌・ミュンヘン・ミルウォーキーを「世界三大ビール都市」として教わった人も多いだろう。(もっともこの定義は国によって違うのだが・・・)
この街のビールのうち、現在日本でオフィシャルに手に入るのはミラーのみだが、アメリカンビールらしいすっきりした喉越しは日本の残暑にもあう。
バドほどあっさりでもなく、適度にコクもあり、やや物足りない映画の後味を適度に補ってくれるだろう。

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