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ヒロシマナガサキ・・・・・評価額1800円
2007年09月15日 (土) | 編集 |
スティーブン・オカザキ監督「ヒロシマナガサキ」は、衝撃的なシーンで始まる。
現在の渋谷で青春を謳歌する若者たち。
そんな彼らに映画は問いかける。
「1945年8月6日に、何が起こったか知っていますか?」
何と、唯一の被爆国であるこの国で、この当たり前な質問に答えられる若者は誰もいないのである!
オカザキ監督によれば、これは決して映画の誇張ではなくて、実際に渋谷で取材をした際に、誰一人として「ヒロシマ」の名を挙げる者はなかったという。

映画は、実にシンプル。
ヒロシマ・ナガサキが忘却の昭和に消えつつあるこの国で、最後の生き証人たる被爆者たちが、あの日、あの時に何が起こったのか、そしてそれからどんな人生を歩んできたのかを、彼ら自身の証言によって淡々と語りかける。

600人以上が死亡した小学校で、唯一生き残った少女。
自らも被爆し、あの日から今日まで、被爆者たちの治療に一生を捧げた医師。
家族が生きながら焼かれるのを目の当たりにし、後に「はだしのゲン」を描く漫画家。
戦後米国で整形治療を受け、原爆乙女と呼ばれた女性。


原爆で受けた被害も、その後の人生も千差万別な彼らに共通するのは、原爆そのもの体験以上に、その後の原爆症という時限爆弾、そしていわれのない差別による悲しみ。
ここには、「夕凪の街 桜の国」が描ききれなかった物が確かにある。
62年前の記録映像の中に彼ら自身がいて、それを現在の彼らが語る。
ここでは確実に「あの日」と「今」が繋がっている。
ヒロシマ・ナガサキは「歴史」ではないのだ。

この映画は、単に可哀想な被爆者たちに同情してもらうための作品ではない。
戦後60年を超えてもなおも続く、彼らの苦しみを描くその先には、そんな惨禍を引き起こしたヒロシマ型原爆40万発以上の核兵器が存在するという、世界の現状への憂いがある。
この恐ろしい世界に生きながら、1945年8月6日に何が起こったのかすらも知らないという、核不感症とも言うべき人々への真摯なメッセージなのだ。
被爆者たちの語りのカウンターとして、原爆の開発者、そしてエノラ・ゲイの搭乗員のインタビューが入り、人類全体にとって、原爆とは何だったのかというビジョンが示される。
原爆開発者の一人はこういう。
「我々はパンドラの箱を開けてしまった。我々は核と共に生きるしかない」
本当にそうだろうか。本当にそれでいいのだろうか。

スティーブン・オカザキ監督は、アメリカの日系人強制収用をテーマとした「待ちわびる日々」でオスカーを受賞したドキュメンタリーの巨匠。
彼は、私が在米の時にご近所さんだった人で、面識があるのだが、ネイティブアメリカンのようなひょうひょうとした風貌と、深く優しい眼差しが印象的な人物だ。
5,6年前に、次回作は何を撮るのかと聞いたとき、次はまた原爆をテーマにしようと思っています、と答えられていた。
それがこの「ヒロシマナガサキ」と、前作でやはりヒロシマをテーマとした「マッシュルーム・クラブ」だったのだろう。
もっとも彼が原爆をテーマとしたのは、これが初めてではなくて、四半世紀前の「生存者たち」という作品で、既に在米被爆者の問題を扱っているし、「ヒロシマ・ナガサキ」に続く、原爆テーマの新作も準備中だそうである。
核というのは、彼にとってライフワークの様なテーマなのかもしれない。
「マッシュルーム・クラブ」は35分、この「ヒロシマナガサキ」にしても1時間半に満たない上映時間であり、もっと、もっと観てみたいという欲求に駆られる。
この映画が一人でも多くの人に観られる事で、次回作の製作費も集まる。
是非、劇場に足を運んで欲しい作品である。

この映画の上映後、映画に登場する被爆者の医師・肥田舜太郎さんによる、短い講演があった。
彼は自らもヒロシマで被爆し、その直後から医療活動を開始し、90歳の現在に至るまで被爆者の診療を続けているという。
彼はヒロシマの惨状を語ると同時に、原爆症という病気の研究が、軍事機密の壁によっていかに遅れているか、そして体内被曝した場合の放射線の人体への影響が、いかに過小評価されているかを強く訴えていた。
原発事故の際、よく言われる「国の基準値以内だから大丈夫」というのは、ほとんど根拠がないそうである。
また、劣化ウラン弾によって、アフガンで、イラクで、コソボで、確実に新たな被爆者が生まれているという事実と、それを健康被害の原因として認めない政治への、医師としての強い怒り。
彼は、講演の最後に「私はもう長くは生きられない。後は貴方たちに託します」と結ばれた。
私を含めてこのメッセージを受け取った観客たちは、やはり何かを考えなければならないだろう。

私は、この映画は国会で上映すべきだと思う
この国のリーダーという神聖な仕事を、訳のわからない理由で投げ出してしまった坊ちゃん宰相にも、彼の後を受ける次の宰相にも、是非この映画を観て欲しい。
昨日、「国が原爆症の認定基準を見直す検討会設置」というニュースが流れた。
「美しい国」は、62年も経って、いまだに被爆者の認定すらまともに行っていないのが現実なのである。

今回は、「男たちの大和」の時にも引き合いに出した、広島の地酒「加茂鶴」の純米をあわせて、鎮魂の酒としたい。

※スティーブン・オカザキ監督のプロダクションFarallon Filmsのウェッブサイト。
作品の購入も出来る。

http://www.farfilm.com/

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長崎の原爆投下前の24時間を描いた秀作



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