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マイティ・ハート -愛と絆-・・・・・評価額1600円
2007年11月28日 (水) | 編集 |
今から5年前の2002年の一月に、パキスタンで起こったWSJの米国人記者ダニエル・パール氏の誘拐殺害事件は記憶に新しい。
当時は9.11後の米軍によるアフガニスタン攻撃でタリバン政権が崩壊し、アフガンに潜伏していた多くのアルカイダ要員とタリバン残党が、隣国パキスタンに流入し混沌した情勢が生まれていた。
パール事件は、以来数多く繰り返される、テロリストによる非武装の民間人誘拐戦略の口火を切った事件だった。
マイケル・ウィンターボトム監督「マイティ・ハート -愛と絆-」は、ダニエルの妻でやはりジャーナリストであるフランス人女性マリアンヌを中心に、事件発生から悲劇的な結末を迎えるまでを臨場感たっぷりに描いた異色作だ。

2002年初頭のパキスタン、カラチ。
アメリカ人記者ダニエル・パール(ダン・ファターマン)が、ある男とのインタビューのために出かけたまま消息を絶った。
送りつけられた写真から、彼がテロリストグループに誘拐されたのは確実だった。
ダニエルの妻でフランス人ラジオ記者のマリアンヌ(アンジェリーナ・ジョリー)は妊娠五ヶ月の身重の体だったが、事件の捜査のために派遣されたパキスタンの対テロ機関の捜査員や、ジャーナリスト仲間の協力を得て、ダニエル救出のために事件の真相に迫ってゆく・・・


事件そのものは非常に政治的なのだが、映画はほぼ妻のマリアンヌをフィーチャーし、あまり政治性に踏み込まない。
その意味で、この映画は所謂ポリティカルサスペンスとは少し違う。
映画が淡々と、しかし深く映画いてゆくのは政治ではなく、マリアンヌとその周りの人々の一途な心だ。
この事件は当時日本でも詳しく報道されたので、覚えている人も多いだろうが、夫のダニエルがユダヤ人で、マリアンヌが創価学会の信者なのは良く知られている。
つまりこの映画の中では、一部のイスラム過激派がアメリカ人ユダヤ教徒を拉致し、その妻であるフランス人仏教徒をアメリカ人やフランス人のキリスト教徒、インド人ヒンズー教徒、パキスタン人イスラム教徒が支えるという図式になっている。
もちろんマリアンヌの周りにいた登場人物一人一人には、それぞれの思惑があるだろうし、必ずしも善意の存在ではなかったかもしれない。
しかし、人間の不寛容が生み出した、この事件に向き合った彼らは、「ダニエルという一人の人間を助けたい」というただ一つの意識において、宗教や民族を超えて結束している。

それは、政治と宗教、民族という複雑な概念が生み出した混沌の中で、人間性というもっともベーシックかつ普遍的な精神を見出す事でもある。
劇中のマリアンヌの台詞で非常に印象的なものが二つあった。
一つは犯人から送られてきたダニエルの写真を見て、「銃を突きつけられても彼は笑っている。決して負けていない」という物。
もう一つは事件が悲劇に終わった後に、テレビのインタビューに答えた時、インタビューアーの心無い質問に、思わず母国語であるフランス語で「あなたは人間なの?」と本音を突きつけるシーン。
この二つのシーンには、マリアンヌの信念としての人間性の強さと切なさがよく表現されている。

監督のマイケル・ウィンターボトムは、アフガン難民の少年の一万キロに及ぶ亡命の旅を描いた2002年の「イン・ディス・ワールド」や、理不尽な理由でテロリストと誤認されたパキスタン人を描いた2006年の「グアンタナモ、僕達が見た真実」などで、この地域を扱った映画のスペシャリストみたいになっているが、その一歩引いたジャーナリスティックな視点とドキュメンタリーを思わせる演出スタイルは、作品に一定の説得力をもたらす。
もっともほぼ無名の俳優を使って、本当にドキュメンタリーと見紛う様な作りだった前記の二作に比べると、アンジェリーナ・ジョリーというバリバリのハリウッドスターを起用(この場合、彼の方が彼女に起用されたと言った方が正しいのだけど)したこの作品の場合、演出の軸足はやはりそれほど客観的にはいられないのだが。

そのアンジェリーナ・ジョリーは熱演と言って良いと思う。
彼女のライフスタイル自体は色々なメディアで報道されているし、そこから透けて見える人物像から、この作品を映画化し、マリアンヌを演じるという使命感に駆られた事に驚きはない。
現実のマリアンヌとは正直なところ全く似てないのだけど、これはこれで彼女なりのマリアンヌ像を説得力を持って作り上げていたと思う。
ただ、これは別に演技者としての彼女の責任ではないが、元々ポリティカルな臭いのするアンジェリーナ・ジョリーによって演じられた事で、作品が慎重に避けてきた政治性が逆に強調されてしまったのは少々皮肉だ。

「マイティ・ハート -愛と絆-」は、誰もが知っている悲劇的な結末を迎え、その後のマリアンヌも少しだけ描かれる。
そこには、事件の悲しみと同時に、不思議な精神的な静寂と平静が存在しているように思う。
マリアンヌは言う「私たちは、負けてない」と。
それは凄惨な経験の中ですら、被害者であるダニエルを含めた全員が、人間性の尊厳を失わなかったという自負によるものなのかも知れない。
ポスト9.11の世界を描いた作品の中でも、なかなかにユニークな一作である。

現実のアンジェリーナ・ジョイリーは勿論フランス人ではなくてカリフォルニアンなわけだが、今回はカリフォルニアはナパからケイマス・ヴィンヤードの「コナンドラム」をチョイスしよう。
「コナンドラム」とはなぞなぞの事で、飲んだ人に向けて、「このワインの葡萄はなんでしょう?」となぞなぞを出している訳だ。
実はこのワインにはソーヴィニヨン・ブラン、マスカット、セミヨン、シャルドネ、ヴィオニエの五種類がブレンドされている。
個性の違った葡萄もこの酒の中では一つの完成されたハーモニーを奏でる。
この事件のために集まった人々も、混沌の中に人間性という一瞬のハーモニーを観たのかもしれない。

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