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アメリカン・ギャングスター・・・・・評価額1800円
2008年02月10日 (日) | 編集 |
白黒を足して二で割れば、そこにあるのは灰色のアメリカ
「アメリカン・ギャングスター」は、リドリー・スコット監督ラッセル・クロウ主演によるコンビ第三弾。
前作「プロヴァンスの贈り物」は軽妙なラブコメディだったが、今回は打って変わって70年代の激動のアメリカを舞台としたハードなフィルムノワールとなっている。
タイトルロールの相手役にデンゼル・ワシントンを迎え、オスカー俳優同士の豪華な対決も見ものだ。

1968年、ハーレムの黒人ギャングのボスとして君臨していた男が死に、彼の右腕だったフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)は独自の組織構築に乗り出す。
彼はボスに仕えるうちに培った人脈と、卓越したアイディアを駆使し、瞬く間にNYの麻薬王として頭角を現す。
一方、麻薬組織との汚職が蔓延る警察の中で、一人正義を貫こうとするリッチー・ロバーツ刑事(ラッセル・クロウ)は、麻薬犯罪専門の特別チームの編成を任される。
急速に街に蔓延しはじめた、「ブルーマジック」という新種の麻薬の出所を探るリッチーたちのチームだったが、それは全く尻尾を見せない謎の麻薬組織との長い戦いの始まりだった・・・


やはり俳優が良い。
商品の流通ルートにおける中間搾取を無くし、確実な輸送手段によって生産者と消費者をダイレクトに結びつけ、良質で安価な商品を安定供給する。
同時に、強面ではなく紳士的な態度と冷静なロジック、驚異的な行動力で取引相手の信頼を得てゆく麻薬王・フランク・ルーカスは、一見するとまるでやり手のビジネスマンだ。
だが一方で、自分の邪魔になる相手は顔色一つ変えずに排除する冷酷さを併せ持つ。
このキャラクター造形が非常に面白く、物語の前半はこの悪のカリスマによって作品世界に引き込まれる。
逆に正義を体現するロバーツ刑事の存在感はそれほど強くなく、強烈な個性を持つ敵役に対して、一見破滅型にも見える刑事では弱すぎるのではないかと思わされる。
だが、後半ルーカスが危機に陥り、ロバーツとの攻守が逆転すると、今度は徐々に明かされるロバーツの複雑でしたたかな内面に魅力される。
名優同士の演技合戦は、キャラクター造形でも魅力の面でもさすがに見事なもので、リドリー・スコットの演出も徹底的に彼ら二人をフィーチャーする。

スコットと共に物語を紡ぐ脚本家は、「シンドラーのリスト」の名手スティーブン・ザイリアン
物語その物は一見してオーソドックスな刑事vs犯罪者のフィルムノワールだが、公民権運動、ベトナム戦争を経て、従来の価値観がひっくり返った70年代の米国という時代性そのものが重要なキーとなっている。
この映画において描かれるアメリカとは、対立と矛盾によって形作られており、それを体現するのが二人の主人公だ。
対立点は単に白人と黒人と言う肌の色だけではない。
権力とアウトローという社会的ポジション、正義と悪という道徳観念、更には個人と家族の捉え方など、社会に存在する様々な対立要因がこの二人の周りに存在する。
だがこの対照的な二人自身が、内部にも複雑な矛盾と内なる対立を抱えているのがこの作品のキモだ。
本来権力者であるはずのリッチー・ロバーツは、実際には汚職が横行する警察内部で孤立し、むしろ弱者の立場にある。
また刑事でありながら、司法試験に挑戦しているが、私生活ではその司法によって子供の親権を奪われつつある。
冷酷なギャングであるはずのフランク・ルーカスは、一方で家族を愛し彼らに富を与えるが、同時に彼らが日のあたる場所に出る機会を奪ってしまう。
また彼は白人に対して強い対抗意識を抱き、黒人としてのアイデンティティに誇りを抱いている様にみえるが、彼の麻薬ビジネスの顧客は黒人であり、結果的にルーカスは黒人社会を破壊している。
彼ら二人は、一見全く対照的に見えるが、実はどちらも70年代アメリカという、絶対の正義が説得力を失った、混沌の時代を象徴するピースなのだ。

面白いのは、映画を構成する自己矛盾を抱え込んだ対立が、全体を通して見ると奇妙なハーモニーを形作っている事だ。
対立は混沌を形作るが、混沌は増殖するフラクタル曲線のように巨視的に見るとある種の秩序を形作る。
「アメリカン・ギャングスター」は、飽くなき人間の欲望によって成長してきたアメリカという社会が、善悪の二元論で割り切れなくなった今の時代のルーツそのものを、ギャングのボスと刑事という二人の男の魂の交錯によって描き出す。
それは、正義でも悪でもなく、混沌と曖昧さが支配する灰色の時代の始まりだ。

もちろん、この作品は小難しい社会派映画でなく、娯楽映画としても良くできており、二時間四十分という長尺を全く感じさせない。
見事なのは二人の名優の火花散る演技合戦を観ているつもりでも、実際には彼ら二人の絡みは映画がほとんど終わりになるまで無い点で、スティーブン・ザイリアンの脚本は、綿密なロジックで二つの並行するドラマに、硬く絡みついた運命の糸を感じさせるのに成功している。
この絶妙な距離感があるから、二人が遂に対面してからラストまでの、ある意味で非常に皮肉な物語の流れは、控えめながらドラマチックなカタルシスを感じさせる。
もちろんリドリー・スコットの演出もザイリアンの優れた脚本と二人の名優を最大限生かしながら、十分に個性的で相変わらずムーディー。
作品の完成度から言っても、彼のベスト作品の一つと言えるだろう。

今回はリドリー・スコット監督作品ということで、彼の「ブラック・レイン」の名に由来するカクテルをチョイスしよう。
グラスに漆黒のリキュール、ブラック・サンブーカとシャンパンを1:9の割合で注ぎ、軽くステアする。
黒いカクテルは珍しいが、オーストラリアのホテルのバーで、映画にちなんで作られたのが最初だという。
ブラック・サンブーカの香りには結構クセがあるので、混沌とした映画と違ってこちらは好みが明確に分かれるかもしれない。

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