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クローバーフィールド HAKAISHA・・・・・評価額1550円
2008年03月06日 (木) | 編集 |
「ロスト」 「M.i.Ⅲ」J.J.エイブラムスがプロデュースした「クローバーフィールド HAKAISHA」は、よくぞこんな冒険的な企画が、現在のハリウッドメジャーで通ったと驚かされるくらいの超異色作
謎の巨大生物がNYを襲撃するらしいという以外、一切のインフォメーションが公開まで封印され、当初は正式なタイトルすら明らかにされなかったという秘密主義もさることながら、実際に公開された作品を観ても、既存の娯楽映画のセオリーを全く無視した作りに驚嘆しきり。

映画は、近々日本に発つらしいロブという青年のフェアウェルパーティーから始まる。
最初の15分程度はパーティーの準備やパーティーの喧騒が続き、特に何も起こらない。
そして、パーティーが佳境に差し掛かったころ、突如としてNYが得体の知れない巨大怪獣の襲撃を受けてパニック状態となり、後はロブとその仲間たちが逃げ惑う姿が延々と映し出されるのである。

NYが怪獣に襲撃された後、元々セントラルパークがあった場所で発見されたビデオカメラの映像という触れ込みの本作は、ある種のフェイクドキュメンタリーであり、要するに「ブレア・ウチッチ・プロジェクト」だ。
しかしあの作品はごく低予算の自主映画であり、もしかしたら本当かもしれない?という興味からインターネットの口コミでヒットした。
フェイクドキュメンタリーというジャンルに括られる他の作品も、総じてその低予算と、いかにもありそうなシチュエーションを売りにしたものが殆どだ。
対して「クローバーフィールド HAKAISHA」は、巨大怪獣の襲撃によるNY壊滅の記録という、全くありえないし、あったことも無い事実を、それなりの予算をかけて大真面目に作ってしまった。
しかもそれはたった一台カメラによる一個人の目線からの怪獣映画であり、これは今までに存在しなかったタイプの作品と言って良い。

脚本は「ロスト」のドリュー・ゴダード
監督はやはりテレビ畑出身のマット・リーブスで、良い意味で映画の既成概念にとらわれないテレビっぽいライブ感が生きている。
ただ、この映画が上手いのは、ドキュメンタリーの体裁をとりながら、実は流れそのものは綿密に作りこまれた物語映画の構造を持っており、さりげなく、しかししっかりと構成されているので、観客が比較的自然に見ていられる事だ。
一台のカメラによって撮られた映像という設定なので、視点が限定される分、流れは主人公(?)であるロブたちの行動にそっており、彼らの行動に自然に三幕構成的な展開を組み込んでいる。
また限定された視点からは、観客に限られた情報しか与えられないので、主人公たちと同じように観客も情報に飢え、不安感を増幅する効果をもたらしている。
既存の映画の構造を持ちながら、その表現方法を大幅に変える事で、観たことの無い斬新さを生み出していると言えるだろう。
テープの随所に上書きされる前の映像、つまり怪獣に襲撃される前の平和な風景が残っており、それが恐怖に逃げ惑う映像と対比を形作るあたりも小技が効いていてニクイ。
まあ厳密に考えれば、あんな状況で決してカメラを放さないのは不自然とか、7時間もバッテリーの持つカメラがあるかい、とか色々突っ込みは入れられるのだけど(笑

公開前に色々と憶測を呼んだ怪獣のデザインも、逃げ惑う人間の手持ちカメラで捕らえられているので、殆ど全体像を捉える事は無く、正直なところ良くわからないが、何となくゴジラ系の怪獣よりは「エヴァンゲリヲン」「使徒」みたいな雰囲気だ。
これはデザイン以上にその存在が持つ不条理さがそう見せるのかもしれない。
サイズ的にはアメリカ版ゴジラより少し大きいくらいに見えるが、ミサイル攻撃であっさり死んだあちらと違い、戦車砲、ミサイルは勿論、B2爆撃機の絨毯爆撃にも無傷で耐えるくらいだから、不死身の東宝怪獣にずっと近い。
日本の大怪獣は、現在の荒ぶる神であり、人類文明の負のメタファーとしての性格を持っていた。
ケロイドの皮膚を持ち、放射能の火炎を吐くゴジラが、ビキニ環礁の核実験による第五福竜丸の被爆事件にインスパイアされて誕生した、核兵器のメタファーなのはあまりにも有名だ。

では今回突如として出現し、NYを壊滅させたこの名無しの怪獣はどうか。
これはやはり、誰でも9.11を思い出さざるを得ないだろう。
何の前触れも説明も無く、正体すら判らず、ただただ破壊の限りを尽くす「クローバーフィールド HAKAISHA」の怪獣は、9.11で噴出した不条理な恐怖のメタファーと言えるのではないだろうか。
「キング・コング」にルーツを持つハリウッドの怪獣たちは、巨大ではあるものの、あくまでも生物であるという原則を頑なに保ってきて、それはアメリカ版「ゴジラ」でも変わらなかった。
生物としての一定のリアリズムを持つが故に、象徴としてのメタファーにはなかなかなり得なかったのだが、今回ハリウッド映画の歴史上初めて、人知を超えた日本型怪獣が登場したと言えるかもしれない。
そういえば音楽というものが存在しないこの作品の中で、唯一の楽曲であるエンドクレジットのテーマ曲はどことなく伊福部調だった。

「クローバーフィールド HAKAISHA」は、娯楽映画の歴史に一石を投じる意欲作だ。
ある意味で、既存の概念に喧嘩を売っている様な作品であり、映画にあくまでも物語とカタルシスを求める観客にはお勧め出来る作品ではないかもしれない。
実際に、あまりといえばあまりに唐突な幕切れに、本国の封切り時には怒り出す観客も少なからずいたようである。
また、いくら斬新でもこれが新たなスタンダードになる訳も無く、一発屋の徒花である事も間違いないだろう。
しかしネタ切れで、リメイク、続編ばかりのハリウッドメジャーの世界に痛快な変化球を見舞ったのは間違いなく、このチャレンジ精神と遊び心は高く評価したい。
個人的には「ロスト」「エヴァンゲリヲン」のファンになら、このとんがり具合は理解されるのではないかと思うのだが。

今回は、文字通りクローバーフィールドから作られたお酒を。
高知県の菊水酒造の蜂蜜酒ミード「はちみつのお酒」をチョイス。
ミードといえば、最近では「ベオウルフ」で印象的に使われていたが、ワインやビール以上に長い歴史を持つ酒。
日本では比較的珍しいミードだが、こちらはクローバーの花の蜜から作られているという。
欧米のものに比べるとアルコール度も低めで非常にあっさりしており、フルーツワインの様な感覚で飲める。
映画は手持ちカメラの映像のおかげで、それ自体がかなり酔えるので、鑑賞後はあっさりがお勧めだ(笑

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