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少林少女・・・・・評価額650円
2008年05月01日 (木) | 編集 |
今年はカンフーが来ているのだそうな。
言われてみれば「カンフーくん」やら「カンフーパンダ」やら「カンフーダンク」やら、その手の映画が目白押し。
過去にもカンフー映画は何度もブームになったが、今回のは元をたどればチャウ・シンチー監督・主演「少林サッカー」「カンフーハッスル」の世界的なヒットが引き金になっているらしい。
「少林少女」はそのシンチーをエグゼクティブ・プロデューサーに迎え、「踊る大走査線」シリーズの本広克行がメガホンを取った、いわば正統派番外編
しかしながら、その出来ばえは本命どころかブームを一気に冷却してしまいかねないトホホな仕上がりとなってしまった。

少林寺での9年間の修行を終え、日本に帰国した桜沢凛(柴崎コウ)。
しかし敬愛する祖父の道場は朽ち果て、師匠格だった岩井拳児(江口洋介)は少林拳を捨て、場末の中華料理店の店長になっていた。
一人で道場を再建しようとする凛の元に、岩井の店でアルバイトとして働く中国人留学生の眠眠(キティ・チャン)が訪ねてくる。
凛の運動能力を見込んで、大学のラクロス部へスカウトしたいと言うのだ。
交換に眠眠が少林拳を学ぶことを条件に、ラクロス部へ入部した凛だったが、そのパワーが災いして試合には惨敗。
チームメイトの信頼も失ってしまう。
そんな凛を氷の様な目で見つめていたのは、大学の学長大場雄一郎(仲村トオル)。
彼と少林拳には凛もまだ知らない因縁があった・・・・


チグハグとしか言いようの無い映画である。
本作のコンセプトを簡単に言えば、「少林サッカー」「カンフーハッスル」というチャウ・シンチー監督の大ヒット映画のコンセプトを輸入して、日本人のスター俳優を組み込んで再生産した番外編だ。
だが、笑いとアクション満載で、時にはホロリとまでさせられたオリジナルと違い、この日本版は殆ど笑えるシーンは無く、アクションのカタルシスも無く、当然ながら感動することも出来ない、無味乾燥なコスプレショーに成り下がってしまっている。
見えてくるのは安直な企画性とあざとい商売っ気だけだ。

一体なんでこうなってしまったのかと思うくらい、物語がグダグダだ。
9年間少林寺で学んだ凛が帰国して、ひょんな事からラクロスを始めるのはまあいい。
バカ力はあるものの、ラクロスなどやったことの無い凛が試合で敗れて挫折するのもお約束だ。
だがここで、なぜかコーチとして乱入してきた岩井が「負けたのはお前がチームワークを知らないからだ」と凛を責め立てる。
映画を観ている限り、負けたのは単に凛のシュートのコントロールが悪かったからにしか見えないのだが、とにかく凛はチームプレーに徹する様になる。
すると当然ながら、プレーはごくありふれた物になってしまい、観客が期待する「少林サッカー」のラクロス版という展開からはどんどん離れて、普通のスポコン友情ものになってしまう。
おまけに、後半になると悪の学園を支配する格闘技オタクの謎の学長、大場が凛を狙う様になり、彼との対決が物語の本筋になっていまい、ラクロスは完全に忘れ去られてしまう。
要するに、前半「少林サッカー」、後半「カンフーハッスル」みたいな物なのだが、この二つがまるっきり融合していないのだ。

キャラクター造形もチグハグ感は強い。
主人公の凛は凄い気を持っていて、一度ダークサイドに落ちると抜け出せなくなるとかならないとか、どこかで聞いたような設定なのだけど、なぜそんな凄い気を持っていて、それが暴走すると最終的にどうなるのかという説明は無い。
凛の暴走を恐れる岩井は「お前は戦うな、俺が守ってやる」なんて偉そうな事を言っていたのに、実際に敵が来たら、自分は無抵抗のままさっさと凛を戦いに送り出す。
彼が戦いを拒否するのは、嘗て大場と戦って負けた事が切っ掛けになって、少林拳の技ではなく心に開眼したかららしいのだが、映画を観る限りは単に敗北がトラウマになって戦えないヘタレにしか見えない。
ダークサイドな敵役である大場も、なぜか悪の学園を運営しているというかなり変な人だ。
この人は悪の会議で「力に投資する時代は終わった、これからは美に投資する」とか言っているのに、自分はどう見ても力の信奉者にしかみえない。
そもそも何であんなに回りくどい事をして凛と戦うのかよくわからない。
戦いを拒否していたのは岩井であって、岩井に感化される前の凛は別に戦いを拒否していなかったはず。
ちなみに後半の、凛が塔の天辺にいる大場に辿り着くまでのゲームみたいな展開は、シンチーというよりはブルース・リー映画のパロディ満載なのだが、ギャグセンスが無いので、ちっとも笑えない。
もっとも元ネタが古すぎて、パロディとしても成立してない気もするけど。
何よりも酷いのは凛と大場の戦いのクライマックスで、思わず「キャシャーン」かと思ってしまった。
カンフーアクションの大トリに、平和な心象風景を見せられるとは思ってもみなかったよ。

「少林少女」は、作り手が何を描きたかったかが全然見えない。
劇中で、ラクロスのチームメイトに少林拳の技だけを教えようとする凛に対して、師匠格の岩井が「お前は心を教えていない」と批判するシーンがある。
だがこの映画に「心」はあるのか。
私にはチャウ・シンチーのカンフー映画というブランドだけを借りてきて、日本の人気俳優を混ぜ込んで再生産した、笑えない劣化コピーにしか見えなかった。
作り手の心が、この映画からは何も伝わってこない。
もちろんオフィシャルに名前を出している以上、この内容でOKを出したチャウ・シンチーも同罪だろう。

映画は本来自由な物で、物理的に可能であるなら誰がどんな物を作ろうが自由だ。
しかし個人的には、こういう自分で自分の首を絞めるような映画作りは、やめた方が良いと思う。
話題性があれば、お客は入るかもしれない。
だが言葉は悪いが、偽ブランド品をつかまされた観客の信頼は、確実に失ってしまうのである。

今回は、作り手の心が伝わってくるお酒、その名も「真心」をチョイス。
岩手県は花泉の磐乃井酒造のお酒。
山田錦を50%まで精米して純米吟醸で、東北のお酒らしく辛口で、スッキリとした飲み応えが心地良い。
真心を感じない映画の後は、真心を感じるお酒で口直ししよう。

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私的シンチーのベストはこれ
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