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僕の彼女はサイボーグ・・・・・評価額950円
2008年06月06日 (金) | 編集 |
「猟奇的な彼女」「僕の彼女を紹介します」クァク・ジェヨン監督による日本映画。
遠い未来からやってきたサイボーグの彼女と、ダメ男の恋を描くSFラブコメだ。
面白くなりそうな要素は揃っているのだが、時空を駆けめぐる複雑怪奇なプロットが整理されておらず、登場人物の感情の流れもよくわからない。

自分の誕生日を自分で祝う寂しい大学生ジロー(小出恵介)は、街で不思議な「彼女」(綾瀬はるか)と出会う。
人生最高の誕生日を過ごしたジローだが、その日の終わりには「彼女」は姿を消してしまう。
それから一年、再び寂しい誕生日を迎えたジローの元に、突然あの「彼女」が現れた。
彼女にもう一度会いたいと願っていたジローは大喜びするが、「彼女」の様子はどこか変。
実は再会した「彼女」は、遠い未来の自分から、運命を変えるために送り込まれたサイボーグだったのだ・・・


観ているうちに、小出恵介がどんどんチャ・テヒョンに見えてくるのが可笑しい。
誤解を恐れずに言えば、クァク・ジェヨンは一発屋である。
この人の映画はいつもダメ男の「ボク」がぶっ飛んだ「彼女」と出会い、その恋を通して成長してゆくというパターンで、本作もそれは同じ。
日韓でヒットした前二作が、日本語吹き替えで少しSF仕立てになっていると思えば良い。
ただ、その意味で「猟奇的な彼女」は、正に一発屋の奇跡の一発だった。
チョン・ジヒョンとチャ・テヒョンによって演じられた超個性的な二人の恋愛は、常識はずれに弾けつつも、観る者の心を強く揺さぶる映画的なエモーションに満ちていた。
しかし、あれはいわば半分偶然生まれたヘタウマの面白さで、ごった煮的に混ざり合った多くの要素が作り出すハーモニーをもう一度再現するのは容易な事ではない。
案の定、二匹目の泥鰌を狙ってやった「僕の彼女を紹介します」は、狙いは同じにも関わらず、あざとい計算と商売っ気だけが目立った、破綻した物語としか見えなくなってしまっていた。

残念ながら「僕の彼女はサイボーグ」も、同じ轍を踏んでしまっている。
この作品の元ネタは、ネットのチェーンメールで有名になった「ドラえもん」最終回
山崎貴監督の「ジュブナイル」の原作としても知られる、のび太がドラえもんの発明者であったというアレである。
要するに、この映画のジローはのび太くんであって、送られてきたのがネコ型ロボットではなくてしずかちゃん型ロボットだったという物なのだが、元ネタをそのまま使うのではなくて、現代に現れた彼女の正体をめぐってさらに複雑な設定が加えられている。
しかしながら・・・元々構成力という点ではかなりの疑問符がつくクァク・ジェヨンの脚本は、タイムパラドックスへの無頓着さだけでなく、多くの点で矛盾と破綻のテンコ盛り状態となってしまっていて、物語が非常に判りづらい。
さらに混乱した物語の中で、語り部であるジローの心情がさっぱり伝わってこないのはもはや致命的だ。

そもそも、突然現れた奇妙な女と何の疑念も無く楽しそうに誕生日を祝う冒頭からして説得力が無いのに、いくら彼女にそっくりでも全く感情を持たないロボットに大した葛藤も無く恋愛感情を抱くという設定は無理がある。
人間とロボットの恋は、今までもクリス・コロンバスの「アンドリューNDR114」を始め多くの映画で描かれてきたが、彼らは例外なく感情に目覚めたロボットであって、本作の「彼女」とは決定的に異なっている。
ジローと彼女のラブストーリーであるはずの物語で、根底の部分に疑問符がついてしまうのはやはり問題ではなかろうか。
まるで面白そうな要素をとりあえず詰め込めるだけ詰め込んだラフなプロット第一稿を、何の取捨選択もせずにそのまま脚本化してしまったかのような荒っぽさを感じてしまう。

ただ、クァク・ジェヨンらしいサービス精神がポジティブに表れている部分も少なからずあり、それがこの映画を単なるダメ映画から救い上げている。
チョン・ジヒョンをアジアのスーパースターに育てた監督だけあって、タイトルロールのサイボーグを演じる綾瀬はるかはかなり魅力的に撮られており、彼女のアイドル映画としては一定の成果を上げていると言って良い。
またビジュアル的なクライマックスとなる、東京大震災の描写は少々やりすぎと思えなくも無いものの、「日本沈没」はこのぐらいやるべきだったよなあと考えてしまうぐらいド派手なスペクタクルで、VFXの仕上がりはややラフながら、迫力という点では見ごたえがある。
これでもう少し洗練された脚本があればと思わざるを得ないのが、本作の残念なところだ。

まあ全体的にはあまり芳しくない印象の「僕の彼女はサイボーグ」だが、演出家が国籍を超えて映画を撮るという試みはどんどんやった方が良いと思う。
韓国にはもっと優れた演出家がたくさんいるし、逆に日本人が韓国映画を撮ったり、中国映画を撮ったりしても良い筈である。
欧米では盛んに行われているこの手の人材交流がアジアのメジャー映画では稀なのは、言葉の問題や近くて遠い政治状況などもあるのだろうが、映画という芸術の未来を考えても積極的に行われるべきだ。
もっとも、2008年に大学生である主人公が見る自分の少年時代が、「ALWAYS 三丁目の夕日」みたいな超レトロ世界であるあたり、例え心の中で理想化された世界だと仮定しても違和感バリバリで、外国人監督が純粋な日本映画を撮る場合のフォローの必要性を痛感するのだけど。

どうでもいいけど「彼女」はサイボーグじゃなくてアンドロイドじゃないのか?
まあ語感を優先したんだろうけど・・・・

今回は「ロボット」という言葉を生んだチェコからボヘミア・ゼクトの「ベルベデーレ・ドゥミ・セック」をチョイス。
ボヘミア・ゼクトは一世紀以上の歴史を持つ名門ワイナリー。
ほんのりとした甘みと酸味に、上品な果実香を楽しめる赤いスパークリングワインで、同国で国賓の公式晩餐会などにも使われる逸品だ。
一人誕生日でこれを飲めば、寂しさ倍増だろう(笑

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