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ランボー/最後の戦場・・・・・評価額1550円
2008年06月19日 (木) | 編集 |
「インディ」の事を書いたら、80年代を代表するもう一人のアクションヒーロー、ジョン・ランボーの事も書かねばなるまい。
こちらの「ランボー/最後の戦場」も、第一作の「ランボー」の公開から26年、第三作の「ランボー/怒りのアフガン」から数えても20年ぶりの復活作となった。
ベトナムから帰還し、故郷に拒絶された事から始まったランボーの長い旅は、今回一応の結末を迎えた様に見える。

故郷を離れ、タイの片田舎でスネークショー用の蛇を狩って暮らしているジョン・ランボー(シルベスター・スタローン)の元へ、アメリカのキリスト教系NGOグループが訪れる。
彼らはミャンマー政府軍に迫害されている少数民族・カレン族の支援のために、水路でミャンマーへ潜入しようとしており、その水先案内人をランボーに頼みに来たのだ。
一度は断ったランボーだったが、メンバーのサラ(ジュリー・ベンズ)の熱意にほだされて、グループをミャンマーに送り届ける。
ところがグループが訪れた村は、ミャンマー政府軍の奇襲攻撃を受け、村民は虐殺され、アメリカ人たちは捕虜として捕らえられてしまう。
グループが属する教会は、救出のために傭兵部隊を雇い、ランボーは彼らとともに再びミャンマーに潜入するのだが・・・


ランボーを演じるシルベスター・スタローンは御歳62歳。
インディのハリソン・フォード同様に、実年齢よりはずっと若く見えるものの、さすがに旧作の様にムキムキの筋肉を誇示する事も無ければ、華麗な肉体アクションで観客を魅了する事も無い。
その代わり、ここにあるのは圧倒的なまでの殺戮描写だ。
水田に沢山の対人地雷を投げ込み、その中にカレン族の人々を追い込んで爆死させるミャンマー政府軍の描写はナチスも真っ青の鬼畜ぶりだし、NGOグループを救出するランボーと傭兵部隊vsミャンマー軍の戦闘は、まるで「プライベート・ライアン」かと思わせる様な、凄まじい弾丸と火薬のパワーでスクリーンを覆い尽くす。
人間の肉体がバラバラのピースとして吹き飛び、内蔵がまき散らされるその描写は、ロケーション中心の撮影との相乗効果で、目を背けたくなるくらいのリアリティを感じさせる。
レイティングの不利を承知で、これほどまでに凄惨な描写となった背景には、ミャンマー軍とカレン族の内戦の現状を少しでも世界に知らせたいというスタローンの意向があったという。
ミャンマー軍がこんなに非人道的な存在なのかどうかは、正直なところよく判らないが、映画の描写はアフリカのダルフール内戦などで伝え聞く虐殺の内容と酷似しているし、昨年の仏教僧のデモ鎮圧、今年のサイクロン被害への対応をみても、まあ当たらずとも遠からずな存在であることは容易に想像できる。
当然ながらミャンマー政府はこの映画に激怒し、国内上映を禁止、逆にカレン族は映画に感謝する声明を出しているという。

元々「ランボー」の一作目には、国家の歯車として消費された一人の男が、自分を使い捨てたアメリカに対して、たった一人の内戦を仕掛けるという社会派アクションの側面があった。
実は一作目においてランボーは誰一人として殺しておらず、にもかかわらず悪鬼の様に恐れられ、狩り立てられるその姿が、ベトナムという傷に蓋をして無かった事にしたがるアメリカ社会への痛烈な批判となっていた。
第二作、第三作が一作目とは正反対のアメリカ万歳のオバカアクション映画と化した事で、その事はほぼ忘れ去られていたが、今回は殺した人の数は対照的ながら、26年ぶりに本来の作品のあり方に原点回帰したという印象だ。
本作は、長年世界の悲しみだけを見て生きて来たランボーと、良く言えば善意、悪く言えば能天気なNGOグループのメンバー、そしてランボーと同じ側にいながら打算的な傭兵部隊という三つの相反する価値観のぶつかり合いの物語でもある。
戦場という極限状態での葛藤が、結局彼ら自身をも変えてゆくという展開は面白い。
頑に命を奪う事を否定しているNGOグループの医者が、結局自らの手で敵を殺し狼狽するシーンなど、かなり皮肉が利いているし、半ば達観しているランボー自身もサラとのふれあいで頑な心を少しずつ溶かされてゆく。
本作のキャッチコピーにもなっている「ムダに生きるか、何のために死ぬか・・・・お前が決めろ」など、要所要所で放たれるランボーの名台詞も、ほとんど台詞がない故に非常に印象的。

もっとも、元々寡黙なキャラクターではあるのだが、いくら何でもしゃべらな過ぎで、ランボーの感情の変化がほとんど伝わって来ないのはちょと残念。
ランボーがサラとの触れあいで、彼の中に眠っていた大切な何かを目覚めさせたのは何となく判るのだが、彼女の何がランボーの心の琴線にふれたのかはよく判らない。
ミャンマー軍との最後の戦いの後の故郷への帰還も、同様の理由で少し唐突に感じた。
遠くからサラを見守るランボーの眼差しが、まるで親にかまってもらえない小さな子供の様に寂しげだったのが印象的ではあったが、一作目のラスト近くで、ランボーが元上官に向かって感情を爆発させるシーンほどではないにしろ、彼の内面の変化がはっきりと判る描写がどこかに欲しかった。
それでも物語の最後で、一作目の主題歌である名曲「It's a long road」の旋律が流れ、そのタイトル通りの長い長い故郷への道をランボーが去ってゆくシーンは、一人のヒーローの旅路の果てを見届けたという一定の感慨がある。
91分というコンパクトな上映時間の中身はなかなかに濃密だ。

今回は、一作目の舞台となったワシントン州から、ヘッジスの「レッドマウンテン」をチョイス。
ランボーの旅は、26年前にこの地から始まった。
複雑な果実香が楽しめるボディの強い赤は、まさしく「First blood」を思わせる。
ランボーの永久の安息を願って、乾杯。
まあ、何年かしたらまたやりそうな気がしないでも無いけど(笑

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