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2008年06月26日 (木) | 編集 |
韓国の鬼才イ・チャンドンは、私が最も敬愛する映画作家の一人である。
一人の男の自殺の瞬間から、時を遡って彼自身の人生と、韓国現代史をシンクロさせて描いた「ペパーミント・キャンディー」、社会のはみ出し者同士の恋を大胆な設定で描いた「オアシス」など、彼の映画は常に等身大の普通の人間が抱える深いドラマを、思いもしなかった切り口から見せてくれる。
前作、「オアシス」の完成後、韓国政府の文化観光部長官という、日本で言えば文化庁長官に当たる要職に就いていたが、復帰作となる本作「シークレット・サンシャイン」は5年のブランクを感じさせない素晴らしい仕上がりであった。
夫を亡くしたシネ(チョン・ドヨン)は、一人息子のジュンと共に、夫の故郷である密陽に越してくる。
車の故障で立ち往生していたシネは、地元で自動車修理工場を営む冴えない中年男ジョンチャン(ソン・ガンホ)に助けられる。
小さな田舎町で、隣近所との葛藤を抱えながらもピアノ教室を開き、ジュンと二人で新生活をスタートさせたシネ。
ジョンチャンはそんな彼女に好意を持ち、頼まれもしないのに色々と気を焼くが、シネが振り向いてくれる気配はない。
そんなある日、シネの留守中にジュンが何者かに誘拐され、殺害される事件が起こってしまう・・・
イ・チャンドンは1954年生まれ。
70年代から80年代の韓国に吹き荒れた民主化運動のリーダーの一人であり、その後に作家として活動した後に、96年の「グリーンフィッシュ」で映画界に進出したという異色の経歴の持ち主である。
それ故か、彼の映画は登場人物の個人史を感じさせる物が多い。
主人公の人生が韓国現代史そのもののメタファーとなっている「ペパーミント・キャンディー」はそれが顕著に現れているが、本作もまた主人公であるシネの閉ざされた心の中の自分史と言える。
その意味で、これは個人の歴史が外に開いていった「ペパーミント・キャンディー」と対をなす様な作品である。
夫を失い、心に傷を負ったシネが目指したのは夫の故郷であり、「秘密の日だまり」という意味の名を持つ密陽という小さな街。
その街で彼女を待っていたのは、愛する息子の死という更なる喪失だった。
「小さな日だまりにも神の意志が宿る」と失意のシネを勧誘するキリスト教会のメンバーに、「日だまりなどただの光だ」と言い放つシネが求めていた物は何か。
喪失感に耐えかねて、心と体のバランスを崩しかけていたシネは、衝動的に訪れたキリスト教会で、突如として信仰に目覚める。
信仰はシネの心を支え、彼女は一時の安息得る。
ところがこの信仰が、ある事をきっかけにシネに更なる葛藤をもたらす事になるのである。
自分の感じていた神が、他人の感じている神とは異なるという、ある意味当たり前の事実を知った時、神の絶対的な癒しは彼女の中で偽りに変わってしまう。
人間だけでなく神にまで裏切られたシネが、天を睨みつけながらある方法で信仰を破壊しようとするシーンは衝撃的だ。
心の拠り所を失ったシネは、自らの生を確認するかの様に自らを傷つける。
極限まで追い込まれた人間存在の切なさを、その華奢な体いっぱいに表現したチョン・ドヨンが素晴らしく、彼女は本作で韓国人として初めて、カンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞している。
下心見え見えでシネを支える田舎のおっちゃん、ジョンチャン役には、今や韓国を代表する名優となったソン・ガンホ。
思えば彼を初めて観たのも、イ・チャンドンの「グリーンフィッシュ」だった。
切なく哀しい人生の中で、庭先を照らす小さな日だまりの様な希望。
あらゆる悲惨な運命に翻弄されたシネが、一つの答えにたどり着くラストは、とても静かで、しかし感動的な名シーンだ。
人間を癒すのはやはり人間なのだと思う。
この映画の持つ厳しさと優しさ、観賞後に深く尾を引く独特の後味は、クリント・イーストウッドの映画にも通じる物がある。
韓流スターだけではない、韓国映画の地力を見せつける見事な作品であった。
今回は「日だまり」にまつわる話なので、滋賀県の北島酒造の「太陽の一滴」をチョイス。
特に強い特徴は無い酒だが、純米酒らしいふくらみを適度に持ち、全体のバランスが良くシチュエーションを選ばない。
市井の人々が、人生の喜び悲しみを感じて飲むのは、こういう良い意味で普通の酒だろう。
イ・チャンドンの燻し銀の世界は、イーストウッド同様に日本酒がよく似合う。
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一人の男の自殺の瞬間から、時を遡って彼自身の人生と、韓国現代史をシンクロさせて描いた「ペパーミント・キャンディー」、社会のはみ出し者同士の恋を大胆な設定で描いた「オアシス」など、彼の映画は常に等身大の普通の人間が抱える深いドラマを、思いもしなかった切り口から見せてくれる。
前作、「オアシス」の完成後、韓国政府の文化観光部長官という、日本で言えば文化庁長官に当たる要職に就いていたが、復帰作となる本作「シークレット・サンシャイン」は5年のブランクを感じさせない素晴らしい仕上がりであった。
夫を亡くしたシネ(チョン・ドヨン)は、一人息子のジュンと共に、夫の故郷である密陽に越してくる。
車の故障で立ち往生していたシネは、地元で自動車修理工場を営む冴えない中年男ジョンチャン(ソン・ガンホ)に助けられる。
小さな田舎町で、隣近所との葛藤を抱えながらもピアノ教室を開き、ジュンと二人で新生活をスタートさせたシネ。
ジョンチャンはそんな彼女に好意を持ち、頼まれもしないのに色々と気を焼くが、シネが振り向いてくれる気配はない。
そんなある日、シネの留守中にジュンが何者かに誘拐され、殺害される事件が起こってしまう・・・
イ・チャンドンは1954年生まれ。
70年代から80年代の韓国に吹き荒れた民主化運動のリーダーの一人であり、その後に作家として活動した後に、96年の「グリーンフィッシュ」で映画界に進出したという異色の経歴の持ち主である。
それ故か、彼の映画は登場人物の個人史を感じさせる物が多い。
主人公の人生が韓国現代史そのもののメタファーとなっている「ペパーミント・キャンディー」はそれが顕著に現れているが、本作もまた主人公であるシネの閉ざされた心の中の自分史と言える。
その意味で、これは個人の歴史が外に開いていった「ペパーミント・キャンディー」と対をなす様な作品である。
夫を失い、心に傷を負ったシネが目指したのは夫の故郷であり、「秘密の日だまり」という意味の名を持つ密陽という小さな街。
その街で彼女を待っていたのは、愛する息子の死という更なる喪失だった。
「小さな日だまりにも神の意志が宿る」と失意のシネを勧誘するキリスト教会のメンバーに、「日だまりなどただの光だ」と言い放つシネが求めていた物は何か。
喪失感に耐えかねて、心と体のバランスを崩しかけていたシネは、衝動的に訪れたキリスト教会で、突如として信仰に目覚める。
信仰はシネの心を支え、彼女は一時の安息得る。
ところがこの信仰が、ある事をきっかけにシネに更なる葛藤をもたらす事になるのである。
自分の感じていた神が、他人の感じている神とは異なるという、ある意味当たり前の事実を知った時、神の絶対的な癒しは彼女の中で偽りに変わってしまう。
人間だけでなく神にまで裏切られたシネが、天を睨みつけながらある方法で信仰を破壊しようとするシーンは衝撃的だ。
心の拠り所を失ったシネは、自らの生を確認するかの様に自らを傷つける。
極限まで追い込まれた人間存在の切なさを、その華奢な体いっぱいに表現したチョン・ドヨンが素晴らしく、彼女は本作で韓国人として初めて、カンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞している。
下心見え見えでシネを支える田舎のおっちゃん、ジョンチャン役には、今や韓国を代表する名優となったソン・ガンホ。
思えば彼を初めて観たのも、イ・チャンドンの「グリーンフィッシュ」だった。
切なく哀しい人生の中で、庭先を照らす小さな日だまりの様な希望。
あらゆる悲惨な運命に翻弄されたシネが、一つの答えにたどり着くラストは、とても静かで、しかし感動的な名シーンだ。
人間を癒すのはやはり人間なのだと思う。
この映画の持つ厳しさと優しさ、観賞後に深く尾を引く独特の後味は、クリント・イーストウッドの映画にも通じる物がある。
韓流スターだけではない、韓国映画の地力を見せつける見事な作品であった。
今回は「日だまり」にまつわる話なので、滋賀県の北島酒造の「太陽の一滴」をチョイス。
特に強い特徴は無い酒だが、純米酒らしいふくらみを適度に持ち、全体のバランスが良くシチュエーションを選ばない。
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イ・チャンドンの燻し銀の世界は、イーストウッド同様に日本酒がよく似合う。

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