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崖の上のポニョ・・・・・評価額1550円
2008年07月20日 (日) | 編集 |
「芸術は爆発だ!」と言ったのは岡本太郎だったが、「崖の上のポニョ」は正しく宮崎駿のイマジネーションの爆発だ。
物語そのものは、よく知られているアンデルセンの「人魚姫」をベースに、アレンジを加えた物だが、なによりも最初から最後まで文字通り津波のごとく押し寄せる、アニメーションの洪水に圧倒される。

岬の崖の上の家に暮らす5歳の宗介(土井洋輝)は、ある日海岸で瓶に詰まってしまった赤い魚を見つける。
ポニョ(奈良柚莉愛)と名づけられたその魚は、不思議な魔法を持っており、宗介とポニョはお互いを好きになる。
実はポニョは、元人間の海底人フジモト(所ジョージ)と母なる海グランマンマーレ(天海祐希)の子供で、フジモトは隙を見てポニョを海に連れ戻してしまう。
宗介に会いたいポニョは、たくさんの妹たちの助けを借りて逃げ出し、魔法で人間の女の子にばけて嵐と共に地上に戻るのだが・・・・


「となりのトトロ」以来、二十年ぶりのキッズアニメという事で、宮崎駿の原点回帰と見る向きもあるようだが、事はそう単純ではない。
確かにシンプルなストーリーライン、動きと色彩の楽しさが詰まった表現、ここしばらくの作品よりも格段に年少の主人公など、「子供向け」を示唆する要素には事欠かない。
しかし、一見肩の力を抜いた小品にも見えるこの作品の、破壊的なエネルギーはどうだ!
宮崎駿は一時間四十分の間、まるで何かに取り憑かれたかの様に、ひたすらカリカチュアし、描き、ブレーキを失った動輪の様に、画を動かし続ける。
その表現の強さは明らかに物語の枠組みを破壊し、そこに配された多くの思わせぶりな設定には殆ど何の解決も示されないまま、映像の津波に押し流される。
いわば軽自動車の車体に800馬力のF1エンジンを載せた様な、パワフルではあるものの、恐ろしくアンバランスなこの作品には、「となりのトトロ」に見られた心地よい調和は無い。
いや、正確に言えば「トトロ」で見られたコンパクトに纏まろうとする牧歌的御伽噺の楽しさと、「ハウルの動く城」の様な拡散する物語の破綻が、モザイクのように合体しているのである。
その意味で、この作品は原点回帰どころか、2008年の宮崎駿にしか作れない作品であると言えると思う。

私は、アニメーションの持つ「止まった画を動かす」という魔法の力を再発見でもしたかのように、夢中になって映像を疾走させる宮崎駿のパワーに圧倒されてしまった。
物語はある程度しっかり考えた形跡はあるものの、描いている内にどうでも良くなってしまったのか、設定だけされて途中から忘れ去られている部分が多くある。
これは、プロットからきっちりとした脚本を経ずに、いきなり画コンテを書き始めるという宮崎スタイルの明らかな弊害だと思うが、それでも意図した事はある程度読み取れる。
最初わりとゆったりとスタートする物語は、宗介に会いたいというポニョの一途な思いと共に怒涛の疾走をはじめ、それはやがて宗介とポニョの二人による、母リサを捜す冒険の旅へと姿を変える。
共にその基本になっているのは、大切な誰かと会いたい、守ってあげたいという素朴な心だ。
互いを思う子供たちの心が生んだ冒険は、レイモンド・ブリックスの絵本を思わせるパステル風の背景の中に、恐ろしく緻密かつ大胆に描きこまれた動画として表現され、それはまるで、宗介とポニョの生命力がそのままフィルムに焼き付けられたかのような、清々しいエネルギーをスクリーンから発散させる。
そういえば、この冒険のシークエンスには、未来への希望を表現したユージン・スミスの有名な写真「楽園への歩み」からインスパイアされたと思しき印象的なカットもあった。

一方で、宗介の通う保育園の隣には、介護施設があり、そこには人生の終わりに差し掛かった車椅子の老婆たちが暮らしている。
物語の終盤で、彼女らが宗介たちの試練の立会人となる、海底の不思議な泡の中は、生命が再生される母なる海の竜宮城、常世の世界のイメージなのかもしれない。
またポニョの魔法で大きくなったおもちゃのポンポン船で、リサを探す航海の途中、宗介とポニョが出会うのは、彼らの近い未来の姿かもしれない、赤ん坊を抱いた若い夫婦
魔法の力で人間になったポニョは、この時の母親とのやりとりで初めて地上の命の仕組みを知るのである。
このシーンは、物語上明らかに異質で、他の部分とのつながりも無く、おそらく明確な意図をもってここに配されているのだと思われる。
生命にあふれ、未来に突き進む宗介とポニョ、それに対して物語の背景にさりげなく配された、生と死が循環するライフサイクルのイメージは、年少の観客には読み取りにくいだろうが、この作品に深みを与えている。

宗介役の土井洋輝と、ポニョ役の奈良柚莉愛の二人の子役の芸達者振りに驚かされるが、総じてキャラクターの声のマッチングはまずまずだった。
声に本職の声優ではなくて、実写の俳優を当てるやり方には賛否があると思うが、少なくとも主要人物の声から露骨に俳優の顔が浮かんでしまった「ハウル」よりは好感が持てる仕上がりだ。
特に、なぜか3ナンバーの軽自動車で峠を爆走する、走り屋(笑)の肝っ玉母さんを演じた山口智子は爽快で良かった。
でも、サンドイッチを食べながら、片手運転で攻めるのは、危ないのでやめましょう(笑

「崖の上のポニョ」は、今年67歳の宮崎駿が、彼の中の生命力を宗介とポニョに託してスクリーンで炸裂させたイマジネーションの爆弾であり、2008年時点での集大成と言える。
この中には「ラピュタ」で描かれた異世界のビジュアルの楽しさがあり、「トトロ」の童心、「もののけ姫」の疾走感、「千と千尋」の神秘性、そして「ハウル」の破綻までもが取り込まれている。
シンプルな物語と、ワクワクする世界観、美しくアニメーションの楽しさにあふれた映像は文句なしに楽しめるが、巨匠宮崎駿に高い完成度や思慮深く落ち着いたメッセージを期待した人には、少々エキセントリック過ぎるかも知れない。

今回は、母なる海の様な美しいカクテル、「ブルーシャンパン」をチョイス。
シャンパングラスに青の素となるブルーキュラソーを1tsp落し、そこにシャンパンを注ぐ。
カットフルーツをグラスの縁に飾って完成だ。
ブルーキュラソーのオレンジの風味が爽やか。
短めな割りに、結構お腹いっぱいになる宮崎映画の後は、すっきりしたシャンパンで喉を潤したい。

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