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2008年08月03日 (日) | 編集 |
観終わった瞬間、鳥肌が立った。
7月18日の全米公開以来、あらゆる興行記録を塗り替えているとか、IMDbのユーザー評価で歴代1位に躍り出たとか、故ヒース・レジャーのオスカー受賞が早くも取りざたされているとか、とにかく凄いらしいという事は伝わってきていたが、これは本当に期待に違わぬ出来栄えであった。
「ダークナイト」は、間違いなく「バットマン・ビギンズ」を遥かに上回るクリストファー・ノーランのベスト、いやアメコミ原作物の決定版と言える、映画史に残る傑作である。
バットマンことブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)によって冷や飯を食わされていた犯罪組織のボスたちは、バットマンを殺してみせるという謎の男、ジョーカー(ヒース・レジャー)を雇う。
彼は、「バットマンがマスクを脱ぐまでは、市民を殺し続ける」というルールで、バットマンと市当局に宣戦を布告する。
ジョーカーの執拗な襲撃によって、次々とターゲットとされた人々が倒れると、恐怖に駆られた人たちは、姿を見せないバットマンを卑怯者呼ばわりし始める。
正義感溢れる新任地方検事のデント(アーロン・エッカート)に、ゴッサムシティの正義を託そうとするバットマンは、会見で自分の正体を明かす決断をするのだが・・・
クリストファー・ノーランと言えば凝りに凝った脚本の人だが、今回は特に凄い。
物語の中心にいるのはバットマンとジョーカー、デントの三人。
彼らはそれぞれ陰と陽、善と悪、表と裏を象徴するキャラクターだが、一見対照的な彼ら三人は、実は同時に合わせ鏡であり、互いの中に自分を見る関係である。
互いが同時に裏の裏をかこうとするスリリングかつ複雑怪奇な騙し合いの中で、幾重にも絡み合った登場人物の葛藤が、物語に深いテーマを描き出してゆく。
これは本当に頭の良い人にしか書けない脚本である。
ゴッサムシティの影の番人としてのバットマンと、対照的に表の世界で新たなヒーローとして登場したデント。
レイチェルがデントに惹かれてゆく事に、バットマンは人間的な痛みを感じ、早くダークヒーローとしての役割を終えたがっている。
そこへ登場したのが、バットマンの考える「悪」という概念の外にいるジョーカー。
彼は、理屈の存在しない悪のための悪、破壊のための破壊、つまりは恐怖そのものだ。
この理解不能な敵は、バットマンが正体を明かすまで、ゴッサムシティを攻撃し続けるという脅しをかける。
恐怖からあっさりとバットマン非難に転じる人々を見て、バットマンの葛藤はより深まる。
この状況の中で、バットマンとデントは、人々の心に残る正義の炎を絶やさない為に、自己犠牲的な行動によってジョーカーを追い詰めようとするのだが、それすらもジョーカーに新たなゲームのネタを提供しただけという皮肉。
ジョーカーが死のゲームを通して繰り出す、いくつもの「究極の選択」は、人々の心を急速に支配してゆく。
闇の中に恐怖が充満し、混沌としたゴッサムシティは、ある意味でアメリカ人の見た世界の戯画化された姿かもしれない。
ジョーカーは明確な目的を持たず、破壊のための破壊を行うテロリズムのメタファーと見ることが出来る。
劇中、ジョーカーがバットマンを名乗った偽者を拉致し、彼を拷問し処刑するビデオをマスコミに送りつけるのは、イラクやアフガニスタンで誘拐した外国人の処刑シーンをネットに流し、世界に恐怖を植えつけるテロリストの行動を思わせる。
そのジョーカーに対抗する術を持たず、あまつさえ彼の中に自らの姿すら見てしまうバットマンの困惑と痛みは、もはや単なるアメコミヒーロー物の範疇を軽く超えている。
スパイダーマンやハルクの葛藤は、基本的に彼ら個人の問題であったが、ここでは世界のあり方そのものが葛藤の核心となるのである。
ぶっちゃけ「漫画」であるにもかかわらず、混沌と恐怖によって支配されるこの映画の世界は、恐ろしく今の時代のリアリティに富む。
クライマックスで、バットマンが一縷の望みを託す大衆の選択が、むしろ一番嘘っぽく見えてしまうあたり、物語を通して世界の本質的な姿を見せ付けられてしまったかのようにすら思えてくる。
だからこそ、この時代に真のヒーローは、闇の騎士「ダークナイト」として生きるしかないのだろう。
因みに今回バットマンは、マフィアの資金の鍵を握る中国人実業家ラウを捕らえるために、初めてゴッサムシティを離れて香港に飛ぶ。
この映画が戯画化された世界だと考えると、ゴッサムシティという虚構の街からあえて香港という現実の街を描写したあたりも、中国と言う存在に対するある種の恐れを反映している様で意味深だ。
前作を含めて、これがノーランとの三度目のコンビとなる、クリスチャン・ベール以下のキャストは前作からほぼ続投。
唯一レイチェル役だけがケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールへと代わっている。
新キャラクターとしては、アーロン・エッカート扮する地方検事ハーヴェイ・デントが登場し、ゲイリー・オールドマンの御馴染ゴードン警部補と犯罪撲滅でタッグを組む。
前作ではあまり目立たなかったゴードンも、今回は大活躍だ。
物語の後半登場するのはトゥー・フェイス。
この役は原作を知っていれば誰の事なのかはお馴染みだが、原作も「バットマン・ビギンズ」以前の映画も知らないという人には意外性のあるキャラクターだろう。
「バットマン・フォーエヴァー」ではトミー・リー・ジョーンズが演じていたが、今回トゥー・フェイス誕生の経緯は原作と大きく異なり、なるほど物語の流れを生かした上手い脚色になっている。
そして・・・今回の作品を決定付けたのはやはりジョーカーだろう。
この映画史上屈指のパラノイア系キャラクターを演じたヒース・レジャーは、残念ながら今年一月に急死してしまったが、彼の演技は鬼気迫るもの。
ティム・バートン版でジャック・ニコルソンが演じた、コミカルな狂気を感じさせるキャラクターとは大きく異なり、正に人間の中の醜さと悲しさだけを抽出したような存在になっている。
落書きが水に塗れて溶けた様な、不気味極まりないメイクも含めて、子供が見たらトラウマ化必至のキャラクターで、観る者の脳裏に強烈に残る。
ヒース・レジャーは、図らずも劇中のジョーカーの意図した通り、死して暗黒の時代の伝説となったのかもしれない。
この深みとキレに対抗できるのは、やはり歳月を経たウィスキー。
今回はイギリスを代表する蒸留所グレンリヴェットから、「ベリーズ・オウン・セレクション ザ・グレンリヴェット 1974」をチョイス。
適度に軽く、それでいてエレガントで深い。
お手本のようなシングルモルト。
犬に追い立てられ、ヨレヨレになって逃げるバットマンの悲哀に思いを馳せたい。
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7月18日の全米公開以来、あらゆる興行記録を塗り替えているとか、IMDbのユーザー評価で歴代1位に躍り出たとか、故ヒース・レジャーのオスカー受賞が早くも取りざたされているとか、とにかく凄いらしいという事は伝わってきていたが、これは本当に期待に違わぬ出来栄えであった。
「ダークナイト」は、間違いなく「バットマン・ビギンズ」を遥かに上回るクリストファー・ノーランのベスト、いやアメコミ原作物の決定版と言える、映画史に残る傑作である。
バットマンことブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)によって冷や飯を食わされていた犯罪組織のボスたちは、バットマンを殺してみせるという謎の男、ジョーカー(ヒース・レジャー)を雇う。
彼は、「バットマンがマスクを脱ぐまでは、市民を殺し続ける」というルールで、バットマンと市当局に宣戦を布告する。
ジョーカーの執拗な襲撃によって、次々とターゲットとされた人々が倒れると、恐怖に駆られた人たちは、姿を見せないバットマンを卑怯者呼ばわりし始める。
正義感溢れる新任地方検事のデント(アーロン・エッカート)に、ゴッサムシティの正義を託そうとするバットマンは、会見で自分の正体を明かす決断をするのだが・・・
クリストファー・ノーランと言えば凝りに凝った脚本の人だが、今回は特に凄い。
物語の中心にいるのはバットマンとジョーカー、デントの三人。
彼らはそれぞれ陰と陽、善と悪、表と裏を象徴するキャラクターだが、一見対照的な彼ら三人は、実は同時に合わせ鏡であり、互いの中に自分を見る関係である。
互いが同時に裏の裏をかこうとするスリリングかつ複雑怪奇な騙し合いの中で、幾重にも絡み合った登場人物の葛藤が、物語に深いテーマを描き出してゆく。
これは本当に頭の良い人にしか書けない脚本である。
ゴッサムシティの影の番人としてのバットマンと、対照的に表の世界で新たなヒーローとして登場したデント。
レイチェルがデントに惹かれてゆく事に、バットマンは人間的な痛みを感じ、早くダークヒーローとしての役割を終えたがっている。
そこへ登場したのが、バットマンの考える「悪」という概念の外にいるジョーカー。
彼は、理屈の存在しない悪のための悪、破壊のための破壊、つまりは恐怖そのものだ。
この理解不能な敵は、バットマンが正体を明かすまで、ゴッサムシティを攻撃し続けるという脅しをかける。
恐怖からあっさりとバットマン非難に転じる人々を見て、バットマンの葛藤はより深まる。
この状況の中で、バットマンとデントは、人々の心に残る正義の炎を絶やさない為に、自己犠牲的な行動によってジョーカーを追い詰めようとするのだが、それすらもジョーカーに新たなゲームのネタを提供しただけという皮肉。
ジョーカーが死のゲームを通して繰り出す、いくつもの「究極の選択」は、人々の心を急速に支配してゆく。
闇の中に恐怖が充満し、混沌としたゴッサムシティは、ある意味でアメリカ人の見た世界の戯画化された姿かもしれない。
ジョーカーは明確な目的を持たず、破壊のための破壊を行うテロリズムのメタファーと見ることが出来る。
劇中、ジョーカーがバットマンを名乗った偽者を拉致し、彼を拷問し処刑するビデオをマスコミに送りつけるのは、イラクやアフガニスタンで誘拐した外国人の処刑シーンをネットに流し、世界に恐怖を植えつけるテロリストの行動を思わせる。
そのジョーカーに対抗する術を持たず、あまつさえ彼の中に自らの姿すら見てしまうバットマンの困惑と痛みは、もはや単なるアメコミヒーロー物の範疇を軽く超えている。
スパイダーマンやハルクの葛藤は、基本的に彼ら個人の問題であったが、ここでは世界のあり方そのものが葛藤の核心となるのである。
ぶっちゃけ「漫画」であるにもかかわらず、混沌と恐怖によって支配されるこの映画の世界は、恐ろしく今の時代のリアリティに富む。
クライマックスで、バットマンが一縷の望みを託す大衆の選択が、むしろ一番嘘っぽく見えてしまうあたり、物語を通して世界の本質的な姿を見せ付けられてしまったかのようにすら思えてくる。
だからこそ、この時代に真のヒーローは、闇の騎士「ダークナイト」として生きるしかないのだろう。
因みに今回バットマンは、マフィアの資金の鍵を握る中国人実業家ラウを捕らえるために、初めてゴッサムシティを離れて香港に飛ぶ。
この映画が戯画化された世界だと考えると、ゴッサムシティという虚構の街からあえて香港という現実の街を描写したあたりも、中国と言う存在に対するある種の恐れを反映している様で意味深だ。
前作を含めて、これがノーランとの三度目のコンビとなる、クリスチャン・ベール以下のキャストは前作からほぼ続投。
唯一レイチェル役だけがケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールへと代わっている。
新キャラクターとしては、アーロン・エッカート扮する地方検事ハーヴェイ・デントが登場し、ゲイリー・オールドマンの御馴染ゴードン警部補と犯罪撲滅でタッグを組む。
前作ではあまり目立たなかったゴードンも、今回は大活躍だ。
物語の後半登場するのはトゥー・フェイス。
この役は原作を知っていれば誰の事なのかはお馴染みだが、原作も「バットマン・ビギンズ」以前の映画も知らないという人には意外性のあるキャラクターだろう。
「バットマン・フォーエヴァー」ではトミー・リー・ジョーンズが演じていたが、今回トゥー・フェイス誕生の経緯は原作と大きく異なり、なるほど物語の流れを生かした上手い脚色になっている。
そして・・・今回の作品を決定付けたのはやはりジョーカーだろう。
この映画史上屈指のパラノイア系キャラクターを演じたヒース・レジャーは、残念ながら今年一月に急死してしまったが、彼の演技は鬼気迫るもの。
ティム・バートン版でジャック・ニコルソンが演じた、コミカルな狂気を感じさせるキャラクターとは大きく異なり、正に人間の中の醜さと悲しさだけを抽出したような存在になっている。
落書きが水に塗れて溶けた様な、不気味極まりないメイクも含めて、子供が見たらトラウマ化必至のキャラクターで、観る者の脳裏に強烈に残る。
ヒース・レジャーは、図らずも劇中のジョーカーの意図した通り、死して暗黒の時代の伝説となったのかもしれない。
この深みとキレに対抗できるのは、やはり歳月を経たウィスキー。
今回はイギリスを代表する蒸留所グレンリヴェットから、「ベリーズ・オウン・セレクション ザ・グレンリヴェット 1974」をチョイス。
適度に軽く、それでいてエレガントで深い。
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