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ウォンテッド・・・・・評価額1350円
2008年09月17日 (水) | 編集 |
マーク・ミラーのグラフィック・ノベルを原作としたアクション大作。
1000年の歴史を持つ暗殺組織にまつわる物語だが、これが普通の人間ではなく、まるでジェダイ騎士団みたいな超能力を持った連中なので、ビルからビルへ飛び移るわ、弾丸の玉を曲げるわもう無茶苦茶。
怒涛のビジュアルに圧倒されて、あっという間の110分だが、どうも物語を額面どおりには解釈し難い。

顧客管理担当のサラリーマンとしては働くウェズリー(ジェームズ・マカヴォイ)は、ストレス100%の毎日を送っており、持病のパニック障害も悪化の一途。
ところがある日、スーパーマーケットで見ず知らずの男に銃撃され、突然現れた謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)に救われる。
実はウェズリーは、暗殺団「フラタニティ」の敏腕エージェントの息子で、銃撃してきたのは父を殺し、ウェズリーの命も狙う裏切り者のクロス(トーマス・クレッチマン)という男だという。
フラタニティのボス、スローン(モーガン・フリーマン)はウェズリーに受け継がれている暗殺者としての特殊能力を見抜き、組織の一員として迎え入れようとするのだが・・・


ダメ男が実は超能力暗殺団の敏腕エージェントの息子で、今まで想像もしなかった血と暴力の世界へ導かれるという導入部は、映像表現も含めて何となく「マトリックス」に似ているなあと思ったら、原作は元々「マトリックス」に強い影響を受けて描かれたらしい。
この物語を映像化するのは、「ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR」で注目されたロシアのティムール・ペクマンペトフ監督
私は「ナイト・ウォッチ」も、その続編の「デイ・ウォッチ」も、混乱したストーリーラインに、ひたすらスタイリッシュな映像を詰め込んだだけの一人よがりな代物にしか見えず、全く楽しめなかった。
ただハリウッド進出となった本作では、ペクマンペトフの最大の欠点である脚本を別チームが手がけているおかげで、少なくとも物語が追える分、彼の得意の大胆な映像表現を楽しむ事が出来た。

物語的には、「マトリックス」+「スターウォーズ」といった感じで、凄腕エージェントの血を引く主人公ウェズリーを、「ナルニア国物語」のタムナスさんで有名になったジェームズ・マカヴォイが演じ、彼を暗殺のプロに育て上げる、オビ・ワン的キャラクターであるフォクスにアンジェリーナ・ジョリー、組織の謎めいたボスにモーガン・フリーマンと芸達者が揃う。
宣伝ではアンジェリーナ・ジョリー主演が強調されているが、実際にはこれは完全にウェズリーの物語であり、終始彼の目線で物語が進む。
マカヴォイは強迫性障害気味のサラリーマンから、地獄の特訓を経て、目がイっちゃってる暗殺者になるまで、なかなかの好演と言える。

売り物のアクションも、冒頭の「マトリックス」ばりの高層ビルでのジャンピング・アタックから、マーケットの銃撃戦、ヴァイパーV10とトラックのカーチェイスと畳み掛け、殆ど息つく間もない。
ウェズリーが一人前になって、クロスとの追撃戦に移ってからも、列車アクションに一人対無数の銃撃戦と、やや既視感を感じさせながらも、工夫を凝らしたアクションシークエンスの連続で、物語の構成という不得意分野から開放されたペクマンペトフの演出もノリがよく、「帝国の逆襲」の有名なシーンを連想してしまうドンデン返し以降も中ダレすることなく最後まで一気呵成に突っ走る。

しかし、見所は盛りだくさんなのに、全体に爽快感を感じない。
それは結局のところ、映画の中で実際に描かれているのが、ヤクザの抗争にも似た、ちっちゃな、ちっちゃな組織の内部抗争に過ぎないからだ。
「一を殺して千を救う」という台詞から想像する、ストレートにヒロイズムを連想させる物語はここにはなく、洗脳されて殺人マシーンと化したマヌケな男が、一般市民も巻き込んだ、やりたい放題の大虐殺の結果、自分の欲求を晴らすだけの話になってしまっている。
ぶっちゃけ、この話で爽快感など得られる訳が無いのである。

しかし私は、この映画を観て、「マトリックス」と同時期に作られた、もう一つの問題作、デビッド・フィンチャーの「ファイトクラブ」を連想してしまった。
私には、この映画全体が、社会生活のストレスを限界まで抱えたウェズリーの破壊的な妄想と考えた方がシックリ来るし、その方が物語としても皮肉が利いている様に思う。
あのコロンバイン高校乱射事件の犯人が、「バスケットボール・ダイアリーズ」という映画の、主人公の高校生が学校で銃を乱射する妄想シーンに影響を受け、そのまんま実行してしまったという話は有名だが、この映画のウェズリーも実はそういう事ではないのか。
そう考えると、これは現実と仮想の曖昧さを巧みなレトリックで表現した「マトリックス」と、精神世界の物語を映画的なビジュアル表現に昇華した「ファイトクラブ」を合体させた進化形と捉えた方が正解なのかもしれない。
ただ、ペクマンペトフの映画は、「ナイト・ウォッチ」や「デイ・ウォッチ」も、ドラッグでもやって幻覚に浸っている様な映画だったから、単に演出家のスタイルがたまたまそう見せたと言えなくもない。
「ファイトクラブ」的な物語の解釈も、私の好意的な妄想に過ぎない訳で、実際に作者の意図したものがそっちだとすると、完成した映画が少々中途半端なのも確かだろう。
本作のヒットで、どうやら作られる事は確実そうな続編を観れば、そのあたりの応えも示されるのだろうか。

今回は、監督の出身地にちなんでロシアのワイン・・・ではなくて、カリフォルニアはソノマのロシアン・リバーのワインをチョイス。
カリフォルニアワインの最高峰の一つである、オーパス・ワンの醸造責任者として知られる、セシル・レマール・ダービーズが独立して作り出した、「ダービーズ・ワイン シャルドネ・ソノマ」の2002をチョイス。
いわゆるノン・フィルターワインで、徹底的な手作りへの拘りで、少量生産されるマニアックな酒。
華やかな果実味とオーク香が楽しめ、華やかで透明感のあるスッキリ味。
今後徐々に値段が上がってくる銘柄である事は確実なので、比較的リーズナブルな今が買いどきかもしれない。

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