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ブーリン家の姉妹・・・・・評価額1450円
2008年10月29日 (水) | 編集 |
16世紀のイングランド王宮を舞台に、国王ヘンリー八世と彼の寵愛を受けたブーリン家の二人の姉妹を巡る愛憎劇。
強大な権力を持つ者を巡って、周りの人間が権謀術数を繰り広げるというのは人の世の常であるらしく、要するにこれは西洋版の「大奥」だ。
フィリッパ・グレゴリーの原作は史実をベースにしているものの、物語そのものはこの手の話の定番とも言える展開で、特に深い内容でもないが、スカーレット・ヨハンソンナタリー・ポートマンという美女二人の火花散る対決、細部まで作りこまれたビジュアルと見所は多い。

国王ヘンリー八世(エリック・バナ)の治世。
王妃のキャサリン(アナ・トレント)は死産と流産を繰り返し、ヘンリーは男子の世継ぎに恵まれなかった。
地方貴族ブーリン家にはアン(ナタリー・ポートマン)とメアリー(スカーレット・ヨハンソン)という美しい姉妹がいた。
父親のトーマス・ブーリン(マーク・ライランス)は、アンを王の愛人として王宮に送り込む計画を立てるが、王は既に人妻であった妹のメアリーに一目ぼれしてしまう。
二人は王妃の侍女として宮廷に入り、やがてメアリーが王の子を妊娠するが、やがてその運命は逆転してゆく・・・


英国史に詳しい方ならお分かりだろうが、この作品は史実とフィクションを巧みに組み合わせている。
アンとメアリーの姉妹のうち、最初にメアリーがヘンリー八世の愛人となるが、後にアンが正式な后となり、娘のエリザベス一世を産んだのは事実。
しかし、劇中で王の子とされるメアリーの子、ヘンリーの実際の父親が誰なのかには諸説あるし、姉妹の関係もメアリーが姉でアンが妹であったというのが定説となっている。
また映画では、アンはわずか二ヶ月間フランスの宮廷で暮らしただけで生まれ変わった様になるが、実際の彼女は幼少期から二十歳ごろイングランドに戻ってキャサリン王妃の侍女になるまでの殆どの期間フランスで育っており、当然帰国以前にヘンリーと接触はなかっただろう。
映画はアンとメアリーの関係を大胆に脚色し、最初に王に見初められなかったアンが、王の寵愛を受ける妹メアリーに嫉妬し、その復讐として王を誘惑するという設定になっている。
結果的に愛を打算的に利用したアンは報われず、姉妹を利用して権力のおこぼれに与ろうしようとした周りの人間も含めて幸福は訪れない。
史実では曖昧な王を中心とした姉妹の関係を、明確な三角関係とする事で、寓話的な構造を持つ因果応報の物語としているのだ。

約40年に渡りイングランドを支配し、同名のシェイクスピアの戯曲でも有名なヘンリー八世も、映画では惚れっぽい面だけが強調されているが、実際の王は芸術・文化に高い才能を発揮した反面、側近や王妃、愛人を次々に処刑していった冷酷な為政者として知られている。
彼には生涯に正式に結婚しただけで6人もの王妃がいたが、最初の妻であるキャサリン・オブ・アラゴンは離婚後に幽閉され失意のうちに亡くなっているし、二番目の妻アン・ブーリンは映画で描かれた通り処刑され、三番目の妻ジェーン・シーモアは待望の男子を産んだものの産後の肥立ちが悪く病死、四番目の妻アン・オブ・クレイヴスは顔がブサイクという酷い理由で結婚後直ぐに離婚されている。
おまけに本人に似ていない肖像画を見せて結婚させたという理由で、側近のクロムウェルを処刑している。
その次の妻のキャサリン・ハワードはブーリン姉妹の従姉妹だが、彼女もまたアン・ブーリンと同じような不義密通の嫌疑をかけられて処刑、最後の妻のキャサリン・バーだけは、ヘンリーが死んだおかげで王妃として無事に天寿をまっとう出来た。
またアン・ブーリンとの結婚のために、カソリックと決別して英国国教会を設立した件でも、大法官だった賢人トマス・モアをはじめ反対するカソリック関係者の多くを処刑しており、要するに自分の欲望のためなら手段を選ばない男だった様だ。
ロンドン塔には今もアンやキャサリン初め、ヘンリーに処刑された犠牲者たちの幽霊が出るというのはあまりにも有名な話。
アン・ブーリン処刑の顛末に関しても諸説あり、アンが男子を産むために実際に王以外の男と姦通したとする説もあるが、実際のところヘンリーは既にジェーン・シーモアと結婚を決意していて、その為に邪魔になったアンを謀殺したとする見方が一般的だ。

まあこの作品の場合、史実に忠実な物語というよりも、あくまでも混沌とした王宮を舞台にした姉妹の運命的な愛憎劇という成り立ちなので、史実との乖離はあまり目くじらを立てる必要は無いが、現実に起こった事に比べると、映画はかなり大人しい印象で、物語的にも深みに欠ける。
それは物語の枠組みを、王とブーリン姉妹の三角関係に構成しながら、内面的な描写はあくまでも姉妹の関係に限られ、王のキャラクターが受身にとどまっているからだろう。
ピーター・モーガンの脚本は、アンとメアリーの心の葛藤は丁寧に描かれているものの、彼女らと王の間の葛藤は、男子を産む産まない以外にはあまり追求されているとは言えず、王の内面があまり見えない。
この物語は、彼女らに対する王の異なる感情が描かれて初めて、三つの情念のトリニティとして完成するのではないだろうか。
これが本格的な劇場用映画デビュー作となるジャスティン・チャドウィック監督の演出は、衣装の色彩設計やこまごました装飾品などにも姉妹の性格を反映させるなど、細やかで丁寧。
自らも俳優だけあって、演技者の魅力を引き出すのはなかなか上手く、タイトルロールの二人はどちらも魅力的に撮られていると思う。
ただ、新人らしい強い個性という物はあまり見えず、まずは大作を手堅くまとめたという感じだ。

因みに、姉妹なのにまるっきり似ていないナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンだが、残されているブーリン姉妹の肖像画を見ると、ルックスに関してはかなり忠実なキャスティングなのがわかる。
本物のブーリン姉妹も似ていなかったのだから、役者が似てないのは致し方ない。
魑魅魍魎の巣食う伏魔殿のごとく、おそらくは映画以上のドロドロの愛憎劇が繰り広げられていたであろう、当時の貴族社会。
映画では良識人として描かれるブーリン姉妹の母親であるエリザベス・ハワードも、一説によると若い頃にヘンリー八世の年上の愛人であったという。
果たして全く似ていないアンとメアリーの父親は?などとつい考えてしまうが、そこまで想像力たくましく描いてくれたら、宮廷版ゴッドファーザーのような大河ドラマが出来上がっただろう。
まあ2時間以内の上映時間じゃとても無理だし、シンプルにまとめられた寓話的な時代劇として、水準以上の作品と言える。
人間と言うのは、何時の世も欲望深き者の様で・・・

因みに、この作品でスペイン出身の王妃キャサリンを演じているのは、1973年の「ミツバチのささやき」で無垢なる少女アナを演じて映画史の伝説となったアナ・トレント
42歳となった今も、どことなく幼い頃の面影がある。
今回はイングランド王室とも関係が深いスペインから、「サンタ クルス デ アルタス」の2005年物をチョイス。
樹齢100年以上のガルナッチャ種から生み出され、複雑な香りとを持つ、非常にボディの強いパワフルな赤。
映画ではやや物足りなかった深みを十分に感じさせてくれるだろう。

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