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ブタがいた教室・・・・・評価額1500円
2008年11月09日 (日) | 編集 |
究極の食育映画
人間は、他の命を取り込んで生きている。
それは生命の必然であり、ある意味原罪なのだと思うが、嘗ては当たり前のように身近に存在していた命のサイクルが、隠される様に見えなくなって久しい。
核家族化が進み家の中で人が死ななくなり、都市のマンションやアパートでペットは飼えず、スーパーで売っている肉や魚は細かくカットされ、原型を見ることは殆ど無い。
実際、大人になるまで、一度も生命の死という物を体験した事が無いという人も増えていると聞く。
そんな時代に、学校のクラス全員で一頭の豚を飼育し、卒業の時に食べるという授業を本当にやった教師がいたというのだから驚きだ。

4月の始業式。
六年二組の教室に、新任の担任の星先生(妻夫木聡)が、一頭の子豚を連れてくる。
「皆でこの子豚を育て、最後に食べようと思います」
この提案に子供たちはびっくりするが、子豚はPちゃんと名づけられ、校庭で飼育される事になる。
最初は戸惑いながらも、徐々にPちゃんに愛情をもって接する様になる子供たち。
しかし、夏が来て秋になり、子供たちの卒業が迫ってくると、彼らは決断を迫られる事になる。
Pちゃんを、食べるのか、食べないのか・・・・


おそらく、映画にするのはとても難しい作品だったと思う。
元々この話は、1990年に大阪の小学校で実際に行われた授業だという。
その顛末を記録したドキュメンタリー番組を観て感銘を受けた前田哲監督が、長年構想を温め、実現させた作品だ。
私は放送当時海外在住だったので、残念ながら元のドキュメンタリーを観ておらず、その番組に寄せられた大きな反響というのも知らなかったのだが、そりゃ確かに現在の日本でこんな授業をやったら大きな波紋を起こすだろう。
映画では六年生の一年間の話になっているが、実際には二年半にわたって豚を飼育し、その後子供たちの間で豚を食べるか否かについて激論が交わされたと言う。

映画でも、上映時間の四割近くを占める、子供たちの討論のシーンが圧巻だ。
まるでドキュメンタリーの様な臨場感と思ったら、実はこの映画には大人用の脚本と子供用の二通りの脚本が用意され、子供用の物は台詞が白紙となっていたそうだ。
オーディションで選ばれてから、撮影が終わるまでのおよそ半年間、子供たちは実際に豚に触れて、情愛を通じ、その心で言葉を交わしているので非常にリアル。
つまりこれは、芝居ではなく子供たちの本心からの討論なのだ。
観客はまるで六年二組のもう一人の生徒になったかのような感覚で、彼らの意見を聞き、自分ならどうするかを考える。
教室は食べる派と食べない派に二分されるのだが、食べない派が感情論に陥ってしまっているのに対して、食べる派はある程度冷静な目で命を受け取るという事を判断しているように見える。
大人の今だったら、たぶん私も食べる派だけど、小学生の頃だったらどうだったか。
実際彼らの言葉の応酬は、もちろん子供っぽい部分も多いのだが、どちらの主張も非常に鋭く、こちらもエモーションを刺激され涙が止まらなかった。
その涙は、物語としての映画を観ての感動の涙というよりは、自分自身も彼らの中にいて、感極まって同じように泣いているという不思議な涙だ。

この映画はあくまでも子供たちが主役であって、台詞つきシナリオを渡された大人の俳優たちは基本的には子供たちの芝居を受けて、物語をリードする役回り。
その中でも、この授業の発案者で、最後に自らも重い決断を迫られる妻夫木聡はなかなかの好演。
子供たちの真剣さに、思わず自分の信条までもぶれてしまうあたりは非常にリアルだった。
先生方の中では田畑智子がふっくらしていて驚いたが、校長先生役の原田美枝子が良い。
思慮深く、包容力もあり、こんな校長先生ばかりだったら、教育問題なんて起こらないだろう。

「ブタがいた教室」はかなり風変わりな作品で、非常にドキュメンタリー的なアプローチで作られたドラマと言えるかと思う。
テーマをそのままぶつけ合った討論のシーンがあまりにもインパクトが強く、正直物語の部分はバックグラウンドに過ぎないのだが、この映画の場合は、あくまでも観客が共に考える事が重要なのだ。
劇中で星先生が言うように、これは決して正解のないテーマ
映画の結論が正しい訳でもないし、間違っている訳でもない。

今現在、この授業を再び行うことは難しいだろう。
授業そのものに賛否があるだろうし、実際当時は反発の方が多かった様だ。
正直、私も小学生には結構キツイ体験かなと思わないでもない。
しかし、こんなにも命と真剣に向き合うという得難い経験は、間違いなく子供たちの心に大きな何かを残したと思う。
実際の授業を受けた子供たちだけでなく、映画に出演したことで授業を追体験した子供たちも同様だ。
この映画は観るもの全てに、18年前の授業の意味するところ、そして命の問題に直面した子供たちの感情を擬似的に追体験させてくれる。
その意味で、これは素晴らしい教育映画であり、学校で見せるべき作品だろう。
感受性の豊かな子供たちは、きっとこの映画からの大切なメッセージを掴み取り、自分自身の心で考えるはず。
ラストの26人の生徒たちと、彼らの描いたPちゃんの絵を使ったクレジットもナイス。
作り手の真摯さを感じる事の出来る力作である。

ところで、Pちゃんには悪いけど、私はトンカツが大好きだ。
トンカツを食べる時に飲みたいお酒というと、人によって様々だろうが、私はさっぱりしたビール。
今回はプレミアムビールの代表格、「琥珀エビス」をチョイス。
名前の通りの美しい琥珀色が特徴で、カラッと揚がったトンカツとの相性は抜群。
やっぱり・・・食べるからには心の底から美味しく食べさせていただいて、成仏してもらいたい。

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