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ブラインドネス・・・・・評価額1500円
2008年11月25日 (火) | 編集 |
ある日突然、全人類が失明してしまったら・・・
「ブラインドネス」は、人類から視覚が奪われた世界を描く、異色のSFサスペンス。
ノーベル賞作家のジョセ・サラマーゴ原作の「白の闇」を、スクリーンに映し出したのは鬼才フェルナンド・メイレレス
世界を感じる最も頼るべき力を失った時、人はどう生きるのかを問うた問題作である。

ある日の街角。
一人の日本人男性(伊勢谷友介)が、突然視力を失う。
それは暗黒の闇ではなく、目の前に光が溢れ、白の闇につつまれるという奇妙な現象。
彼は妻(木村佳乃)と共に眼科医(マーク・ラファロ)に駆けつけるが、別段異常は見つからず、眼科医は心因性のものだろうと考える。
ところが、その翌朝眼科医も視力を失い、謎の失明現象は急速に広まってゆく。
政府は感染者の隔離に踏み切り、眼科医も隔離施設に送られる事になるのだが、彼の妻(ジュリアン・ムーア)は見えているにもかかわらず、失明したと偽って夫に同行する。
やがて、隔離施設の収容者は膨れ上がり、外の世界も急速に崩壊してゆく。
だが、医師の妻には感染の兆候があらわれず、盲目の人々の中でただ一人の「見える人」でありつづけるのだが・・・・


舞台となるのは、ある国の、ある街
明確な情報は明示されず、登場人物も名前を持たない。
「医者」だとか、「医者の妻」とか「泥棒」「サングラスの女」などの言葉で形容されるだけである。
何処でもなく、誰でもないということは、逆に言えば何処でもあり、誰でもあるという事である。
世界の縮図として、選ばれた街という事だろう。
映画は、ただ一人の見える人間である「医者の妻」の視点で、この壊れた世界を観察するように進んでゆく。

「白の闇」という現象で人々が失明し始めると、政府は直ぐに隔離政策をとる。
これ自体はまあ普通の対応だし、未知の危険に遭遇した場合、それを可能な限り遠ざけ様とするのは、人間の本能と言っても良いだろう。
興味深いのは、遠ざけられた危険、つまり感染者に対する社会の無関心だ。
一度排除された異物に対して、社会が全く関心を失ってしまう、つまり自らの一部とはもはや見做さなくなるというのは、ナチスの絶滅収容所、あるいは日系人強制収容所を思わせる隔離病棟の描写が雄弁に物語る。

そして見えないという困難を共有する、見捨てられた者同士は、しばらくの間は不便はあっても平等で平和な日々を過ごす。
しかし、閉ざされた世界のキャパシティが限界に達すると、力を持つ統率者が全てを支配しようとするのも、人間の世界の常。
一丁の銃を手にした、「第三病棟の王」が食料を独占し、力による支配を開始すると、物語は人間社会の醜さをカリカチュアしはじめる。
要するに、このあたりはウィリアム・ゴールディングの「蠅の王」なのだけど、正直この部分のキャラクターの描き方は私にはあまりリアリティを感じなかった。
収容所に君臨する「王」に対して、人々はまったく無抵抗で、要求されれば愛する妻や恋人すら差し出す。
こんな事がありえるだろうか。
支配者の力のよりどころはたった一丁の銃であり、何より彼も「見えない」事に変わりは無いのである。
戦争になったところで、敵味方すら判らないのに、戦う事をこれほど恐れる理由が見えない。
「王」にしたところで、どう考えても役に立ちそうも無い貴金属類などを集め始めるのはいかがなものか。

また、ここで一番曖昧になってしまったのは、主人公であり、唯一の見える人である「医師の妻」のキャラクターだ。
何しろ彼女は見えるのである。
聞くところによると、人間は情報収集の90%以上を視覚に頼っていると言う。
つまり、この世界での彼女は神に匹敵する超人なのだ。
その気になれば第三病棟の男たちを、彼女一人だけで皆殺しにする事も容易いだろう。
それなのに、「王」の要求に応じて自らを差し出してまで、見えるという事を秘密にしようとする理由はスクリーンからは読み取れない。
文字通り物語の「目」であり、この「白の闇」の中で、観客のガイドでもある彼女を、理解しがたい人物にしてしまったのは、全体としては大きなマイナスだと思う。
悲劇的な最期を遂げる「泥棒」役で出演もしている、脚本のドン・マッケラーは難しい素材相手に健闘していると思うが、この作品の中盤の山場とも言うべき小さな世界の支配権を巡る物語は、ややリアリティを欠く印象が強い。

逆に、遂に世界全体が崩壊し、人々が塀の外に出てからの展開は、物語の主題がストレートに伝わってくる。
果たして、この「白の闇」の正体は一体何なのか。
様々な情報によって、自分たち自身が何者なのか判らなくなってしまった人類を、今一度リセットさせるために神が仕組んだ事なのかも知れない。
少なくとも映画のラストで、自分の番だと考えた「医師の妻」はそう思ったのだろう。
しかし、実際のラストカットの意図する事は・・・・。
理不尽さを強調しすぎて、無理を感じさせてしまった中盤が惜しまれるが、人間心理の奥底に果敢に切り込んでゆく、メイレレスのパワフルな演出はさすがに見応えがある。
色々な意味で、人間性というものを考えさせてくれる力作であった。

今回は、映画の様に無色透明から白くなるお酒「イエニラク」をチョイス。
ラクとはトルコを中心とした地域で、ブドウとアニスから作られる蒸留酒で、水で割ると白く濁るマジックのような不思議な酒。
トルコでは「ライオンのミルク」とも言われる。
アニスを使ったお酒に共通するが、独特の香りが強いので、好みははっきりと別れるだろう。
この臭いがOKならば、結構クセになる味だと思う。

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