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2008 unforgettable movies
2008年12月30日 (火) | 編集 |
2008年も、もうすぐ歴史の一部となる。
9月に起こった金融危機は、まるでパンドラの箱が開いたかのように全世界に波及し、どうやら暗い世相のまま新年を迎えなければならない様だ。
映画界も、近年稀な豊作の年ではあったのだが、世間の空気と歩調をあわせるように、後半失速気味だった様に思う。
ハリポタが来年に延期になったとは言え、正月映画の小粒な事もそれを物語っている。
しかし、そんな中でも、アメリカに「変革」を旗印にした新しいリーダーが誕生した様に、小さな希望は見えている。
来年は、そんな人々の思いが大きく育つ、そんな年になって欲しい。
それでは、今年の「忘れられない映画」を公開順に。

「アメリカン・ギャングスター」は、リドリー・スコット久々の傑作。
現在に繋がる灰色の時代の幕開けを、スタイリッシュな映像と重厚なドラマでじっくりと見せきった。
デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウの二人のオスカー俳優による火花散る演技合戦も見物で、名手スティーブン・ザイリアンの作劇ロジックを駆使した脚本も巧みだった。

「ノーカントリー」は、コーエン兄弟が原点回帰したようなクライム・ムービーの怪作。
レーガン時代が始まる1980年を、現在への繋がる根の時代と捉えている点で、「アメリカン・ギャングスター」に通じる物があるが、こちらはハビエル・バルデム演じる最凶の殺し屋のキャラクター見られるように、時代を寓話的にカリカチュアしてあるのが印象的だった。

「クローバーフィールド HAKAISYA」は、怪獣映画にこんな切り口があったのか!という目から鱗の超異色作。
なるほど、確実に一発屋ではあるだろうが、映画という物はどんな物をどんな風に撮りたいかというアイディアで十分勝負出来るのだという、当たり前の事実を今更ながら見せ付けられた。
企画のインパクトという点では、内容以上に高く評価したい作品だ。

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、石油に取り付かれた男の一代記。
石油はまさに現代社会を支える血であり、荒涼とした風景に噴出す石油は、ダニエル・ディ=ルイス演じる石油王ダニエル・プレインヴューの欲望を吸い込み、神々しいまでのエネルギーを感じさせる。
ポール・トーマス・アンダーソンはそこに神学的な考察も加えて、唯心論と唯物論の対立が織り成すアメリカの原風景を見出した様だ。

「ミスト」は、スティーブン・キング×フランク・ダラボンという名コンビの新たな挑戦。
感動系だった前2作とは異なり、これは心理ホラーとモンスターホラーがダブルで襲い掛かる強烈に怖い作品。
原作者すら想定しなかった驚愕のオチは、まさに予測不可能。
もしエンディング・オブ・ザ・イヤーという賞があったら、受賞確実だろうが、単なる驚きだけでなく、そこに深いテーマ性が見て取れるのが見事だ。
映画としての完成度も極めて高く、文句なしの傑作となった。

「アフター・スクール」は、ものの見事に騙された。
内田けんじは、この作品で他の誰にも似ていない独自の映画世界を確立したように思える。
物語の展開によって得られるカタルシスを、この人はよく知っている。
俳優の生かし方も上手く、特に堺雅人の怪演が印象に残る。

「シークレット・サンシャイン」は、政界入りしていた異才イ・チャンドン五年ぶりの復帰作。
「秘密の陽だまり」という名を持つ小さな町を舞台に、あらゆる悲惨な運命に見舞われた一人の女性の内面世界を描く。
宗教によって救われる主人公が、宗教によって壊れてゆく様、そして信仰という物の本質的な意味を見出してゆく様は、チョン・ドヨンの好演もあり、圧倒的な説得力がある。
人間存在への深い興味と理解というイ・チャンドンの持ち味は、ブランクを経ても全く錆付いていない。

「クライマーズ・ハイ」は、隔てられた二つの時が、ドラマによって結び付けられるという日本映画には珍しい時代感を持った作品。
新聞記者である主人公が、23年前に起こった日航機墜落事故という比喩的な「山」に挑む姿と、現在の年老いた主人公が、現実の山に登る姿を交互に描き、そこに父性を巡る濃密な人間ドラマを描き出している。
真夏の記者室の熱気がそのまま伝わってきそうな空気感が感じられ、個性的な記者たちのキャラクター造形も面白いが、ここでも堺雅人が強烈な印象を残す。

「イースタン・プロミス」は、円熟味を増すクローネンバーグが、再びヴィゴ・モーテンセンと組んだ超ハードなクライムムービー。
人身売買を扱った痛々しい内容だが、幽かに見える人間性が僅かな希望を感じさせる。
日本映画の「闇の子供たち」も似たテーマを描いた力作だったが、映画としての完成度ではこちらが一枚上だった。

「崖の上のポニョ」は、巨匠宮崎駿が起こした創作エネルギーの津波。
「芸術は爆発だ!」と言ったのは岡本太郎だったが、これはまさにアニメーションの大爆発だ。
物語的には正直ぶっ壊れているのだが、生きている事とはどういう事かという率直なテーマを、無機物に命を与えるアニメーション作家ならではのやり方で描き出した。
押井守の「スカイクロラ」は、「ポニョ」と同じテーマを異なるアプローチで描いた作品と感じた。

「ダークナイト」は、その圧倒的なパワーで2008年の夏を席巻した。
年間トータルで観ても、まさに真打、横綱、キング・オブ・ザ・ムービーズ2008であろう。
アメコミヒーローの枠を遥かに超えて、クリストファー・ノーランは、世界を比喩した恐るべき映画を生み出した。
複雑怪奇ながら、綿密な計算に裏打ちされた脚本は、恐らくノーランにしか書けまい。
これが遺作となったヒース・レジャーの鬼気迫るジョーカー像は、映画史のアイコンとなるだろう。

「おくりびと」は、良い意味で日本映画の伝統を感じられる良作。
納棺師というあまり馴染みの無い職業を丁寧に描き、人生の最後の旅立ちにまつわる人間ドラマを優しい視点で紡いだ、小山薫堂の脚本、滝田洋二郎の丁寧な演出も良い。
しっとりと心に染み渡る、出来の良い日本酒のような作品だった。

「ブタがいた教室」は、半分ドラマ、半分ドキュメンタリーのような構造を持つ異色作だ。
ブタを教室で育てて、卒業の時に食べる、という実際の授業を再現した究極の食育映画ともいえるだろう。
食べるのか食べないのか、シナリオ無しの真剣な討論シーンが圧巻で、観ている方もじっくりと考えさせられる。
普通の劇映画のセオリーからは外れるが、これはこれで映画の大切な役割に目を向けた真摯な作品で、学校で子供たちに見せるべき一本だ。

「WALL-E ウォーリー」は、夏のアメリカ公開から、ずいぶんと待たされたが、結果的に今ひとつ盛り上がりを欠く冬休み映画のラインナップにあって、一番華のある作品となった。
物語構成にぶれがあるのが残念だが、巨大なゴミ捨て場となった未来の地球を舞台に、ほぼ台詞無しでロボットの感情を描ききった前半の描写力は圧倒的。
大人から子供まで、老若男女誰でも楽しめる、お手本のようなファミリー映画だ。

他にも、ティム・バートンのミュージカル「スウィーニー・トッド」や、中島哲也の「パコと魔法の絵本」など、エキセントリックなビジュアルを持つファンタジーも面白かった。
老練さすら感じさせる新人監督、ジェームス・C・ストラウスの「さよなら。いつかわかること」や、是枝裕和の「歩いても 歩いても」など、大切な家族の死を巡る、静かな人間ドラマも印象に残った。
ハリウッド映画は、70~80年代初頭を、現在の時代性に通じる源流として位置づけ、考察して描いた作品が多かった様に思う。
アメリカでは、政治や社会の節目が30年おきに巡ってくるといわれる。
レーガンの保守革命を前回の節目と考えると、2009年は正しく新たな節目の年。
その意味で、現在脂の乗り切っている映画作家たちが、自分たちの原点としての時代を振り返った作品が多かったのかもしれない。
そう考えると、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」「ランボー/最後の戦場」の様な同窓会的復活作も、現在から眺めた過去という視点で見ると面白い。
日本映画では、人間の生きる意味や人間同士のつながりを描いた暖かい作品が多かった。
全体に日本映画は、個と個の関係を注視していると感じるが、歴史を流れとして捉えて大局的な視点を持つ作品は少なかった様に思う。
今年は良い映画に沢山出会えたが、ヨーロッパ映画をあまり観る機会が無かったのが少し心残りだ。

それでは皆さん、良いお年を。

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