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2009年01月11日 (日) | 編集 |
歴史の表舞台で活動した期間、僅かに10年と少々。
「チェ 28歳の革命」は、太く短く鮮烈な人生を送り、二十世紀の歴史に名を留める革命家、エルネスト[チェ]・ゲバラの生涯を、スティーブン・ソダーバーグが二部作として描いた大作の前編部分にあたる。
革命家であると同時に、軍略家、政治家、医師、アマチュア写真家と幾つもの顔を持つゲバラは、文才もなかなかの人物だったらしく、自伝を含む複数の著作を残している事でも知られ、過去にも何度か映像化されている。
近年では、ゲバラの人生観に大きな影響を与えた、若き日の南米旅行を描いたウォルター・サレス監督のロードムービー「モータサイクル・ダイアリーズ」が記憶に新しい。
今回、ソダーバーグが描くのは、1955年にメキシコで後に共にキューバ革命を成し遂げる盟友となるフィデル・カストロとの出会いから、キューバ革命を経て1967年にボリビアで射殺されるまでの12年間。
まさに、ゲバラが歴史にその名を刻んだ時期である。
1955年メキシコ。
27歳のアルゼンチン人の医師チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、若きキューバ人革命家フィデル・カストロ(デミアン・ビチル)と出会う。
故国キューバを牛耳るバティスタ独裁政権を倒し、共産主義革命を目指していたカストロの熱意に共感したゲバラは、一年後カストロをリーダーとした82人の革命軍の一員としてキューバに潜入する。
それは、2年以上に渡るバティスタ軍との激しい戦争の始まりだった。
ゲバラは革命軍のナンバー2として、農民たちの支持を獲得し、ゲリラ戦によって徐々に勢力を拡大してゆく・・・
チェ・ゲバラを知らない人でも、赤い星のベレー帽にヒゲ面の肖像写真は一度くらい見たことがあるだろう。
彼は中南米においては、単に歴史を変えた革命の英雄というだけではなく、社会の改革・革新のシンボルであり、没後40年以上経つ現在でも、その人気に陰りは見えない。
日本で考えると、坂本竜馬の存在に近いものがあるかもしれない。
既に瓦解した共産主義の革命家がなぜ、という思いを抱く人も多いだろうが、ゲバラが体現したのは、共産主義という経済制度のイデオロギーだけではなく、植民地時代からその後の軍事独裁政権まで、長く支配され搾取され続けてきた中南米の人民の、誇り高き自主独立の願望そのものだったから、と言えるだろう。
ゲバラは60~70年代の公民権運動とベトナム反戦運動で、反体制、反権力のアイコンとなった事もあり、仇敵であるはずのアメリカですら未だ根強い人気がある。
革命を成し遂げた後、長く権力の座にとどまらずにキューバを去って、結果的に革命のその後の末路に関わらなかった事と、ボリビアのジャングルで一兵士として命を落とした悲劇性も、人々の判官贔屓の感情に訴えかけるものがあるのだろう。
本作のスティーブン・ソダーバーグ監督も、そんな風にゲバラに引かれたアメリカ人の一人であるのだろうか。
正直なところ、ソダーバーグはあまり私と相性の良い監督ではないのだが、この作品はなかなかに引き込まれた。
もちろん、実質的にはまだ映画の半分しか観ていない事になるのだが、歴史の中で殆ど神格化された人物を丁寧に描き、ゲバラとは何者であったのか、という問いにしっかりと向き合っている様に見える。
映画の構造は少し複雑で、1955年のメキシコシティでのゲバラとカストロの出会い、56年から59年に渡る革命戦争、そして1964年の国連総会でキューバ代表としてアメリカを訪れた時の三つの時系列がシャッフルされて描かれる。
ニューヨークのシークエンスは、モノクロのハンディ画像でアップが多用され、まるで当時の報道フィルムをそのまま使っているかの様な客観的なタッチで描かれ、逆にキューバでの革命戦争のシークエンスは劇映画のセオリーに忠実に描かれる。
冒頭と終盤のメキシコシティのシークエンスは、やや粒子の荒れた映像とキッチリと決め込まれたフィックスの構図が印象的。
それぞれの時系列で明確に演出の意図が異なるのが特徴だ。
ニューヨークでのシークエンスは、ゲバラという人物に興味津々なアメリカ、あるいは世界の視点であり、同時に現在から過去を眺める視点でもあるだろう。
上映時間の大半を占めるキューバのシークエンスは、逆に生身の人間としてのゲバラの生き様をリアルに感じさせ、メキシコのごく短いシークエンスはゲバラとカストロの歴史的な出会いを、過剰にドラマチックでなく、しかし象徴的に描くというのが狙いだろう。
ドラマの収束点がどこに行くのかはまだ見えないが、少なくとも物語の「起承」としては成功している様に思う。
ゲバラという人物は殆ど漫画の登場人物などと同じくらい、人々の中でイメージが固まっているから、リアルな個人として表現するのは大変難しかったと思うが、演じたベニチオ・デル・トロはこの複雑で才能豊かな人物を説得力たっぷりに纏め上げている。
国連での演説時の不遜なほどの堂々とした態度、外国人であるという負い目からキューバのジャングルで見せる弱気な青年の一面、そして戦場での指揮官として敵からも味方からも一目置かれる振舞い。
なるほど、ゲバラとはこういう人物だっただろうなあという感覚を、物語を通して自然に抱かせる好演である。
「チェ 28歳の革命」は、伝記映画としては淡々としていてそれほどドラマチックではないが、半世紀前に、強い信念を持って本気で世界を変えようとした青年の生き様を、リアルに感じさせてくれる。
映画作家としての主観を抑え、叙情的な演出を可能な限り排し、ゲバラ本人の再現を目指したかのように見えるソダーバーグのアプローチは、現時点では正解だろう。
戦争には勝ったものの、「革命はこれからだ」と語ったゲバラが、いかにして39歳の若さで命を落とす事になるのか、後編を楽しみに待ちたい。
今回は、キューバ革命という事でやはりラム。
「ハバナ・クラブ 七年」をチョイス。
元々キューバは、植民地時代から良質なサトウキビから出来るラム酒が一大産業だったが、革命で外国資本が海外に撤退した事から、革命政府によって銘柄の統合・新たなブランドの創出が行われる。
ハバナ・クラブは百年以上の歴史のあるブランドで、革命政府は一時期キューバンラムの輸出ブランドを全てこの銘柄に統一していた。
この7年物は適度に熟成が進んでマイルドかつライトで甘みも程よくコクもそれなりにある。
お値段もリーズナブルで、バランスの良いお酒だ。
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「チェ 28歳の革命」は、太く短く鮮烈な人生を送り、二十世紀の歴史に名を留める革命家、エルネスト[チェ]・ゲバラの生涯を、スティーブン・ソダーバーグが二部作として描いた大作の前編部分にあたる。
革命家であると同時に、軍略家、政治家、医師、アマチュア写真家と幾つもの顔を持つゲバラは、文才もなかなかの人物だったらしく、自伝を含む複数の著作を残している事でも知られ、過去にも何度か映像化されている。
近年では、ゲバラの人生観に大きな影響を与えた、若き日の南米旅行を描いたウォルター・サレス監督のロードムービー「モータサイクル・ダイアリーズ」が記憶に新しい。
今回、ソダーバーグが描くのは、1955年にメキシコで後に共にキューバ革命を成し遂げる盟友となるフィデル・カストロとの出会いから、キューバ革命を経て1967年にボリビアで射殺されるまでの12年間。
まさに、ゲバラが歴史にその名を刻んだ時期である。
1955年メキシコ。
27歳のアルゼンチン人の医師チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、若きキューバ人革命家フィデル・カストロ(デミアン・ビチル)と出会う。
故国キューバを牛耳るバティスタ独裁政権を倒し、共産主義革命を目指していたカストロの熱意に共感したゲバラは、一年後カストロをリーダーとした82人の革命軍の一員としてキューバに潜入する。
それは、2年以上に渡るバティスタ軍との激しい戦争の始まりだった。
ゲバラは革命軍のナンバー2として、農民たちの支持を獲得し、ゲリラ戦によって徐々に勢力を拡大してゆく・・・
チェ・ゲバラを知らない人でも、赤い星のベレー帽にヒゲ面の肖像写真は一度くらい見たことがあるだろう。
彼は中南米においては、単に歴史を変えた革命の英雄というだけではなく、社会の改革・革新のシンボルであり、没後40年以上経つ現在でも、その人気に陰りは見えない。
日本で考えると、坂本竜馬の存在に近いものがあるかもしれない。
既に瓦解した共産主義の革命家がなぜ、という思いを抱く人も多いだろうが、ゲバラが体現したのは、共産主義という経済制度のイデオロギーだけではなく、植民地時代からその後の軍事独裁政権まで、長く支配され搾取され続けてきた中南米の人民の、誇り高き自主独立の願望そのものだったから、と言えるだろう。
ゲバラは60~70年代の公民権運動とベトナム反戦運動で、反体制、反権力のアイコンとなった事もあり、仇敵であるはずのアメリカですら未だ根強い人気がある。
革命を成し遂げた後、長く権力の座にとどまらずにキューバを去って、結果的に革命のその後の末路に関わらなかった事と、ボリビアのジャングルで一兵士として命を落とした悲劇性も、人々の判官贔屓の感情に訴えかけるものがあるのだろう。
本作のスティーブン・ソダーバーグ監督も、そんな風にゲバラに引かれたアメリカ人の一人であるのだろうか。
正直なところ、ソダーバーグはあまり私と相性の良い監督ではないのだが、この作品はなかなかに引き込まれた。
もちろん、実質的にはまだ映画の半分しか観ていない事になるのだが、歴史の中で殆ど神格化された人物を丁寧に描き、ゲバラとは何者であったのか、という問いにしっかりと向き合っている様に見える。
映画の構造は少し複雑で、1955年のメキシコシティでのゲバラとカストロの出会い、56年から59年に渡る革命戦争、そして1964年の国連総会でキューバ代表としてアメリカを訪れた時の三つの時系列がシャッフルされて描かれる。
ニューヨークのシークエンスは、モノクロのハンディ画像でアップが多用され、まるで当時の報道フィルムをそのまま使っているかの様な客観的なタッチで描かれ、逆にキューバでの革命戦争のシークエンスは劇映画のセオリーに忠実に描かれる。
冒頭と終盤のメキシコシティのシークエンスは、やや粒子の荒れた映像とキッチリと決め込まれたフィックスの構図が印象的。
それぞれの時系列で明確に演出の意図が異なるのが特徴だ。
ニューヨークでのシークエンスは、ゲバラという人物に興味津々なアメリカ、あるいは世界の視点であり、同時に現在から過去を眺める視点でもあるだろう。
上映時間の大半を占めるキューバのシークエンスは、逆に生身の人間としてのゲバラの生き様をリアルに感じさせ、メキシコのごく短いシークエンスはゲバラとカストロの歴史的な出会いを、過剰にドラマチックでなく、しかし象徴的に描くというのが狙いだろう。
ドラマの収束点がどこに行くのかはまだ見えないが、少なくとも物語の「起承」としては成功している様に思う。
ゲバラという人物は殆ど漫画の登場人物などと同じくらい、人々の中でイメージが固まっているから、リアルな個人として表現するのは大変難しかったと思うが、演じたベニチオ・デル・トロはこの複雑で才能豊かな人物を説得力たっぷりに纏め上げている。
国連での演説時の不遜なほどの堂々とした態度、外国人であるという負い目からキューバのジャングルで見せる弱気な青年の一面、そして戦場での指揮官として敵からも味方からも一目置かれる振舞い。
なるほど、ゲバラとはこういう人物だっただろうなあという感覚を、物語を通して自然に抱かせる好演である。
「チェ 28歳の革命」は、伝記映画としては淡々としていてそれほどドラマチックではないが、半世紀前に、強い信念を持って本気で世界を変えようとした青年の生き様を、リアルに感じさせてくれる。
映画作家としての主観を抑え、叙情的な演出を可能な限り排し、ゲバラ本人の再現を目指したかのように見えるソダーバーグのアプローチは、現時点では正解だろう。
戦争には勝ったものの、「革命はこれからだ」と語ったゲバラが、いかにして39歳の若さで命を落とす事になるのか、後編を楽しみに待ちたい。
今回は、キューバ革命という事でやはりラム。
「ハバナ・クラブ 七年」をチョイス。
元々キューバは、植民地時代から良質なサトウキビから出来るラム酒が一大産業だったが、革命で外国資本が海外に撤退した事から、革命政府によって銘柄の統合・新たなブランドの創出が行われる。
ハバナ・クラブは百年以上の歴史のあるブランドで、革命政府は一時期キューバンラムの輸出ブランドを全てこの銘柄に統一していた。
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