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GOEMON・・・・・評価額1650円
2009年05月08日 (金) | 編集 |
「CASSHERN」の十倍面白い。
前作の印象が芳しくなかったので、全く期待していなかったのだが、予想外に心揺さぶられる娯楽活劇であった。
ビジュアル表現に最大限のプライオリティを置く、紀里谷和明のスタイルが変わったわけではない。
「GOEMON」が「CASSHERN」と違うのはただ一点、理解可能な物語が存在しているという事だけだ。

桃山時代、義賊として名を馳せる石川五右衛門(江口洋介)は、ある日紀伊国屋文左衛門の屋敷から西洋の箱を盗み出す。
箱が空だった事から、五右衛門はそれを少年小平太(深澤嵐)に与えるが、実はその箱には時の権力者豊臣秀吉(奥田瑛二)に関するある重大な秘密が隠されていた。
箱の行方を追う石田光成(要洵)は、箱の奪還を配下の霧隠才蔵(大沢たかお)に命じる。
その頃、秀吉は大阪城に無き信長の姪である茶々(広末涼子)を呼び寄せ、自らの権威を確固たる物にするために、側室になれと迫るのだが・・・


PV出身の多くの映像作家と同じく、第一作となった「CASSHERN」の時、紀里谷和明は映像の力だけで全てを語れると信じ込んでいる様だった。
確かにビジュアル的にはエキセントリックな魅力があったものの、作劇は驚くほど物語としての整合性を欠き、キャラクター造形もデタラメで、映像の外連味に感覚が慣れるにつれて、だんだんと観ているのが苦痛になっていった。
寺尾聰 が演じた東博士など、前半と後半で全く別のキャラクターに変貌しているなど、キャラクターへの無頓着さは特に甚だしく、ああこの人は人間に全く興味が無いのかも知れないと思ったのを覚えている。
救いだったのは、一応テーマらしいものがあり、薄いながらもなんとかそれが伝わってきたために、最悪の印象だけは免れたという感じだった。

ぶっちゃけ、この作品もやっていることは前作とあまりかわらない。
前作で、キャシャーンという人気アニメのキャラクターだけ借りてきて、後は好き放題に改変したのと同じく、この作品もタイトルロールの石川五右衛門を初めとして、霧隠才蔵、豊臣秀吉や織田信長といった日本史の人気キャラクターを、実在、架空を問わずに勢揃いさせ、紀里谷ワールドともいうべき架空世界で大暴れさせたという感じだ。
ただ、少なくともこの作品にはつじつまの合う物語があるという点が、前作とは決定的に異なっているのである。

本人がどう言っているかは知らないが、紀里谷和明は自分なりに前作を分析し、足りないものが何なのかを理解したのだと思う。
たぶん、「CASSHERN」の時の彼には、テーマは「感じさせる物」という概念があったのではないだろうか。
確かにテーマをなんとなく感じさせる事は、PVの様に短いものでも、音楽にあわせてイメージ映像を展開する事で可能だろう。
だが、逆に言えばそれだけで良いのなら、5分のPVでも出来てしまう。
実際「CASSHERN」で、作者の言いたい事というのは、殆ど最後の心象風景のシーンだけで表現されていなかったか。
そこにいたるまでの膨大なビジュアルの羅列は、極論すれば無くても良いマスターベーションとも言えるのである。
「GOEMON」も、作品のテーマそのものは、極端に言えば「ラブ&ピース」であり、前作と変わらないのだが、今回はテーマを「感じさせる」のではなく、物語を通して「語ろうと」している。
意外と言っては失礼ながら、紀里谷和明と共同脚本の瀧田哲郎は、ほぼ2時間の上映時間の中に膨大な数のキャラクターと複雑なプロットを練りこみ、なかなか見事な仕事をしている。
石川五右衛門=抜け忍説をベースに、信長暗殺の真相を巡るミステリを絡め、五右衛門と才蔵の過去、茶々との切ない恋物語までを、特に違和感を感じさせず構成したのは正直驚いた。
もっとも、さすがに上映時間に対して情報量が多すぎの感は否めず、キャラクター造形は表層的なものにとどまり、達者な俳優の力にかなり助けられている印象がある。
結果的に彼らが体現するテーマ性もそれほど深くは感じられないし、色々と詰め込んだせいで、逆に間延びしてしまっている部分もあり、このあたりのバランスはもう少し考えても良かった。

もちろん、作者のトレードマークであるビジュアルの徹底重視は相変わらず。
一応、時代劇ではあるものの、舞台となる安土城や大阪城、街や衣装デザインまで史実とはかけ離れた和洋折衷世界にデザインされ、何よりも誰一人として髷を結っていない!
ここまでぶっ飛んだビジュアルながら、不思議と観ているうちに違和感はなくなってくる。
その理由は、同じように架空世界を舞台としたファンタジー時代劇である「どろろ」と比較すれば良くわかる。
あの映画には作品世界全体を纏め上げるデザインコンセプトが存在せず、単に面白そうな造形を場当たり的に取り込んでいるために、世界観が酷く散漫な印象となってしまっていた。
対してこちらは、良い意味で紀里谷和明の作家映画であるために、徹底的に彼の作りたい世界が追求されており、どんなにぶっ飛んだ世界になっていようと、全体に統一感がある。
要するに「どろろ」はどんな世界を作りたかったのかが良くわからないが、「GOEMON」はその点非常に明確に作り手の意図がわかるのである。

「CASSHERN」以降に作られたデジタル技術を駆使したハリウッド映画、例えば「300 スリーハンドレッド」あたりの影響を感じる部分もあるが、それも含めて映像は作者のイメージに上手く消化されえおり、CGである事を生かしたアクションもスピーディーで、 「レッドクリフ」などとは違った意味で迫力がある。
まあ、物語的にもビジュアル的にも、伝統的な時代劇ファンが観れば眉を顰めそうな内容ではあるのだが、要するにこれは講談であり、歌舞伎なのだと思う。
今となっては史実と混同されている話も多いが、元々日本には史実と虚構をミックスして庶民の娯楽を作り出してきた長い歴史がある。
「GOEMON」もその流れの一つであり、21世紀のデジタル歌舞伎だと考えれば、これはこれで十分ありなのではないだろうか。

この作品、公開前から海外配給のオファーが殺到していたというが、作品を観ればその理由は良くわかる。
東洋とも西洋ともつかない、外連味たっぷりでド派手なビジュアルに、勧善懲悪ベースでドラマチックなストーリー、決して深くは無いが判りやすく誰もが共感出来るテーマ。
「GOEMON」は、作家性を抜きにすれば、日本映画ならではの正統派の娯楽映画なのである。
紀里谷和明は、この作品で自らのポテンシャルを証明する事に成功したと思う。
5年の間隔があったとは言え、「CASSHERN」ではそれだけが突出してしまっていたビジュアルが、この作品で物語を魅力的にするため手段として活用されており、映画作家としての大いなる進化を感じさせる。
映像派が物語の力を理解すれば、鬼に金棒である。
今後も彼にしか撮れない独自の世界を追求して行って欲しいものだ。

今回は、映画と同様にビジュアル重視の酒をチョイス。
福井県の朝日酒造の「酔蝶花」 をチョイス。
なんと酒の中に金箔と梅と桜の花がはいっており、まるで水中を舞う蝶の様に見える。
味も決して悪くないが、やはりこれは目で楽しむお酒で、栓を開けるのがもったいなく感じてしまう。
これもまた日本人のあそび心が生み出した楽しい一品だ。

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