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重力ピエロ・・・・・評価額1500円
2009年05月27日 (水) | 編集 |
「重力ピエロ」という不思議なタイトルからは、映画の内容がまったく想像できない。
実際、掴みどころの無い不思議な映画である。
この原作は読んでいないが、伊坂幸太郎という作家は、一見関係の無い事柄が、物語を通してパズルのピースのように組み合わされ、最終的に思いもしなかったテーマを形作るというスタイルの作品が多く、この作品もまさにそれ。
連続放火、落書きに隠された暗号、24年前の連続レイプ事件など、ミステリアスな要素が満載。
にもかかわらず、全体の印象はある種のホームドラマなのだ。

仙台の大学院で遺伝子を研究する泉水(加瀬亮)は、落書き消しの仕事をしている弟の春(岡田将生)と、ミツバチを育てている父(小日向文世)との三人家族。
やさしく美しかった母は、交通事故で他界していた。
ある時、市内で頻発する放火事件の現場に、必ず落書きが残されている事に気づいた春は、泉水を誘って犯人を捕らえようとする。
はじめは半信半疑だった泉水だったが、現場の落書きの頭文字が遺伝子配列を表す暗号である事を発見するのだが・・・


映画が始まってしばらくは、遺伝子研究者の主人公、泉水の視点で男家族のノホホンとした関係が描かれ、これが何に関する映画なのかまったく判らない。
だが落書き消しの仕事をしている弟の春が、町で頻発している連続放火事件が常に落書きの近くで起きてる事に気づき、事件の謎に挑み始めると、映画は徐々にミステリの様相を帯び始める。
ところが、そのまま放火事件の謎解きで突っ走るのかと思いきや、映画は突然24年前に起こったレイプ事件に絡む家族の過去の暗い影を巡る物語となってゆく。

それは、春の出生の秘密
彼は、亡き母親がレイプされた時に生まれた子供であって、その事実の持つ重い意味を、春本人も家族も認識している。
一見仲の良い家族も、彼らの心に突き刺さり、事あれば噴出しようとするマグマの様なタブーを必死で押さえつけて、ギリギリのバランスの上で表面の平和を保っているのだ。
春が、美青年ながら浮世離れした雰囲気を持ち、女性を寄せ付けないのも、彼自身の中にあるレイプ犯の血を恐れ、封印するためである。
だが、そんな家族も、春と本当の父親であるレイプ犯が邂逅を果たした事で、大きな転機を迎える事になる。
ここに至ると、連続放火の件は殆ど傍流に抑えられてしまうのだが、映画のあるポイントを境に、一気にバラバラだった要素が収束を始めるのである。
この展開は、正直読めなかった。

原作を踏襲しているのだと想像するが、この作品は細かな台詞や描写に至るまで、恐ろしく細かく複線が張り巡らされている。
遺伝子の暗号や、ガンジーの言葉など、その瞬間にはたいした意味を持っていない事も、後から思い出すと、後の展開の重要なヒントになっていたりするのである。
観客を巧みにミスリードし、だがそのミスリードの部分も、全体としてみるとキチンと意味を持っている。
それぞれの部分は、テーマの一端を示すメタファーとして機能し、全てが組み合わさった映画全体として見ると、現在の迷える家族像のメタファーとなっているという凝った構造。
綿密に練られたプロットというのは、こういうのを言うのだろう。
森淳一監督の演出も実に丁寧で、じっくりと見せる。
家族の傷と絆を描いた作品である事は間違いないが、いわゆる泣かせに走る事はなく、観る者を考えさせる寓話であり、力作である事は確かだ。

ただし、疑問が無いわけではない。
文章ならば気にならないのだろうが、映像という形をとった事で、あまりにもキッチリと組まれたプロットが、逆に出来すぎに感じてしまう。
登場人物のキャラクターも、それぞれに物語の中での役割によってユニーク過ぎくらいの個性が与えられており、特に事件解決への鍵を握る女性キャラはやや漫画チック。
全員が、この寓話上でお芝居を演じている様に見えてしまった。
映像化した事で、キャラクターが象徴的になりすぎてしまい、それぞれの行動も物語上の必然というよりもキャラクターの役割り上の必然になってしまっていた気がする。
もっともそれが、この辛い物語が極端に生っぽくなる事から救っているとも言えるのだが。

「重力ピエロ」というタイトルの意味が明かされる映画のラストは意外な物だが、果たしてあれはどう解釈すれば良いのか。
この映画のキャッチコピー「家族の愛は、重力を超える。」を、そのまま解釈すれば良いのかもしれないが、果たして物語の帰結は愛故の結果なのか、個人的にはやや釈然としないもやもや感が残った。
やはり、良くも悪くも掴みどころの無い映画である。

今回はスペインから「コロシア・ソレラ・ファミリアル・パロ・コルタド」をチョイス。
ソレラとは元々「底」や「床」を意味する単語だが、積み上げた熟成樽の一番下段の物という意味も持つ。
シェリーの熟成はソレラシステムと呼ばれ、積み上げられた熟成樽の中の酒をすべて抜き取らず、熟成が進んだ下段から順に抜き取り、抜いた分は上段から注ぎ足してゆく独特の方法なので、一番下の段、ソレラは一番熟成が進んでいる事になる。
つまりこれは「コロシアルの家族が熟成した樽の古酒」という訳だ。
さまざまなアロマが絡み合った複雑な香りと柔らかな口当たりを持つ、やや辛口のシェリーである。
どのぐらい家族の結束が強いと、この酒が育つぐらい熟成出来るのだろうか。

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